★ PS2ゲームレビュー ★

創造する楽しさを満喫!
お絵描きツールとRPGが融合した意欲作

「ガラクタ名作劇場 ラクガキ王国」

  • ジャンル:ラクガキRPG
  • 発売元:株式会社タイトー
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(3月20日)

【ゲームの内容】
 ノートに描いた「ラクガキ」がそのまま立体のキャラクタとなり、その「ラクガキ」を操って「クロッカー」たちと戦い、帝国ラクガキ大会での優勝を目指すという一風変わったRPG。夏に公開が予定されている短編アニメ「ギブリーズ episode2」との完全タイアップを実現し、同作品のキャラクタのラクガキも多数登場する。また、日本漫画協会の協力のもと、多くの有名漫画家がデザインしたラクガキも収録。ジブリ作品のTVCFも特典映像として収められている。



 自分で描いた絵がそのまま立体化し、ゲーム内のキャラクタとなって動き回る……これ以上ない自己表現が可能なゲームがこの「ラクガキ王国」だ。これにストーリー性とRPG的な戦闘の要素をミックスして、誰もが気軽に楽しめる作品に仕上がっている。


 どこか懐かしく、温かみに溢れた世界観

 物語はとある島の空き地で主人公が目を覚ましたところから始まる。「ヒバナ」という女の子と、その弟分の「タロー」たちと関わりながら、ペンの妖精“ペンジェル”を通して描いた「ラクガキ」を使って、帝国の「ラクガキ大会」に勝利していくのが大まかなゲームの流れになる。

 制作チームのガラクタスタジオでは、本作のアートディレクターに「となりのトトロ」の作画監督を初め、多くのジブリ作品に携わってきた佐藤好春氏を起用。その作風とガラクタスタッフの尽力は見事に功を奏し、舞台となる島はジブリ作品を彷彿とさせる、どこか郷愁を誘うような開放的で不思議な魅力を放っている。
 急な坂道にあるガラクタ市場では、日用雑貨から食料品まで、さまざまなものを売る商店がところ狭しと並び、店の主人や売り子の賑やかな声が聞こえてくる。いかにも怪しげな悪役も登場するが、全体的に温かみのある、人の息吹を感じさせる世界が広がっている。

「ペンジェル」に誘われるままに描いた「ラクガキ」がそのまま導入シーンにつながっていく。パステル調の色彩をメインに、輪郭のラインがない独特の画風で描かれた島の住人たちは、ポリゴン数は少なめな印象を受けるが、それがむしろ妙味を醸し出している


 愛着もひとしお。描いたラクガキがそのまま3Dキャラクタに!

 自分でデザインした「ラクガキ」をそのままキャラクタとして使用できることが「ラクガキ王国」最大の特徴だ。これほどプレーヤーの個性が生かされるキャラクタ作成システムは他に類を見ないだろう。それがあまりにダイレクトであるぶん、「絵が達者でないと楽しめないのでは?」いう類の理由で敬遠しがちな方もいるかもしれないが、過度の心配は無用。「ラクガキの強さ」という点では絵の上手さはほとんど関係なく、また「描く」という行為に面倒を感じないならば、童心に帰ってノート一杯に「ラクガキ」しているだけでも十分に楽しめるからだ。

 「ラクガキ」はノートを開いて、「ペンジェル」を通して描くことができる。このとき必要になるのが「カラー石」というアイテムで、クレヨンや絵の具のようなものと考えてもらいたい。「カラー石」の種類が多ければたくさんの色を使えるし、量が多ければ大きなパーツを描いたり、たくさんのパーツに使用することができる。なお、本作はプレーヤー視点でゲームが進行するが、「ペンジェル」はマップ上を進む際のシンボルキャラクタにもなっている。

 こうしてひとまず完成した「ラクガキ」は、そのままキャラクタとなりパラメータとタイプが決定する。タイプというのはそのラクガキが得意なワザのことで、「こうげきタイプ」、「まほうタイプ」、「バリアタイプ」の3種類に分類される。これらの要素は使った色の比率などで変化するようだが、強さの大元になるのは使用した「カラー石」の量である。つまり、強い「ラクガキ」を描こうと思うなら、最大ライン数を余すことなく目一杯使用することが重要になってくる。

 ノートを閉じると、目の前には今描いたばかりの「ラクガキ」がテクテクと歩いている。「ラクガキ」を何体か描いていくと、ノートを閉じたこの瞬間、そしてギャラリーでの緒戦が一番の楽しみになってくる。モーションのチェックはノート上でもできるが、闊歩する姿を見て改めてその存在感を実感できると言おうか。プレイして初めてこの光景を見るときには、ちょっとした感動が味わえるだろう。

パラメータはパーツの大きさやバランスで細かく変動するので、いろいろ試してみよう。思い通りの動きをしてくれないことも往々にしてあるが、そんなときはメニューに入り、ラクガキ百科を見てみるといい。ゲームの進行に合わせて項目も増えていく

 序盤のうちは「ペンジェル」が引けるライン数が短く、「カラー石」の所持量も少ないため、描ける「ラクガキ」のバリエーションはまだまだ乏しい。そこで、ほかの「クロッカー」と戦って「カラー石」を集めていくことになる。

 ストーリーに沿って帝国ラクガキ大会の予選を勝ち進めば、「ペンジェル」が少しずつ成長する。はじめは「からだ」と「かたい(角などになる堅いパーツ)」しか描けなかったものが、「うで」や「あし」など、一戦ごとにどんどんパーツが増えていくのだ。それとともに総ライン数も増加するので、より複雑で大きな(強い)ラクガキが描けるようになるわけだ。

 また、戦闘をすることでその「ラクガキ」に経験値が加算されて強くなる。ただし、戦闘経験値で強化される比率は僅かなので、基本的には「ペンジェル」の能力が「ラクガキ」の強さを左右すると考えていい。「ラクガキ」は「カラー石」が続く限り何体でも作成可能だが、一度に連れて歩けるのは6体まで。それを超えたぶんは「ガレージ」に保存しておくことができる。戦闘は最大で3対3で行なわれるので、最低でも「ラクガキ」を3体は作っておこう。

 島内には「海ギャラリー」などの「デュエル(フリー対戦)」を行なえる「ギャラリー(施設)」もあり、ここで戦えば勝敗に関係なく「カラー石」をもらえる。対戦で勝利すればより多くの「カラー石」が手に入るだけでなく経験値も入手できる。もし敗北してしまってもデメリットは何もないので、積極的に挑戦しよう。

 ギャラリーに直接行けばすぐに対戦できるほか、島の人々に話し掛ければその相手に直接デュエルを申し込める。「クロッカー」によってカラーやタイプの傾向があるので、特定の「カラー石」をたくさん入手したい時などは、同じ相手と集中して戦うといい。

大会に勝利していけばペンジェルが成長し、描けるパーツやライン数が増えていく。同時にペンジェル自体の見た目も変化し、頭にある筆の数が多くなっていくのだ 揺れるかざりや模様などのパーツもある。「はね」のパーツは大きく描けば空中浮遊するラクガキになる。本体から独立して浮遊するパーツを描くことも可能 度々お世話になるのが「海ギャラリー」。負けてもカラー石がもらえるのでどんどん対戦しよう。申し込みをしなければ自分に相応のレベルのクロッカーが相手になる


 単純に見えて読み合いが熱い戦闘システム

 戦闘は、島の「クロッカー」同士が互いに「ラクガキ」に指示を出すという形式で行なわれる。「ラクガキ」が行なえるのは「こうげき」、「まほう」、「バリア」の3つのワザと、「チャージ」の4種類。
 「こうげき」、「まほう」、「バリア」はそれぞれジャンケンのグー、チョキ、パーと同じく“三すくみ”の関係で、お互いが同時にワザを出し合い、勝者が敗者を一方的に攻撃できるシステムになっている(あいこ時はスピード順に両者攻撃)。ただ、これだけでは非常に運要素の強い戦いになってしまうため、いくつか独自のルールを加えることでうまく戦略性を持たせてある。

 まず、「チャージ」も含めて「同じワザを2回続けて出せない」という基本ルールがある。あいこ以外の場合、勝者には次手で最低でもあいこを取れるワザが残るので、有利な戦局が継続する。しかし、次の勝負であいこになれば使えるワザはまったく同じになる。そこで裏を掻いた選択肢のぶつかり合いという可能性も出てくる。
 わかりやすいようにジャンケンで具体例を挙げてみよう。例えば初手が「グー○VSチョキ×」であったとすると、次手は「チョキorパーVSグーorパー」という勝負になる。相手がグーかパーしか出せない以上、パーを出せば絶対に負けることはない。しかし、もし相手がパーならチョキを出せば、さらに一方的な勝利が狙える……という具合。このように、出せる手に制限があるからこそ駆け引きが生まれてくるのである。

 そして第4の手として「チャージ」の存在がある。「チャージ」はほかの3種類すべてのワザに負けてしまうものの、HPが回復し、次手のダメージがアップするという効果を持つ。
 「チャージ」後はすべてのワザ(チャージ以外)が出せるので、上手く相手の攻撃を読めば大逆転のチャンスにもなる。初手で負けたり不利な状態であいこが続くなど、そのまま試合が運ぶと負けそうな戦局で流れを変えたいときにはこれを選ぼう。

 また、「ラクガキ」には各ワザに対応した3種類のタイプがある。例えば、「こうげきタイプ」なら「こうげき」のダメージが突出している。
 こうした得意ワザは「チャージ」後に繰り出す本命でもあり、あいこでも構わず出していい選択肢でもある。なお、3種類のワザはそれぞれに特徴があり、攻撃に成功した時の効果も異なっている。相手のタイプを見極めて、脅威となるワザを受けないような手を選んでいこう。

初めて対戦する際は「ヒバナ」がルールをわかりやすく解説してくれる。ジャンケンが元になっているので、少し対戦をこなせばすぐに理解できるはずだ 「チャージ」を使うと次に出すワザのダメージが大幅アップ。無難に相討ちを狙うか、得意ワザで勝負するかが悩みどころ。この両方が同じならベスト

3種類のワザとその特徴
こうげきワザ
「バリア」に強く、「まほう」に弱い。これといった追加効果はないが、単純にダメージが高い。ウデやブキなどのパーツを大きく描くことによって、強力な専用攻撃が追加されることもある
まほうワザ
「こうげき」に強く、「バリア」に弱い。PPを消費して使用する。成功すると相手のPPを吸い取ったり、一定確率でステータス異常を引き起こすなど何らかの効果がある。PPが足りなければ当然使えない
バリアワザ
「まほう」に強く、「こうげき」に弱い。ダメージは低いものの、バリアタイプが使えるバリアワザは性能が高く、まほうワザとぶつかったときにそのまま跳ね返すことができる

 戦闘は運要素も若干関係するが、お互いの「ラクガキ」が同じくらいの戦力ならば最初の一手目が勝負になる。一手目で勝てば、読み合いを拒否する選択肢……つまり、相手がグー、パーを出せる時にパーを、パー、チョキを出せる時にチョキを出せば「悪くて相討ち」になり、かなりの確立で勝つことができるだろう。

 しかし、大会予選の相手は「ペンジェル」の能力よりも少し高めになっているので、普通に戦っていてはなかなか勝てない場合がある。そんな場合は、相手によって好んで使ってくるワザがあるので、何度か戦ってどのワザを多く使ってくるか調べてみると勝ちやすくなる。


 カラー石を両替してペンやラクガキを購入しよう

 「カラー石」は「ラクガキ」を描く以外にも使い道がある。ガラクタ市場の坂を登った先にある城の入り口脇にある「ミソラばあの店」に持っていけば、「カラー石」をゴールドに両替できる。ゴールドは島の住人から「ラクガキ」や「ペン」を買うために使用する。

 購入できる「ラクガキ」は、これまでに対戦相手がバトルで使用したものに限られる。動きやデザインが気に入ったものがあれば購入してみよう。購入した「ラクガキ」は、自分で描く際の参考にするもよし、「パーツ」を描き足してアレンジするもまたよし。
 「ギャラリー」で対戦する住人たちは、プレーヤーが対戦で勝利するたびにどんどん強く新しい「ラクガキ」を出してくる。そのため、何度も戦っていれば、自然に新しい「ラクガキ」が買えるようになる仕組みだ。 ペンは商人が売っているアイテムで、線の強弱などで何種類かある。よりこだわった「ラクガキ」を描きたいなら優先して購入したい。

使わないカラー石が集まってきたら、ガラクタ市場の坂の上にあるガラクタ屋に行って、ミソラばあに換金してもらおう ゴールドを使えば異なるタッチのラインが描ける各種のペンや、対戦相手が使用したラクガキを購入できる 「ダライアス」や「サイキックフォース」など、タイトー作品のキャラクターも登場。規格外なので苦戦必至


 戦闘のテンポやロード時間の長さが少々気になったが、本作は「シナリオをガリガリ進めて強力なクロッカーたちを倒す!」といった意気込んだ遊び方よりも、「ほのぼのした島の空気に身を委ねて、のんびりとお絵描きを楽しむ」という方向性が正道に思える。
 RPGという形式をとってはいるものの、思い通りの造形、思い通りの動きをする「ラクガキ」を創造する。その過程と達成感に楽しみを見出す作品と言っていいかもしれない。

 ゲーム本編のシナリオ自体も短めで、エンディングは意外に早く訪れる。もちろん、そのあとにもプレーヤーがやれることはたくさん用意されているが、すべてのパーツが描けるようになり、「ペンジェル」の描けるライン数が最大になったらそこでひと区切り。人によって捉え方は異なるだろうが、そこがゲームとしてはほぼ終着点であると同時に、お絵描きツールとしてはスタート地点になっている。“そこ”に至るまでのプレイ時間は、筆者の場合は15時間弱であった。

 普通のRPGと考えて身構えると物足りなさを感じてしまうのは確かだが、絵を描いたり、物を作ることが好きな方なら、末永く楽しめる愛すべき1本になるだろう。全国のプレーヤーから自慢の「ラクガキ」を募集するなど、創造力を発表できる場があれば、さらなる盛り上がりが期待できそうである。

 ……などと言いつつも、絵心の乏しい筆者などはパーツやライン数が増えるにつれてキャラクタもいびつ極まる奇怪な物体に変じていくばかり。その動きも「蠢いている」といった表現が適切で、プレイしながら何度も苦笑が漏れてしまった。そんな、まさしく“ラクガキ”レベルの「ラクガキ」でも、自分で創造したものであるせいか不思議と愛着が湧いてくるものだ。

 「奇怪な物体」になってしまった原因はほぼ明らかで、パーツが増えるたびにもとの「ラクガキ」に無理矢理描き足していったのがまずかったと思われる。強さはともかく、見た目が美しい「ラクガキを目指すのであれば、パーツやライン数が増えるたびに一度きれいさっぱり消して、一から描きなおすのがベストであろう。
 しかし、それまで幾多の激戦を共にしたパートナーだけに名残惜しさが残るのも事実。そんなこんなで、幾度か新人(?)を投入しながらも「やっぱり頼れるのはオマエだけだ」と、最後まで初めて描いた「ラクガキ」を使用してしまった次第である。



(C)TAITO CORP.2001 PRESENTED BY GARAKUTA STUDIO

□タイトーのホームページ
http://www.taito.co.jp/
□製品情報
http://www.garakuta-studio.com/f_set2.html
□関連情報
【2001年7月16日】タイトー、プレーヤーの描いたラクガキが成長する
PS2用新感覚RPG「ガラクタ名作劇場 ラクガキ王国」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010716/taito.htm

(2002年4月2日)

[Reported by 氏家雅紀]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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