Game Developers Conferenceレポート

フェイシャル系テクノロジーの進化に注目

会期:3月19日~3月23日 (現地時間)

開催地:San Jose McEnery Convention Centerなど

 米国カリフォルニア州サンノゼで行なわれている「GAME DEVELOPERS CONFERENCE(GDC)」。今回の展示会では、複数社の開発支援ツールメーカーがフェイシャルアニメーション(顔モデルのアニメ)ツールやフェイシャルモデル生成ツールなどを展示していた。
 ここでは中でもユニークだったものを2つピックアップして紹介していくことにする。

本当に多かったフェイシャル系テクノロジーの展示。人体モデルは顔が命……。今後の3Dゲームの登場キャラクターの顔には要注目


●Rachel Demo~スキンシェーダーとは?

 写真はATIやAMDのブースで盛んに流れていた「レイチェル(Rachel)」フェイシャルアニメーションのデモンストレーション。
 なめらかの表情の変化に目を奪われてしまうが、実はこのリアリティは、顔の動きのみならずシェーディングのリアリティにかなり助けられている。
 画面はRachelで使われている「スキン(肌)シェーダー」のソースリスト。
 スキンシェーダとは簡単に言えば皮膚の光り方をシミュレーションしたシェーディングを行なうもの。具体的にいえば、肌ならば光源と視点の位置関係が、どういうときにどういう光沢ができてどう拡散反射するかという変換マップのようなものを用意し、その規則に従って陰影をつけていく……という仕組みになる。
 特定の材質の質感を表現するために陰影の度合いを操作する「可変スペキュラ強度シェーディング」と呼ばれるテクニックがあるが、スキンシェーダーはこれを発展させたものだといえる。
 このデモは目玉や歯の「てかり」方もリアルなのだが、これについては「アイボール(目の玉)シェーダー」「歯シェーダー」といったそれ専用のシェーダーを、この可変スペキュラ強度シェーディング技術を応用して開発し、実装しているという。

 これまでの3Dゲームのキャラクタの顔は、プラスチックかガラス陶器のような質感のものが多かったが、DirectX8.0以降のフォトリアリスティックな3Dゲーム映像ではこのレベルが要求されるようになるのだろう。
 なお、このデモはATIの開発者向けサイトにアップロードされている。実際のデモにはRADEON8500が必要になるが、サイトにはムービーファイルもアップロードされているので非ユーザーはこちらを再生してみるといいだろう。

このレイチェルのリアルさは、アニメーションのなめらかさ、肌のリアルさの相乗効果によるもの
プログラマブルピクセルシェーダを使ったスキンシェーダーのソースリスト レイチェルを初めて動作させたときのバグ画面だそうだが、目の玉、歯などにもそれ専用のシェーダーで陰影がつけられているのがわかる映像でもある。プログラマブルピクセルシェーダ偉大なり


●アナタの顔つくります~3枚の写真から10分でアナタの3Dフェィシャルモデルを自動生成

左上が年齢スライダーを上下させたときの変化。右上は性別スライダーを上下させたときの変化、左下は種族スライダーを上下させたときの変化、右下は顔の特徴を大げさに強化するスライダーを上下させた時の変化を表している
 フェイシャル系テクノロジーの展示でもっとも来場者に人気の高かったのはSingular Inversions社のスタンドアローンな顔モデル生成ツール「FaceGen」だ。このFaceGenの機能は大きく分けて二つ。1つは顔の自動生成機能だ。

 年齢、性別、種族をはじめとした基本パラメータをスライダー入力して待つこと1秒、顔が算術合成されて出力される。出力された顔は完全に3Dジオメトリを持った立体であり、MAYA、LightWaveをはじめとした様々な形状データとしてエクスポートが可能になっている。アフリカン、アングロサクソン、アジアといった各種族独特の肌の色や、顔の形状がリアルに再現され、生成される顔群がCGにありがちな美男美女に落ち着かないのがすごい。生成される顔はどれも「どこかで見たことがありそうな」ものばかりだ。こうした顔の生成は、ライブラリで持つ顔データに対してノイズパラメータを与えて変形させることにより生成する手法が一般的だが、担当者によれば、「FaceGenは顔生成用のシードとなる顔データのライブラリ等は一切持っていない。すべての顔は独自の理論で構築した算術合成処理系によって作り出している」とのこと。

 それでは、「FaceGenの顔生成系に特定のパラメータを組み合わせて生成してやれば、現実にいる人間の顔を生成することができるのではないか?」と考えたくなるのは自然な成り行きであろう。

 注目すべき第二の機能はまさにこれ。FaceGenに、正面からの写真、左斜めからの写真、右斜めからの写真、合計三枚の写真を与えると、なんと与えられた写真画像に一番近くなるFaceGen顔データ用のパラメータを解析してくれるのだ。CPUの性能にもよるが、1GHzオーバーのCPUでは解析にかかる時間は10~20分程度。解析の前処理として数個のジオメトリパラメータを写真データに設定する必要があるが、パラメータ解析自体は完全自動で行なわれる。解析が完了するとそのパラメータをもとにFaceGenがその顔を生成する。

 ブース内ではボランティアを次々に募り、実際に黒背景の前でデジカメで3枚の写真を取り、これをFaceGenに与えて、来場者の顔を次々に生成して披露するデモンストレーションを行なっていた。ボランティアはインド系、アジア系など様々な人種に及び、太った人、髭の生えた人などもいて、どの程度の類似性で顔が生成されるのが注目されたが、ほとんどのケースにおいて「大爆笑が起こるほどの」成功を見せていた。

「もしもアナタがアジア系じゃなくて黒人だったら?」
「もし、アナタがダイエットに成功したら?」
「これがアナタの女性バージョン!」
「アナタは30年後にはこうなる!」
「年齢-6才して、性別を変えて…これアナタの妹に似てる?」

などなど、プレゼンタはFaceGenの解析によって生成したボランティア来場者の顔を、パラメータエディットを行なって弄ぶのでさらなる大爆笑が起こる。上記のようなパラメータエディットの反映はほぼリアルタイムに行なわれ、非常に軽快に動作しているのが印象的だった。

 FaceGenの価格は495ドルですでに発売中だが、今回デモが行なわれたFaceGen用顔パラメータ自動解析プログラムについてはまだ開発途中バージョンとのことで製品化はされていない。しかし、Singularinversion社に、写真を送れば有償で自動解析を行なってFaceGenパラメータを提供してくれるらしい。FaceGenは同社サイトにて評価版をダウンロード可能で、評価版の制限は、生成した3D顔モデルを他の3Dモデラへエクスポートできないだけ。逆に顔を出力して遊ぶだけの用途であれば機能制限はないということだ。

 同社担当者によれば、具体的なメーカー名こそ明かしてもらえなかったが、すでに複数のゲームメーカーがFaceGenテクノロジーを使ってゲーム開発を行なっているとのこと。自動解析の仕組みがもっと簡単で高速になれば、そのうちRPGなどで、実際の自分の顔を持ったキャラクタを作ってプレイできるようになるかもしれない。

日本人ボランティアの3方向からの写真をFaceGen自動解析プログラムに与える 写真撮影の際には眼鏡ははずす必要がある。髭については正しく髭と認識して自動解析を行なってくれる
パラメータ解析中の途中画面。時間を経るごとに顔モデルが自分の顔に似てくる様は見ていても楽しい 解析完了。妙に似ているのが笑いを誘う。完全な3Dオブジェクトなので回転自由自在
眼鏡は認識できないが、髭や眉については正しくパラメータ生成されるのも優秀 日本人ボランティア30年後の顔
その黒人バージョン その白人バージョン



□GDCのホームページ
http://www.gdconf.com/
□関連情報
【3月23日】「グランツーリスモ」シリーズのプロデューサー山内一典氏
ゲームデザインの方法論について講演
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020323/gdc06.htm
【3月22日】「パラッパラッパー」の松浦雅也氏や「Rez」の水口哲也氏が
GDCカンファレンスで講演
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020322/gdc04.htm
【3月21日】Microsoft DirectX Day開催、次世代ゲームグラフィックスの姿とは?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020321/gdc02.htm
【3月20日】ゲーム開発者向けのカンファレンス「Game Developers Conference」開幕
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020320/gdc01.htm

(2002年3月23日)

[Reported by トライゼット 西川善司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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