Game Developers Conferenceレポート

「パラッパラッパー」の松浦雅也氏や「Rez」の水口哲也氏が
GDCカンファレンスで講演

会期:3月19日~3月23日 (現地時間)

開催地:San Jose McEnery Convention Centerなど

 GDCも本日で開幕から3日目となり、本日からはカンファレンスに加え展示会も開幕、参加者も一気に増えて本格的に盛り上がってきたといった印象だ。そして本日は、日本人ゲームクリエイターのカンファレンスがいくつか行なわれたので、ここではそのカンファレンスの内容を紹介していこう。


■ パラッパシリーズの松浦雅也氏、続編の開発に関する考え方について講演

「パラッパ」シリーズのプロデューサーの松浦雅也氏。ゲームの続編を制作する場合の心構えなどを語った
 「パラッパラッパー」シリーズのプロデューサとしておなじみの七音社の松浦雅也氏。今回のカンファレンスでは、自身がプロデュースした「パラッパラッパー」シリーズの最新作である「パラッパラッパー2(パラッパ2)」などを取り上げつつ、ゲームの続編を開発する場合の取り組み方について講演を行なった。

 松浦氏は冒頭で、「パラッパラッパー (パラッパ1)」を開発する前に活動を行なっていたバンド「PSY・S」でのエピソードを紹介した。PSY・Sでは、「何をやっても良い。しかし同じことは2度やらない」というポリシーで活動を行なってきたそうで、毎回新鮮で何をやるかわからない楽しさがある、という評価があった反面、一貫性がない、何をやりたいのかわからない、といった批判を受けることも多かったそうだ。とはいっても、そういった表現の多様性を受け入れてくれる土壌がなかったわけではなく、松浦氏自身にとっても、楽しく、良い経験になったそうだ。

 そして、現在のゲーム業界には、そういった柔軟性が欠けているのではないか、と指摘。例えば、続編もので先を簡単に予測できるものが多いのも、柔軟性を持って開発できていないことが影響しているのだろう。それに対し松浦氏は、続編の開発に当たって、先のことは何も考えない、という姿勢で臨むことで、その呪縛から逃れようとしたそうだ。つまり、「パラッパ1」を前提とするのではなく、新しいテーマにトライすることを主題にしたというわけだ。

 例えば、「パラッパ1」では、先生の言葉に対してほぼ同じ言葉を返すことでゲームを進めるが、「ウンジャマラミー」では先生の言葉や歌に対し、プレーヤーはギターフレーズで返すようになっている。この違いは、「パラッパ1」と「ウンジャマラミー」とが全く異なるゲームであると言ってもいいほどの違いで、かなり危険な賭と考えていたそうだ。しかし、過去のゲームを元にしながらも、どういった発展性があるのかを探求するということに非常にやりがいを感じることでもあるそうだ。

 一見気づきにくい部分に大胆な仕様変更を盛り込むことができるのは、ゲームが総合的な表現が可能だからこそできることである。ヒットしたゲームに技術的な進化を取り入れただだけの続編を作ることは、セールス的には成功するかもしれないが、クリエイティビリティとは言えない。松浦氏は会場のクリエイターたちに、続編を作る場合に、もっと柔軟な発想を取り入れることも非常に大事なことなのだ、ということを大胆な言葉で伝えていた。

 ところで、今回のセッションの後半に、「ビブリボン」の続編にあたる「モジブリボン」という、現在開発中の新作を公表した。モジブリボンとは、どんな日本語でもリアルタイムにラップ音声に変換してしまう「リアルタイム日本語ラップ合成」というシステムを採用する新感覚のゲーム。入力された日本語がゲーム内でリアルタイムにラップ調の音声に変換されるのである。
 水墨画をフィーチャーしたような画面(松浦氏はこの画面を「炭レンダー」と呼んでいた)で、コントローラを利用して入力(独自の入力システムを開発し、かなり簡単に入力できるそうだ)した文字が表示されつつ、リアルタイム合成されたラップ調の音声となって発音される。会場ではデモムービーが披露されたが、バックに流れる音楽に合わせて、入力された文章がラップ調に発音される様子は非常に面白かった。またもや業界に新風を吹き込むタイトルといってよく、今後が非常に楽しみだ。

今回のカンファレンス中に披露された、松浦氏が現在開発を行なっている「ビブリボン」の続編「モジブリボン」 入力された文字がリアルタイムにラップ調に音声合成される。水墨画のようなグラフィックが印象的(墨レンダーと呼んでいるそうだ)



■ 水口哲也氏、「Rez」の開発経緯やゲーム性を語る

「Rez」や「スペースチャンネル5」のプロデューサーの水口哲也氏。手前のウララフィギュアは来場者が勝手に置いたものだ
 異色シューティングゲームとして人気の「Rez」のプロデューサーである水口哲也氏も、今回のGDCでカンファレンスを開き、「Rez」の開発経緯やゲーム性などについて語った。

 水口氏が「Rez」の制作を始めようと思ったきっかけは、シューティングゲームを音楽の世界に持ち込んだら楽しいのではないか、というアイデアからだった。そしてこのアイデアを実現するためにいろいろ研究した結果、楽しさというのは、パワーを感じた時、強さを感じた時、そしてサウンドと同調した時に味わうことができる、という結論に達し、「Rez」のゲームシステムを構築していった、と語った。

 水口氏はさらに、「Rez」のゲームシステムに対するキーワードとして「Synesthesia」という言葉をあげた。この言葉の意味は「共感覚」というもので、ひとつの感覚に刺激が与えられると、他の感覚が影響を受け、実際にはない他の感覚に対応する刺激も与えられているように感じる現象のことを差す。例えば、絵を見ているだけなのに音が聞こえているような感覚を受けるようなことだ。「Rez」はまさにこの感覚をフィーチャーしたゲームというわけだ。水口氏は「Rez」のことを、クラブやライブに行って音楽や光などの刺激で盛り上がってくるような感覚を、シューティングゲームをプレイしながら体験できるように置き換えたものであると考えているそうだ。

 カンファレンス中に、水口氏自身が「Rez」をプレイして見せたが、水口氏自身、ゲームプレイに陶酔している雰囲気だった。また、その場にいた来場者の多くも、水口氏が言った感覚をほぼそのまま感じ取ることができたように思う。

 今回の水口氏のカンファレンスの内容自体は、過去に日本で行なわれた「Rez」のイベントなどで水口氏が語っていた内容と大きな違いはなかった。しかし、米国では水口氏自らが「Rez」について語ったのはこれが初めてだと思われるため、米国のゲームクリエイターにとっては非常に大きな刺激になったのではないだろうか。水口氏は最後に、「これからも、これまでにない刺激的な新しいゲームを、皆さんと同じように作っていきたいと思います」と語ったが、我々ユーザーもその言葉を大いに期待したいと思う。

「Rez」のキーワードである「Synesthesia」。共感覚という意味を持つ言葉だ Synesthesiaのパイオニア「Vasily Kandinsky」氏。「Rez」の開発コードネームは、Kandinsky氏の頭文字をとって「K Project」と呼ばれていた
カンファレンス中に「Rez」を自らデモプレイする水口氏。かなり長時間のプレイとなった 水口氏だけでなく、来場者も水口氏のプレイにのめり込み、会場全体が一体化したかのような感覚が味わえた

□GDCのホームページ
http://www.gdconf.com/
□関連情報
【3月20日】ゲーム開発者向けのカンファレンス「Game Developers Conference」開幕
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020320/gdc01.htm

(2002年3月22日)

[Reported by 平澤寿康]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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