★ PCゲームレビュー★

シミュレーションRPGとカードバトルが
強力タッグを組んだ良作ストラテジー

イーサーロード

  • ジャンル:ターンベースストラテジー
  • 発売元:イマジニア
  • 価格:8,800円
  • 対応OS:Windows 98/Me/XP/2000
  • 発売日:3月1日(発売中)


 「イーサーロード」は、以前イマジニアから発売された「Hero's of Might and Magic」シリーズのようなシミュレーションRPGの要素に「Magic: The Gathering」でおなじみのカードバトルシステムを融合させた欲張りなストラテジーゲームだ。プレーヤーはヒーローを成長させることでゲームを進めながら、ストラテジックに国の管理をし、他国と戦わなければならない。そしてその中核にどっしり腰をおろしているカードバトルシステム。それらがいかにして結びついているのか。じっくり紹介していこう。


■ 架空世界を舞台にしたストラテジーゲーム

美しい3Dマップをグリグリ回転できる。動画でお見せできないのが残念!!
レベルアップしたらスキルを上げることを忘れないようにしよう。何のスキルが出てくるかはランダムなので、やきもきさせられる
マップにはあちこちに資源が落ちているがつい見落としがち。このマップにはいくつあるかおわかりになるだろうか?
店は3段階にレベルアップ。レベルアップするには希少価値の高い資源が必要になる場合が多い。スペルなどが割安になるので、長期戦では積極的にレベルアップを行ないたい
 舞台となるエーテル世界では、世界の中心から流れ出す白きエーテルが世界のすべてを形作ってきた。「変化の時代」の到来とともに、その白きエーテルが堰を切ったように溢れ出し、エーテル世界に共存していた4種族それぞれシンセット、キネット、カオット、ヴィタルの平和は崩れ去った。どの種族も自らが、白きエーテルの主「白き王」となるために「時の神殿」を目指して戦いを開始した。というのがこの世界の舞台設定だ。

 世界マップ(ゲームでは領土マップ)は一見単純なクウォータービューに見えるが、地球の丸みを思わせるように、遠くになるにしたがって小さく臨場感を感じさせる作り。Ctrl+←・→で回転もできる3Dマップになっている。

 マップには種族の本拠地である城、城のエネルギーの源となるエーテルの泉、カード屋、門と呼ばれるルーン屋、鉱山などの施設、7種類の資源、アーティファクトや広域スペルなどが各地に散らばっている。どの種族を選択したにせよ、プレーヤーの第一歩は城でヒーローを召還することだ。

 ヒーローは戦闘の要であると同時にマップの探検者だ。各地で発見したアイテムを見つけることで、戦闘力を上げたり遠く離れた店を利用できたりもするのだ。ヒーローは敵を倒すと資源とともに経験値を得られ、一定の経験値に達すればレベルアップができる。

 レベルアップをするとタフネスの上昇のほか、エーテルチャンネルの上昇率が上がり、レベルごとに1つスキルを習得できる。スキルは1ヒーローで5つまで習得可能で、同じスキルでも初級、中級、上級になるにしたがって効果も大きくなる。たとえば、移動距離のアップや入手する経験値の25%増加などは絶大な効果がある。

 ヒーローの移動力は限られているため、広大なマップの場合何人かを召還し、分担して歩くとよい。といって数限りなく召還するのは、敵の数が限られているこのゲームでは愚策中の愚策。どのキャラクタを強くするか、どのアイテムを持たせるかなどを決めておかないと、ちぐはぐな編成になり、途中で行き詰まってしまう。マップの大きさにもよるが、最初は探検用と戦闘用の2人程度で大丈夫だろう。

 マップ上の鉱山や資源などは召還したヒーローを連れて行くだけで自分のものとなり、鉱山は以降毎ターン資源を採掘してくれる。資源にはマンドラゴラの根、黒蓮、鮮血のルビー、猛毒のエメラルド、星のサファイア、凍てついた炎、煙のダイヤの7種類が存在する。7種類はちょっと多いなと思うかもしれないが、主要な資源はマンドラゴラの根と黒蓮の2種類で、あとの5種類は少しずつ消費するような資源だ。

 また4種族それぞれのスペルブックの傾向が違うため、残り5種類でそれぞれ重点的に必要になってくる資源が違ってくる。これらの資源は建物のグレードアップや、広域スペルの使用、スペル屋で購入できるレア以上のスペル、ルーンの購入などなど何をするにも欠かせない。希少価値の高い資源は落ちているものを地道に集めたりする必要があるだろう。

 プレイしていて混乱しがちなのはルーンと資源の違いだ。ルーンは、レア以上のカードを戦闘で1回使うごとに1セット必要になる。資源を採集したら、ルーン屋で資源をルーンへと換えなければ戦闘で使えないことに注意しよう。資源は世界マップで、ルーンは戦闘で必要になると覚えておこう。

 世界マップ上には敵も待ち構えており、アーティファクトや広域スペルの前には必ずと言っていいほど強敵が陣取っている。日本のゲームと違って、敵が弱い順に配置されているわけではなく、城のすぐそばにどうしようもなく強い敵がいたりする。敵の上で左クリックをすれば、レベルやヒットポイントがわかるので、自分の実力と相談しつつ戦闘へと突入しよう。最初のうちは味方のレベルが敵より1、2くらい低くてもカードバトルでなんとかなるので、どんどんチャレンジしてみよう。


■ ゲームの心臓部である戦闘は白熱のカードゲーム

 「Magic the Gathering」以降、今ではすっかりおなじみとなったカードゲームだが、知らない人のために、まずこのゲームにおけるカードバトルシステムを説明していこう。繰り返すが本作のルールは「Magic the Gathering」と非常に似通ったところがあり、同ゲームのユーザーなら戦闘はマニュアルいらずで遊べること請け合いだ。

 さて、このゲームではプレーヤーがマスター(ヒーロー)を操り、15枚のカード(ゲームではスペル)を用いて戦うことになる。スペルにはいくつかの種類があり、マスターに代わり肉弾戦闘を担当するクリーチャー、長いターンにわたりじわじわと戦闘補助の魔法効果をもたらすエンチャント、短時間に大きな魔法効果をもたらすソーサリーがある。マスターは直接敵に肉体的ダメージを与えることはできず、基本的に召還したクリーチャーをぶつけることでダメージを与えなければならない。

 画面を見てもわかるように戦闘はフル3Dになっており、ランダムでときたまアップになったり、クリーチャーをなめるように旋回したりする。一見地味で単調になりがちなカード戦闘を少しでも面白くしようとする配慮が覗えるのもこのゲームの嬉しいところ。また細かなところだが、使うスペルの先行入力が利き、モーションを飛ばして連続して呪文を唱えまくるヒーローがなかなか格好いいのだ。

遊ぶたびに異なる展開が楽しめる戦闘シーン。スペルエフェクトも派手だ

クリーチャーは高価なものほど強烈な威力を発揮する
 戦闘は、召還などを行ない敵マスターに攻撃を仕掛ける攻撃フェイズと、敵の攻撃に対応する防御フェイズを交互に繰り返すことで進めていく。戦闘が始まると、あらかじめ持っている手持ちのカードの中から6枚が手札として場に出される。ヒーローがスペルを使用するにはそのスペルが必要とするエーテルを支払わなければならない。

 エーテルはプレーヤーのエネルギーのようなもので、エーテルチャネル分まで毎ターンプレーヤーが使用することができる。プレーヤーは毎ターンこのエーテルが残っている分だけスペルを使用することができるのだ。スペルは攻撃フェイズごとにひとつずつ補充され、余ったスペルは左から5つを残して強制的に破棄されることになる。

 エーテルチャネルは最初1でスタートし、ターンが進むにつれて2、3……と増加していく。増加の割合はヒーローのレベルによって異なり、レベルの高いほうが増加率が良く有利だ。エンチャント系のカードにはエーテルを増やすカードがあり、これを使うことで一時的にエーテルチャネル数を超えてエーテルを蓄積することができる。早い段階で強いクリーチャーを召還するときに重宝するが、そのエーテルを使用しない場合、エーテルチャネルを超過した分が、次のターンに持ち越されるわけではないので注意したい。

 戦闘フェイズで場に出たクリーチャーは召還酔いという行動不能状態で戦闘フィールドに登場し、次の防御フェイズから行動が可能だ(召還酔いのないクリーチャーも稀に存在)。プレーヤーのクリーチャーがマスターに攻撃を仕掛けたとき、敵マスターにもクリーチャーがいた場合には、クリーチャー同士の戦いとなり攻撃はブロックされてしまう。

 例外として、「飛行」の特性を持つ(要するに飛べる)ユニットは、歩行クリーチャーにブロックされることなく敵マスターに攻撃を仕掛けられる。クリーチャーにはパワー(攻撃力)とタフネス(体力)があり、ブロックされた場合でも、敵のタフネス以上のパワーであればそのクリーチャーを倒すことができる。

 逆に味方の攻撃を耐えた敵クリーチャーのパワーが味方のタフネス以上だった場合、反撃されて倒されてしまう。死んだクリーチャーは墓地へと送られることになるになるが、その後カードを使って復活させられる可能性がある。

 防御フェイズでは敵のクリーチャーがプレーヤーのマスター(ヒーロー)に攻撃を仕掛けてくる。味方のクリーチャーで応戦する場合、攻撃フェイズで攻撃を仕掛けたクリーチャーは休息状態となり、参加することはできない(まれに不休の特性を持つユニットもあり)。あえて戦闘には参加させず防御に徹することで生きるクリーチャーもいる。攻撃と防御のバランス戦略も思案のしどころ、プレーヤーのセンスと腕の見せ所だ。

ゲームに登場するクリーチャーのほんの一部。ちょっと見にくいかもしれないが、戦闘に参加する可能性のあるクリーチャーは立ち、休息中は座って休んでいる


■ エンチャントとソーサリーを上手に使うことが勝利へのカギ

 ここでレア以上のカードの制限について説明しておこう。性能のいいレア以上のカードは高レベルの敵と戦うのには必須だ。レア以上のカードを使用するのに必要となるルーンはスペルひとつにつき一度に5セットまでしか貯めておくことができないが、ヒーローのスキル次第ではそれも増やすことが可能だ。このゲームでは店への移動が大変なので、スキルによってできるだけ多くのルーンを貯めておけるようにすることをお勧めする。

 戦闘はどちらかのマスターのタフネスが0になれば終了だ。戦闘の基本的な流れはこういった単純なものだが、これを複雑かつ味わい深くしている要因ともなっているのが、エンチャントとソーサラー、そして前にもちょっと出てきたクリーチャーの「特性」というものだ。これらには、実に様々なものがあるので、ちょっと並べてみよう。

エンチャント
・「ディフェンス」  味方クリーチャーのタフネスを3上げるかわりに攻撃はできなくなる
・「ライオット」  対象のクリーチャーは「再生」を発動できなくなる
・「ティミディティ」  クリーチャーに指示を出すときにエーテルを1消費する
・「ツイステド・エンチャント」  パワーとタフネスを2増やすと同時にターン終了時に双方が1づつ減っていく
・「ディセンパワー」  対象のパワーを6減少

ソーサラー
・「ファイアウェイブ」  すべての敵クリーチャーに1ダメージ
・「アースクウェイク」  「飛行」を持たない全てのクリーチャーにダメージ
・「ブロークン・リアリティ」  対象のヒーローのエーテル分だけヒーローにダメージを与える
・「ボディ・エクスチェンジ」  対象のクリーチャーを墓地からフィールドに戻す

特性
・「飛行」  地上クリーチャーにブロックされない
・「再生」  エーテルが残っている限り、倒されても復活する
・「蹂躙」  攻撃がブロックされても攻撃力が残っていれば敵マスターを追加攻撃できる
・「生贄」  クリーチャーそのものを生贄として様々な効果を発揮
・「先制」  防御フェイズに応戦する場合でも先制して攻撃できる
・「チームアタッカー」  同種のユニットが攻撃しているときのみ攻撃が可能
・「バーサク」  必ず攻撃に参加することになる

エンチャントやソーサラーの派手な画面がゲームを大きく盛り上げる
 この上さらに、レア以上のクリーチャーは必ず独自の技能を持っている。加えてヒーローの特殊能力やスキルなども絡んできて、ゲームの多様性は果てしない。これらの要素を考えた上で手持ちの15枚のカードの中から何枚をクリーチャーに当てるか、その種類はどうするのか、エンチャントはパワー優先かタフネス優先か、最強の組み合わせを考えていくのがこのゲームの一番難しいところでもあり、面白いところなのだ。「Magic: The Gathering」同様、またカードが場に出てくる順番で戦闘がまったく違ったものになるので、戦闘はいつも緊張の連続になるだろう。

 ここまでわかったところでいよいよプレーヤーが選択して戦うことになる4種族について簡単に説明しよう。

 体のほとんどを機械に取り替えているというシンセットの持つエーテルは黒。彼らは他の種族とは少し異なり、高いパワーがありながら召還したターンに必ず死ぬようなユニットや、死んだクリーチャーを墓地から再生したり、パワーやタフネスを減少させるエンチャントを持っている。そのほか強制的に攻撃に参加する「バーサク」の特性をもつクリーチャーが多く、一方でまた防御専用のクリーチャーも多いため、攻防での融通が難しいだろう。他の種族のプレイに慣れた人には戸惑うことが多い種族だ。

 水、風、吹雪といった魔法が得意なキネットには空を飛ぶクリーチャーが多い。知的な彼らのエーテルは青。世界最強の生物でもあるドラゴンを召還できる種族なのだ。プレイでは知性を重視する種族であるのがわかるようにソーサラーやエンチャント重視。マスターの手札に影響を及ぼすものもあり使い方に一考が必要だ。クリーチャーを召還するときのコストが比較的高く、初期は嵐の前の静けさでターンを経るごとにだんだんと派手になっていく傾向がある。

 カオットが好むのは混沌。コボルドやオークといった肉弾系のクリーチャーが彼らを支援する。炎や溶岩などを象徴する彼らのエーテルは赤。特に種族特性の「チームアタッカー」を使えるクリーチャーが多く、敵として登場したときは一斉攻撃を仕掛けてくるのがやっかいだが、味方になった時には相当に心強い。また範囲攻撃をするソーサラーの種類が豊富で、敵クリーチャーを一撃で一掃できる爽快感がある。

 自然と調和している緑のエーテルの持ち主ヴィタルには、ヘビやダニといったクリーチャーが味方する。その能力には何ターンにもわたって継続的にダメージを与える「毒」など厄介なものもある。クリーチャーや「再生」の特性が発動する際のエーテルコストも安めで、短期決戦にも持久戦にも持ち込める使い安さがある。そのかわりエンチャントやソーサラーがイマイチ弱めという印象がある。

それぞれ特徴的な姿のヒーロー達。生かすも殺すもプレーヤーの腕次第だ


■ 最終的な勝利は城の使い方次第

エーテルの泉は自分の種族の色と同じでなければ使えないが、取られれば敵の力を増大させるのはわかりきったこと。できれば奪取しておこう
城を直接攻撃するときには竜巻が駆け抜ける。視界のない部分で竜巻が起こったら城への攻撃が行われているのだ
 城を倒すにはヒーローによる直接攻撃もあるが、コンピュータ戦以外ではあまり通用しないと考えていいだろう。その場合にはエーテル戦闘と呼ばれる遠距離からの広域スペルがある。エーテル戦闘は地上戦闘とは違うエーテル空間での戦闘のため、実際に城のそばへ行かなくても実行できる。戦闘は地上戦と同じだが、違う点は戦闘が終わってもヒーローが死なないこと、敗れたほうのユニットの城がヒーローのレベルと同じ値のダメージを受けることだ。終盤には地上からの攻撃と絡めつつ波状攻撃で一気に敵を打ち破るべし。

 本ゲームでは左クリックをすることで簡単にチュートリアルが参照できるなど、プレーヤーへの配慮が行き届いているので、ゲーム進行で詰まることがあまりないのが気持ちいい。シングルミッション以外にもキャンペーンゲームが用意されており、本筋のストーリーを追って「白き王」へ至るミッションの数々が待ち構えている。キャンペーンでありながら、ミッションごとにヒーローやデッキの持ち越しができないのはちょっと残念だが、レベルが低い段階から順を追って、色々なカードの使い方やカードを体験できる。またマルチプレイでは他国との同盟も可能だ。エーテル戦、地上戦の休止や視界の共有、店の共有など様々なレベルで条件を細かく決めることができる。

 マップを探検しヒーローを育てていくRPG的側面、国を管理するストラテジーの側面、それに戦闘でのカードバトルの3つの側面があるこのゲーム。シングルプレイでは圧倒的にカードバトルの比重が大きいわけだが、通信対戦のプレイでは、ストラテジー部分やRPG部分にも比重が傾いてくることになるからだろう。決してほかの部分にも手を抜かず丁寧に作っているのが印象的な好ゲームだ。

(c) 2001, 2002 Nival Interactive. All rights reserved. Etherlords is a trademark of Nival Interactive. Published by Fishtank Interactive. Fishtank is a trademark of Ravensburger Interactive Media GmbH.


□イマジニアのホームページ
http://www.imagineer.co.jp/pc/
□「イーサーロード」の公式ページ
http://www.imagineer.co.jp/pc/products/etherlords/index.html
□関連情報
【1月16日】イマジニア、「イーサーロード 日本語版」を3月1日に発売 日本語版の画面や公式サイトも公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020116/ether.htm
【2月2日】「イーサーロード 日本語版」体験版
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020202/demo0202.htm
【2月22日】「イーサーロード 日本語版」店頭デモムービー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020222/demo0222.htm

(2002年3月4日)

[Reported by 嶋村 智行]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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