背徳的な合成生物を産みだし |
発売時期:2002年夏(北米地域)
昨年のGameStock、そしてE3で旧名「Sigma」として公開されていた作品が、「Impossible Creatures」と名称を改め、今回のInternational Games Festivalに出展されている。ゲームのジャンルはリアルタイムシミュレーションに属し、戦略部分におけるゲームシステムは、そのグラフィックからは意外なほどスタンダードな内容だ。開発はかなり進んでいるようで、北米では夏までに出荷が行なわれる模様である。
E3ではわずかなスペースでひっそりと展示されていたことと、今ひとつゲームとしての完成形が見えにくかったことで、頭と手足がバラバラになってマジックテープで自由に付け替えられるノベルティのぬいぐるみを配っていた所という印象すらあった。それでも節足動物からほ乳類まで、強引なまでに身体のパーツを組み合わせた新生物のグラフィックには、何か怪しげなインパクトを感じさせられずにはいられなかった。
つい先日、理化学研究所による人工的な塩基二種類(S、Y)の合成と、本来の四種類の塩基とあわせて、自然には存在しないタンパク質(遺伝情報)を作り出す研究(地球上の生き物は、A、T、C、Gという四種類の塩基のみを配列して遺伝情報であるDNAが作られている)がニュースとして報じられていた。「Impossible Creatures」もこうした遺伝子操作による生物がゲームの背景となっているが、ゲーム中の生物の合成はもう少し単純。どちらかと言えば映画「フライ」のように、何と何が混ざっているのか見た目にわかりやすい新生物になっている。
ゲームの導入は、遺伝子操作により二種類の生物の合成を行なっていた研究室で起こる裏切りから始まる。悪用のための研究が続く孤島に乗り込んだ“遺志”を継ぐ青年はその実態を目の当たりにして……という、ストーリーがオープニングでドラマチックに演出される。とはいえゲームでは、共にこうした合成生物を持って戦略を講じるわけで、毒をもって毒を制すという強引な発想ではあるのだが……。
【スクリーンショット】 | |
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ゲームも終盤を迎えての戦闘画面。フル3D表示なので、画面の回転やズームアップなどで、特徴的な合成生物の姿もよく見える | 合成生物による戦闘シーン。カメレオンの特殊能力である保護色と、シャチが持つ超音波と思われるものが表現されている |
鮫とアリの合成。合成されるユニットのスペックや特殊能力などが表示される。中央画面の両端にあるボタンで、それぞれの生物のどのパーツを選択するか決める |
合成のコツは、生物的特徴のどこを生かすかということになる。例えばカメレオンは保護色で身体の色を消せる。これを鳥類と合成することで、ステルス効果のある偵察ユニットを作りだすことができるだろう。また、毒をもったサソリに、足の速い豹を組み合わせて、忍者のようにチクリとやって一撃離脱というユニットも作り出せる。このあたりは、プレーヤーの発想次第と言うことになる。こうして役立ちそうなユニットを試行錯誤してみること自体がひとつのゲームだ。
一回の対戦で利用できるユニットの種類は9種類。あらかじめ沢山の合成生物を準備しておき、グループとして保存しておくこともできるし、新たな編成を組むこともできる。手っ取り早くゲームを始めたい場合は、ストーリーに登場するキャラクタそれぞれがデフォルトの構成を持っているので、好きなキャラクタを選択するだけでもいい。ちなみに、生物や特殊な能力にはレベルが設定されており、初期段階ではそれほど強力なユニットを生産することはできない。これはマルチプレーヤーの手順で、シングルプレーヤーのキャンペーンシナリオでは、与えられた孤島にいる生物を採取しながら、その生物を使って必要なユニットを合成することになる。
ゲームスタイルは、リアルタイムシミュレーションとしてはかなりスタンダードな部類に属する。まず標準で用意されている人型ユニットを操作して資源となる石炭の採掘からはじめなければならない。そうして蓄えた資源で、合成生物を生み出すポッドを配置し、自軍の守りや攻撃手段を整えていく仕組みだ。ゲーム画面のインターフェイスも見やすく、「STAR CRAFT」や「Age of Empires」などで、リアルタイムシミュレーションを経験したことのあるユーザーなら、ユニットの操作やゲームの進行などでとまどうことはほとんどないだろう。
ひとつの対戦に要する時間もおおむね30分を超えるぐらいと、意外に短期間で決着が付くようになっているので、ユニットの構成を微妙に変えながら試行錯誤するような遊び方がやりやすくなっている。なにより、見た目や特徴で合成したはずの新生物が実戦では全く使い物にならなかったり、逆に予想外の効果を発揮したりと、自軍にしても相手方にしても、まず最初にそのユニットの能力を見抜く必要があるのは、他のリアルタイムシミュレーションでは経験できない点だ。ネットワーク対戦なら、かなりの経験を経たユーザーですら初見のユニットに出会う可能性も少なくないだろう。
残念ながら、ローカライズや国内発売は現時点で未定となっている。
【スクリーンショット】 | ||
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空飛ぶゴリラに、空飛ぶ鮫。合成した生物の羽が異なるので、飛行速度などに違いが生まれるはず。合成生物は基本的に攻撃ユニットなので、目つきはどれも悪い | ||
進軍するユニット。ユニットはもちろん特殊能力などもフル3D表示される | ||
勝負の決着は、司令部にあたる着陸したヘリコプターを破壊すること |
■ZOO Tycoon:Dinosour Dig
開発スタジオ:Blue Fang Games
発売時期:2002年5月(北米)
米国で大ヒットした動物園経営シミュレーション「ZOO Tycoon」のアドオンソフト。名称のとおり、恐竜をテーマにしたテーマパーク経営が今回の目的だ。今度は相手が相手だけにオリにも高圧電流が流れている。
T-Rexやステゴザウルス、翼竜など20種の恐竜を園内に配置。経営に奔走する。うっかり入れる檻を間違えては脱走、園内にパニックを引き起こしたり(専門の警備隊がヘリで駆けつけ、麻酔や専用のケージで捕獲して解決する)、同一の檻に入った草食恐竜を肉食恐竜が食べてしまったりと、見舞われる困難はさまざまだ。
こちらも、ローカライズや国内発売は現時点で未定となっている。
【スクリーンショット】 | ||
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(2002年3月1日)
[Reported by 矢作 晃 (akira@yahagi.net)]
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