★ PCゲームレビュー★
「大戦略」といえば日本のシミュレーションゲームの中では「信長の野望」と共に双璧をなしてきたビッグタイトルだ。緻密かつ膨大なデータ群と、大軍を率いる総司令官の気分が味わえるダイナミックなゲームデザインで、一時代を築き上げた。その「大戦略」を手がけた石川氏が新たに開発したストラテジーゲームが「凱歌の号砲・エアランドフォース(以下凱歌)」だ。本稿では一足先にその内容を紹介していきたい。 ■ 敗戦後分割統治された異世界の日本が舞台
スタートは47都道府県のどこからでもOK。マップは地域マップと全国マップに分かれており、スタートした県の所属地域(関東地域ならば東京、埼玉、千葉、神奈川、栃木、群馬、茨城)のマップをすべてクリアすることで全国マップへと進むことが可能だ。全国マップになると、今度は県ごとではなく北陸や近畿など地域ごとのマップに戦場が拡大する。縦横の長さが1.5倍となるため広さは倍以上。それらをすべてクリアすれば最終目標である全国統一となるのだ。 ゲームは戦車、航空機といった、現在各国で活躍する主要な現代兵器を組み合わせた軍団を率いて、敵勢力と戦いマップをクリアしていくキャンペーン型となっている。つまり、あっちに防御の兵を置いて、こっちに軍隊を移動させてといったグローバルな戦略部分や、内政的な要素をバッサリと切り落としている。そのため、各マップごとの兵器運用や戦術に思いっきり集中できるのだ。このあたりには大いに「大戦略」の匂いを感じ取れるだろう。 次に「凱歌」の特徴として大きいのは日本を舞台としたところだろう。マップは味気ない六角ヘックスとはおさらばし、航空写真のような雰囲気の美しい一枚絵となった。国内に点在するテーマパークやドーム球場など日本の各地域を特徴づける名所がマップには丹念に描き込まれている。おなじみの地名の中でF-14が飛び交い、T-80やM1の戦車軍団が戦う。思わず自分の住んでいるあたりに部隊を駐屯させたくなってしまう。
個人的な要望を言えば、マップ構成上割愛されている地域が多いのが残念。進撃路として当然使われるであろう高速道路の名前や国道の番号なども書き込むなどすれば、臨場感ももっとアップしたはず。せっかく舞台に日本を使っているのだから、シンプルなゲームシステムを生かすためにも、もっともっと深く演出面を考えて欲しかったところだ。
■ 特徴ある軍団システム
その中でも軍備モードで行なう軍団編成は、「凱歌」のキーといえる要素だ。プレーヤーは常に所有している兵器の中から、40部隊からなる1セットの軍団を編成して戦場モードで敵と戦うことになっている。初期の「大戦略」のように、金がある限り部隊を無限に登場させられるのではなく、編成された軍団の40部隊の中で戦い抜いていくことになるのだ。このため、占領部隊の数を極限まで減らして、戦闘車両を多くしたりすると、占領部隊をすべて失ったときには敵の本拠を制圧することができなくなってしまうのだ。ここに軍団編成が重要になる理由がある。 またもう一つは「凱歌」に登場するマップ構成にある。山脈が大部分を占めたりするようなたひとくせあるマップは一筋縄ではいかない。車両は立ち往生し、空港の少なさから航空機も思うように出せない。進軍する前にマップの特徴をよく読んで、山岳仕様、海戦仕様、または兵器のレベルを上げる仕様などなど、自分の目的にあった軍団を編成しておけば、出撃させるベストな兵器編成をロードして簡単に戦場へと赴けるというわけだ。 戦ったり、都市を占領した部隊は経験値が上昇し、経験値が一定以上になるとレベルが上がり、部隊の防御、攻撃能力が向上する。ユニットの持ち越しが可能なため、ゲーム当初から経験を積みまくった百戦錬磨の旧型兵器と、買ったばかりの新型兵器では戦闘力に雲泥の差が発生する。しかし、基本性能が格段に高いせっかくの新兵器を使用しない手はない。戦場モードの後半、勝負の趨勢が見える直前に積極的に投入して、経験を積ませるなどの工夫が必要だ。また1マップをクリアした後に、やられてしまった兵器を修理するか、あえて修理を止めて新しい兵器へ移行をするかも悩みどころとなる。
■ 歯ごたえのある本格シミュレーション
まず最初に前線を確保するために、歩兵戦闘車2部隊と歩兵ヘリ1部隊を投入してみる。軍団の中からマップへと兵器投入をするには補給物資が必要となる。補給物資は占領している自国の都市の耐久度分が毎ターン回収され、燃料の補給、機数の補充にも必要だ。高価な兵器は最初に登場させるにも多くの物資が必要となる。前線確保のため速攻をする序盤には補給物資も少ないので、強力な部隊だけで軍団を編成するのは考え物だ。なお、補給物資は次のマップへの持ち越しが不可能なので、時間制限ぎりぎりまで貯めても意味はないのであしからず。 戦い方は基本的に大戦略シリーズと同じだ。まず歩兵戦闘車や歩兵ヘリで都市を占領していく。次のターン用には護衛用の戦車を配置してやる。攻撃の際には有利なものだけをぶつけていこう。主力戦車には攻撃ヘリ、装甲車には主力戦車、対空兵器や歩兵戦闘車には装甲車をさしむけるのが基本だ。森や山、丘陵といった地形を利用して防御力を高めるのも忘れてはならない。「凱歌」には時間の概念も導入されており、命中率などにも影響してくるようになっている。また兵器には特殊能力を持つものがある。「戦車への攻撃力50%増」「夜にも攻撃率が下がらない」など、外交レベルを上げて導入した最新兵器にはこうしたものが多いので是非活用したい。 壊滅した部隊はその戦場モードをクリア後、軍備モードで修理するまで使うことができないため、部隊がやられればやられるほど戦況は不利になっていく。そのため機数の減った部隊はこまめに後方の都市へ下げて補充をしよう。戦車や戦闘ヘリなど最前線でまともに敵とぶつかり合うユニットは、ある程度の部隊数を要求される。戦いながら他の兵器とのバランスを見て適度な部隊数を探り、次の軍団編成へと生かそう。全滅させられた部隊が再登場できないのは敵も同じだ。敵の対空ミサイル車両を徹底的に潰せば、後半に戦闘ヘリが思う存分活躍できるというもの。うまく捌いて敵を減らせば途中から一気に攻勢に転じることができよう。 戦場モードには時間制限があり、終盤はまさに時間との勝負。敵の対空兵器をすべて撃破した後には、戦闘ヘリや攻撃機を惜しみなく出してラッシュをかけよう。戦場モードでただ一つ気になるのは、どこから攻め込んでもマップ構成がまったく変わらないところ。千葉から茨城に攻め込んでも(つまり部隊を北進させる)、茨城のマップのスタートは水戸から土浦(部隊は南進する)へと攻め寄せることになっている。 地域マップでは戦略のポイントは1つか2つだ。最初にマップをきちんと読んで、各部隊が十分に連携できる位置取りを考えなければならない。ここで、2つ以上の国の兵器を運用している場合には注意しなければならない点がある。それは兵器補充をする場合、同じ国の部隊が占領したところでしかできないことだ。つまりロシア製の歩兵戦闘車が占領した都市ではロシア製の武器しか兵器補充ができないので注意。 さすがに日本のシミュレーションゲームを引っ張ってきた石川淳一氏がプロデュースしているだけあって、核の部分となる敵のアルゴリズムや戦略部分はよくできている。地形や補給線などが巧みに操作されたマップは、考え方を根本的に変えないとクリアすらおぼつかない場合もある。柔軟に戦略を練っていかないとマップの罠にむざむざと入り込んでしまうことになるだろう。外交レベルを上げていけば、強力無比な戦闘機や攻撃機といった兵器も導入できる。山岳マップでは前半の部隊投入をセーブして補給物資を貯め、一気に戦闘機を投入する奇襲戦法は絶大な効果を上げること間違いなしだ。 ■ ついに成る!! フル3Dの戦闘シーン もう一つ「凱歌」での大きな魅力となっているのが完全に3D化されている戦闘シーンだ。兵種や地形によってもそれぞれ違ったものが用意されている3Dムービーは、2Dでプチプチとやりあっていた昔とは比較にならない迫力だ。地域マップを占領した後にはいよいよ全国マップが控えている。マップは縦横1.5倍。最大4カ国が登場し、3カ国の挟み撃ちあり、同盟勢力ありとバリエーション豊かなマップが待ち受けている。またボーナスマップもあるようなのでじっくり探してみるのもいいだろう。
「凱歌」のようなシミュレーションの基本をしっかり押さえたシンプルなゲーム作りは、こうしたゲームを初めてプレイする初心者には最適といえるだろう。強いて難点を上げるとすれば、システム部分の鮮度のなさ、焼き直し感が気になる。前にも書いたがシンプルなシステムを固持したいのであれば、核となっている敵のアルゴリズムと同じくらいの労力をゲームの演出にも注ぎ込む覚悟が必要だと思うのだがいかがだろうか。
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□コーエーのホームページ (2002年2月18日)
[Reported by 嶋村智行] |
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