Xboxにおけるオンラインサービスの現状をキーパーソンに直撃 |
Xbox事業部オンラインサービス部統括部長の小出雅弘氏 |
東京ゲームショウ史上最大規模のブースに150台もの試遊台が用意されたXbox。数々のゲームタイトルを実際に体験したユーザーも多いことと思われるが、Xboxには今回のゲームショウではほとんど明らかにされなかったオンラインゲームのコンソールとしての側面もある。そこで、Xboxのオンラインサービスの現状を、Xbox事業部オンラインサービス部統括部長の小出雅弘氏にうかがった。
■ オンラインサービスはXbox発売から半年をメドにスタート
--- いよいよ米国では11月15日にXboxが発売されます。まず、米国におけるオンラインゲームの展開について教えてください。
ご存じのように、Xboxは事実上初めてネットワーク接続機能とハードディスクを標準搭載するゲームコンソールです。オンラインゲームへ注力するという姿勢は変わりませんが、まず最初に行なわれるのはXboxハードウェアのローンチです。ユーザーの皆さんに実際にXboxを手にしていただいてゲームを楽しんでもらうのが一番先で、その後オンラインへの展開を進めていきます。言うなれば、ハードウェアのローンチとオンラインのローンチ、Xboxにはふたつの重要なローンチのタイミングがあるというわけです。今のところオンラインのローンチはXbox発売から半年後をメドに作業を進めています。
--- それでは、やはり日本でも二度のローンチがあるということでしょうか?
そのとおりです。日本では2002年2月22日にXboxを発売します。その後、米国と同様のスパンでオンライン展開が始まるでしょう。やはり半年後がメドになると思います。ティーザー的 (少しづつ公開していくマーケティング手法) にオンラインタイトルを紹介しながら進めていくようになるでしょう。また、同時期には米国でのサービス展開が先例として見えてくるので、それが参考になるのではないでしょうか。
ローンチの日程について、何が一番その時期を左右するかはコンテンツということになります。メジャーなオンラインタイトルが十分に揃った時点で、ローンチ日程を決めることになるでしょう。
--- 発売時のタイトルにも『HALO』のように、複数ユーザーでの対戦や共同プレイを意識したものが含まれています。こうしたタイトルは、オンラインのローンチと同時に何らかの方法でオンライン対応されるということでしょうか?
「HALO」については、E3でも2台のXboxを接続して対戦のデモを行なっていましたので、そうした基本的なネットワーク機能は備えています。しかし、実際のタイトルがどういった方法で実際のオンラインサービスに対応していくかは決まっていません。そのまま利用できるものもあったり、あるいは何らかのアドオンを用意することもあるでしょう。それは、パブリッシャーとタイトル次第ということになります。
ローカル接続とは異なり、オンラインのマルチプレイではセキュリティが最も大きな課題となります。例えばアイテムが盗まれるなどといった事態が発生すれば、ゲームの面白さが根幹から崩れてしまう。そうした意味で十分なフィールドテストが必要になってくると考えています。
■ ボイスコミュニケーションが、日米間の格差を一気に埋めるツールとなる
ボイスコミュニケータ(仮称)を前面に押し出したネットワーク展開はさすがに新しい |
実は、日本のパブリッシャーの皆様から、Xbox向けのキーボードが欲しいというお話をうかがっています。いまのところキーボードの発売予定はないのですが、日本という市場の特性も考慮して、本社の方にはリクエストのひとつとして伝えております。
--- キーボード文化を考えれば、むしろ米国でリクエストが高まりそうなのですが?
文化的にはそうかも知れません。しかし現在は、PCを中心に「ボイス」へのニーズが生まれつつあります。Xboxでは、オンラインでのコミニュケーションツールとして「ボイス」がキラーになると考えています。今回、東京ゲームショウのXboxブースで周辺機器として公開した「Xboxボイスコミュニケータ」というデバイスを使って、ボイスチャットを積極的に進めていこうという戦略が存在します。
これはひとつの例ですが、従来のキーボードによる文字のコミュニケーションからボイスコミュニケーションへと、日本ではステップを大きく飛び越していける。確かにユーザー層の違いを認識することは必要です。しかし、我々の強みはグローバルサービスができること。Xboxでその差を一気に埋めていくことができるのではないでしょうか。むしろ、一番大きな違いはインフラということになります。
--- そのインフラについて、春にはNTTコミュケーションズとの提携発表がありました。サービス内容や実務について、どのような進展があるのでしょうか?
まず、ブロードバンドにはふたつの意味があります。いわゆる広帯域、そして常時接続のふたつです。日本の通信事情からいけば、繋ぎっぱなしでも料金が変わらないサービスは魅力的です。こうした点を考えれば、今回は双方を満たすADSLをメインで進めていくつもりです。ただし、これは現状からの予測に過ぎません。なにか大きな動きや必要性があれば、柔軟に対処していくことになるでしょう。
いま、米国のほうでプラットホームサービスの仕様が固まりつつあります。それを受けて、ネットワークの設計を進めていく段階になっています。米国ではどうしても地域の差が大きく、CATVが主流なところ、ADSLの展開が進んでいるところと様々です。こうした環境下で最適化を進めることになります。しかし、NTTコミュニケーションズは日本全国での展開が可能なため、そういった点では日本は進めやすいと言えるでしょう。
NTTコミュニケーションズはバックボーンを受け持ちます。そして同社資本であるアッカネットワークスをはじめ、NTT東日本とNTT西日本のフレッツADSLという順で検証を進めていくことになるでしょう。(オンラインサービスを開始して)一年後には、これらをはじめとするADSLサービスで、ニーズの7~8割はカバーできていると考えます。確かにそこから先は各地域のCATVサービスも視野に入れないといけない。しかし、米国では最初からCATVを無視するわけにはいけないので、すでにノウハウは出来上がっているということです。
すでに何度か展示されてきたブロードバンドアダプタ |
先に述べたとおり、私達はブロードバンドに広帯域と常時接続のふたつの意味を考えています。確かにフレッツISDNを利用すれば、常時接続は満たすことができます。もちろんゲームに依存するわけですが、どうしてもパフォーマンスの差が発生しますし、遅延のコントロールなど解決しなければいけない要素がたくさんあります。ナローバンドのサポートも検討すべき課題ではありますが、現在具体的な対応は決まっていません。むしろNTTコミュニケーションズなどと共に、ゲーマーというエンドユーザーに対して、いかにブロードバンドの魅力を訴えていくかが重要だと思います。
--- 最近はパソコンなどを買えば、必ずプロバイダーへの入会案内やオンラインサインアップツールが入っていますが、Xboxにもそういったものが封入されるのでしょうか?
具体的にそういったものがパッケージングされるかどうかは未定です。しかし、Xboxの場合、ネットワークに接続するかどうかは、パソコンとは違ってゲームタイトルそのものが決め手となります。パソコンなら本体購入時に同時入会ということも考えられますが、Xboxではとりあえずオンラインサービスありきということは考えにくい。そうした意味では、ネットワークへの入会キャンペーンなどは、各ゲームタイトルの発売に合わせてパブリッシャーと一緒に進めていくことを考えています。
--- いわゆるオンラインサービスのローンチを行なったとき、アクティブオンラインユーザーのシェアは、どれぐらいと予測されていますか? また最終的に、どれだけのユーザーが加入をすれば、Xboxのオンラインサービスは成功といえるのでしょう?
現在はビジネスプランを練っている段階です。先に述べたとおり、提供されるゲームタイトルに大きく依存することになりますので、ローンチ時にどれだけという数字はまだわかりません。最終的には、過半数のユーザーがオンラインの状態でいていただくのが理想的といえるでしょう。
また、ハードウェアとオンラインは性格が違います。言うなれば、オンラインゲームは生き物。例えば同じオンラインゲームタイトルでも、イベントの実施などで非アクティブユーザーがアクティブユーザーへと変わったりする。瞬間最大で、これだけの人数に達すればというのではなく、どれだけ魅力的なコンテンツを提供し続けることができるかどうかがカギになります。ある意味、新規加入者が辞めていく人より多ければ成功といえるのではないでしょうか。
□Xboxのホームページ
http://xbox.jp/
□関連情報
【10月12日】マイクロソフト Xboxブースレポート
150台余の試遊機に加えプライベートスペースでの5.1chサウンド体験も
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011012/xbox_1.htm
【10月12日】Xboxソフト編 Xboxブースやサードパーティメーカーのブースに多数のプレイ可能ソフトが展示される
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011012/xbox_2.htm
(2001年10月17日)
[Reported by 矢作 晃(akira@yahagi.net)]
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