★ GBAゲームレビュー ★

気軽に遊べて中毒性バツグン!
レースゲームの“本命”はやっぱりコレか?

マリオカートアドバンス

  • ジャンル:アクション(レース)
  • 発売元:任天堂株式会社
  • プラットフォーム:ゲームボーイアドバンス
  • 価格:4,800円
  • プレイ人数:1~4人
  • 発売日:7月21日(発売中)

【ゲームの内容】

 マリオ、ルイージ、ピーチ、クッパなどおなじみの任天堂キャラクタがカートに乗って激しいバトルを繰り広げるアクションレースゲーム。シンプルな操作感とアイテムを使って相手をジャマする駆け引きの面白さで知られる「マリオカート」シリーズは、'92年にSFC版、'96年にニンテンドウ64版が発売されており、いずれも“単体のプラットフォームで最も売れたソフト”の座を射止めたことのある名作中の名作。シリーズ初の携帯ゲーム機用ソフトとなる今作では、通信ケーブルを使っての4人同時対戦(ソフト1本で対戦が可能な1カートリッジ対戦も対応)、モバイルアダプタを使って全国のプレーヤーとのタイムアタックが争えるなど、GBA版ならではの要素が新たに盛り込まれた一作となっている。


 任天堂が擁する最強ブランドのひとつ、対戦レースゲームの定番として知られる「マリオカート」のゲームボーイアドバンス版がついに発売された。SFC版、N64版を死ぬほど遊んだ人なら「とりあえず定番モノだし、押さえておこうかな……」という軽い気持ちの人も結構いると思うのだが、実はこのゲーム、やり込むうちに「こ、これはGBA版スゴイんじゃないの?!」「ああっこんなことまでできちゃうんだ!」という嬉しい“お楽しみ要素”がかなり盛り込まれていることがどんどんわかってきた。いやホント、面白いんですよ「マリオカートアドバンス」ってば!!


■ 「マリオカート」ってどんなゲーム? という方に~基本的なおさらい~

 ゲーム世代で「マリオカート」を遊んだことがない、という人は少ないと思うが、一言でいえば「誰にでも遊べる間口の広いアクションゲーム」だと思ってもらっていいだろう。「マリオカートアドバンス(以下GBA版)」でも使うボタンはAボタン(アクセル)、Bボタン(ブレーキ)、左右の十字ボタン(ハンドル)、Rボタン(ミニジャンプ)、Lボタン(アイテムの使用)だけと、従来のマリオカートシリーズと同じ操作方法となっている。もちろん、上手くなればドリフト走行やミニターボ、バナナ投げといったさまざまなテクニックが使えるのも従来の「マリオカート」と同じだ。

 1人プレイで用意されているゲームモードは「CPUカートを含む全8台で4つのコースをドライバーズポイントをかけて競い合う“マリオGP”」がまず挙げられる。これは排気量別に50、100、150ccの3クラスに分かれているほか、5つのカップレースに各4コース=計20コースが用意されているこのゲームのメインとなるモード。

 次に、各コースのラップタイムを競う“タイムトライアル”、そしてプレーヤーの希望した1コースを計8台でレースを競う“フリーラン”の計3つ。初心者であればまずはフリーランでコースを覚え、マリオGPで総合優勝を狙うという流れになるだろう。ちなみにマリオGPモードでは、レース終了時にドライバーのプレイ内容が自動採点され、高い評価を取るといろいろな“お楽しみ”が用意されているのも面白い。まずはカップレースに優勝、次にコインをできるだけ獲得してみる、さらには高評価につながるレース展開を考える、排気量クラスをアップさせて戦う……といった細かい目標が用意されているため、初心者から上級者までチャレンジしがいのあるものになっている。

 対して2~4人で遊べるマルチプレイで用意されているゲームモードは“マリオGP”に加え、プレーヤーカートのみの最大4人でレースを行なう“VSモード”、お互いのカートに取りつけられた風船を割りあう“バトルモード”といった専用のゲームモードが遊べるようになる。1カートリッジプレイでもVSモードのマルチプレイ対戦はできるようになっているものの、選べるモードが限定されているため、ここはやはり皆がカートリッジを持ちあってガチンコ対決にのぞむ……という遊び方のほうを断然オススメしておきたい。

GBA版で登場するマシン(キャラクタ)は軽量級のピーチ、ヨッシー、キノピオ、中量級のマリオ、ルイージ、重量級はドンキーコング、ワリオ、クッパの8台。各グループごとに「加速は優れているが最高速は遅い」といった性格付けがなされ、さらに各グループの中でも性能の違いがある。SFC版ほどのキャラ差はなく、走り方の好みやコースの相性でお気に入りを選ぶといい。と言っても、最速はやはりクッパのような気がするが……。
GBA版のゲームデザインは基本的にSFC版がベースだが、グラフィックやゲームシステムでさまざまな改良が行なわれている。コース上に雨が振ったりミニターボ成功時に青い火花が出るなどの“わかりやすい演出”が加わり、アイテムの種類も増えた。本気で遊ぶなら、BGMはヘッドホンで楽しんでほしい


■ プレイ感覚はSFC版がベース、“相手をジャマする楽しさ”を堪能しよう

 さて、従来の「マリオカート」を知っているプレーヤーであれば、SFC版や64版との違いなども気になるところだろう。まず、最初に遊んだGBA版の第一印象は、「レース周回数が3LAPになったことで気軽に遊べる“お手軽感”がかなりアップしている」、ということだ。各コースもコンパクトにまとめられているため、1カップレース走ったとしても5分弱でゲームを終えることができる。このため、「あれ、もう最終ラップなの?」といった物足りなさを最初感じてしまったのだが、実際に10時間近く遊び続けてコース取りに習熟したあたりからGBAを持ち歩いて「ちょっと一戦やるか」、といった時にこのコンパクトさがすごく心地良くなってくるから不思議なものだ。

 また「マリオカート」と言えば各コースに点在するアイテムボックスを通過することでもらえる“バナナ”や“ミドリコウラ”といった敵カートをジャマするアイテムを使って「相手をハメる」面白みがある。特に今回のマルチプレイ対戦は画面分割ではなく1人1人のパーソナルモニター(自分だけの画面)対戦になるため、相手の状況がつかめず、それが逆に相手をパニックに陥れる楽しみや駆け引きにつながっている。初心者同士でワイワイ騒いで遊ぶのもいいけど、上級者同士の戦いで見られる「わざとレース序盤は中位~下位を走ってアイテム勝負に持ち込む」、「ショートカットなどのハイテクニックを駆使して先行逃げ切りをする」、「バナナやコウラを地雷のように鬼のように撒いてジャマをする」といった戦略も健在だ。そのくせ大勢でやるほど運の要素がからんできて「誰が勝つかわからない」展開にもなる。そこがまた面白いのだが……。
 実際に遊び込んでみると、GBA版の周回数3LAPは、SFC版(周回数は5LAP)で楽しめた戦略やハプニングが3周にぎゅっと押し込まれているというイメージで、携帯ゲームとしては中身の濃いレース展開が楽しめる、ちょうどいいボリュームとなっている。

 もし友達が「マリオカートアドバンス」をすでに持っているのであれば、ぜひ“バトルゲーム”の対戦プレイをオススメしておきたい。各プレーヤーに付けられた3つの風船をすべて割れば勝ち、というシンプルなゲームだが、単純ゆえにこれがとにかくハマる! 最初のうちは運の要素が大きいオマケのゲームに見えてしまうかもしれないが、赤こうらの誘導性能を考えて攻撃ができるようになったあたりから戦略性がググっと生まれ、次第にアイテムボックスの真上にバナナを置いてジャマをする、ミドリコウラをコースと直角になるよう発射して移動するワナを仕掛ける、さらには相手が通るコース上にミドリコウラを鋭角に発射して出口を封じる……といったテクニックをお互いが駆使するようになってくると、もうコレが何度でも遊べてしまう。SFC版でもそうだったが、マリオGPやタイムアタックと違って、あとから人気が出そうなゲームモードだ。

「マリオカートアドバンス」に用意された新規のオリジナルコースは全部で20。通常のサーキットコースだけでなく、南の島(プクプクアイランド)や溶岩地帯(クッパキャッスル)などバラエティあふれる舞台が用意されている。コースの中には二股にルートがわかれるトリッキーなレイアウトもあるので、ドリフトなどを駆使してレースを有利に戦っていこう


■ ショートカット、タイムアタックなどのディープな遊び方にハマろう!

 「マリオカート」には“手軽に気軽に遊べる運勝負のパーティゲーム”の部分と、“0.01秒のタイム差を詰めていくシビアなゲーム”といった二面性があることはファンの多くに知られていることだと思う。そして、当然ながらこのGBA版も間口の広そうなフリをしながら、コアな世界がきっちり用意されていたりするからたまらない。正直、これに気付くまで僕も「GBA版も意外と面白いなあ」と思っていたのだが、知ってしまってからは「GBA版やばすぎ! 奥が深すぎ!」という勢いで遊び始めている始末なのである。というコトなので、どのへんがハマれて奥が深いのか、以下に挙げてみることにしよう。

 ひとつは、ドリフト走行をはじめとしたコーナリングなどのテクニックをマスターしていく時の楽しさ。GBA版はボタンの組み合わせでスピンターンやバックなど数々の新テクニックが増えているが、やはり一番の面白さはラインを合わせてミニジャンプ→ドリフトでコーナーをかすめつつ→できるならミニターボ発動! というここ一発のコーナリングワークにある。思い通りに決まった時は心底「ああ、マリオカートは面白いなあ~、そしてオレはいま速いぜえぇぇ~!」という気分にひたれること請け合いだ。単純なコトなんだけど、これがレースゲームの醍醐味だと思う。排気量150ccクラスのマリオGPモードであれば、ある程度の走行テクニック+アイテムの使い方が勝負を決するので、CPU相手に練習しても飽きない。

 ふたつ目は、コースに隠された隠し要素の探索だ。走り込んでいくうちに「おっ、ここをミニジャンプで飛べばショートカットできるのでは?」といった“コース上の発見”があるのは本シリーズのもはや“お約束”なのだが、GBA版でも「もしかして、ここの浅瀬を渡れば近道できるんじゃ?」とか、「キノコダッシュでこのジャンプ台に乗ったら、大ジャンプで大ショートカットができるのでは?」といった場所にふと気付き、実際に調べると……やっぱりできてしまうポイントが非常に多い。というか、そういう風に“作られて”いるのが任天堂のウマさであり、隠されたショートカットはまだまだありそうな気配である。ショートカット探しは“旬モノ”なので、こうした情報交換はいままさに盛り上がっているもののひとつだろう。

 そして最後は、上記2つを組み合わせた“タイムアタック”によるディープな戦い、これが熱い。古い話題になるが、SFC版の発売当初「1分を切るのは理論的に無理!」と言われていたコース(マリオサーキット)が、発売後2年近くかけてミニターボを効かせるポイントや縁石をかすめるドリフトワークが多くのプレーヤーに研究され最終的に58秒台(!)という驚異的なタイムラップが記録されたという“伝説”がある。すでにGBA版でも「キノコを使うポイントはどこがベストか?」といった情報がタイムアタックに燃えているプレーヤー同士で頻繁に飛び交っており、最初のコースであるピーチサーキットではすでに50秒台を切る熾烈な戦いが行なわれている(!)。
 しかも今回のGBA版ではモバイルアダプタを使って自分のタイムやゴースト(プレーヤーの走りを記録したもの)をデータセンターにランキング登録できるようになっているため、実はすでに50秒台を切った最速のゴーストをダウンロードできるようになっているようだ。今回は最高10コースに自分のゴーストが記録できるので(ダウンロードして保存できるゴーストは2つまで)、最速ラップに燃えたい人にはとことん遊べる内容になったと言えるだろう。と言っても、今の自分の腕じゃそんなゴーストにはまったく追いつけないのだが……。

「マリオカート」のハイテクニックである“ミニターボ”、そのやり方を知らない人のためにここで方法を伝授しておこう。U字形の大きなコーナーなどでドリフトを1秒近く連続で効かせてから通常走行に戻ると、ボーナスとしてマシンが一瞬加速=ミニターボ状態となる(成功すると青い光と音が出る)。ドリフト中にミニジャンプしたり障害物にぶつかると発動しないので、ドリフト一発でコーナリングを決めなければならない。まずはこれをマスターするのが上級者への第一歩(?)


■ やっぱりつないでこその「マリオカートアドバンス」

 とまあ結論を言えばGBA版もやっぱり「マリオカート」であり、面白いしハマるのは当然と言えるデキだった。が、SFC版や64版にはない“アドバンス(進化)”があるからこそ、GBA版が“いま”夢中になれるのかもしれない。それはずばり“つなぐ楽しさ”であり、“どこにでも持ち歩ける”という楽しさだ。これは「相手の画面が見えないので駆け引きが楽しめる」という話だけでなく、今までは誰かの家に集まらないとマリオカートというゲームが遊べなかったのに、これからはどこでも皆が集まってGBAをつなげばマリオカートが遊べる世界がある。これこそ、GBA版最大の魅力じゃないかと思うのである。

 また、本作はこうした本体どうしのつながりだけではなく、モバイルアダプタGBと携帯電話を使って全国のプレーヤーとタイムトライアルを競い合ったり、特別ルールで期間限定開催となる“モバイルGP”というコンテストの開催が定期的に行なわれている。モバイルGPには参加してないのでこちらのインプレッションはできないが、自宅や友達の家で仲間うちと遊んでいた「マリオカート」が、いまやGBA版では見知らぬ人と“つながる”遊びまでできるようになっているとは……やはり任天堂の底力はおそるべし、と思わせる内容である。

 「マリオカートアドバンス」は、個人的には「ミスタードリラー2」と並んで、GBA専用ソフトとしては最高ランクの仕上がりと評価したい。定番ソフトとしてそろえておけば知り合いと対戦プレイで遊べるチャンスも広がるし、レースものとしてはもうしばらくコレだけでいいでしょ、と言える作品だ。しかも昔からのファンのためにGBA版にはSFC版にあった全20コースも“隠し”で用意されている。見た目もBGMもSFC版の移植として作られているので、昔からのファンはこちらだけ遊び倒しても十分満足できるのではないだろうか?

各コースに用意されたジャンプ台やダッシュ板などの仕掛けを見つけ、それらを利用してレースを有利に運ぶのも「マリオカート」の面白さ。あからさまに用意されている別ルートだけでなく、アイテムなどを利用することでショートカットできるポイントがいたるところに用意されている。もちろんリスクも伴うので、一発逆転を狙う時などに使ってみよう

(C) 1992,2001 Nintendo.
Game Developed by INTELLIGENT SYSTEMS.


□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□製品情報
http://www.nintendo.co.jp/n08/amkj/index.html
□関連情報
【7月24日】次世代ワールドホビーフェア開幕
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010623/whf.htm

(2001年7月31日)

[Reported by 小林 仁]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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