硬派なアクションと謎解き要素が楽しい
コーディネイトRPG、PS2「エヴァーグレイス2」

エヴァーグレイス2

  • ジャンル:コーディネイトRPG
  • 発売元:フロム・ソフトウェア
  • 価格:6,800円
  • 対応プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中

【ゲームの内容】

 プレイステーション 2用の完全リアルタイム制3DアクションRPG。ジャンル名の「コーディネイトRPG」は、装備を付け替えることでキャラクタの外観をプレーヤーが自由に変更できるシステムに由来する。
 ライフゲージを共有する3人のキャラクタから、1人を選んで操作。マップ上に出現する敵キャラクタを倒しながらゲームを進めていく。操作するキャラクタの変更はいつでも可能。通常の武器攻撃のほか、魔法に類する特殊攻撃「パルミラアクション」が使える。タイミング良くボタンを押すことでコンボ(連続)攻撃も可能となっている。




 ストーリーよりも“敵キャラクタとの戦闘”や“謎解き”がメイン

 「エヴァーグレイス2」の世界観とストーリーは、とても物悲しく切ない。
 痩せてゆく土地と共に疲弊する複数の村が、「ビリヤナの森」と呼ばれる聖域の開拓をめぐって対立。双方ともに主張が相容れることはなく、対立は激化の一途をたどり、ついには互いの存亡を賭けた戦いが始まろうとした矢先、のちに「災禍の夜」と呼ばれた惨劇に見舞われる。何者かに統率された魔物の群れによる奇襲で、双方の村は壊滅的な打撃を受けてしまうのである。
 生き残ったわずかな人々。ゲームの主人公「ユテラルド」もそのひとり。彼が属するストルタは「災禍の夜」の打撃から立ち直るとともに、再び「モレア」へ攻勢をかける準備を始める。

導入部ムービーより。旅立つ主人公たちは道中でトラブルにまきこまれ、正体不明の男2人から、互いの命を結び合わされる古代の禁呪をかけられてしまう

 ゲーム中の所々で顔をのぞかせる、悲壮感ただよう世界観とストーリー。これはこれで確かに惹かれるものの、私個人が考える「エヴァーグレイス2」のメインディッシュは“やりがいのあるアクションパート”と、こまめに出現する“謎解き”に他ならない。
 誤解を恐れずに表現するならば、ストーリー展開に重きをおいた某タイトルの対局に位置するRPG……というのが、私の「エヴァーグレイス2」観。念のため言っておくと、どちらが良いかは個人の嗜好。あまり勘ぐらないように。


 一見煩雑そうに見える操作も、ポイントを押さえれば極めてシンプル

 パーティはユテラルド、リヤナ、フィルナの3人編成だが、実際にプレーヤーが操作するのは1名だけ。残りの2人はAI(人工知能)で動作する。移動は方向キーまたは左スティック。右スティックボタンで生命エキスを使用(回復)。操作キャラクタの変更はL1ボタン。R1で敵の攻撃をガード(動作中はダメージが1/10)。L2、R2で視点調整が可能。
 操作中のキャラクタによる武器攻撃は○ボタン。それ以外のボタン3つは「パルミラアクション」と呼ばれる特殊攻撃に割り当てられており、△がユテラルド、×がフィルナ、□がリヤナに対応している。

 これだけの操作を同時に……と考えると面倒に思えるかもしれないが、実際はそうでもない。重要なのはスティック、ガード、武器攻撃、パルミラアクション。あとは、キャラクタの特性を使い分ける場合にL1を使う程度。
 なお、視点調整を戦闘中に行なうとポジショニングが把握しにくくなるため、一旦距離を取って仕切りなおす時以外には使わないほうがいいだろう。

操作は煩雑そうだが、全てを同時に使う訳ではない。役割だけを見ればシンプルともいえる

 攻撃は敵キャラクタの動きを見切ってから

 ゲーム中に出現する雑魚キャラクタの多くは、動きのパターンさえ掴んでしまえば怖い存在ではない。ただし、何も考えずに攻撃していると、いずれは大変な目に遭うだろう。雑魚とはいえ、防御力の弱いフィルナは初期装備だと一撃で殺されてしまうこともあるからだ。

「どうってこたぁねーや、えーい」などと適当に攻撃しながらゲームを進めていると、遠からず痛い目に遭うだろう

 ここで重要になってくるのが、R1ボタンの存在。ガード中はダメージが1/10。初遭遇となる敵キャラクタに対しては、いきなり斬りつけたりせず、まずはガードを固めて攻撃パターンとサイクルの把握につとめたほうが無難。なお、その際の使用キャラクタは固有特性「SG吸収ガード」を持つリヤナが最適だ。
 敵キャラクタの動きを把握したら、あとは隙を突いて反撃すればいい。その際には、なるべくなら後述のパルミラアクションによる連係攻撃を狙いたい。

第1章のボスでさえ、攻撃パターンを把握しなければ大ダメージ必至。身をもってガードの重要性を教えてくれるだろう


 パルミラアクションの連係攻撃を積極的に狙え!

 パルミラアクションによる連係攻撃は、敵キャラクタに大ダメージを与えられるばかりか、「OVERKNOCK」、「SMART HITS」でPP(経験値)や、装備の強化に不可欠なパルミラ片を獲得できるなど、まさに良いこと尽くめ。
 連係攻撃はアイテムショップ内で練習可能。ここで繰り出す順番やタイミングを完璧に覚えて、いつでも実戦投入できるようにしておこう。なお、複数の敵キャラクタと乱戦になっている時や、一部敵キャラクタが攻撃モードに入っている際のパルミラアクション使用には注意が必要。戦闘中、操作していないキャラクタはAIで動作しているため、3人の位置関係によっては、連係攻撃のターゲットにパルミラアクションが届かない可能性もあるからだ。その点、敵キャラクタがひとりしか居ないければ、位置関係にさえ注意すればたいていは「SMART HITS」を狙うことができる。

乱戦時の連係パルミラアクションは狙いが定まらないことが多い。その点、敵キャラクタがひとりなら成功率はグンと高まる。全弾ヒットしたときの爽快感もまた格別。積極的に狙おう


 謎解きには「装備」と「パルミラアクション」も関係

 ゲーム中の所々に顔を出す「謎解き」には、特定のアイテム以外にもキャラクタの「装備」や「パルミラアクション」を必要とするものがある。大半は看板や石碑にヒントが記載されており、武器、防具であれば形や属性、パルミラアクションであれば雷、樹、炎、凍などの属性とキーワードを照らし合わせながら、プレーヤーはさまざまな解読の試みをすることとなる。武器や防具などは属性により装備できないキャラクタもいるため、組み合わせで若干悩むケースもあるかもしれないが、それでも基本は一緒だ。

パルミラアクションの属性や、武器、防具の装備に関係する謎解きも多い


 ドレスアップシステム:実用性を取るか、趣味に走るか

 ドレスアップシステムは、装備を交換することでキャラクタの外観やパラメータが大きく変化するというもの。各キャラクタ専用装備や、見た目が楽しい“おもしろアイテム”も登場する。属性などを慎重に吟味して機能性を重視するもよし、完全に見た目だけで選ぶもよし。
 ただし、「エヴァーグレイス2」は他のRPGと違ってキャラクタ自身はレベルアップせず、能力の強化には装備の変更が必要不可欠。ゲームを円滑に進めようとするのであれば、やはり“見た目よりも中身”が重要なのは言うまでもない。余裕があれば「パルミラ片」で装備ごとにパラメータを強化しておくことも忘れずに。

見た目と性能の両方を兼ね備えていれば問題ないが、余裕がない場合は実用性重視で良いかも


 手ごたえのあるアクションパートが肝

 アクションRPGと一口にいっても、ジャンル全体を見渡せば、アクション要素をちょこっと付け加えた程度のものから、凡百のアクションゲームが素足で逃げ出すものまで、その内容は千差万別。

 その点「エヴァーグレイス2」は後者に近いゲームといえるが、難易度的には「万人向け」というよりも「ゲームをやりこむタイプ」に向けて作られている感が強い。つまり、ライトユーザーが気軽に手を出すと「……何じゃこりゃぁ!」となってしまう可能性も否定できない訳だ。そういった意味では実に「フロム・ソフトウェアらしい」作品であり、プレイステーション用ソフト「キングスフィールド」から継続的に同社のゲームをプレイしている人であれば迷わずご推薦! といった趣きさえある。

 では、ライトユーザーは手を出さないほうがいいのか? と聞かれれば、答えは「さにあらず」。ライトユーザーが永遠にライトユーザーである理由は何処にもなく、きっかけさえあればヘヴィな方向にガンガン突き進んでいただきたい。普段あまりアクションRPGをプレイしない人ほど、このゲームをクリアした時の“達成感”は格別のものとして感じられるはずだ。


 最後に、プレイして私が(極めて個人的に)気に入ったポイントをいくつか挙げてレビューを終わることにしよう。

【川やガケから落ちる】
 第1章スタート時、プレーヤー一行は「見知らぬ集落」の前にたたずんでいる。左手の川向こうに民家などの建物が存在。ここは川沿いを歩きながら、小橋をわたり対岸へ移動する人が大半かと思われるが、ここで試しに「川の中」へ突入してみよう。
 ……(ざっぱーん)……
 見事落水によるダメージを受け、落ちた場所にキャラクタが強制的に戻されているはずだ。実際に試して「テメェ、ふざけんな! 落ちてダメージくらったじゃねぇか!」と怒る人もいそうだが、ここでちょっと考えて欲しい。近年のコンシューマRPGはやたら親切なので、そもそも「川の中に落ちる」こと自体、ほとんど見受けられなくなった。だが「エヴァーグレイス2」では、それが当然とばかりにアッサリと落水する。
 川沿いには「見えない壁」があって、当然のようにぶつかると思って移動しただけに、個人的には結構(久しぶりというか)新鮮だったのだが、読者諸氏はいかがだろうか。なお、落ちるのはガケも同様。普通に歩いて足を踏み外すことはないだろうが、ガケっぷちや川沿いで敵キャラクタと戦闘に突入した場合、乱戦時のポジショニングやダメージによるノックバックなどの条件が重って「ひょっこり」落ちてしまうこともある。
 イレギュラーとはいえ、落下する瞬間を目の当たりにすると「あちゃ~……やっちゃったよ」などと自己嫌悪にも陥るが、操作に慣れてくれば、そういうこともほとんどなくなる。また、慣れたことを自覚して、それがちょっと嬉しかったりもする。
 ちなみに、残りSP(ソウルパワー)がわずかで川やガケから落ちても、それが原因で死ぬことはない(残りSPは1のまま)。さすがに、そこまではやりすぎだと判断したのだろうか。

当然のように「見えない壁がある」と考えた自分の堕落した先入観が許せない。川がある。そのまま歩く。落ちる。アタリマエの話。でも、まだスタート直後なんだよね……

【いきなり罠の宝箱が……】※ネタばれあり
 これも最近のRPGでは絶滅危惧種に等しい存在。一度体験すれば以降二度と喰らわないであろうタイプの罠だが、不意を突かれると結構ビックリする。
 民家の裏にふたつ並んだ宝箱を開けると、なにやらフワフワとしたキャラクタが出現。最近の親切なRPGに慣れきった私は「オプションの妖精さん?」などとボケた顔で眺めてしまい、抱きつかれた挙句に毒が全身に回って死亡。横の宝箱には「解毒樹液」が入っていたのだが……。
 そういった救済措置も含め、数分後には抱きつかれても方向キー連打で振りほどけるし、出現した瞬間に斬り捨てられることが判明したが、そんなことはどうでもいい。何よりも「第1章、しかもスタート直後に罠の宝箱が存在する」という事実に、思わずグッときてしまうのである。

冷静に観察すると「罠以外の何者でもない」格好をしているのだが、スタート直後だけについ様子を見てしまうよなぁ

【アイテムやイベントを見落とす可能性】※ネタばれあり
 「エヴァーグレイス2」は、マップ内を隅々まで調べ尽くさなくとも、要点だけを押さえれば実にアッサリと先に進めてしまう。マップ単位で進行するゲームシステム上、一旦先に進むとマップの後戻りはきかず、「ゲームの進行に差し支えの無いアイテムやイベント」は、チェックし忘れると二度とお目にかかれなくなる。
 これは、マップ構成が複雑になる後半はもとより、第1章のようにシンプルなマップでさえ発生する可能性がある。全てのイベントやアイテムをチェックしないと気がすまない人は、イベント発生の手順など、やり残しがないかどうかマップ全体を隅々まで調べてから先に進んだほうがいいだろう。

「風車小屋」のイベント後、「犬」を素通りすると(超重要というものではないが)とあるアイテムが手に入らなくなる

(C)2000,2001 From Software, Inc. All rights reserved.

□フロム・ソフトウェアのホームページ
http://www.fromsoftware.co.jp/
□製品情報
http://www.fromsoftware.co.jp/soft/eg/eg2/
□関連情報
【3月12日】装備アイテムで特殊能力を使い分ける完全リアルタイムRPG「エヴァーグレイス2」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010312/from.htm
【4月27日】フロム・ソフトウェア、PS2「エヴァーグレイス2」パーティシステムや新キャラクタなどを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010427/from.htm
【5月11日】フロム・ソフトウェア、PS2「エヴァーグレイス2」ショップや新おもしろ装備など公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010511/from.htm

(2001年7月12日)

[Reported by 北村孝和]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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