★ ゲーム ファーストインプレッション ★

全編にぬくもりが伝わるアクションゲームの快作
風のクロノア2
~世界が望んだ忘れもの~
-その2-

  • ジャンル:3Dドラマティックアクション
  • 発売元:ナムコ
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:3月22日

【ゲームの内容】

 ある日突然、“四つの鐘”に宿る力で調和が保たれている世界「ルーナティア」に呼び寄せられた主人公“夢見る黒き旅人”クロノア。予言者バグジによれば、この世界に生まれようとする闇の鐘“五つめの鐘”によって、暗雲が立ち込めようとしているという。波高い荒れた海に漂っていた自分を救ってくれた巫女見習いのロロと、彼女の相棒ポプカの頼みもあって、クロノアは新たな冒険を始める。




 発売されて3週間が経つが、読者の方々はプレイされたであろうか? 今回はクリアまでプレイした段階でのレビューをお届けする。GBAの新作「~夢見る帝国~」も発表され、ますます勢いづく「クロノア」シリーズ。思い切り堪能させてもらいました。  

 緩急をつけたメリハリのあるアクションに手に汗を握る

 レビューの「その1」でも触れたように、使うボタンは方向キー+2つのボタン(ジャンプと風だま)だけのシンプルなもので、普段の雰囲気はわりとのほほんとしたペース。ところが、これに計算されたマップ構造とカメラアングルのスパイスが加味されることで、ステージ(このゲームにおいてはヴィジョンと名づけられている)によって大胆な高低差やスピード感が演出され、プレイしていて飽きることがない。

 特に何度もプレイして手に汗を握ってしまうのは、高低差の激しいシーンと、足場の不安定なシーン。「喜びの国ジョイラント」、「怒りの国ボルク」などでは、爽快感とともに、気がつくと汗をかいていることも多い。

 また、「タイムスイッチ(風だまで攻撃することで一定時間するとスイッチが入る)」、「切り替えスイッチ(ON/OFFでブロックが出現したりしなくなったりする)」と敵キャラ「ブッピィ」を絡めた仕掛け、それと敵にぶつけることで色の変わる敵キャラ「リクリ」には楽しませてもらった。タイムスイッチはどの順番でスイッチを入れて限られた時間内ですべてをONにするかを考えるのが楽しかったし、切り替えスイッチの近くに「ブッピィ」を移動させて爆発させる仕掛けは、解法がわかった瞬間、どれも「おおっ!」と心の中で声を挙げてしまった。「リクリ」は、捕らえて敵にぶつけることで色が変わっていき、道を塞いでいる対応した色の結晶を壊すことができる。これも、どの順で敵を吸収するかを考えながらプレイするのが楽しかった。

 当然後半のヴィジョンになれば、各所に仕掛けられた謎を突破するのに頭をひねることにもなるし、タイミングをうまく合わせないと突破できない仕掛けもあるが、ミスから何かを学んでいくことで、突破できるものがほとんど。フリースクロールのゲームなので、仕掛けの攻略法をゆっくり考えたり、飛びそこねても耳をはばたかせることであがくことも可能。また、「夢のかけら」や「1UP」のアイテムを集めることで、クロノアの残り人数を増やすことができ、フォローが効いている。一度クリアしたヴィジョンは何度でもプレイしなおせるので、残り人数を十分稼いでからチャレンジすることもできる。

 ただ、3Dスクロールのボードに乗って進んでいくシーンは、後半のヴィジョンではかなりキビシイところもある。落ちそうになったらジャンプして羽ばたきを行なうことで何とかなる……かも。あきらめないことが肝心ということか。

 ボスキャラ戦はさらにシンプル。弱点をどう攻撃するかがわかれば、あとは慣れてしまえば困ることはない。何も予備知識なく、ボスと戦って攻略法を発見し、戦う。意地悪ということは皆無で、とてもストレスなくプレイできた。

「ブッピィ」を絡めた仕掛けは、左右方向だけでなく、手前や奥の空間も利用するなどアイデア満載
「リクリ」を放り投げて、戻ってくるあいだに移動しつつキャッチ、というアクションは楽しかった


 王道を行きながらも個性を感じるシナリオ

 前回触れなかったストーリーについてもここでちょっと語ってみたい。

 今回、主人公である「クロノア」は、ちょっぴり大人の設定。「夢見る黒き旅人」と呼ばれ、何かの力によって異世界「ルーナティア」へと呼び寄せられたいわば「お客さん」なワケである。ヒロインである「ロロ」は巫女の試験に落ちてばかりいるけれど、一生懸命でひたむきな巫女見習いの女のコ。彼女の相棒で口の悪い「ポプカ」と共に、予言者「バグジ」の導きによって3人は出会い、彼らの視点でストーリーが語られていく。

 冒頭、ロロとポプカに助けられたクロノアが、幻獣に出会って戦いに巻き込まれるシーンでは、ポプカの強引さに思わず笑ってしまった。大人になった設定のはずのクロノアがポプカに「とにかく出発!」と振り回されて旅立つドタバタ劇とでもいおうか。「お客さん」具合がよく表われている。事態をうまくのみこめないままでも、冒険に飛び込んでいくクロノアはどこか頼もしい。

 今回、クロノアのリングとロロが一体化することで、風だまを使えるようになるのだが、初めて試しの鐘(ある程度の霊力を持っていないと鳴らすことができない、巫女の能力を試す鐘)を鳴らすことができた彼女は、見習いを卒業した喜びを味わいつつも、自らの力に不安を抱えながら、冒険の旅に出る。「喜びの国ジョイラント」でおばけ屋敷に入るシーンでは、怖がりのロロがやせ我慢をしながらがんばる様子が描かれる。ロロは多感で、何事にも反応する。冒険を経て成長していく彼女はとても微笑ましいし、もどかしくもある。

 また、敵役として登場する空賊「レオリナ」と、「タット」も魅力的。レオリナはクールな表情の中に激情を秘めている様がきちんと描かれているし、どちらかというと道化師的役割のタットはとてもかわいらしい。ポプカは彼女にムカーッと来ているようだが、オチャメなしぐさやセリフ回しはとてもチャーミングに映った。

 全体的に、「わりとお約束の多いストーリー」といってしまえばそれまでだが、キャラクタがしっかり確立されている、明るいトーンの王道的ストーリーを十分楽しませてもらった。だからこそ、後半で……っとこれ以上はプレイして確かめてもらいたいのだが、個人的にはとてもジワーっと感動するストーリー展開であったことだけ記しておこう。

ちょっぴり大人になったクロノア。ロロを支える頼もしい存在 今回一番の成長株? ロロの葛藤には注目 過激発言を連発するが心根に優しさを感じるポプカ
クールなレオリナだが、その中には激しいものが…… タットはどこか憎めない存在。記者一番のお気に入り 2人に分離することもできるタット。びっくり


 サウンドの威力を感じる作品

 ゲームパート、パペットDISP.(デモシーン)を印象づけるために効果的だと思われたのがサウンド。BGMは統一の取れた柔らかい音色ながら、シーンに合わせて緩急がつけられており、無音のシーンもあるなど、多彩な印象。逆に効果音はちょっとキラッとした音色で、BGMに埋もれてしまうことなくゲーム内の事象を表現することを意識しているのではないだろうか。

 また、途中でクロノア語による唄も挿入されていたり、音楽的にも実験的要素が含まれている曲がある。自宅環境で5.1ch(収録されている音源は2chステレオなので、あくまで擬似ではあるが)のシステムでプレイしてみたが、広がり感のあるBGMに包まれてプレイするのはかなり心地よかった。

 個人的に好きな傾向の曲が多く、盛り上がるシーンではきちんと盛り上げ、静かなときはそれなりにと、音がでしゃばりすぎず引っ込みすぎずという感じ。どこか映画音楽をイメージさせるものがあるが、複数のコンポーザーの手による曲が、ひとつの統一されたイメージを描きだしているのは見事。

冒頭のシーンより。メッセージとともにピアノの音がとても印象に残った ヴィジョン移動中のBGMも柔らかいイメージ。何度聞いても飽きない まどいの国ミラ・ミラではクロノア語の唄も聞ける。意外にゲームに溶け込んだイメージ


 安定した魅力が詰まったゲーム

 結局このゲームから伝わってきたのは一言でいえば「安心感」だった。各所にピリッとしたスパイスが効いているが、大事なのはやはり素材であろう。ゲームシステム、キャラクタ、サウンド、グラフィック、スクリプト……あらゆるところがちゃんと作られている。一部の要素に抜きんでたものをそれほどは感じられなかったが、「メチャクチャすごい」というインパクトより、じわっと来る心地よさを取ったとでも言おうか。何度もプレイすると、その良さが染みてくる作りになっている。

 「モメットドールズ」を全部揃えたり、「夢のかけら」を150個以上集めたり、ボスキャラのタイムアタックがあったりと、何度プレイしても楽しめる仕掛けもきちんと用意されている。私個人はBGMを聞くために何度もプレイしている状態。ぜひCD化を望みたい。

【プレイ時間:おそらく20時間以上】

(c)1997 2000 NAMCO LTD.

□ナムコのホームページ
http://www.namco.co.jp/
□製品情報
http://www.namco.co.jp/home/cs/ps2/klonoa2/
□関連情報
【2001年3月15日】ゲームレビュー 「風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010315/kulonoa2.htm

(2001年4月13日)

[Reported by 佐伯憲司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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