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スマイルラボ伊藤隆博氏が語る
「新・仮想生活付きコミュニティ『ニコッとタウン』について」

2月5日開催

会場:ベルサール神田



 2008年9月に正式サービスを開始した、新・仮想生活コミュニティ「ニコッとタウン」。スクウェア・エニックスのグループ会社にして、インターネットサービスプロバイダ「ニフティ」で同サービスを提供する株式会社スマイルラボ代表取締役社長 伊藤隆博氏が「ニコッとタウン」の現状について講演を行なった。

 「ニコッとタウン」は、ユーザー同士で交流できる2Dベースのバーチャルワールド。仲良くなった人と一緒に遊ぶミニゲームをはじめ、アバターなどのプロフィールの設定を行なうマイページなどが用意されており、これらすべてのコンテンツがWebブラウザ アプリケーションのAdobe Flash Player上で動作する。


■ アバターと快適性を意識したサービスの形成

株式会社スマイルラボ代表取締役社長 伊藤隆博氏。同社は2008年2月29日に設立され、4年に一度しか会社設立記念日を祝えないらしい
 まず伊藤氏は、同社の提供する「ニコッとタウン」の概要について語った。2008年に先行βテストを開始、9月に正式サービス化、そして2009年1月の時点で会員数13万人を突破、月間100万ユニークユーザー、月間6,000万ページビュー、そして会員比率は女性率75%と、近年のバーチャルワールドでは、好スタートを切っていることをアピールした。

 ライトなコミュニティ層を意識して制作された「ニコッとタウン」は、2Dによるやわらかいタッチのアバターで構成されており、アプリケーションの類は必要とせず、Adobe Flash Playerで動作する。

 「ニコッとタウン」の開発期間のうち最初の4か月ほぼすべてをアバターのデザインに費やしたと説明。海外産のアバターなどを購入した場合、欧米系ではバタくさかったり、韓国や中国は2頭身だったりといったこともあるため、後発である「ニコッとタウン」では、日本人テイストに合わせてデザインを起こしたという。 また、仮想生活といっても3D空間のような世界を構築するわけではなく、パビリオンにいくまでの工程を踏むよりもブラウザ上に表示されたタブをクリックすることでストレスなく移動できるよう、簡単なものを意識したという。

 アバター制作においては、Webブラウザ上で動作するというコンセプトから、データ量の軽減も踏まえ、アウトラインをはじめグラデーションなど画像データの軽減の見直し、そして他サービスと差別化するというところで、まずは目を100~400ほどパターンを作ったとのことだ。

 実際の「ニコッとタウン」では、1画面上には最大15人を表示するようになっているが、アバターの画像データは約100レイヤーほどで構成されている。伊藤氏は具体例として髪の毛ひとつのデータをあげ、これは服の前、後、帽子といった3つのレイヤーで構成されていることと説明。また服も同様に処理を行なっており、これらの作業はデザイナーがすべて手作業で行なっているという。

 その他にも伊藤氏は、Webブラウザベースでの利点として、クライアントアプリケーションのダウンロードが発生しない点を述べた。これは、多くの女性の場合がダウンロードのウィンドウが開かれると、ウィルスを意識してしまい、すぐさまウィンドウを閉じてしまうことが多いからだという。このため、「ニコッとタウン」では、オンラインゲームなどのインストールベースではなく、Webブラウザでの起動をマストとして構成していると語た。

 ちなみにミニゲームの部分では、スタートボタンを大きくデザインしたシンプルな設計にしており、カードゲームなどでは、簡単に遊べるようオートマッチング機能を採用している。

 ユーザーの強さを示すランク表示にもこだわりがあり、テストではZが最上級だったが女性は成績表などからAが上と意識するため、サービス開始後は逆になりAが最上級となった。また、サービス当初はAランクに到達できるまでは1年でぐらい考えていたが、1カ月でAになったコアプレーヤーも現われ驚いたという。

会社の紹介と「ニコッとタウン」の概要を説明。アバターサービスをはじめミニゲーム、ブログなどが容易されている



■ 安心安全、真面目な取り組み。現実時間24時で閉店するタウンエリア

「ニコッとタウン」の世界には公共エリアの「タウン」、居住エリアの「ニコッと諸島」、そしてミニゲームやアイテム交換所、ブログ広場といったものが存在する。

 タウンエリアは4区画から6区画程度に収めており、1エリア15人単位でのパラレル構造になっている。一度に参加可能な各ルームは15人程度に抑えることで、トラフィックの軽減などをはじめ、賑わい感を演出しているといった内容が語らた。

 これは、バーチャルワールド上のコミュニティは、スタートラインこそ高いものの、継続していく上では、初期のユーザー継続率が50%という伊藤氏の計算からなっているとのこと。

 また、通常のバーチャルワールドはショップなど24時間機能していることが多いが「ニコッとタウン」ではワールド内のタウンエリアは現実の24時に閉店するという特徴がある。これは社内のスタッフが24時になると帰ってしまうためサポートが深夜時間帯は行き届かないという社内事情もあるが、安全安心が一番のモットーであるため、ユーザーのプレイタイムにキリのいいタイミングをつけるという意味でも効果を発揮したという。

 タウンエリアはイベントがある時だけ、町にいくような一般生活になじみのある演出や、家では生活感を演出するということで、スタート当初は何もない殺風景な部屋からのスタートではなく、現実の生活同様に引っ越し直後の段ボールとちゃぶ台を設置。こういった細かい演出によって「ニコッとタウン」内での生活感を演出しているとのことだ。

 問い合わせの部分は、例えば、「機能的に誰でも入ることができる部屋」に、「入ったら苦情報告する」というものなど、オンラインゲームコミュニティではありがちなユニークなものもあるようだが、ニコッとタウンでは女性ならではの要望として改善に取り組んでいる例を挙げた。  

 その他に「ニコッとタウン」では、ユーザーからの問い合わせ、要望、申告などでも若年層の問い合わせに対しても真面目に答えることが大事と述べ、例として「無料コインの服が足りないので、服を増やしてほしい」という要望に対して、「ベンチャー企業ですので人がいません。無料アイテムばかりを増やしてしまうと会社がつぶれてしまいます」と返答したと語った。

 一見、不真面目に見える回答だが、これは伊藤氏が過去に塾の講師を行なっていた経験上からくるものとのことで、若年層であってもこういった現実的な答えを返せば、真摯に受け止めてくれるということから、どんな問い合わせであれ真面目に返しているという。

 また現状の課題としては、ゲームが好きな層が来ると「ゲームが少ない」という意見が多く、一方で男性とは違い、女性はおしゃべりが好きという目的意識の違いから、「ゲームよりおしゃべりカフェの部屋を増やして欲しい」という要望が多い。結果として、男性の定着率が低く、今後は対戦ゲームやルーレットなど、ゲームが好きな層が楽しめるサービスを用意しなければならない課題があるとのことだ。

ユーザーニーズに合わせたコンテンツを実装しているほか、安全面と安心感を与えるため現実時間の24時になるとタウンエリアは閉店する



■ 各サービスの連動とユーザーニーズにあったタイアップなどが鍵

 「ニコッとタウン」はサービス内にブログがあるが、これは各サービスとの連動が行なわれており、たとえばゲームの結果などをブログ側に転送するといったことも可能となっている。また、アバターとゲームも連動しており、たとえば「釣り」で釣った魚は家具アイテムに変換され、自宅に家具として置けるようになるといった工夫も説明されていた。

 いかにユーザーにブログを書いてもらうかという工夫の部分では、1日に1回ブログを書けば無料コインが貰えるというものをはじめ、毎週おすすめカテゴリがバナー上で表示されるようにしており、カテゴリに沿った内容を書くことで、アイテムやコインが貰えるといった手法が語られていた。結果として、「ニコッとタウン」でのカテゴリによるブログ記事は1万5千件から2万件のブログが投稿されているという。

 タイアップの一例として老舗甘味処「中村藤吉本店」と提携し、同店舗をタウン内に再現。建物の前に動物がいて、話かけるとアイテム「生茶ゼリイ」が貰えるといったことを実験的に行なったところ、ブログの登録件数をはじめ、実際の「中村藤吉本店」で菓子を通販して買ったといった内容が書かれていたという。

 実験的に行なったものでは、ニフティで提供されている「ふみコミュ」の5周年記念として、「ニコッとタウン」内に学園を建たてたところ、サービスの特製上、男性キャラクターは入れないといった仕様もあったのと、10代の女の子が多かったため、10代の女の子特有の空間が出来上がったという。とはいえ、このエリアを作成したことで、年代別のエリアなどが作成され、コミュニケーションが良い方向に働いたとのことだ。

 これらのエリアは、運営側からはユーザーニーズにあったエリアは必要だということが認識でき、たとえば銀座があれば原宿も作らなければならないといったユーザーニーズに合わせたマッチングが今後の課題になったと語っていた。

「ニコッとタウン」内のブログは各サービスと連動しており、ゲームの結果などデータ部分がシステム側で転送される



■ ビジネスモデルはアイテム課金と広告モデルの両方 アイテムのバランスが大事

 「ニコッとタウン」のサイバーマネーには、無料コインと有料のPコインが存在しており、タウンでのイベントや、ブログの投稿、ミニゲームのプレイなどで、無料コインが貰える仕組みになっている。

 無料のゲーム内通貨を使用することで、2階建てや城など家を拡張(予定)することができ、女性が多いことから「プリンセスセット」といった可愛らしいアイテムの販売なども行なっている。

 無料コインの獲得方法には、ブログを書けば100コイン、1回ゲームプレイでは2コインなど少額だ。高額なアイテムの価格は5,000コインほどになるので、中にはゲームを1日に400回プレイするような人も現われ、ついには「体調を壊した」、といった問い合わせを受け取ったこともあるため、ゲームの獲得コイン数を制限して、疲れない配慮をしたという。

 また、ある時から無料コインで遊べるガチャガチャをリリースしたところ、「ニコッとタウン」全体での1日の消費コイン数が大幅に増加し、これまで5,000コインで販売していた無料アイテムが買えなくなるといったユーザーが続出。社内会議において、企画デザイン側の「これまで5,000コインとして出してきたアイテム」と、「5,000コインでは買えない」というユーザー側意見との板挟みになることも多々あったという苦労話も語られていた。この価格設定の部分では、直前まで打ち合わせることも多々あるため、告知が遅れるといったことも多く、このあたりは今後の課題だと語っていた。

 その他には、サーバートラブルについて紹介された。「ニコッとタウン」では、他のキャラクターの洋服や家具、ブログのコメントなどが素敵だと感じた場合、「ステキボタン」を押すことによって、 相手のステキ度をアップさせるという「ステキ」ボタンという機能を実装していたが、このボタンを押すことで2コイン(1日最大2,000コイン)が貰える仕組みになっていたため、実装してから最初のうちは1万トラフィック程度だったが、無料コインの獲得しやすさにユーザーが目をつけ、次第に30万、40万とトラフィックが増加。ついにはステキ同盟なるユーザーコミュニティなどが勃発し、「ステキ」によってサーバーがパンクしたという経緯があるという。現在は「ステキ」を管理しているデーターサーバーだけが分離されている。といったこぼれ話も出ていた。

 有料アイテムは、現在一部の洋服だけが販売されており、洋服をはじめ家具など、ほとんどのアイテムは無料アイテムとして販売されている。伊藤氏は、一部の有料課金ユーザーしか洋服を買えないのではなく、有料クオリティのアイテムでも無料アイテムとして配布することで、ニコッとタウンを楽しんでもらうマーケティングコストとしてとらえ、無料アイテムとして販売することも「ニコッとタウン」でのビジネスモデルでは大事だと語っていた。 

 伊藤氏は最後に「ニコッとタウン」のユーザー動向としては、洋服は自分のキャラクターに似合うアイテムを着せたいとなるようで、無料だから買うわけではなく、現実と同じ用に好きなブランドを着ていく傾向が多いという。そのため、スマイルラボでは、インターネットサービスである前にブランディングサービスということを踏まえ、安心できるサービスと提供していきたい語っていた。

ゲーム内の通貨は2種類あるが、現在はアイテムのほとんどを無料コインで購入できる。また獲得の難しさから有料のPコインよりも無料コインの価値が高くなっており、有料とのバランスを取るのも今後の課題だという


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□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bba.or.jp/
□「OGC2009」のホームページ
http://www.bba.or.jp/ogc/2009/
□スマイルラボのホームページ
http://www.smile-lab.com/
□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□ニフティのホームページ
http://www.nifty.com/
□「ニコッとタウン」のページ
http://www.nicotto.jp/
□関連情報
【2008年9月29日】スマイルラボ、WIN「Nicotto Town」正式サービス開始
スクエニとニフティが結束したカジュアルなバーチャルワールド
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080929/nico.htm
【2008年3月17日】スクウェア・エニックス、ニフティ「共同記者会見」を実施
カジュアルエンターテイメント・ポータル運営会社「スマイルラボ」設立
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080317/sqex.htm

(2009年2月6日)

[Reported by 鬼頭世浪]



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