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ジー・モード代表取締役社長 宮路武氏インタビュー
“+CCE”をキーワードに、激動の2009年モバイルゲーム業界を進む

1月14日 収録

会場:ジー・モード本社

 株式会社ジー・モードは、「テトリス」を始めとした人気コンテンツを数多く保有する、国内有数のモバイルゲーム企業である。同社代表取締役社長の宮路武氏は、まだ世の中にモバイルゲームが存在しない頃からモバイルゲーム事業に着手し、業界を牽引し続けてきた、日本のモバイルゲームの先駆者として知られている。

 宮路氏がこの10年に渡ってどういった考えをもって事業を展開してきたのかについては、過去の講演で語られている。しかしながら、2008年は無料で展開する勝手サイト(キャリアの公式サイトからリンクされていないもの)の勢いに押され、有料の公式サイトは芳しくないという話が各所から聞かれ、業界の変化が感じられる1年だったと言っていいだろう。

 その中で、これまで公式サイトのサービスを主体としていたジー・モードがどう対応し、さらに今年はどう動いていくのかを、宮路氏に直接尋ねてみた。またモバイルゲーム業界の顔として、業界全体の流れと今後の方向性についても合わせて伺った。



■ 2008年は「激動の時代」。ゲームのジャンルを広げる試みを続けた1年

ジー・モード代表取締役社長の宮路武氏。モバイルゲームの黎明期から業界に関わり、さらに時代に合ったモバイルゲームを模索することで、業界を牽引し続けている
――昨年は宮路さんとジー・モードにとってどんな1年でしたか?

宮路武氏 : やはり激動の時代だったなと思います。弊社が置かれている環境を含め、市場的に色々変動が起こった1年でした。環境面で言いますと、キャリア公式サイト以外に、モバゲーさんのような無料のゲームポータルが非常に躍進した年でした。

 また、キャリアさんが販売奨励金をなくして、割賦販売に切り替わったことが、業界に相当大きなインパクトを与えています。新機種に買い換えると新しくコンテンツが欲しくなるものですが、一度割賦販売で買うと契約にもよりますが最長2年間はその機種を買い換えられなくなります。今までは新機種が出る時期に会員が増えましたが、最近はそういう傾向は見られなくなりました。

――有料サイトを運営されているジー・モードにもダメージがあったということですか?

宮路氏 : そう思います。そういう環境の中で、よりよいコンテンツを届けるにはどうしていくのかを考えるのが我々の仕事で、対応は無難にはできているかと思っていますが。あとは激動の時代が、去年から始まっていて、これからはさらに戦国時代になっていくだろうということですね。

――その激動の時代が始まった中で、ジー・モードはどう動いたのでしょうか?

宮路氏 : いろんなことに手を出し始めています。全体的なことを言うと、我々はゲームの枠組みを広く捉えようという考え方を持っています。普通にゲームメーカーがゲームを作ると、例えばRPGだとかいう、ゲームらしいゲームを作ろうという話になると思います。我々は、より広くゲームというものを捉えようとしていまして、「これってゲームなのか、ゲームじゃないのか、よくわからないけれど面白い」というのが、去年の後半から始めていて、今年も追いかけていきたいテーマですね。

2008年のヒット作となった「空気読み。」は、「ゲームじゃないけれどゲームっぽい」という作品の代表例。インタラクティブだが、「こうしなければ進めない」といった決まりごとがない
 例えば「空気読み。」は、ゲームなのかというと、従来の枠組みではゲームじゃないと思うのですが、ただ、面白い。他にも、「自分の説明書」は、元々は大ヒットした書籍でゲームではないけれども、ゲームっぽい印象なのです。これも、我々の思うところのゲームのジャンルに入ってきているものです。

 ゲームを作る人がゲームのカテゴリを広げていかないと、業界は広がっていかないだろうと思っています。特に携帯電話というのは、ゲームマニアではない人も持っているハードウェアなので、我々が「これはゲームなの?」と思えるようなものを広げていくのも、必然性があることだと思っています。

――コンシューマ業界で、ニンテンドーDSの「脳トレ」が爆発的に売れたような流れですか?

宮路氏 : あれもまだ従来のゲームの枠組みから外れていないですよ。弊社も「日本一周漢字の旅」や「日本一周雑学の旅」などを出して大ヒットしていますし、DSが出る前から「脳トレ」系はずいぶんやっています。しかし、そこから進化して、よりゲーム性を排除していく方向にどんどん進んでいます。実はユーザーさんが、ゲーム性を排除して欲しいという方向に動いているのです。そのトレンドをよく理解しないとダメなのです。けれども、ゲームとして面白いと感じさせないといけないのです。

――ちょっと抽象的で難しいのですが……。

宮路氏 : つまり、“ゲームやった感”が大事なのであって、ゲームらしさの仕掛けが必要なわけではないのです。敵を倒してレベルを上げるようなものは、面倒くさいから要らないわけです。

――インタラクティブ性みたいなものは?

宮路氏 : インタラクティブ性は最低限必要です。インタラクティブで、頭を使わなくても、やっていると何か面白い、という感じですね。例えばスコアが何点以上必要というと、その段階で、このゲームはイコール高い点数を取るゲームになって、ユーザーの行動や方向性が定まります。それがあると、もうダメだったりするのです。何となく進んでいくとか、よくわからけれど面白いという形がいいのです。

 今でも作り手側は、ゲームにはミッションを進めるような手続きが必須であると思っています。ところが携帯電話のユーザーさんは、ゲーマーではない、より一般的なユーザーさんなので、それが難しくてわからないとか、そもそもリラックスして遊びたいのに何でこんなことを覚えなければいけないのか、といった形になりがちなのです。ですから我々は、そういうゲームらしいゲームも作りますが、そうでない分野にも広げている最中です。

 インタラクティブでないものは、DVDなどがありますが、それはちょっと違うと思います。DVDのように見っぱなしでも、選択肢があればいいのです。インタラクティブで、なおかつ満足感があるものですね。それがゲームと言われるために最低限必要な要素ではないでしょうか。

――ジー・モードはゲーム会社である、というスタンスは変わらないわけですね。

宮路氏 : 変わっていないですね。そして2009年も続けていきます。他社さんやユーザーさんから見ると、「ゲームじゃないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、我々はゲームだと信じて作っている部分もあります。



■ ゲームのジャンルを広げる魔法のキーワード“+CCE”

既存のものの価値をさらに高め、新しいサービスを創出する“+CCE”戦略
――2008年の動きとしては、“+CCE”戦略というキーワードもありました。

宮路氏 : これはCasual(カジュアル)、Communication(コミュニケーション)、Entertainment(エンターテイメント)という部分を、きっちりと打ち出していこうという意味です。徹底的にカジュアルにしていくというのは設立以来の方針なので、それはどんどん突き進めていきます。加えて、コミュニケーションとエンターテイメントという部分をもう一度掘り直そうと思っています。

 キーワードは、“何か、+CCE”です。例えば、弊社はPCで「おしゃべりテレビ」というエンタメサービスをやっています。これは、テレビにコミュニケーションとエンターテイメントを追加し、それらを繋げて、更にカジュアルなものに仕上げていくというプロジェクトです。ほかにも、ECに付けたらどうか、RPGやクイズに付けたらどうかと、様々にできるわけです。そういう魔法のキーワードとして使っています。

 なぜそう考えているかというと、私はコミュニケーションの要素が、ゲームにとってとても大事な要素だと思っているからです。次世代のエンターテイメントは、コミュニケーションを上手く取り込んでいく必要があると考えていて、そしてそれはマニアのものではなく、一般ユーザーさんを巻き込めるくらいにカジュアルなものであってほしいのです。今あるゲーム機は、既にネットに繋がるわけですから、今後はネットを無視してコンテンツは成り立たなくなる時代になってくると思います。全部ではなく、半分くらいになるかもしれませんが。

 ネットワークでのコミュニケーションというのは、実際に話すだけではありません。対戦ゲームをネットに繋げて知らない人とやるのも、対戦ゲームという言語でのコミュニケーション、いわば非言語コミュニケーションという形になっているわけです。そういったものも含めたコミュニケーションが、ゲームにとって重要な柱になっていくというのが、ネット社会の方向性だと思います。

 我々はゲームのジャンルの枠組みを広げるとともに、コミュニケーションを、エンターテイメント、ゲームの中核に据えていきます。この両方を進めていくことで、面白く融合するのではないかと考えています。そういう方向性を2009年に練っていきます。

――“+CCE”の2008年の実績としては、「おしゃべりテレビ」の他には何があるのでしょうか?

宮路氏 : 12月中旬から勝手サイトをオープンしました。1つは「みんなで説明書」という、自分で説明書を作ってしまおうというユーザー投稿型の携帯サイトです。いろんな説明書が作られていて、三国志の説明書とか、オタクの説明書、正月の説明書など、訳のわからないものがいっぱい出ていて面白いですよ。

――カジュアルな「Wikipedia」みたいな感じですね。

宮路氏 : そうですね。ただ自分がチェックして、「これは私に当てはまるよね」というように楽しむもので、クイズのような、何かのゲームをやっている感覚になれます。「そうだよね」と共感しながらプレイしていく感じですね。

 2つ目は「ちなみに〜検定」というクイズのようなもの。検定サイトなのですが、キモは解答後の解説文で、「ちなみに」とマニアックな解説が出てきます。知識が増えて他人に喋りたくなる、という工夫の入ったものですね。

 あとは「FooDIAN.NET」というSNSです。人工知能のようなものを入れていまして、SNSで日記などを書くと、フーディアンというペットキャラクタ……宇宙人という設定なのですが、その日記の内容から自動でコメント書いてくれるのです。また宇宙人には「ラーメン派閥」、「うどん派閥」など食べ物のジャンルごとに派閥があり、他派閥の宇宙人と抗争を始めたりします。戦っている時に、自分の日記にラーメンのことを書くと、「ラーメン派閥」の攻撃力が上がります。こうして派閥抗争を支援して、勝つともらえるポイントが2倍に増えます。みんなで応援するために日記を書くわけです。

――みんなが書くから、自然とコミュニティも広がるわけですね。

宮路氏 : 私の「ラーメン派閥」は勝率が悪くて、負けてばっかりなのですが(笑)。でもこれは、我々の感覚ではゲームなのです。もはやゲームかゲームでないかの境界がわからなくなってきますが、単に日記を書いて見てもらおう、では終わらないところがゲームらしくて面白いのです。これら3つはゲームの要素をたっぷり入れ込んだエンターテイメント性の強いものに仕上がっているので、これもゲームのジャンルだと思っています。

“+CCE”から生まれた新サービス。いずれも勝手サイトで運営されているもので、無料で利用できる



■ 既存タイトルの続編から“OTAKU”向けまで幅広く展開

iアプリオンライン対応により、リアルタイム対戦が可能になった「TETRIS LEAGUE」
コンシューマ参入となるWiiウェア向けカジュアルタイトル「ポップルと魔法のクレヨン」
85万本を販売した人気RPGシリーズ「フライハイトクラウディア」の4作目も配信する
――他に2008年の取り組みとしては?

宮路氏 : ゲームでは、iアプリオンライン対応でリアルタイム対戦ができる「TETRIS LEAGUE (テトリスリーグ)」を12月に出しました。iアプリオンラインでTCP/IPの通信対戦ができるようになったことは大事なポイントです。他のキャリアさんでは既に始まっていましたが、3キャリア共にできるようになっていくというのが今後の流れなので、我々もリアルタイム通信を使ったネットワークゲームは出していきたいと思っています。

 今後はネットワークゲームがPCから携帯電話に移ると読んでいます。ネットワークゲームの会社に話を聞きに行くと、みなさん口をそろえて「これからは携帯電話でリアルタイムのMMOだ」と仰いますよ。まだインフラが揃い始めたばかりなので、これからはもっと普及していくだろうとみんなが思っていますね。まずはわかりやすいところで、「テトリス」のリアルタイム対戦をやったらどうかということで、配信しました。

 あとは携帯電話の中では、iPhoneやAndroidなどの新しいスマートフォンですね。今はAndroid用のゲームとして、「ケータイ少女ソリティア」というトランプゲームを1本配信していて、アメリカのオタク市場、英語の“OTAKU”にリーチしてみようかと思っています。コンシューマやPCのゲームでよく見る、リアルなキャラクタと表現を追求したようなものを作るのは、海外の方に任せておけばいいと思うのです。我々はアメリカ人の真似はできないので、だったら直球で、アメリカ人には作れない、日本人のオタク文化をぶつけた方がいいのではないかということで、新たな試みとして始めました。

 それから2009年の新しいこととしては、Wiiウェア向けのオリジナルゲームを1本、「ポップルと魔法のクレヨン」を1月に配信しました。

――遠藤雅伸氏(モバイル&ゲームスタジオ)が携わっているタイトルですね。

宮路氏 : はい。こちらは遠藤さんが発表会で言っていたとおり、基本的にゲーム性を徹底的に排除しながらも、遊び応えがあるというものです。

――とりあえず誰でも遊べるけれど、やりたいことをするのは難しい、というところですか。

宮路氏 : そういうイメージですね。間口は広く、出口は狭くといった感じになっています。インタラクティブ絵本というのはジャンルとして一般化しているものでもあるので、それなりにはいけるとは思いますし、ユーザーさんもさほど混乱せずに遊べるのではないかと思います。

 ほかには、ゲームらしいゲームとして、弊社のRPGの中では人気の高い「フライハイトクラウディア」の最新作が2月にiモードで出ます。いったんは3作目で完結させたのですが、シリーズ累計で85万も売れているので、次を望む声がとても多く寄せられました。

――85万という数字はすごいですね。

宮路氏 : モバイルのオリジナルタイトルは育たないというイメージが強く、携帯発でブレイクしたものはあまり聞かれません。しかし、これはオリジナルタイトルの中では相当ブレイクした方だと思っています。

――普通のゲームソフトと違って、モバイルゲームは何本売れましたというデータが出てこないので、こういう数字を聞くとインパクトがありますね。

宮路氏 : そういえば、オリコン調べの2008年の好きなゲームランキングで、「テトリス」が1位でした。

――そうらしいですね。日本人はいったい何年「テトリス」をやっているのか(笑)。

宮路氏 : いやいや、弊社が「テトリス」をやり続けているから人気が続いているのです(笑)。10代から40代までの年齢別や、男女別でも1位でした。圧倒的ですよ。でも、これはゲーム業界としては、まだ「テトリス」なのかという、由々しき問題ともいえますよね。「テトリス」ではほかにも先日、PTSDに効くという研究結果が出ていました。

――以前は認知症の防止に「テトリス」が効くという話もありました。

宮路氏 : 「テトリス」が脳に効くというところでしょうか。そういう記事が出始めると、ゲームの使われ方が、楽しいからやるだけではなく、楽しいプラスアルファに向いてきている気がしますよね。……ということで脈絡もなく色々やっています。ただ方針自体はきちんと定まっているので、それに沿って色々やっています。



■ テクノロジが進化しながら、昔ながらのWEBゲームが復権する

――ではちょっと話を広げて、モバイルゲーム業界について、何か2008年に感じた変化はありますか?

宮路氏 : テクノロジーで言えば、先ほど出たTCP/IPがキーです。あとは通信の高速化ですね。3Gの比率が圧倒的に高まって、さらに定額制を選択するユーザーがすごく増えました。キャリアによって違いますが、今は全ユーザーの3割から4割が定額制だと思います。仮に4割だとすると、約4,000万人が通信しっぱなしでOKという環境にあるわけです。そう考えると、どんどんパケットを飛ばすオンラインゲームの時代がもう来るのではないかと思います。インフラは整い始めたということですね。

――2008年に印象に残っているタイトルはありますか?

宮路氏 : 今、WEBゲーム(ブラウザベースで進行するタイプのゲーム)が若干復権しています。最近まではJavaゲームに押されていましたが、リニューアルして売ったら馬鹿売れした、という例が出始めています。

――それはビジネスのやり方を変えたからですか? それとも時代の変化なのでしょうか。

宮路氏 : 通信が高速化したというテクノロジー的な面はあります。あとはやはり、売る先が変わったからでしょうね。我々がそういったゲームを作っていた時は、ゲームユーザーに売ろうとしていたわけですが、ゲームユーザーはWEBゲームにすぐ飽きてしまいました。

――もっとクオリティの高いゲームを知っていますからね。

宮路氏 : そういうゲームユーザーではなく、ゲームは敷居は高いな、と思っている人に売るというやり方に変えたことが、WEBゲーム復権の理由の1つとしてあるでしょうね。やはり敷居を下げる、裾野を広げていくコンテンツも重要だということです。基本的にはゲームではないですが、GREEの「クリノッペ」やixenの「ボテン君」は、素直にかわいいなと思いますし、私はゲームっぽい匂いを感じますね。

 あとはFlashのゲームも伸び始めています。Flashゲームは、メモリが少ない、できる操作も少ないと色々な問題があって、作り手側は嫌います。しかし、ダウンロードしなくていいとか、敷居を下げるという部分では、相当大きな意味があります。マニアックではない人を引き込むにはちょうどいいのです。

 またFlashを実験の場にもしています。やはりコストが掛かると実験的なソフトって作りにくくなりますから。今のコンシューマも同じで、金がかかるから実験的なことはやれない、だから手堅く続編で……となって、どんどんやせ細っていく。それを解決するために、任天堂さんはWiiウェアやDSiウェアをやろうとしているわけですが、実は携帯電話も全く同じ構造で、我々はそれを同様にFlashで解決できないかと考えているところです。



■ 2009年は“よりカジュアル”と“超マニア”の両端がターゲット

2009年は「横ばい」としつつも、ターゲットを絞ることで伸ばせる分野はあるという
――では今年の話に移りたいと思います。まず2009年の見通しとして、モバイルゲーム業界の1年は明るいと思いますか?

宮路氏 : 全体の色は、明るくも暗くもなく、横ばいか微減かという感じでしょう。ただし、ジャンルによっては明るいものもあると思います。暗いジャンルと明るいジャンルがあって、総合すると横ばいかな、というイメージですね。その明るいジャンルを、我々が牽引できるかというところが1つのポイントになっていると言えます。

――そのジャンルというのは具体的には何だと見ていますか?

宮路氏 : それは言えないところですよ。我々も確信があるわけではないので、ここが明るいジャンルだと決め打ちするしかないのです。ただポイントとなるのは、やはり間口を広げることです。マニア向けではなく、一般ユーザーを巻き込んで間口を広げていく形のジャンルを作っていくことが大前提だと思います。

――2008年にとったカジュアルに進めるという方針は変わらないわけですか?

宮路氏 : そうです。カジュアル系路線はもっと掘れると思っています。

――まだまだユーザーを発掘し切れていないということですか。

宮路氏 : まだまだです。あとは、超マニアですね。真ん中の辺りは大体掘り尽くしているのですが、マニアとカジュアルの両端の層がまだ掘り尽くされてないので、両方あり得ると思っています。マニア向けでも、今までの作り方ではダメで、もっとマニアにいかなくてはいけません。オンラインゲームなどは、マニア中のマニアですから、今年中にブレイクするかどうかは別として、今年中に仕掛けてくる会社は多いと思います。

――環境も整いましたからね。

宮路氏 : 今まで待たなければいけなかった理由として、TCP/IPの問題が1つ、パケット通信の定額制の問題が1つ。あとは課金の上限額という問題もあったのです。昔は月額300円が主流でしたが、300円でマニア向けのオンラインゲームはコストの面で不可能です。マニア層を掘り出すには、5,000円、10,000円というのもありかもしれません。オンラインゲームの元年は、今年になるのか来年なのかはわかりませんが、元年に当たる年になる可能性はあると思います。

――2009年のキーワードになりそうなものはありますか?

宮路氏 : 先ほど話したとおり、コミュニケーションですね。コミュニケーションをゲーム分野と合体させていく取り組みです。先程の話とまとめると、上と下を狙うことと、ゲームとコミュニケーションの融合。この辺りしかないと思います。

――オンラインゲームといわないまでも、オンラインの要素は非常に重要になるということですね。

宮路氏 : 基本的にオンラインがコンテンツのベースになりますよ。オンラインだからこそできるゲームやエンターテインメントを意識していかないと、カジュアルもマニアも無理ですね。



■ 「セカンドライフ」をヒントに、有料サイトをさらに増やす

――次にビジネスの面について伺います。昨年は有料サイトが苦しい立場に立たされたという話もありますが、今年はどうなるのでしょうか。有料サイトはもうやめます、という話にはならないと思いますが。

宮路氏 : むしろ増やしていくことになると思います。我々は勝手サイトもやりますし、有料サイトもやっていくというだけの話です。有料サイトも、今はダウンロード課金と月額課金とがありますが、そういったビジネスモデルのチューンナップは必要になってくると思っています。

 ソフトバンク向けのサイトでは既に去年から、ダウンロード課金だったものを月額課金に移し始めています。割賦販売制度の開始で、ダウンロード課金が相当影響を受けたのですが、月額課金サイトはさほど影響を受けていません。月額課金は機種変更しようが何しようが、とにかく入りっぱなしなので、買い換えサイクルが長かろうが短かろうが関係ないのです。ですからビジネスモデルとして、ダウンロード課金ではなく、月額課金やアイテム課金といった新しいビジネスモデルにチューンナップしていくことで、公式サイトは何とかなるだろうと思っています。

――割賦販売が始まる前は、月額料金でアプリを出し続けるのは辛いから、ダウンロード課金にしたほうがいい、という話も聞かれましたが、完全に事情が違いますね。

宮路氏 : 全然違いますね。ダウンロード課金はなくなっていくとは言わないまでも、かなり減ると思います。ダウンロード課金から撤退するところが増えてくると、競争が減って残存者利益が残りますので、それで月額課金とダウンロード課金のバランスが取れていくと思います。

――ではアイテム課金はどう思われますか?

宮路氏 : アイテム課金も大事だと思いますよ。始めなければいけないと思っていますし、弊社もやるつもりです。それがオンラインゲームかどうかは、まだわかりませんが。

――それ以外に、何か携帯ならではの新たな課金の仕組みは出てくるのでしょうか?

宮路氏 : あとはそれらのハイブリッドがあるだけで、特別にはないですね。ただ「セカンドライフ」などはヒントになるのではないでしょうか。「セカンドライフ」は何をやるにもリンデンドル(ゲーム内通貨)を使わせますよね。ああいうやり方もありえると思います。アイテム課金イコール何らかの効用のあるアイテムを売る、というものとは違うやり方を「セカンドライフ」は取っていました。

 あとは広告を絡めるか。それも広告を見たらリンデンドルのようなゲームポイントをあげて、それを使ってアイテムを買うといった形ですね。自分がお金を払うか、広告を見るかだけの、入り口の差でしかないものの、ユーザーから見れば違いますよね。特に携帯は今後、広告モデルの発展という意味では大きいと思っています。

 今、ゲーム内広告は日本では難しい状況です。実質、ゲーム内広告が成功しているのは、携帯だけなのです。DeNAさん(モバゲータウン)がまさにそうで、広い意味でのゲーム内広告といえます。

 大事なのは、それだけ企業が金を払うということです。払い手側がいないと、広告モデルは成立しません。今、テレビからネットへ広告費のシフトが起きています。そしてネットの中でも、PCから携帯へのシフトが起こり始めているのです。そうすると、大きな意味で、モバイルゲームを絡めた広告モデルが出てくると思うのです。

――さらに他のビジネスの形としては、ジー・モードでは他社のサイトにゲームを提供していますよね。これも今後続けていくのでしょうか?

宮路氏 : ゲームのレンタルビジネスですね。続けていきます。

――このビジネスは可能性があるものなのでしょうか?

宮路氏 : そう思っています。我々も確信を持ってやっているというわけではないのですが。今言ったような話は、これから伸ばしていこうという話で、お客様である企業さん自身も、自分で携帯をどうしたらいいかよくわかっていないので、我々も確信を持って「これがいいのです」とは言えません。まだ大きなトレンドというところまでは来ていないので確信はないですが、そうなるのではないかという希望的観測は持っています。

――では、まだ本格的ではなく、先行してノウハウを蓄積している段階だということですか。

宮路氏 : 全てそうですよ。アイテム課金もそうですし、携帯電話向けのMMOもそうです。思い起こせば、今年が出だしの時期だった、といわれる年になるのではないかと思います。

――2008年は激動の時代と言いつつ、2009年はもっとどうなるかわからない、といった感じですね。

宮路氏 : もっとどうなるかわからないけれど、ワクワクする出来事がいっぱい待っていそうな気はしますね。



■ 人材発掘、海外展開、コミュニティサイト……宮路氏が予想する今後のモバイル業界

宮路氏の盟友ともいうべき、モバイル&ゲームスタジオ代表取締役会長の遠藤雅伸氏(右)。2008年のCEDECでは2人が並ぶ講演もあった
――次は方向を変えて、モバイルゲームの開発やビジネスについての考え方についてお聞きします。まずジー・モードというと、遠藤雅伸氏を始め、“レジェンド級”のクリエイターを招いてモバイルゲームを作ってもらうというスタイルが印象的です。こういう人材発掘のやり方は今後も続けていくのでしょうか?

宮路氏 : そうですね。中堅からレジェンド級まで力のあるクリエイターを発掘して、一緒にやっていただくというのは、もちろん続けます。それにプラスして、今後は若い感性を取り入れていくのも強めていきたいと思っています。設立当初はとにかくレジェンド級で固めましたが、最近は若手の登用も進めています。

――新しいゲームのジャンルを作り、今までないものを提供するには、新しい人も必要だということですか?

宮路氏 : どちらかというと、感性をばらけさせたいのです。レジェンド級の人も、非常に感性が鋭いので、今風のものが作れたりはします。しかし特定の人に集中してしまうと、コンテンツのカラーが似てしまいます。

――コンシューマのベテランクリエイターを招くことも、今の時代に合わないというわけではないのですね。

宮路氏 : 全然違います。我々がクリエイターに要求することはとても簡単で、我々のユーザーのニーズに沿ったものを考えてくれ、ということです。クリエイターが作りたいものを作れ、ではないのです。そこが大事なポイントで、モバイルコンテンツは制作サイクルが短いので、ユーザーのニーズに沿ったものを作りやすいのです。今まではどうしてもゲームらしいゲームになっていたものが、「こういうユーザーに向けて実験的なものをやります」という形で提案してくれるようになったので、今までよりも相当面白いものができると思っています。

――それとは別に、新しい人も起用していくと。

宮路氏 : 我々の考え方が、ユーザーさんから乖離している部分が見え始めているので、ユーザーさんの目線にもう一度立ち返りたいというのが、今年のテーマです。作り手側、サービス側としての惰性が出始めているので、もっととがったものがあってもいいのではないかと思います。

――では次の話題です。「ポップルと魔法のクレヨン」でWiiウェアに進出されるわけですが、ダウンロード配信できるプラットフォームは他にもあります。こういった形でのコンシューマ向けの展開というのは、今後さらに広げていくつもりですか?

宮路氏 : 状況次第です。ビジネス上にメリットがあればやりたいと思います。基本的にはネットワークのデバイスは全てやりたいと思っていて、インフラがちゃんと整っているものは、ぜひ手を付けてみたいですね。ただ、今一番の問題はレギュレーションです。わかりやすい例でいうと、コンシューマでは不特定多数とのコミュニケーションが原則禁止なのです。コミュニケーションに制限が付くと、エンターテイメントにカジュアルとコミュニケーションを足していくという根幹が崩れて、単なるダウンロード販売に終わってしまうので、パッケージソフトからの質的な変革は難しくなります。環境が整えば、もっとアクティブにやりますが、とりあえずは様子見かなというところですね。

ジー・モードは以前から、海外でもモバイルゲームを提供している。ただ、「普通のいいゲーム」を持っていくのでは、上手くはいかないという
――次は海外展開についてです。コンシューマでは以前から、海外展開の重要性が叫ばれていますが、モバイルゲームに関してはいかがでしょうか?

宮路氏 : モバイルゲームでは、日本メーカーの海外進出は基本的に上手くいっていませんね。我々も今まで上手くいっていなかったので、作戦を変えて“OTAKU”向けに路線変更したわけです。

――以前からNokia端末などにもゲームを提供されていましたが、それは不調だったのですか。

宮路氏 : 普通に、携帯電話のいいゲームを持って行くという形でやっていましたが、あちらの市場はキャラクタや映像に寄っています。iPhoneのゲームなどを見てもらえればわかるのですが、ゲーム性はなくても映像は綺麗でキャラクタが格好いい、というタイトルがとても多いのです。つまり、キャラクタが立っていないと、そもそも手にとってもらえなくて、その手にとってもらうハードルが高すぎるのです。我々は質のいいゲームは作れるので、次は手にとってもらえる仕掛けに注力していこうというところです。そこで海外のセンスに合わせたコンテンツを作るのは難しいので、“OTAKU”向けと割り切って展開するわけです。

――海外事業を1つの柱にする、といったところまでは、まだ考えてはいないということですか?

宮路氏 : まだないですね。特にこのご時世ですから、海外は厳しいと思います。

――逆に言うと、日本国内でもまだ携帯のビジネスはできると考えているわけですね。

宮路氏 : もちろんできますよ。売り上げも増やしていくつもりですし、海外は海外で“OTAKU”マーケットを狙います。日本でもそうですが、オタクの人たちというのは、サイフがもう1つあるのかと思うくらい、オタク物品に対してのお金の使い方の勢いが違いますよね。ですから、不況下の米国でも強そうな気がするのです。ただマーケットは小さいので、大手企業が参入するのは難しいと思います。我々のような小さなところが実験的にやる分にはちょうどいいと思っています。

――まだ配信直後で具体的な数字は出ないかと思いますが、今後が楽しみですね。

宮路氏 : Android用の「ケータイ少女」は、今は無料で提供していて、結構ダウンロードされています。あとは、今後用意する有料版にお金払ってくれるかどうかがカギですが、おそらく払ってくれるだろうと期待しています。評価もとても高くて、ユーザーさんが「これは素晴らしいゲームだ。キャラクタもいい」と感想を書き込んでくれています。ちなみにセリフはあえて日本語のままにしてあります。“OTAKU”の人は結構、日本語を学びたいという気持ちがあるようなので、そういう形でも“OTAKU”向けにしています。

――それが海外向けの1つ目の戦略ということですね。

宮路氏 : とりあえず、これで様子を見たいところです。海外の携帯マーケットはかなり混乱していますので。

――それはiPhoneが影響しているのですか?

宮路氏 : キャリアやメーカーなどのマーケットを主導する絶対的なプレーヤーの不在が原因です。我々が今できることは、日本人が作るコンテンツが売れるマーケットを探すことです。弊社の場合は“OTAKU”向けのほかにも、100本以上の著作権を持っているデータイースト作品という切り口もありますので、そのどちらかかなというところです。

――いまiPhoneの話題を出しましたが、ジー・モードからiPhone用のゲームを出す予定はありますか?

宮路氏 : これから出していきます。やはり萌え系、“OTAKU”系で。まずは北米市場だけを狙って様子を見ていきます。

――次の質問です。2008年は携帯向けのコミュニティサイトの動きが活発だったように思いますが、今後1,000万会員を超えるような、第2のモバゲータウン的なものは生まれると思いますか?

宮路氏 : おそらく、当面はGREEさんがもっと伸びると思います。この2つは目指している方向が違いますね。今後は無料ゲームがいっぱい出てきて、ゲームだけで引っ張るのでは厳しくなります。ゲームの部分で差別化を図れないとすると、次にコミュニティ部分の勝負になって、どちらの出来がいいかという話になってくるはずです。ですから第2のモバゲーといっても、ゲームを出しますという切り口のものは、既にあるので難しいでしょう。ユーザーさんに、わざわざ乗り換えさせるほどの魅力がないとダメで、それにはSNSなりゲームなりに魅力がなくてはならないと思います。そしてユーザーさんも使い分けていくのではないでしょうか。

――一極集中にはならないと思われますか?

宮路氏 : ならないと思います。今はそうなっていますが、モバゲーさんもGREEさんも、どこかでピークアウトして、その分、乱立する形になると思います。乱立するといっても、GREE、モバゲー、mixiという3強のポジションが少しずつ下がりながら、小さいものが出てくるという感じになるのではないでしょうか。自分が生活しやすいSNSなのかがすごく大事で、3つの中に自分と波長が合うものがないという人が出てきたら、それは多くの受け皿があればそちらに流れていくはずです。

――そういう受け皿の1つを狙ったところに、ジー・モードの新しいサービスもあるわけですね。

宮路氏 : 乗せていければいいと思います。我々は我々で、エンターテイメント系のコミュニケーションサイトという特殊なものを狙っています。

――では最後に、読者に向けてメッセージがあればお願いします。

宮路氏 : ゲーム好きの方は、弊社の勝手サイトのサービスをぜひ使ってみてください。あるいは、我々が作っているゲームらしくないゲームを見てみてください。ゲームの可能性をもっと広げていくことが大事だという我々のメッセージは、口や文字では表現できないので、とにかく触ってみてください。それを見て、作り手の人は「なるほど、ゲームの可能性というのはまだまだ広がるんだ」と新たなクリエイティブに邁進してもらいたいですし、ゲームユーザーさんには新しい面白さを感じてもらえるはずです。

 クリエイターの方は、ゲームの観点でどう作られているのかを考えながらやってもらえると、より楽しめると思います。単なるSNSだと杓子定規に考えると、工夫の余地が見えなくてつまらないと思いますが、そうでないところがあるというのを発見してもらいたいですね。

――ありがとうございました。

□ジー・モードのホームページ
http://www.g-mode.jp/
□関連情報
【2008年12月19日】ジー・モード、Wiiウェア向けに「ポップルと魔法のクレヨン」を発表
コミュニケーションを軸とした携帯向け新サービスなども続々発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081219/gmode.htm
【2008年12月17日】ジー・モード、「空気読み。」ディレクター栗田祐介氏インタビュー
変わり種でも“暇つぶしを届ける”を守るモバイルゲーム作り
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081217/gmode.htm
【2008年9月9日】CEDEC 2008 モバイルゲームセッションレポート
キャリアとコンテンツプロバイダが業界の未来を読む
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080909/mob.htm
【2007年9月29日】ジー・モード宮路社長が明かす、モバイルで勝ち続ける秘訣
ターゲットは「ゲーム機を持っていない全ての携帯ユーザー」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070929/gmode.htm

(2009年2月4日)

[Reported by 石田賀津男]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
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