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CEDEC 2008 モバイルゲームセッションレポート
キャリアとコンテンツプロバイダが業界の未来を読む

9月9~11日 開催

会場:昭和女子大学

 今年のCEDECは10周年を迎えるということで、過去10年を振り返りつつ、これからの10年を占うというトークセッションがいくつか開かれている。さらにモバイルゲームでは、iモード、EZweb、J-SKY(現在のYahoo! ケータイ)の提供開始から10年目ということもあり、過去の歴史を振り返る話題が多い。

 ただ今回はモバイルゲーム関連のセッションが3つとそれほど多くはなく、開発のポイントや技術面を語るセッションも少なかったため、内容としてはやや寂しく感じられた。従来のゲーム業界とは別の進化を遂げてきたからか、または歴史が浅いためかはわからないが、もっと講演者を増やしてもらいたいところだ。



■ モバイルゲームの大御所2人が過去10年を振り返り、今後を占う

モバイル&ゲームスタジオ代表取締役会長の遠藤雅伸氏。「ゼビウス」、「ドルアーガの塔」などを手がけた伝説級クリエイター。CEDECでは2年前に講演している
ジー・モード代表取締役社長の宮路武氏。以前はゲームアーツを立ち上げ、「グランディア」などを手がけた。CEDECでは昨年講演している
 モバイルゲームセッションのトップバッターは、株式会社モバイル&ゲームスタジオ代表取締役会長の遠藤雅伸氏と、株式会社ジー・モード代表取締役社長の宮路武氏によるトークセッション。「モバイルとモバイルゲーム これまでの10年これからの10年」と題し、モバイルゲームの過去10年を振り返った後、今後モバイルゲームを作る際のポイントとなる話題がいくつか挙げられた。

 まず1999から2000年にかけては、今で言うブラウザゲームが主流の時代。宮路氏は、2000年7月にジー・モードを設立している。「NTTドコモさんが、携帯電話でゲームを出したいのだが、どんな機能を載せたらいいのかと尋ねられ、そこで興味を持った。その際、ゲームマーケットは携帯のマーケットに比べればニッチマーケットでしょう、といわれてショックを受けた」という。

 2001年には、各社で携帯アプリが立ち上がり、第3世代携帯電話が登場した。初期の携帯アプリは、プログラムで10KB、スクラッチパッド(記憶領域)20KBという極めて小規模に制限されており、さらにアプリの形を取らせるためのベースだけで数KBを使用する状態だったという。遠藤氏は「この頃は、技術者が暇を見て1日で作ることが多かった。それを多少インターフェイスを直したりして出すとそれなりに評価された」という。

J-PHONEで展開された「Mystia」は、長い開発期間をかけつつも、RPGアプリとしては早期に出たことで、大ヒットタイトルとなった
 この頃、遠藤氏と宮路氏が手を組んで制作した「Mystia」というRPGがある。遠藤氏はこの開発について、「どこで容量を切り詰めるか考えるため、プログラムから音楽まで、全て1人でやるしかなかった。1年もかけて制作したのはこれだけ」とも語った。遠藤氏はその後、2004年にモバイル&ゲームスタジオを設立。「Mystia」の開発と今後の展望から、「今までは少数精鋭で作る主義だったが、ある程度の規模でやるために会社を立てた」という。

 また宮路氏の身に起きた大きな事件として、J-PHONEがVodafoneに変わったことが挙げられた。「大打撃を受けた。それまでは伸びていたのに、Vodafoneに変わってから落ちっぱなし。流通経路であるキャリアに、どれだけ理解があるかが成長の鍵だと痛感した」と語った。

 しかし悪いことばかりでもなく、モバイル&ゲームスタジオが開発し、ジー・モードから配信された脳トレ系ゲームがヒットする。遠藤氏は、「携帯電話でしか遊べないタイトルは、半数以上のユーザーが女性だった。そこはきちんと取っていかなければと思い、カジュアルゲームに真剣に取り組んだ」という。

 このときのポイントとして、「女性向けのカジュアルゲームで、ゲーム性を考えなくなってきたのもこの頃。今は面白ければいい」と、ゲームにこだわらずより広義なエンターテイメントを目指す方向性も見せている。宮路氏も、「ゲームクリエイターは、過去の積み重ねでできた決まりごとからゲームを作っていくことが多い。しかし生活シーンが変わってきたら、それを疑っていかなければならない」と、柔軟な姿勢の重要性を説いた。

割賦販売により端末の買い替えサイクルが鈍ったことが、コンテンツプロバイダにとって痛手になっているという
 そして2008年現在。宮路氏が現在、最も気にしている問題は、割賦制販売による端末買い替えサイクルの長期化だという。「問題点は2つあり、1つは高性能端末の普及が遅くなり、新旧端末の混在する期間が長くなること。アプリの機種対応をより古い端末まで見なくてはならなくなり、新しいソフトを作りづらい。もう1つは、ダウンロード型課金がやりづらいこと。今までは端末を買い換えると、新しいゲームを買っておこうという動きがあったが、今は買い替えないので購入してもらえない。これがモバイルゲーム業界に大きなダメージを与えていると思っている」と説明。また「国の指導が入ってこういう形になっているが、業界にとっても、ユーザーにとってもプラスになっているのか、そろそろ総括してほしい」とも述べた。

 過去の話題に続いて今後の展開として、「家庭用ゲーム機を超える携帯電話は登場するか」という話題には、遠藤氏が「PSPなどの携帯ゲーム機よりも、気軽に遊べるという方向でいい。P905iには『リッジレーサーズ』が入っていて、最初は嬉しかったが、2、3回遊んだら、もうやらなかった。今後も家庭用ゲームに近づく方向には流れないと思う」と述べた。

 「ゲームの作り方はコンシューマとモバイルで違うか」という質問に対しては宮路氏が答え、「携帯電話は、話すことをはじめとしたコミュニケーションが第一。コミュニケーションはエンターテイメントで、あると楽しいから買っている。それをいかにして、ゲームのようなエンターテイメントに取り込んでいくかが重要。コミュニケーションではモバイルが先端を切っていかなければならないし、ジー・モードが先導するんだと思って動いている」と語った。同社は先日から、コミュニケーションを核とした「+CCE戦略」を掲げており、特にモバイルでその動きを強めたいという意思表明でもあるようだ。

 「10年後の端末はどう進化するか」という質問には、遠藤氏が「みんなパケット定額で、高性能化・高速化が進むといった、想像できる範囲内の進化はしていくと思う。その中で家庭用ゲーム機と違うのは、いつも持っていることと、通信に親和性が高いこと。どこでもできる面白いものを作れば、ゲームの文法に乗っていないものでも、モバイルゲームとして面白いものができるのではないか」と語った。

 モバイルゲームの方向性としては、宮路氏が「モバイルはコンビニ」というキーワードを示し、「プレイステーション 3でヘビーなゲームをやっている人が、モバイルでもヘビーなゲームをやりたいかというと、そうではない。モバイルは簡単で間口が広いということで多くの人が集まってくる。気軽に遊べることと、すぐに買えることがモバイルならではの一番優れたところ」と、ユーザー心理から見たモバイルゲームのポイントを挙げた。

 遠藤氏も開発について、「女の子に、これは自分が作ったゲームだといって携帯ゲーム機をだすと引かれるけれど、モバイルゲームだと普通に出して話ができる。コミュニケーションツールになっているし、敷居が低いのだと思う。家庭用ゲームは格好いいけれど、理解してくれる人も狭まってくる。モバイルゲームをやっている人は視野が広くないといけない。ゲームはこうだという固定概念を持っている人は成功しない」と持論を述べた。

 さらに話題は、最近のトレンドである無料ゲームへ。宮路氏は、「コンテンツにはお金を出すものだが、携帯電話では無料というのが大事になっている。将来は、ゲームは無料で広告モデルという形になっていくことも考えておいたほうがいいかもしれない。家庭用とは違う方向に進化するかもしれない。今は共存する。自分たちも無料をやるか、有料だから面白いといわれるものを提供するか」と語った。

語り口は随分違う2人だが、過去のゲームを熟知しつつ、現在はモバイルゲームに注力しているというところで共通している。そこにある思いも、やはり近いものがある
 講演のまとめとして宮路氏は、「携帯電話は年間6億台売れている。6億という数字はインパクトがあるが、家庭用ゲーム機のプラットフォーマーのようにコンテンツをお金に換えることを考えてくれる場所がないため、商売がとても難しい。ただ携帯電話の面白いところは、いろんな機械を取り込んでいくという部分。携帯ゲーム機も、携帯電話にくっつく可能性があるサイズのものもあるし、将来的にはその境目がなくなっていくこともあるかもしれない。モバイルゲームも見ていないと、将来的にはコンシューマビジネスはできなくなるのではないか」と語った。その根底には、「ゲーム市場は携帯市場に比べればニッチ」という最初の一言が今でも存在するようだ。

 遠藤氏は、「家庭用とモバイルはぜんぜん違うものだと見ている。モバイルだと誰でも作れて、承認もなしに出せるという部分もあるので、コピーも仕方なく起こる。その中で現金化するのが難しい。そういったコントロールされていない市場だという問題はあるが、広く人に届くものでもある。ネットワークを使った新しいものもできる。何より、僕自身が遊び方が違う」と述べた。

 両者から感じられる共通した思いは、「モバイルゲームは、今までのゲーム開発の線上にはない」ということだ。自ら過去に家庭用ゲームやアーケードゲームでヒット作を作っていながら、「それに固執していては失敗する」ということを繰り返し強調している。今面白いものは何か、携帯電話だからこその面白さは何かを考えるのが、モバイルゲームの成功の鍵になるのかもしれない。



■ キャリアはプラットフォームはどう進化させるのか?

 次のモバイルゲームセッションは、「携帯電話キャリアと考えるモバイルゲームの未来」と題されたもので、キャリア2社の担当者が今後の展開について語った。登壇者は、株式会社NTTドコモ コンシューマサービス部コンテンツ開拓担当課長の栗田穣崇氏と、KDDI株式会社 auサービス企画部部長の竹之内剛氏。株式会社スクウェア・エニックス モバイル事業部マネージャー兼プロデューサーの和智信治氏がモデレーターを務めた。

NTTドコモ コンシューマサービス部コンテンツ開拓担当課長の栗田穣崇氏
 まずキャリア2社の現状について、それぞれプレゼンテーションが行なわれた。栗田氏はまずiモードゲーム市場について、1カ月で約40億円という数字を示した。全体としての数字はここ3年ほど横ばいだそうだが、ジャンル別ではRPGや恋愛ゲームといった比較的ヘビーなジャンルに人気が集まっているという。ただし分野としての1位は以前と変わらず、ミニゲームが圧倒的。また新ジャンルの「直感ゲーム」のサイトも、ユニークユーザーで20~30万人ということで、それなりの成果をあげている。

 端末については、これまではシリーズごとに性能を横並びにするのが通例だったが、今冬発売の端末からは、よりコンセプトを重視した形で展開していきたいとしている。ユーザーのタイプやセグメントに合わせた端末を提供するとともに、ユーザーインターフェイスの多様化も図るという。そしてiアプリについては、同じく今冬発売の端末からパワーアップし、リアルタイム通信や開発コストの削減策などを打ち出すという。

 この辺りの具体的な内容は、10月に開催される東京ゲームショウで発表するとしているが、「TCP/IPはこの辺りでやりたい」というコメントを聞けた。現在、NTTドコモはアプリからのTCP/IPの使用を認めておらず、リアルタイムに通信するオンラインゲームには向かないHTTPによる通信で対応している。他社では、auのBREWは最初からTCP/IPを使用でき、ソフトバンクモバイルも昨年末に開放した。NTTドコモはこの部分においては最後発となっていたわけだが、これが開放されることで、同社のオンラインゲームも大きく弾みがつくことになるだろう。

ジャンル別の傾向としては、最近は比較的ヘビーなタイトルの人気が高まっている 端末は今後、よりユーザーのターゲットを絞ったものを出していく戦略をとるという iアプリでは、リアルタイム通信や制作コストの低減といった気になるキーワードも


KDDI auサービス企画部部長の竹之内剛氏
 次にauについて竹之内氏がプレゼンテーションした。現在auのコンテンツ流通額の中でトップは着うたフルなどの音楽分野。以前はトップだったゲームは徐々に伸び続けてはいるが、音楽の勢いに追いつかず2位となっている。

 ここで注目すべきデータとして、年代別の利用額が示された。10代のユーザーは年度をまたぐと利用額が低下して徐々に持ち直すのだが、ここ2年はその下げ幅がかなり大きく、持ち直してこないという。これは「モバゲータウン」などの無料ゲームが浸透し、有料コンテンツにお金を出さないためだと分析している。竹之内氏は、「ゲームはタダなんだという意識をつけられないようにしたい」と述べた。

ゲーム分野は音楽に抜かれて現在2位。しかし単独では横ばいか緩やかに上昇している 年度をまたいだ際の10代の利用者数の減少がものすごい。無料ゲームが浸透しているためだと考えられる auも、ユーザーのニーズやスタイルに合わせたコンテンツを提供したいとしている


モデレーターを務めたスクウェア・エニックス モバイル事業部マネージャー兼プロデューサーの和智信治氏
家庭用ゲーム市場と比べれば、モバイルゲーム市場はまだ規模は小さい。しかし伸び率ははるかに高い
 続いて、3氏によるパネルディスカッションが行なわれた。ここでは基本データとして、2002年から2007年の間に、モバイルゲーム市場が4倍に成長し、現在は1,000億円規模に達していると発表された。前述のデータを考えれば、NTTドコモだけでも年間約500億円となるため、納得のいく数字だ。ちなみにモバイルビジネス市場全体では1兆円強で、ゲームはその1割を占めることになる。

 今後の成長の鍵としては、栗田氏は「まだ市場は成熟しておらず、特に50代、60代の高年齢層が使っていない。ただ若年層が無料ゲームに流れていることには注意が必要だ」と述べた。竹之内氏は、「ゲーム単体ではなく、新しい、今伸びているビジネスと絡めていくことが必要ではないか」と語った。その一例として、同社で行なわれているWiiポイントの携帯電話での決済について、「思った以上に利用がある。課金だけでなく、ゲームでも連携できると面白いのでは」という話も出た。

 今後の端末の進化については、栗田氏は「今は踊り場で、成熟させるフェイズ。今は魅力的なゲームがあっても、認知度が低いことが課題。バーティカル検索(特定分野に特化した検索機能)の実装や開発コストの削減策などを強化したい」とした。対するauの竹之内氏は、「BREWのTCP/IPの通信が今は500msで動いているので、秋冬にかけてこれを増やそうかと思っている」と具体的な話題を展開。また「店舗でコンテンツ販売も始めるなど、ユーザーのタッチポイントを増やしていく」と語り、こちらも認知度を高める戦略を重視している。

 「キャリアからコンテンツプロバイダに期待したいことは?」という質問には、竹之内氏が「もし自分がコンテンツプロバイダなら」と逆の方向から「キャリア間のプットフォームを揃えて欲しいと思うし、そういった努力が必要な時期なのかもしれない。ソニーや任天堂に対抗する、日本発のキャリアプラットフォームができるといいな……と個人的に夢見ている」と述べた。これは以前から、キャリアとコンテンツプロバイダが顔をあわせる機会では必ず出る話題だが、個人的とはいえキャリア側から肯定的な意見が出たことは面白い。

 ユーザークリエイトコンテンツの販売については、栗田氏は「技術的には可能だが、著作権などの問題がある」、竹之内氏は「税金などの対応もある」と、すぐにはできないという姿勢を見せた。ただ携帯課金を開放すれば、そこに新たなビジネスがあるとは考えているようで、竹之内氏は「遠くない将来にはやりたい」と語った。

 講演のまとめでは、両者ともに、ユーザーがモバイルゲームの存在を知る機会を増やしたいという意思を示した。プラットフォームとしてはかなり性能も上がってきているが、ユーザーへの認知度がそれに沿っているとはいえない状況で、キャリアとしても今はそこに最も注力すべきだと感じているようだ。特にオールドゲームの復刻という形での展開は両社が進めており、ファミコン世代ないしそれ以上の年代に対して、より強くアピールして認知度を高めたいという思いが感じられた。今からそういった層を狙ったアプリを用意しておけば、キャリアと連携が取れた展開も期待できるのではないだろうか。



■ ユーザーが使うシーンを考える……Flashゲーム最前線からのメッセージ

ORSO代表取締役社長 エグゼクティブプロデューサーの坂本義親氏
講演の最初に、「まず遊んでみましょう」ということでQRコードを表示。来場者が一斉に携帯カメラを向けて読み取っているという、一種異様な光景も見られた
対応端末はもう普及しているという坂本氏。実際、今売られている端末でFlash非搭載の端末を探すほうが大変な状況ではある
 最後のモバイルゲームセッションとなった「携帯Flashの無限の可能性」では、株式会社ORSO代表取締役社長 エグゼクティブプロデューサーの坂本義親氏が、Flashゲームアプリの現状と、制作におけるポイントについて語った。

 ORSOは「モバゲータウン」で「釣りゲータウン」などのFlashゲームを提供していることで知られるモバイルゲームメーカー。従業員60名のほとんどはFlashゲームのクリエイターだという。また坂本氏自身は、過去に北米、アジア、ヨーロッパのキャリアや端末メーカー、コンテンツプロバイダとのビジネス経験も持っているベテランである。

 坂本氏はまず、自らがFlashゲームを開発するに至る経緯として、「自分自身、ゲームをしなかった。電車の中でゲームをしても恥ずかしいと思わない、人に薦めたいと思えるようなものにしたいと思った。ゲームをファッションにしたかった」と語った。音楽大学出身で、以前は着メロなどを手がけていた坂本氏ならではの発想といえるだろう。

 次にFlashの現状について説明。対応端末については、「普及している端末のうち、98%は対応しているといわれている。登場から5年で、ほぼ普及したといっていい状況になっている」と述べた。これは日本に限らず、Nokia端末などでも搭載されており、Flashのモバイルゲームは世界で広く展開されている。

 続いてFlashの利点について、「あまり難しいことをしなければ、世界共通で動く」ということを挙げた。Flashアプリはキャリアを問わず遊べるというイメージはあったが、Nokia端末でも動作するということなら、確かに世界各国どこでも提供可能といってもいい。もちろん端末のテストなどは必要になるだろうが、他の言語に比べれば敷居は低いといえるだろう。

 次にビジュアルが美しいこと。最近はVGA液晶など高精細を売りにする端末も多いが、ゲームアプリでVGA対応というのはそれほど多くない。Flashは元々ベクターイメージなので、高解像度の恩恵を受けやすいというわけだ。坂本氏は他に、WEBページからシームレスにつながりダウンロードやインストールが不要であること、ActionScriptなどの簡易性で制作時間を短縮できること、ゲーム以外にもメニューや待ち受けなどさまざまなコンテンツに対応可能であることを挙げた。

 逆にデメリットについては、容量が現状最大で100KBで、処理能力がCPUとメモリに依存していること、ゲーム中に間違えて方向キーの左などを押すと前のページに戻りゲームがリセットされること、複雑なコンテンツを作ると端末の動作チェックが大変なことなどを挙げた。ただこれらについては、キャリアの技術仕様ページや、Adobeのバージョン別機能比較表、「Device Central CS3」などを参照することで対応はできるとしている。

 技術的な話のほかにも、坂本氏自身の開発ポリシーも語られた。「自身がユーザーであることを忘れずに作って欲しい。携帯電話が使われるシーンを分析し、このコンテンツがどこで使われるかを考えることが大切」と述べた。これはFlashゲームに関わらず、モバイルゲーム全般において言えることだろう。

 坂本氏は自社で制作した「釣りゲータウン」を紹介し、「いつ遊ぶかを考えたときに、よく『暇つぶしに』というが、この言葉が嫌い。自分だけの時間を、いかに楽しんでもらうかを考えなければならない。使われる状況を考えつつ、細かい部分でユーザーの身近な環境に持っていくことが大切。ライフスタイルに溶け込むことをコンセプトに作っている」と述べた。

 1分とかからずプレイが終わるようなカジュアルなゲームは、確かに「暇つぶし」には最適かもしれない。ただその「暇」というのは、どんな時にできた暇なのか、ユーザーにとってどれほどの価値がある暇なのか。そういった方向に目を向けていくことで、より遊びやすく、生活の隙間に入り込むゲームができるということだろうか。これも過去のゲーム文化にはない、モバイルゲームならではの発想である。

「ベクターイメージのFlashは、高解像度端末でグラフィックス面でも有利」という考え方は面白い。デメリットも挙げたが、対応策も示してくれた Flashならではの長所として、待ち受け画面などゲーム以外のコンテンツにも派生できることを挙げた。こちらは清水寺をテーマにした待ち受けFlash
自らがユーザーの立場になって、どんなシーンで遊ばれるのかを考えることの重要性を説いた 「釣りゲータウン」は、「自分だけの時間」を最大限楽しんでもらう、ライフスタイルに浸透するコンテンツを目指している


□CEDEC 2008のホームページ
http://cedec.cesa.or.jp/

(2008年9月9日)

[Reported by 石田賀津男]



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