|
会場:ディファ有明
「アキバプロレス」は、秋葉原的な要素をフィーチャーしたプロレス興行。8月16日に秋葉原UDX内「アキバスクウェア」にて旗揚げ興行「アキバプロレスβ版 アキプロ大地に立つ?」を開催。おでん缶が元ネタの「おでん・カーン」など、ユニークな選手が多数登場し会場を大いに沸かせた。第2回興行は、サブタイトルに“ゲームリミックス”とあるとおり、株式会社スクウェア・エニックス、株式会社カプコン、株式会社コナミデジタルエンタテインメントなど複数のゲーム会社が協賛。さまざまなコラボレート企画が行なわれた。
一般的なプロレス興行の場合、こうしたコラボレート企画は“華を添える”といった体になるのが常だが、そこはコアゲーマーでサービス精神旺盛な菊タロー選手が主催するアキプロゆえ、そんなエッセンス程度のレベルでは終わらない。アキバプロレスには、新宿歌舞伎町「ダイヤモンドロマンス」でホストを務める悪のレスラー「リオン」と、その魔手から秋葉原とオタクを守る菊タロー選手ら「正規軍」との対立がストーリーの軸に据えられているが、そのうえに各コラボレート企画をうまく融合させてきた。
クネクネとした妖しい動きを見せるエッグマンと、悪のマネージャーと化した時田氏。すわ、ダンボール肉マン選手の危機! ……かと思われたが、ゲーム同様にHPが1しかないエッグマンの戦闘力は微々たるもの。パワーファイターのダンボール肉マン選手に強烈な一撃を見舞われると、生命の危機を感じたのかすぐにリングを降りようとしてしまう。時田氏に制止されて何度かリングに戻り、低空ドロップキックなどで勝機を見出そうとするエッグマンだが、必殺技のエッグキック(ソバット)で逆に足を痛めるなど、圧倒的な力の差はいかんともしがたくアッサリと敗北。
誤爆チョップで正気を取り戻した時田氏は、ダンボール肉マン選手に感謝するとともにガッチリ握手してハッピーエンド。興行の流れを左右するといっても過言ではない“第1試合”という大役を、見事果たしてみせた。
言葉巧みに司会の「おぐりゆか」お姉さんを洗脳して絵を売りつけようとするリオンとエウリアンに憤慨し、乱入する練習生1号のみずしな孝之さん(本業:漫画家)と新人練習生のさがわまことさん(ご老人)。だが、さがわさんは戦闘員の威嚇に怖気づいてしまい、みずしなさんは腕にダメージを負い「こ、これではもう漫画が描けないー!!」と絶叫して客席の爆笑を誘ってしまう。 その窮地に現われたのは、他でもない天体戦士サンレッド。電脳戦隊アキバファイブ「アキバビリジアン」の代役ということで当初はバックレを決め込んでいたようだが、おぐりお姉さんが「溝の口に新装開店するスロットの入場券を差し上げます!」と宣言するや否や、花道の奥からふてぶてしい態度で登場。だが、私服にくわえて時々タバコ休憩するというやる気ゼロ状態、さらにはリングサイドにたどり着いてもコーナーのクッションをまくらにエプロンサイドで寝転んでしまう。
そんなとき、会場に突如こだまする朴訥とした会話。なんと、サンレッドを応援するために「ヴァンプ将軍」と「戦闘員1号」がアキバプロレス観戦にやってきたのだ。新橋からゆりかもめできたため、コミケ客でごったがえす駅で混乱し会場到着が遅れたのだという。「オイ! なんでお前ら観にきてんだよ!」と、リングサイドの特等席にちょこんと座ったふたりに食ってかかるサンレッド。当初はやる気ゼロだったものの、アキバブラウンと戦闘員の場外乱闘時、ぶつかってきた戦闘員にキレて一気にヒートアップ。戦闘員を一蹴し、大の字になったエウリアンにマウントパンチを雨あられと浴びせたところでレフリーストップ。原作どおり容赦のないケンカファイトで一方的な勝利を飾った。
右足を負傷しているということで、杖をついてリングにあがってきたジャクソン・フロリダ選手。レフリーのボディ・チェックで右足を触れられると悶絶するなど、はたしてマトモにファイトできるのか? といぶかしがられた矢先、「アースマラソン」で話題を呼んだ「間寛平」師匠の芸風よろしく、おぼつかない足取りで杖を振り回しながらリングを徘徊するなど、抜群の存在感を発揮。フォールや関節技を決められても、手ではなく杖をロープに伸ばしてエスケープして会場の爆笑を誘うなど、美味しいところをすべて持っていってしまう。
その後も、新崎人生選手よろしくおでん・カーン選手に杖を持たせての拝み渡りでトップロープから場外転落、コーナーポストからのダイブでまたもや自爆など、身体を張ったギャグ(?)のオンパレードでお客さんのハートを完全に鷲掴み。最後はおでん・カーン選手のシューティングおでんプレス(シューティングスタープレス)でマットに沈んだが、インパクトは4人のなかでも完全に飛びぬけていた。あの自爆芸、とことん磨き上げればアキプロ名物のひとつになりそうだ。
単なるコスプレではなく、3選手それぞれがゲーム中のキャラクタの特徴を意識したファイトを披露。エルブレイザー選手はルチャらしい見事なムーブで観客を魅了し、起田選手はコーナーポストの相手に昇龍拳、試合終盤に波動拳を繰り出すなど、会場を大いに沸かせる。円華選手に至っては、その端正な顔つきと均整の取れたボディ、立体的でシャープな攻撃から「ゲームそのまんまじゃん!」と客席から惚れ惚れとした声が聞こえたほどだ。
南野選手、宮原選手ともに、その実力は折り紙つき。アキプロ限定ネーム「マグニチュード秋葉原」で参戦するマグニチュード岸和田選手についても、それは同様。だが“ゲームリミックス”ということもあってか、試合の流れはどうしても相手チームに傾いてしまう。随所でパワー殺法を繰り出し盛り返していくが、最後は南野選手がエルブレイザー選手のライトニングストラックで3カウントを奪われてしまう。今回ワリを食ってしまったぶん、次回はもっといいところを見せてくれればと思う。
会場に来られなかった人も「そり(反り)蛇男……蛇……スネーク……ハッ!?」てな感じでお察しになられたかと推察されるが、「ミスターPMC」と「そり蛇男」は、リオン選手がPS3「メタルギア ソリッド 4」のゲームディスクから召喚した怪人。それを見た菊タロー選手が「おい、そっちのPMCはともかく……ソリッドスネークこんなんちゃうぞー!! オマエ、あのゲームやったことないやろ!!」とすかさずツッコミを入れる。 リオン選手の行為に対し「いいか、お前は今この怪人で、秋葉原のみんなが大好きなゲーム、日本が世界に誇れる産業を侮辱したんや! この抗争も、第2回で終わりにしてやるからな!」と憤慨する菊タロー選手。一方のリオンも「この有明を明日から我々がいただく! 最終日のコミケットも制圧してやる! そして、お前たちを捕らえ有明巨大シャンパンタワー建築の奴隷にしてやる! そしてこのディファ有明も『ダイヤモンドロマンス有明店』へと改装するんだ!」と野望をあらわにする。 お客さんの声援を背に戦うゲーマートリオだが、その前にそり蛇男が立ちはだかる。見た目はアレだが、中身はゲームから出てきたソリッドスネークと同等の能力を誇る怪物で、近接戦闘でズバ抜けた強さを発揮。手下だけでなくリオン選手自身も相当な実力の持ち主で、次第にゲーマートリオの旗色が悪くなっていく。 そんなとき、菊タロー選手に対して突如「ピピピッ ピピピッ ピピピッ」と謎の通信が入る。会場に響き渡る「菊タロー、大丈夫か!? 待たせたな」の声は……まさしく本物の「ソリッドスネーク」!! 会場のスクリーンにはゲーム本編さながらの通信シーンが投影され、会場から大きな歓声が沸きあがる。「こいつ(そり蛇男)の元である、あなたの弱点を教えてください!」という菊タロー選手に対し「俺に弱点があったなら、俺は今生きてねえさ」とつれない返事。試合終了のゴングが鳴るまでに弱点を調べてやるというが、果たして間に合うかどうか。
通信が行なわれている隙に、リング上に設置された謎のダンボール。菊タロー氏の背後から、ダンボールを抜け出して忍び寄るそり蛇男の魔手。すかさず会場の客席から「うしろー!」、「しむらー! うしろー!」など懐かしい掛け声が響き渡る。この他にも突如ライフルを構えるPMC、「……ちょっとやってみたかった」というK-ness.選手からの通信、リング上にコッソリ置かれたセクシーな本(ちなみに肝心のブツは「PLAYBOY」でした)に釘付けになり背後からスキを突かれるK-ness.選手など、随所にゲームをモチーフにした笑いが盛り込まれる。
ここで気になるのは、はたしてソリッドスネークが与えた情報は何だったのか? ということ。「くそう、貴様ら汚ぇぞ! スネークを倒すって言ったじゃないか!」と絶叫するリオン選手。だが菊タロー選手は「俺らは確かに、そり蛇男の弱点を探しとった。そして確かに(弱点を)見つけられなかった。でもな、スネークとジョニーが教えてくれたんや! この試合は“6人タッグ”だってなぁ!! PMCは、そんな重い装備でこさせてるから、首に負担がかかるんや。装備を過信したお前の負けだ!!」とバッサリ。これには会場のお客さんも大喝采で応える。納得できないリオン選手は「こんな勝利は認めんぞ! 我々は絶対に秋葉原を手に入れてやる! 首を洗ってまっていろ!!」と捨て台詞を残して去っていった。 菊タロー選手は「本日ご来場のみなさん、我々アキバプロレスが有明を守ったぞー!! プロレスファンのみなさん、これでこれからもディファ有明でプロレスが見られます。そして、アキバ系のみなさん! 明日も無事、コミケが開催できますよー!!」と、勝利者賞のPS3「メタルギアソリッド4限定版」を手に取り高らかに勝利を宣言。 開催前の準備などで多忙を極めたという菊タロー選手は、ここ2日間ほど徹夜し、昨晩やっと3時間ほど寝られたという。関係者各位に厚くお礼を述べるととも「まだ2回目の興行です。ちっぽけな、ちっぽけなね、菊タローなんていう……(感極まる) カスみたいなレスラーがやる興行に対して、『半熟英雄』、『天体戦士サンレッド』、『ストリートファイターIV』、『メタルギア ソリッド 4』という、本当に素晴らしいコンテンツ(ホルダー)の皆様が共感してくれるとは思ってもみませんでした。そして、今日ここに集ってくださった皆さん、参加してくれた選手、みんなが揃ったからこそ、今日無事に開催することができました」と深々と頭を垂れた。
「我々はちっぽけな集りです。だから、大々的に広告を打つこともできないし、地道な活動しかできません。みなさんの協力が必要です。ぜひアキバプロレスを、我々プロレス仲間、アキバ系の友だち、みんなに広げてもらえたらと思います。次もみんなが集ってくれる限り、寝ずに一生懸命がんばって、菊タローなりのおもてなしでみなさんをお迎えしますので、またぜひきてください! みなさん本当に、ありがとうございました!!」とシメの挨拶を行なった菊タロー選手。第3回は来年のゴールデン・ウィーク頃に秋葉原で開催したいという。興味がある人は、ぜひチェックしていただきたい。
□アキバプロレスのホームページ (2009年1月5日) [Reported by 豊臣和孝]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c)2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|