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ネクソンジャパン、WIN「アトランティカ」開発者インタビュー
「ゆっくり遊びたい大人向け」。オンライン世界大会も企画

10月21日 収録

会場:ネクソンジャパン本社

 株式会社ネクソンジャパンは、Windows用MMORPG「アトランティカ」のオープンβテストを10月28日より開始した。「アトランティカ」は、MMORPGでありながら、エンカウント制でシミュレーションゲームのような戦闘を行なうという、異色のバトルシステムを搭載した意欲作である。

 オープンβテストの実施に先駆け、本作を開発している韓国NDOORSから、開発本部理事のキム・テゴン氏が来日し、弊誌のインタビューに答えてくれた。キム氏はNDOORSで「君主」や「Time n Tales」といったタイトルを手がけ、それ以前にはパッケージゲームの開発も行なってきた、ベテラン開発者である。また運営会社となるネクソンジャパンから、運用リーダーの森山浩文氏と、運用担当のアン・スヒョン氏にも出席していただき、日本での運営についても尋ねた。

 ゲームの基本的な内容については、クローズドβテストのレポート記事があるので、そちらをご覧いただきたい。



■ 独創的なバトルシステムは“魅力の1つ”。世界観や経済システムなど全てで楽しませたい

――まずは日本でのサービスが立ち上がった感想を聞かせてください。

左から、ネクソンジャパン運用担当のアン・スヒョン氏、NDOORS開発本部理事のキム・テゴン氏、ネクソンジャパン運用リーダーの森山浩文氏
キム・テゴン氏 : 韓国でサービスする時より、今の方が緊張しています。ネクソンジャパンさんはパブリッシャーとして実力があり、宣伝やマーケティング、運営についてもとても力を持っている会社なので、それほど心配はしていませんが。我々はゲームのクオリティに注意していて、それが日本のユーザーに合っているかを考えていきます。今後も改善すべき点は対応し、完全にしていきたいと思います。

――日本でのクローズドβテストの反響を聞かれていかがですか?

キム氏 : とてもいいスタートを切れたと思います。ネクソンジャパンさんから反響を聞くだけではなく、「2ちゃんねる」やユーザーの掲示板などを見て、どういう反応が出ているかチェックしています。ユーザーさんの評判は良かったのでホッとしていますが、最初の印象が良かったからといってすぐゲームの成功に繋がるわけではないので、これからも緊張してゲームを作っていきたいと思います。

――韓国と日本のユーザーの違いとは感じましたか?

キム氏 : 日本のユーザーはとても分析好きだと思います。韓国のユーザーの場合は、とりあえずやってみよう、または早く進みたい、という風に考える人が多いのですが、日本のユーザーは、まず分析してコンテンツを十分理解してからゲームを楽しもうとしている方が多いと感じました。

――では「アトランティカ」の中身について伺っていきます。NDOORSさんは複数のタイトルをお持ちですが、その中で本作にはどんな狙いを持たせていますか?

キム氏 : 今のオンラインゲーム市場は、みんな同じゲームを作っていてマンネリ化していると考えています。特にアクションが中心になっていて、韓国だけでなく、日本やアメリカでもアクション性が強いゲームばかり出ていると感じています。最初に作られたゲームはうまく行っていますが、後で出たゲームはあまり目立たずに消えていっています。

 そこで私たちは今までのゲームとは違うゲームを作りたいと考えました。ただのクリックによるアクションだけではなく、戦略性を楽しむユーザーも必ずいると思い、「アトランティカ」のような戦略中心のゲームを作ろうと思いました。

本作の最大の特徴であるバトルシステム。MMORPGにターン制のシミュレーションバトルを組み合わせている
――バトルシステムは独創的だと思います。このアイデアはどこから出てきたのでしょうか?

キム氏 : オンラインが今のように普及する前、私が初めて開発に携わったゲームが「忠武公伝」という戦略シミュレーションでした。そこから戦略ゲームに興味を持ち、MMORPGにそういう戦略性をどういう風に入れ込むか、とても悩んで工夫してきました。傭兵をどのくらい使うか、戦闘時間はどういう風にすればいいか、そういうところで試行錯誤も多かったのですが、そういう試行錯誤の末に改善され、「アトランティカ」ができてきました。

――何か影響を受けたゲームはあるのでしょうか?

キム氏 : ゲームを開発するときに、他のゲームを参考にして作ることはありません。ゲームの外で考えてアイデアを得ようと思っています。現在は経済問題が一番注目されている話題なので、「アトランティカ」にも用意されている経済システムに、そういった要素を入れようと考えています。

 ちょっと違う話かもしれませんが、以前はファーストフードが人気だったのに、今は健康食やスローフードが人気です。世界的に見ると、ゆっくり行こうという流れが普通なのに、ゲームだけはすごいスピードを出してきました。ですから私たちは、長くゆっくり生きていくゲームを作っていきたいと思っています。

――「アトランティカ」の開発の目標として掲げたものはありますか?

キム氏 : バトルシステムは独創的ではありますが、それ以外にも色々なことを狙っていまして、あくまでゲームの1つの要素に過ぎないと考えています。それ以外にも町やギルド、国家を経営し、他の人とのコミュニティを作っていくという、経営シミュレーション的なところがあります。これは戦闘よりももっと大事なシステムの1つだと思っています。資本主義的なアイテムの取引で、安く買って高く売るといった経済的なところで、自分で判断して取引することで快感になるというところもあると思います。

 ほかにも世界観も楽しめます。この世界を全部ゲームの中に入れたいと思っていて、今でも重要都市や遺跡地を冒険できます。行ったことがあれば思い出があると感じるでしょうし、行ったことがないところであれば、1度行ってみたいという気持ちを持てるのではないかと思います。

――最終的に、対人戦の「無限リーグ」を遊ばせたいというゲームなのかと思ったのですが、そういう意図では作っていないということでしょうか?

キム氏 : 「無限リーグ」も大切なコンテンツの1つだと考えていますが、全てのコンテンツを大切にしています。「無限リーグ」も含め、大事なコンテンツをたくさん入れて、ユーザーに楽しんでもらいたいと思いながら作業を続けてきました。

クエストの目的地などに自動的に歩いていくシステムも搭載。戦闘以外では、とにかく楽に遊べるよう配慮されている
――スタミナでレベル上げが楽になっていたり、自動移動のシステムがあったりと、ユーザーの遊びやすさに気を配ったシステムが目に付きます。これらを導入した意図を教えてください。

キム氏 : まず自動移動ですが、戦闘の戦略性がとても強く、これだけでも頭を使うゲームだと思います。その分、他のコンテンツは楽に遊べないといけない、ストレスを減らさなければならないと思いました。中でもユーザーがストレスを感じるところは移動だと思い、ここをもうちょっと簡単にしていこうと。自動移動は開発当初から企画していたものです。

 スタミナシステムについては、韓国でサービスした際にいくつか見られた問題を踏まえたものです。その1つが、ライトユーザーとヘビーユーザーの格差です。その格差を減らさなけれいけないと思いまして、ある程度までプレイすると経験値やアイテムにボーナスが得られ、それ以上は基本的な経験値やアイテムをもらえるようにしました。

 もう1つはゲームの中に多くのコンテンツがあるにも関わらず、戦闘ばかりに没入しすぎるユーザーがいたことです。これだとゲームに疲れてしまうユーザーが多くなります。オンラインゲームは、長くプレイしてもらわなければいけないものだと思っているので、疲れてしまったユーザーが多くなったことで、ゲームを引退したり、諦めることもあります。そういう疲れることをなるべく避けようと思い、スタミナシステムを入れました。



■ クローズドβテストの結果を踏まえ、慎重に正式サービスの形を探る

――クローズドβテストを遊んだ中で、アイテムの販売がショップのNPCではなく、メニューを呼び出す形で販売されているのが気になりました。これはどういった意図があるのでしょうか?

キム氏 : 一般的なMMORPGの場合、ゲームシステムとユーザーの間の取引になっていますが、それは基本的に面白くないと思い、ユーザー同士の取引ができる市場をメニューで呼び出す形にしました。やはりユーザーが作った物を市場に出して、それを買った方が面白いし、そうした方が資本主義的な感じもありまして、ユーザーからも好評をいただいているシステムの1つになっています。ユーザーが作って、ユーザーが使って、という経済の体系が面白い要素の1つじゃないかと思い、ユーザー間の取引ができるシステムにしています。

本作の醍醐味である対人戦「無限リーグ」。レベル差はモンスター相手の時ほど影響せず、プレーヤーの作戦でカバーできるよう調整されている
――次に「無限リーグ」ですが、大きくレベル差のある相手とマッチングする事があります。この対応策は考えられていますか?

キム氏 : モンスターと戦うときの計算式と、「無限リーグ」でのステータスの計算式は違うので、そこではレベルが持つ意味はあまり大きくありません。モンスターと戦うときのレベル差が20だととても大きいですが、「無限リーグ」の中ではあまり差がないのです。また「無限リーグ」での階級も、レベル制限を設けているので、レベル80になっても最低の18級ということはありません。ですからあまり格差があるとは思っていません。レベル差より、ユーザーの戦略性がとても大切です。

森山浩文氏 : クローズドβテストは入る人が限られていますから、今後プレーヤー数が増えていくにつれて、「無限リーグ」のレベル差も解消されると思います。こちらが想定外の経験値が支給される問題もあったのですが、その後は当然修正も入れましたし、徐々に安定させていきます。

――「週間チャンピオン戦」は開催時間にプレイできない人もいますが、この対策はありますか?

キム氏 : 時間の変更は可能ですが、その変更した時間に遊べなくなるユーザーもまた生まれるので、そこは運営と話をして決めます。

森山氏 : こちらもオープンβテストでユーザーさんの反応を見ながら、ベストな時間帯を考えていきたいと思っています。

――次は運営向けの質問です。正式サービスで販売される有料アイテムはどういうものを考えていますか?

森山氏 : まだ検討中ではありますが、既に韓国で売っているもので、例えば「回復剤」や、傭兵をレベルアップさせるための石などから始めようかと考えています。

――取得経験値を上げるアイテムなどは考えていますか? 本作には既にスタミナシステムが用意されていますが。

森山氏 : その辺りはまだ検討中です。まだNDOORSさんと調整している段階なので、発表できる段階になったらお知らせします。

――クローズドβテストでは、「瞬間移動の書」や「自動移動の書」といった便利なアイテムが特典として渡されていましたが、これは有料アイテムにしようとお考えですか?

森山氏 : その辺りもまだ検討中です。このあたりはとても便利なシステムで、あるとないとでは全然違うので、慎重に検討したいと思います。



■ βテストの反響を積極的に導入。オンラインでの世界大会も視野に

サーバーや国境を越えた対戦も視野にいれているというキム氏。NDOORSは「君主」で似たような仕組みを経験しているだけに現実味がある
――クローズドβテストでユーザーから寄せられた要望や意見の中で、特に多かったものや記憶に残っているものがあれば教えてください。

キム氏 : 興味深かったのは、傭兵や戦略を分析・評価し、ここを修正して欲しいといった具体的な意見があったことです。それを受けて、バランスを再検討しています。大まかに面白いといった意見よりは、具体的な意見を出していただいたユーザーの方が、やはり記憶に残っています。そういった意見がありましたら、いつでも送っていただければ、興味を持って反映しようと考えています。

 また日本のユーザーは、自分と他のプレーヤーの見た目を変えたいという意識が強く、主人公のキャラクタが単純だとか、バリエーションが少ないといった意見がありました。現在、主人公のキャラクタを多彩にする作業を行なっています。残念ながらオープンβテストには実装できませんが、今後、主人公のいろんな姿が見られるようになると思います。

――運営として気になったものはありましたか?

森山氏 : 今も出た話ですが、日本のユーザーは装備で他人と差別化を図りたいというのがあると思います。装備を他人と違うように見せる方法を、開発と相談させていただいています。これも検討中ですが、何らかの形で実現したいと思っています。あとはユーザーからの評判としては、今までのクリックゲームとはちょっと違う、戦略なども考えられて楽しいという意見が結構ありまして、そういったところは運営としてアピールできていると言えるのかなと思っています。

――今後のアップデート計画について、お答えいただける範囲で教えていただけないでしょうか。

キム氏 : 「無限リーグ」は現在、各サーバーごとに行なわれていますが、これを全サーバー対象、あるいは全世界を対象にして、そこで1位を競うといったものを考えています。ちょっと時間は掛かるかもしれませんが、企画はしています。

 もう1つは、町を中心にして住宅を所有する仕組みの導入です。個人単位で家を持ち、飾ったりして家の価値を上げて、売ったり買ったりするという、住宅システムを実装したいと思います。さらに、その住宅の中で一緒に住むという結婚システム。そして結婚をして、産んだ子供を育てる育児システムまで入れたいと思っています。

――世界大会をやる場合、バージョンを合わせてやるわけですよね?

キム氏 : 条件が同一でないとできないと思いますので、もし韓国が先にアップデートをされている場合は、大会を行なうサーバーでは、そのシステムが使えないようにするといった形にします。

――ちなみに日本と韓国のサービスのアップデートタイミングの差はどのくらいですか?

森山氏 : 日本版は韓国から2カ月くらいの遅れで入れたいと考えています。

――正式サービスのタイミングで2カ月遅れまで追いつかせるのですか?

森山氏 : そうですね。その後も韓国で2カ月前に入れたものを順次入れていくイメージです。

アン・スヒョン氏 : 実際にはオープンβテストと正式サービスで開きがありますが、目標としてはそこを見ている状態です。



■ ソロでも楽しめる、ゆっくり遊びたい大人向けのゲームを提供

――日本と韓国ではユーザー属性も違うとは思いますが、日本ではどういうユーザーに遊んで欲しいとお考えですか?

キム氏 : やはり戦略ゲームなので、分析をしなければいけないところがあると思います。ですから単純にレベルアップしたり、早く進みたいというユーザーよりは、ゆっくり考えて冷静にゲームを楽しみたいというユーザーに遊んでいただきたいと思います。未成年よりは大人をターゲットにしています。

 MMORPGなので、他のプレーヤーとの協力も必要ですが、1人でプレイしたいというユーザーも、そんなに難しくないと思っています。そういうソロプレイを嗜好しているユーザーもぜひ楽しんでもらえればと思います。

――運営としては、どんなターゲット層に訴求していこうとお考えですか?

森山氏 : 見た目は本格派でヘビーなイメージが「アトランティカ」にはあると思うのですが、実際にやってみると、自動移動システムですとか、他人に質問しやすいシステムですとか、初心者の助けになるようなシステムが多数できています。実際やってもらえれば、オンラインゲーム初心者の方でも遊べるのではないかなと考えています。

――では最後に、日本のオンラインゲームのユーザーに向けて一言お願いします。

キム氏 : 「アトランティカ」には、日本のユーザーが好むシステムがたくさんあるんじゃないかと思います。またそういう風に考えながら、日本のユーザーに向けて開発してきました。色々なキャラクタをコントロールしたり、戦略性があるというところで、日本のコンシューマゲーム的なところも感じられると思います。

 クローズドβテストの時にいい評判を受けましたが、今後も緊張してゲームを開発していきたいと思います。もしゲームに対して要望がありましたら、積極的に聞いて追加していこうとも考えていますし、改善が必要なところがあれば改善していくつもりです。一度ゲームを見に来ていただいて、よかったらその後もプレイしていただければ嬉しく思います。

森山氏 : 今、日本のユーザーさんは延々とクリックするだけの戦闘や、仲間集めに何時間もかかるようなパーティーでしかできない戦闘システムに疲れている人が多いと思うのです。そういう人も、この「アトランティカ」は楽しく遊べると思いますので、ぜひ一度プレイしていただければと思います。

――ありがとうございました。

【スクリーンショット】
戦闘だけでなく、世界各地を巡ったり、商売でお金を儲けたりといった楽しみ方も提供するという。βテスト段階でのユーザーの評価も高く、今後のゲームの広がりにも期待が持てる


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Copyright (C)2008 NDOORS Corporation. All Rights Reserved.

□ネクソンジャパンのホームページ
http://www.nexon.co.jp/
□「アトランティカ」のページ
http://atlantica.nexon.co.jp/
□関連情報
【10月16日】オンラインゲームファーストインプレッション「アトランティカ」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081016/atla.htm
【10月10日】ネクソンジャパン、WIN「アトランティカ」
音楽芸人「こまつ」とタイアップ。オリジナルBGMを制作
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081010/atlan.htm
【9月2日】ネクソン、MMORPG「アトランティカ」クローズドβテスター募集開始
GAME Watch専用枠で1,000名のテスターを募集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080902/atlant.htm
【8月27日】ネクソンジャパン、MMORPG「アトランティカ」
日本でのサービス展開決定。プロモーションサイトをオープン
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080827/atlan.htm

(2008年11月5日)

[Reported by 石田賀津男]



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