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会場:東京ゲームショウ2008 イベントステージ
登壇者はKONAMIの小島秀夫監督、カプコンの辻本良三氏、エンターブレインの浜村弘一氏、GAMES マーヤ 葛西店の店長を務める秋谷久子氏、よゐこの有野晋哉さん。人気クリエイターのトークショウとあって会場は全席が埋まり、さらに周囲を二重三重と取り囲むほどぎっしりと来場者で埋まった。司会は「バイオハザード」シリーズの熱烈なファンだという鈴木史朗氏が務めた。 まず最初に話題に上ったのは「ユーザーの顔を思い浮かべながら制作されていますか?」と言う点について。小島氏は「自分がユーザーじゃなければ面白いものは作れません。自分の興味のあるものを作っていく。そこで自分の中にある様々な人格……その人になりきってチェックしていく。そしてさらに作っていき、スタッフ、ユーザーと広げていく。ゲームの想定する範囲の人にチェックしてもらっていく」と小島氏のゲーム作りの流れを説明。一方、辻本氏は「ゲームには流れがあって、プレイする人がどこで楽しんでどこで驚くか。また、オンライン、携帯型ゲーム機と環境が多様化する中で、たとえば携帯型ゲーム機であれば移動中の15分しか遊ばなかったり、家に帰ってからも家でもじっくりプレイしたり (様々)。ですから、ハードウェアとかプレイする環境なども考えて作ります」とコメント。 さらに踏み込んだ質問として、鈴木氏から「最も大切にしているところは何ですか?」と言う質問に辻本氏は「制作過程として、作っているスタッフ全員が面白いゲームを考えられる環境が大切。面白い事をスタッフで言い合える環境ですね」と返答。これに有野さんが「いい感じで進めるんですね」とフォローすると、「そうですね。その通りです」と辻本氏も納得した様子だった。 一方、小島氏は「何十時間も遊んでもらうので、『楽しい』だけでなくプラスアルファが欲しい。『あのゲームのおかげで人生が変わった』とか『なにかを感じる事ができた』といったそういうものが欲しい」とコメント。この言葉には鈴木氏も感動していた様子。鈴木氏は「ゲームはダメだという人がいますが、ゲームをすると教えられる。ゲームをすると (人間の) レベルが上がる」と熱く語っていた。 この小島氏のコメントに対して秋谷氏も反応。「ユーザーはクリエイターの想いを受け取っています。私たちお店はそのクリエイターの想いをユーザーに届けるようにしている」とし、小島氏の「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」のパッケージを取り出し、「パッケージにはタイトル名がないんです。これは前例のない事。質問したら、『このゲームはグラフィックスがすごく、毛穴まで見える。映画的な売り方をしたい』と答えてくれた。そういった表現したい事はユーザーに伝える。それは伝わり、特別版などで少々高くてもユーザーもそちらを購入する」と語った。ちなみに辻本氏については「通常発売日が決定するとPVを1本しか作らない。しかし辻本氏は2本も3本も作ってくる。これは (店頭で流される事で) ユーザーの目に届く」と、店頭などでの細かな交流が重要であると説いた。 次の質問は「ユーザーから言われた想定外の事」というもの。辻本氏は「モンスターハンターポータブル 2ndG」の発売時の事を例に挙げた。「『モンスターハンターポータブル 2ndG』の発売の時、前作からデータを引き継げるようにしたんです。これまで遊んでくれた時間を捨てる事を考えると、引き継げた方が良いかなと思って」と話し始めた。この件については「ギリギリまで前作で遊ぶ事ができる」という理由もあったようだ。辻本氏はこの結果について「引き継がない人が多かったんです。一から遊びたい人が多かった。想定外の事でビックリしました」と結んだ。 また、ライトユーザー、ヘビーユーザー2極化している現状については、小島氏は「ライトなもの、ヘビーなもの、その中間のもの……いろいろなジャンルがあって良いと思うんです。私の才能を発揮できるのはコアなゲームを作るとき。最近ではコアゲームがカジュアルゲームに負けそうだけど、そういうコアなゲームの火を消したくないし、これからもこういったゲームを作っていく」と宣言。 辻本氏は、「カプコンの得意なアクションゲームはコアゲーマーに楽しんで貰えるかというのがある。『モンスターハンター』のような多人数で遊べるゲームはシビアすぎでもなく、気楽にも遊べるよう考えてます。ライトユーザーがどれだけたどり着けるかを考えながら作ってます」とバランスを重視するコメントを残した。 今後のゲームについては「テキストも音楽もグラフィックスも全てデジタルになっている。そういった中でどんなものが出てきてもおかしくない。最近のDVDソフトにコメンタリーなどが入っているが、ユーザーが選択して違うものが選択されて再生されるという点でそれもゲームだと思っています。ゲームとは違うものも出てくると思う。すごく広がっていくと思う」と、今後さらに様々なタイプのゲームが登場する事を示唆した。辻本氏も「マルチプレイやオンラインゲームなどもっと出てくる。遊び方の進化、成長する余地はある」と多様化していく事を予測しているようだ。 最後に「これからのゲームクリエイターに求められるものは?」という話題に。小島氏は「好きなものじゃないとダメ。夢を持って夢を実現して欲しい」とコメント。辻本氏も「面白い事に敏感であり、どん欲であって欲しい」と続けた。この後、来場者の質問コーナーに移ったが、たまたまゲームクリエイターになりたい若者からの進路に関する質問が飛び出した。「大学に行くべきか? そういった専門学校に進むべきか?」と言う内容だが、前述の質問 (必要なものとは?) にも被る内容だが、小島氏は「ゲームを作るには広い知識が必要。余裕があれば大学に行き全方位に向けて勉強をして欲しい。知識があれば困難に当たってもドアを開ける事ができるが、知識がなければどのドアを開ければいいのかわからなくなってしまう」と答えた。辻本氏も「どちらかに行けとは言えないが……」と断りながら「広い視野を持つ事が必要。学生の時にしか感じられない面白い事があるそういった事を体験しておいて欲しい」とコメントした。 来場者のもう一つの質問は、「どうやって物語を作っていくか」ということ。辻本氏は「主軸となるコンセプトを確実に固めておくこと。コンセプトがかたまっていれば、周りに着いてくるアイディアもぶれない事が多い」と経験談を語った。小島氏は「アイディアの思いつきから始まる。それを客観的にどう見るかが重要。ここはじっくりと考える必要がある」とした。これは振り返ってみれば一番最初の「違う人格で作品を試してみる」といった発言にも繋がる。
最後のコメントで辻本氏は「今しかできないこと、感じられる事を大切にして欲しい。それがゲームを作るときの発想になる。ゲーム作りは「アイディアの発想を世の中に残す事ができる夢のある職業。是非とも来て欲しい」とエールを送った。小島氏は「アマチュアの方は、作りたいものがあればドンドン作って数をこなして欲しい。友人に評価してもらって自分のものにして欲しい。スゴイ人は一人で作っちゃいますが、作れない人でも仲間を作って切磋琢磨して欲しい」とこちらも熱く語り締めくくった。
□CESAのホームページ http://www.cesa.or.jp/ □「東京ゲームショウ2008」のページ http://tgs.cesa.or.jp/ □「コフェスタ」のページ http://www.cofesta.jp/ □ニュースリリース http://www.cofesta.jp/2008/japanese/utility/pdf/release/20080918_e012.pdf □関連情報 【10月11日】各種企画ブースにも注目 「ゲーム科学博物館」では歴代ハードを分解し展示 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081011/cesa.htm (2008年10月12日) [Reported by 船津稔]
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