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世界有数のモバイルゲームメーカーである仏Gameloftから、東京ゲームショウ2008の開催に合わせて、CEOのMichel Guillemot(ミシェル・ギユモ)氏が来日した。ギユモ氏には昨年も東京ゲームショウの際にインタビューしており、今年で2度目となる。 この1年の間には、モバイルゲーム業界にとっては、iPhoneの世界展開が始まるという、大きな話題があった。またGameloftとしては、WiiウェアやXbox LIVEといったオンラインで配信できるプラットフォームに次々と参入し、独自タイトルを配信。いまやモバイルゲームメーカーと呼ぶべきかどうか悩むほど広い展開を見せている。
今回はギユモ氏に、現在の日本のモバイルゲーム市場に対する印象や、既に成功を収めているiPhoneのゲームビジネスなどについて伺った。また同社の日本法人であるゲームロフト株式会社から、代表取締役のアレクシー・グレゾヴィアック氏に同席していただいた。
――前回のインタビューから1年が経ちました。今のGameloftはどんな状態でしょうか?
会社としては、今後も年に2割以上の成長を続けていきたいと考えています。タイトルの改良に関しても取り組み、まずはタイトルの質を上げ、ユーザーに驚いてもらえるものを出していきたいと思います。同時にタイトルの量も増やし、これまでモバイルゲームを遊んでいない方にも楽しんでいただけるような展開を狙っていきます。 ――2月にGDCでモバイルゲームの世界市場について講演されました。現在までに何か違った動きは見られますか? ギユモ氏 : 現在のモバイルゲームは、中国やタイといった後進地域でも楽しめるようになってきて、ようやく本当の世界市場といえる状況になってきたのではないかと思っています。その中で、北米と欧州では、当初予定されていた新端末がなかなか発売されなかったことで成長が鈍化していましたが、ようやく次世代端末といえるiPhoneなどが登場し、再び成長率が伸びてきています。 ――日本市場はまだ成長が見込めると思われますか? ギユモ氏 : 世界的に見れば日本は成熟した市場で、成長度合いは低速かもしれません。ただ今年は、auのFullGame! など、新端末に新たなゲームが出てきているのが見受けられます。そういったハイエンドでリッチなゲームは、今までとは違うユーザー層をつかめるはずです。iPhoneも発売されましたし、ほかの地域とは違う形で成長していると思います。
――日本では、コンシューマゲームやPCのゲームユーザーが、リッチなモバイルゲームを遊ぶということをイメージして、タイトルを投入されるということでしょうか?
現在、弊社が展開している「リアルサッカー2009」や「アスファルト4」は、コアゲーマーにも満足していただけるアクションゲームを目指しつつ、カジュアルユーザーでもとっつきやすい内容にしています。価格についても、iPhoneではコアユーザーに手が届くのはもちろん、カジュアルユーザーにも十分手の届く価格にしています。内容的にも価格的にも、両方のユーザーに対応できるゲームになっています。 ――日本の展開において、特に他の地域と異なる戦略は考えていますか? ギユモ氏 : Gameloftはフランスの会社ですが、日本のゲームロフトが日本の企業として、日本に適応することです。日本支社には約100名の社員がおり、Gameloftが持つ技術を使って、日本向けのスーパーリッチゲームを適正価格で販売できるようにしています。 ――最近の日本のモバイルゲーム市場では、コミュニティとの紐付けが重要だと叫ばれています。この点についてはどう思われますか? ギユモ氏 : Gameloftとしては、ゲームそのものに焦点を当てているというのが基本としてあります。ただ一例として、欧州では「Gameloft Live」というコミュニティサイトがあります。ここはGameloftのサブサイトのような扱いで、Gameloftのゲームのファンが集まってチャットしたり、異なるタイトルのファンがコミュニケーションを取れるような機能を用意しています。 ――それを日本で提供される予定はありますか? ギユモ氏 : 市場を考えて、ユーザーにとってよいと判断できれば導入したいと思います。ただ日本は既にユーザーに深く浸透したコミュニティサイトが数多くありますので、その中ですぐに導入するというのは考えにくいところです。弊社のゲームを繋ぐのが目的になりますので、そういったコミュニティができていない地域には提供する、といった形で考えています。 アレクシー・グレゾヴィアック氏 : 日本では例えば「モバゲータウン」で、多くの方が弊社のゲームのブログを書いたり、サークルを作ってゲームに関する議論をしてくれています。今はユーザーが自ら、ゲームを取り巻く環境を作ってくれるような形になっています。
ギユモ氏 : マルチプレイで友人とゲームを遊べて、さらにコミュニティが存在すれば、ユーザーが自らブログを書いたりコメントをつけたりできます。ゲームを遊ぶという体験と、ゲームの外側をめぐるコミュニケーションが合わさっているというのが、非常に面白いと思っています。
ギユモ氏 : 新しい機能を持った1種類の端末が、全世界で数百万台という数で販売され、インターナショナルなユーザーを持つという点で、世界的な大成功だと思っています。ゲームに関しても非常に進んだ端末で、容量の面でも他の端末にはできないようなゲームを出せます。弊社からは現在9タイトルを配信しており、2008年末までに20タイトルを出す予定です。 日本では北米や欧州ほどには売れていないとは聞いています。また機能的にも、絵文字など解決できていない問題もあります。今後、そういった部分を改善していく必要はあると思いますが、日本の方にとって、より魅力ある端末になっていくと思っています。現在弊社が配信しているゲームも、日本のユーザーにも楽しんでもらえることを考えて作っています。今後、日本の携帯メーカーも、iPhoneと同じようなゲームを遊べる端末を出してくると思います。それらも含めて、iPhoneの登場によって市場が活性化し、端末とモバイルゲームの発展も活性化されるきっかけになるのではないかと思っています。 ――日本でiPhoneゲームを提供しているメーカーは少ないですが、もし何かビジネスのポイントがあれば教えてください。 ギユモ氏 : まだ日本にやってきたばかりの端末なので、日本のゲームがまだあまりiPhoneに出てきていないとは思います。今後、ハードウェアもソフトウェアも機能が加わって進化してくるはずですので、弊社を含む日本のクリエイターが、ユーザーの待っているようなゲームを出していくのは間違いないと思っています。iPhoneは本当にいいゲームを遊べるキャパシティを持っています。 iPhoneは高性能ですが、ゲーム開発は非常に簡単です。また配信もしやすく、世界的に開かれたプラットフォームになっています。問題点を挙げるとすれば、世界に開かれているがゆえに、世界を見たタイトル展開が必要になることです。App Storeが開かれて3カ月で、1,000タイトル以上のゲームが配信されており、今後3カ月以内にさらにプラス1,000タイトルが登場すると思っています。それだけ、開発はしやすいのです。自分たちが立っている場所が世界であるということが、手の届きやすさでもあり、難しさでもあると思います。 ――iPhone、Wiiウェア、Xbox LIVEと幅広い展開をされてきました。今後新たに展開を考えている分野はありますか? ギユモ氏 : 全てのダウンロード可能なプラットフォームに対応したいと思っています。例えばソニーのプレイステーションプラットフォームであったり、ニンテンドーDSiにも関心があります。DSiはユーザーにとっても非常に素晴らしいゲーム体験を届けられる機械だと思っています。 こういった新しい展開は、弊社のクリエイターにとっても、1つの喜びになっています。さまざまなプラットフォームで、特有の機能を生かしたゲームを出していくことは、理想的なゲームを作り上げていくチャンスを得たことになりますから、開発も積極的に動いています。 ――最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。 ギユモ氏 : 今はゲームが多様化しています。それが今後5年間で、花開くと考えています。そういったゲームを通して、ユーザーにも新たな体験を届けられる5年間になっていくと思っています。ぜひ期待していてください。
――ありがとうございました。
□ゲームロフトのホームページ (2008年10月9日) [Reported by 石田賀津男]
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