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仏Gameloft CEO ミシェル・ギユモ氏インタビュー
欧米モバイルゲーム市場の雄が語る日本進出の狙い

9月20日 収録

 フランスに本社を置くGameloftは、モバイルコンテンツの開発・配信を世界的に手がけている企業。設立は'99年とまだ若い企業だが、モバイルゲーム市場においては欧州で1位、北米で2位のシェアを持つ。日本法人のゲームロフト株式会社も数年前に設立され、昨今かなりの勢いを見せており、日本メーカーも無視できない存在になりつつある。

 このGameloftでCEOを務めるミシェル・ギユモ氏が、TGSフォーラム2007で講演を行なうため初来日した。ギユモ氏はUbisoft Entertainmentの設立にも携わった人物で、現在も同社と深い繋がりを持っている。今回、このギユモ氏にインタビューする機会をいただけたので、Gameloftの成功の秘訣、また日本展開における狙いなどについて尋ねてみた。またインタビューには、日本法人の代表取締役、アレクシー・グレゾヴィアック氏にもご参加いただいた。



■ Ubisoftとのパイプを生かしつつ、カジュアルゲームも広く展開する

Gameloft CEOのミシェル・ギユモ氏(右)と、日本法人の代表取締役アレクシー・グレゾヴィアック氏(左)
――まず、欧米市場における成功の要因はどこにあったとお考えですか?

ギユモ氏 : 欧米の市場に非常に適応してきたということです。市場の細密な、多様性に適応することに手を尽くしてきたことが大きな要因だと考えています。

――日本市場と欧米市場の違いというのはどの辺りに感じられますか?

ギユモ氏 : 非常に市場が集中していると感じます。キャリアが3つ、あるいはWillcomさんを入れて4つということで、4つのキャリアに集中した配信になっています。またユーザーの消費が非常に早く、ミニゲームのような短時間で消費するゲームをプレイするパターンが多いことを、日本市場の特徴としてとらえています。

――短時間で遊べるゲームが日本では有力とのことですが、そうすると日本では欧米と同じ戦略は通用しないとお考えですか?

ギユモ氏 : 現在、弊社が欧米の市場で配信しているタイトルは、短期間で終わるものとは逆の、大型で品質も高いが価格も高いものになっています。一方、日本では市場に適応するため、これらのゲームの中から選別をして、日本人の興味や関心にあわせて配信しています。

 日本法人では70名のスタッフを置き、日本向けのゲームを作ることも合わせて進めています。今の目標としては、世界市場で培った経験と技術を駆使して、日本でオリジナルのゲームを作って日本で配信することと、また同時に日本で作られたものを世界に配信していくことを目指しています。

――Ubisoftさんとの関わりが非常に強いメーカーで、海外ではUbisoftのライセンスタイトルも数多く出されています。これらを含め、先ほどおっしゃられた、クオリティの高いゲームを日本で積極的に展開するという考えはありますか?

ギユモ氏 : Ubisoftのライセンスタイトルは欧米でも非常にヒットしています。もちろん日本市場にも展開していまして、弊社の携帯サイトでも、「Ghost Recon」シリーズなど、Ubisoftのライセンスタイトルを専門に扱うページを設けてやっています。ソフトバンクさんとKDDIさんでは、これらのコアユーザー向けコンテンツが好評で、両社のランキングにおいては10位あたりにつけています。NTTドコモさんでは、これから専門のポータルサイトを開く予定です。まさにUbisoftのタイトルを推している真っ最中といったところです。

ユービーアイソフトが今冬発売予定のPS3/Xbox 360用「アサシン クリード」。グラフィックスの美しさだけでなく、複雑なアクションをシンプルな操作で実現している
グレゾヴィアック氏 : 2007年末にプレイステーション 3とXbox 360でユービーアイソフトから発売予定の「アサシン クリード」のモバイル版を、ほぼ同時期に弊社のメインサイトで配信する予定です。

――「アサシン クリード」は今年のE3でプレイしてきました。非常にできがよく、特にアクションは今までにないほど素晴らしい内容でした。それが携帯アプリになるというのは、私も大変楽しみです。日本のゲームファンもきっと期待してくれると思います。

ギユモ氏 : 大きな画面はありませんが、携帯アプリでもとても高品質なゲームをお届けします。

――日本においては、コアゲーマーにはUbisoftというブランドもかなり強力です。さきほどタイトルを選別して持ってくるというお話がありましたが、やはり何でも日本に持ってくるという戦略にはならないのでしょうか?

ギユモ氏 : 弊社のモバイルゲームは非常に幅広いジャンルのタイトルがありまして、パズルゲームなどのカジュアルなゲームも配信しています。割合としては、約20%がアクションゲームになっています。コンシューマのプレーヤーが携帯ゲームを楽しむというスタイルも一定のユーザー数がいるはずですので、そこは推していくジャンルではあります。

グレゾヴィアック氏 : (携帯端末を開きながら)これはKDDIで配信を始めた「モバイルペッツ」というアプリのサイトです。日本における弊社は、Ubisoftのライセンスタイトルを始めとしたコアゲーマー向けのタイトルラインナップというイメージをもたれていると思います。元々はコアゲーマー向けのラインナップを持っている会社ですが、弊社は市場が動く方向に動くという方向性を持って動いています。

――Ubisoftさんでも、最近はペット育成やブレイントレーニング系のカジュアルなソフトを発表されています。こういった流れはコンシューマゲームでは世界的に強くなっていますが、モバイルコンテンツでも同様の流れがあるということでしょうか?

ギユモ氏 : モバイルコンテンツにおいても、世界的な傾向だと思います。米国からその流れが始まり、現在は世界的にその流れが広まっています。弊社のゲームも、映画やテレビドラマを題材にしたものがありますが、これらはある意味カジュアルユーザーにもヘビーゲーマーにも対応できるゲームです。これ以外にもスポーツなどのコンテンツも配信しています。

 今後数年で、携帯電話のユーザーは40億人に達するだろうと見込まれています。弊社は3,000人のスタッフを抱えていまして、世界中のユーザーの多様性や文化的な違いに適応した形でのゲームの配信を、世界的に進めています。



■ 日本スタジオに寄せる「世界で通用するタイトル」への期待

――日本から世界に出て行くタイトルもあるとのことでした。御社では日本で流行しているブレイントレーニング系のソフトも出されていますが、これは日本で開発されたものですか?

ギユモ氏 : 開発に関しては、ネットワークを生かしているのが特徴です。異なる地にあるスタジオが、ネットワークを通してコラボレーションしています。ブレイントレーニングのようなソフトですと、日本の影響を受けて再編したもので、日本と欧州、アメリカのコラボレーションによる作品となっています。各市場の要望を融合したような形での開発をしています。

グレゾヴィアック氏 : たとえば「モバイルペッツ」では、グラフィックスは日本で作っています。小さな動物やキャラクタものなど、可愛いものを作るのは日本が得意としているところです。日本で開発されたキャラクタは世界的にも評判がいいのです。

――日本で作られたゲームは、欧米のものとは色の異なるものだと思います。日本のスタジオにおける開発には、どういった魅力があるでしょうか?

ギユモ氏 : 欧米で全て制作されたゲームを日本で売るのはなかなか難しいという点があります。しかし逆に日本で作られたゲームを欧米市場で売るのは、さほど難しくはなく、どちらかというと売りやすいのです。ここ20年にわたっての日本のゲーム開発の発展は、着目すべきところがあります。日本式の特殊なゲームスタイルは、世界的に定着しているといえるのではないでしょうか。

――日本はコンシューマゲームが非常に強い市場で、特に最近では携帯ゲーム機が市場を牽引している状態です。その中で携帯ゲームはどのように展開していくべきだとお考えですか?

ギユモ氏 : モバイルゲームは、通勤時間や突然時間ができたときに、すぐに持ち出していつでも遊べるのが特徴です。携帯型のゲーム機と競合するところはあると思いますが、日本での携帯電話の普及数は9,000万台になるそうです。ニンテンドーDSを持っているユーザーが9,000万人になることはないと考えています。コンシューマゲーム機がないときに使う、ない人が使う。そういった人々にゲームの世界を広げていくことが、弊社のスタンスです。

――では最後に、今後のゲームロフトのどの辺りに期待して欲しいかを教えてください。

ギユモ氏 : ゲームロフトの目標としては、日本のユーザーにとって魅力的なゲームを配信していく会社になること、そして日本以外の市場に対しても、世界的に展開できるようなゲームを配信していくということを今後の目標としていきます。



 短い時間ながらギユモ氏に伺った話の中から、2つのキーワードが見えた。1つは、市場の動きに素早く、柔軟に対応すること。Ubisoftという強力なパートナーがいるといっても、全てのリソースをそこにつぎ込むことはせず、独自の分析・調査のもとに市場にあったソフトを送り出していく。ことにモバイルゲームは、コンシューマゲームに比べて小規模で開発期間が短いため、最新の市場動向に合わせた動きも比較的とりやすい。

 もう1つは、ユーザーの多様性に対応するということ。ゲーム機を持っておらず、ゲームに触れる機会がなかった人にも、気軽に遊べるモバイルゲームを提供することで、ユーザーを増やしていく。既に存在するゲームユーザーではなく、新たなゲーマーを作り出すという発想は、コンシューマゲーム業界で好調を続ける任天堂の戦略にも似ている。

 そして日本においては、日本国内での成功もさることながら、日本式ゲーム開発による作品の世界展開にも期待を寄せている。海外のゲームメーカーが日本にスタジオを置いて開発するという流れは、コンシューマでも起こっている。日本式のゲームがモバイルゲームでも通用するのかどうかという点でも、今後の展開が楽しみだ。

【スクリーンショット】
ブレイントレーニング系に映画原作のアクション、音楽ゲームと、とにかく幅広いラインナップ。今後は日本ならではの作品にも期待したい


□Gameloftのホームページ
http://www.gameloft.com/

(2007年9月24日)

[Reported by 石田賀津男]



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