★Wiiゲームレビュー★
ボールをぶつけて、何でも壊せ!
リアルな物理エンジンが生み出す新しい楽しさ
「ブームブロックス」
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- ジャンル:アクションパズル
- 発売元:エレクトロニック・アーツ
- 価格:3,990円
- プラットフォーム:Wii
- 発売日:2008年7月17日
- CEROレーティング:A(全年齢対応)
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エレクトロニック・アーツ株式会社(EA)は、Wii用アクションアドベンチャー「ブームブロックス」を7月17日に発売する。
「ブームブロックス」は映画監督のスティーヴン・スピルバーグプロデュースの第1作に当たる。メーカーがアピールする本作のジャンルはアクションアドベンチャーだが、Wiiリモコンを使って、ボールを投げたり、ものをつかんで崩したり、引っ張ったりと、パズル要素の強い作品となっている。
本作の魅力は、丁寧に積み木を積み上げ、そして崩していく“原初の楽しさ”にある。スピルバーグはE3でWiiのリモコンがもたらすゲーム性に魅せられ、親子で楽しめるようなゲームを目指して開発スタッフとこのゲームを制作していったという。
その想いから生まれた本作は、崩れていくブロックに子供が歓声を上げる爽快感、親子で試行錯誤するパズル性、うまくいったときはみんなで喜び合える、そんな楽しさを持っている。ゲームファンだけでなく、親子で、みんなでプレイして欲しいというスタッフの主張がしっかり伝わるゲームになっている。
■ ボールをぶつけて建物を崩す。物理エンジンが生み出す、原初的な楽しさ
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コントローラを画面に向けて、ポインタで投げる位置を決定しAボタンを押す。ボタンを押したままコントローラを振りかぶり、振り下ろしながらAボタンを放すことでボールが飛ぶ。ブロックを崩す感触が楽しい
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エクスプロアーモードの選択画面。様々なテーマに挑戦できる
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「ブームブロックス」では“ボールを投げる”というのが基本アクションとなる。WiiリモコンのAボタンとBボタンでほとんどの操作が可能で、投げる動作にはコントローラを画面に向けてカーソルを操作し、ボール投げる場所をAボタンで決めた後、Aボタンを押したまま振りかぶり、振り下ろしながらAボタンを放すことでボールが飛んでいく。
ボールが飛ぶ勢いは振り下ろすスピードと、Aボタンを放すタイミングで決まる。ゲームが進むと夢中でコントローラを振り回すことになるので、ストラップもきちんとつけておきたい。視点移動はBを押したままか、ヌンチャクコントローラのコントロールスティックでも行なうことができる。
本作ではボールを投げるほか、ステージによって「つかむ」、「撃つ」といったアクションも行なう。つかむは指の形をしたカーソルを動かし、ブロックのところでAボタンを押し、押しっぱなしにすることでブロックをつかみ、抜き出すことができる。“棒倒し”のような全体のバランスを考えてブロックを抜き取るような、慎重さが必要なステージでの使用が多い。撃つはリモコンを光線銃に見立て、照準を動かしブロックを撃つアクションだ。
ゲームはスタート時にはほとんどのコンテンツがロックされている。トレーニングをクリアすると、「エクスプロアーモード」と、「アドベンチャーモード」がプレイ可能になる。アドベンチャーモードはストーリー仕立てのユニークなモードだが、エクスプロアーモードで登場する様々なブロックやゲームルールの知識が必要な場合がある。トレーニングを終えたらエクスプロアーモードで本作ならではのルールを覚え、その後にアドベンチャーモードに挑戦、というのが良いだろう。
エクスプロアーモードは「宝石ブロック」、「ポイントブロック」、「ボムブロック」、「消えるブロック」、「ケミカルブロック」、「ハンドツール」という6つのメニューがある。各メニューには10個ずつステージが用意されていて、これに挑戦することでゲームを進めていく。ステージでは条件が設定されていて、成績に応じてゴールド、シルバー、ブロンズと評価される。
「宝石ブロック」では、ブロックが積み上げられた構造物をボールをぶつけて壊し、上に載せられた青く光る宝石ブロックを落としていく。できるだけ少ない球数で落とすのが高得点の鍵となる。「ボールをぶつけて、壊す」という「ブームブロックス」の最も基本的な楽しさを体験できるステージだ。
どこにボールをぶつければ建造物が崩れるか。最初のステージなだけに問題は簡単で爽快感を感じることができる。強いボールで構造物の中心点を崩すと、徐々に倒れていく、時には運悪く、真ん中だけがはずれて、上の構造体がそのまま乗っかって安定してしまう、ということもある。ボールを当てるためのポイントに複数のブロックが当たるようにしたり、工夫が必要だ。
「ポイントブロック」は得点が描かれている黄色いブロックを崩して得点を得るルール。黒いマイナスポイントのブロックもあり、これを床に落としてはならない。黒いポイントブロックに囲まれた黄色いブロックのみを落とさなくてはならなかったり、正確さ、慎重さが要求されるステージだ。
高く積み上げられたブロックを崩すステージもあり、視点を移動しながら、ブロックの関係性を考えさせられる。ポイントブロックでは“撃つ”のアクションを使うステージもある。飛び交うブロックを射撃するのだが、正確に素早く連射するのはWiiリモコンでは少し難しく感じた。
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トレーニングモード。基本操作や、ボムブロック、ケミカルブロックなどブロックの特性を学ぶことができる |
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うまくいくと花火が上がり、背景の動物たちも喜んでくれる。ゴールドを目指して挑戦を繰り返すこととなる |
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「宝石ブロック」は少ない球数で宝石ブロックを落としていく。どこにボールを当てればいいかを考えていく |
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「ポイントブロック」は得点が描かれたブロックをボールをぶつけて落としていく。コンテローラを銃に見立てて光線でブロックを撃つステージもある |
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緑のケミカルブロックは、ブロック同士ぶつかると大爆発を起こす
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ハンドツールでブロックを引き抜く。バランスを考えなくてはいけない
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「ボムブロック」ではボールを当てると破裂する赤いボムブロックが登場する。ボムの破片がぶつかると誘爆を起こす非常に派手なギミックで、うまく当てると大爆発が起きて大きな爽快感が得られる。どこにボールをぶつけるかを考えさせられるステージだ。
ユニークなのが、ボムブロックがシーソーの上に乗っかっていたり、構造物の上に乗っかっていたりするステージで、最初のボールでシーソーを跳ね上げたり、構造物を倒してボムブロックを空中にばらまき、その瞬間を見計らって2投目でボムブロックを爆発させるというもの。タイミングを見てボールを投げるのはこれまでと違う緊張感があって楽しい。
「消えるブロック」はボールを当てると消える紫色のブロックが登場し、「ケミカルブロック」は緑色のケミカルブロック同士をくっつけると大爆発を起こす。ボムブロックなども入った複合的なギミックが多くなり、うまくいったときの爽快感は大きくなる。どこを崩せば大きな爆発が起こせるか、どこが連鎖するかを考えさせられるステージだ。
「ハンドツール」は積んである構造物からブロックを引き抜く棒倒しのような楽しさのあるステージ。一番上に動物が乗っていて、それを落とさないようにバランスを考えて抜く、というステージもある。引っ張っているときに手が震えてしまうと、そのまま他のブロックを押してしまったりする。また、バランスを取るためにあえてブロックを押し、上の構造が崩れないようにしてから真ん中のブロックを抜き取る、といったテクニックも有効だ。
Wiiコントローラの特性を活かしたユニークなゲームだが、プレイしてみると強い勢いでボールをぶつけるのは意外に難しい。これはWiiリモコンの操作性というところもあるが、Aボタンをどういうタイミングで離すか、というのが重要な感じだ。ボールをうまく投げるために練習が必要だが、それでも失敗してしまうことがあった。
これは、主に投げるゲームの特性で生じた問題に感じた。本作ではステージによって投げるブロックの種類が変わる。ボールの強弱に成績が左右されてしまうのは野球のボールで、ボーリングのボールは少ない力でもまっすぐ飛ぶので失投することがほとんどない。本作では投げるアクションが必要なステージでは、弱いボールというのは全く意味がなく、「ボールをうまく投げる」というところにゲーム性のウエイトをかけすぎていて、ストレスを感じるステージもあった。正直、今回のルールでは、野球のボールとボーリングのボールをわける意味が感じられなかった。
もう1つ、本作全体でも言えることだが、特にエクスプロアーモードは地味だ。良い成績を残すと花火が上がり、背景の動物が喜ぶという演出も取り入れられているが、ブロックが物理演算で崩れていくという、物理シミュレーションむき出しなゲーム画面は本作のゲーム性に非常にマッチしているが、このゲームがどんなゲームか知らない人にはアピールとしての弱さを感じる。
本作は、人がプレイしていると思わずやりたくなってしまうゲームだ。難しいステージや、様々なギミックは親子で試行錯誤しながら楽しむゲームだと感じた。このゲームのユニークさはゲームファンにはすんなりわかってもらえると思うが、特に夏休みに子供と一緒にゲームを楽しみたいお父さんやお母さんに薦めたいゲームである。最初に画面を見た子供の反応は鈍いかもしれないが、がらがら崩れたり、爆発する構造物を見るうちに、子供はコントローラを使わせてくれとせがむだろう。一見地味だが、このリアルな物理演算が生み出す世界は、多くの人をゲームに引き込む魅力を持っていると思う。
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ボールを当てると爆発するボムブロック。空中にあるブロックにボールを当てるステージも |
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ボールを当てると消える紫色の「消えるブロック」。右のステージは、狭いところでボールを反射させて消していく |
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いかにブロック同士をぶつけるかが重要になる「ケミカルブロック」。どう連鎖させるかが鍵となる |
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ハンドツールは慎重さを要求させるステージが多いが、効率よく崩すかを要求されるステージもある |
■ 攻城戦、足場作りに、金脈探し! 様々なシチュエーションが登場するアドベンチャーモード
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「宝石の王国」ではヒツジたちに味方して、クマ軍に立ち向かう |
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「ゴリルダ・レスキュー」は子ゴリラの元に向かうゴリルダを助ける |
アドベンチャーモードは、ストーリー仕立てと、キャラクタが登場する楽しいモードである。いくつかの独立した物語が収録されている。「宝石の王国」ではプレーヤーはヒツジの兵隊達の味方をして熊の軍隊と戦うことになる。
「宝石の王国」では“宝石集め”、“こそどろ”、“戦士たち”という3つのテーマに分かれたステージが用意されている。宝石集めは「ブームブロックス」の基本である構造物を崩して乗っている宝石を落とすというステージだ。ボムブロックやケミカルブロックの特性を考えて攻略していく必要がある。
“こそどろ”は、攻めてくるクマ軍に爆弾ボールを投げて立ち向かうというもので、ユニークだ。爆弾は威力が高いが、味方の陣地も壊してしまう可能性がある。ヒツジが守っている宝石をクマが持ち去ろうとするのを防げれば成功になる。わらわらとよってくるクマに爆弾を投げつける、焦りながらも的確にボールを投げなくてはいけないゲーム性が面白い。
“戦士たち”は、ヒツジの反撃だが、石を投げてくるクマにヒツジたちは前進するだけで、プレーヤーが手を貸さなくてはあっという間にヒツジは全滅してしまう。こそどろ以上にスピードが優先されるステージだ。
「ゴリルダ・レスキュー」は、ゴリラの女王ゴリルダを導き、さらわれた女王の子供達を助けるというストーリー。“エスケープ”はつかむ機能を使い、道を造っていく。最終的なブロックを動かすために、手前から順にブロックを取り外していくステージなどは、切り子細工のからくり箱を彷彿とさせる。ゴリルダはただひたすらに前に進んでしまうので、注意が必要だ。
“クロッシング”はボールを当ててゴリルダの行く手の障害物を壊すのだが、道が極めて危ういバランスで造られているのが面白い。爆弾ブロックが積まれているステージなどは、普通のブロックにボールを当てて爆弾にボールが触れないように注意する必要があり、ドキドキさせられる。
“レスキュー”はつかむ機能を使い、子供ゴリラを落とさないように宝石ブロックを引き抜いていくステージ。子供ゴリラにブロックが触れないように慎重にブロックを取り除いて行かなくてはならない。だるま落としのように子ゴリラの乗っているブロックのバランスを考えなくてはいけないステージもある。
「ブーツ・アンド・バンディッツ」では金塊を狙うモンキー団にビーバーの保安官が立ち向かう。“金鉱”はボールを当てると金塊に変わるブロックを使ったパズルで、構造物の中でボールをうまくはね回らせるのが攻略の鍵となる。“ブラストサイト”はつかむ機能で爆弾を設置し、建物をバラバラにするというルールだ。
展開するストーリーは淡泊だが、各ステージはバリエーションに富んでいて面白い。アメリカでは10ドル前後でダウンロードできるPC向けの「カジュアルゲーム」というジャンルがあり、そこではパズルゲームが人気だ。ヒット作となった「Zoom」はアステカ風の世界観を取り入れゲームに独特の雰囲気をもたらしている。
本作のアドベンチャーモードは、カジュアルゲームの“設定を入れることで独特の味をもたらす”という手法をうまく取り入れていると感じた。語られるストーリーはキャラクタがテーマを訴えかけたりと大きく主張するものではないが、ゲーム性とストーリー展開がうまく融合している。本作がきっかけとなって、Wiiならではのアメリカ産カジュアルゲームがもっと増えてくるのではないかと予感させられた。
「ブームブロックス」はゲームを進めていくことでコンテンツがアンロックするルールとなっている。エクスプロアーモードの全てのステージをブロンズ以上の成績でクリアすれば「エクスプロアーチャレンジ」が、アドベンチャーモードのいずれかのレベルで6ステージをシルバー以上でクリアすれば「アドベンチャーチャレンジ」がオープンする。ステージによってはやりこまなければ上級者コンテンツにたどり着くことはできないだろう。
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「宝石の王国」では積まれている宝石を落とす“宝石集め”、攻め寄せるクマ軍を撃退する“こそどろ”、クマ軍に反撃する“戦士たち”という3つのシチュエーションが登場する |
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「ゴリルダ・レスキュー」は、引っ張る機能で道をつくる“エスケープ”、障害物をボールではじき飛ばす“クロッシング”、子ゴリラに気をつけながらブロックを抜いていく“レスキュー”がある |
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「ブーツ・アンド・バンディッツ」ではビーバーの保安官を助ける。構造物の中でボールを反射させる“金鉱”や、爆弾を設置して建物を崩す“ブラストサイト”といったステージがある |
■ 最大4人で楽しめるマルチプレーヤーモードと、より深く楽しめるクリエイトモード
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クリエイトモードはムービーで基本的な操作を学べる |
「ブームブロックス」はシングルプレイだけでなく、「マルチプレイモード」、そして、自由にステージを作ることができる「クリエイトモード」を搭載している。友達を家に呼んで遊ぶ、という子供達にとってはこちらがメインのゲームモードとも言えるかもしれない。
「マルチプレイモード」の対戦と協力モードでは複数のリモコンを使うか、1つのリモコンを複数でシェアするかも選べる。1つのリモコンでもボーリングのようにそれぞれのターンで得点を決めていくゲームも用意されている。今回は体験できなかったが、複数のリモコンで同時に画面に干渉するステージは、ボールやブロックが飛び交いそうで、想像するだけでも楽しそうだ。
「クリエイトモード」は自分で自由にブロックを積み上げステージを作り出すモード。アドベンチャーモードでクリアしたステージのオブジェクトも選べるのでゲームをやりこむほどに凝ったステージが作れる。ボールを投げてくるクマを設置して他のキャラクタと戦わせてみることもできそうである。
クリエイトモードは「ブームブロックス」のさらなる楽しみ方、という感じで今回のプレイではやりこむことはできなかったが、かつての「ロードランナー」のエディットモードのように、とことんまで凝るプレーヤーも出てくるだろう。作成したステージは「WiiConect24」を使えば友達に送ることができる。是非もう一歩踏み込んで、EAでステージコンテストを開催して、優秀作品をダウンロードできるようにしてもらいたいところだ。
「ブームブロックス」は、物理演算シミュレーションをゲームとして練り込み、画面を見ただけで引き込まれる原初的な楽しさを再現したユニークなゲームである。親子にも、コアなゲームユーザーにもお勧めしたい作品だ。
見方を変えると、この作品は、任天堂作品が持つ「誰にでも楽しいゲーム」というテーマに、北米のクリエーターが挑んだ作品という一面もある。ブロック型の動物は“かわいい”とはちょっとずれるが、独特の味があり、これまでのコアな北米産のコンシューマゲームとはひと味違う感じだ。今後本作の方向性が北米タイトルにどのような影響をもたらすかも注目していきたい。
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マルチプレーヤーモード。夏休みは、本作で友達とみんなで楽しんでみるのも良いだろう。 |
(C)2008 Electronic Arts Inc. All rights reserved.
□エレクトロニック・アーツのホームページ
http://www.japan.ea.com/
□「ブームブロックス」のページ
http://boomblox.jp/
□関連情報
【2月7日】EA、Wii「ブーム・ブロックス(BOOM BLOX)」
スティーヴン・スピルバーグ監督とのコラボ作品第1弾
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080207/ea.htm
【2007年7月13日】EAプレスカンファレンス
~映画監督スティーブン・スピルバーグがプロデュースしたオリジナルゲームを発表!~
「E.T.」、「A.I.」を超える感動SF巨編と、積み木パズルゲームの2作!?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070713/ea.htm
【2007年7月12日】EA、スティーブン・スピルバーグ監督とのコラボ作品
3作品中2作品のゲーム内容の一部を発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070712/ea.htm
【2005年10月17日】EA、スティーブン・スピルバーグ氏と契約
3本のオリジナルゲームを共同開発
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051017/ea.htm
(2008年7月15日)
[Reported by 勝田哲也]
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