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★モバイルゲームレビュー★

冒険するたびに弱くなる主人公!?
限られた時間で勇者は何を遺すのか

「勇者死す。」

  • ジャンル:フリーシナリオRPG
  • 配信元:ジー・モード
  • 開発元:ピラミッド
  • 利用料金:1ダウンロード525円
  • プラットフォーム:iモード(メガiアプリ)/Yahoo! ケータイ
  • 対応機種:iモード FOMA 903iシリーズ以降/ソフトバンク3G(一部機種を除く)
  • 配信日:配信中(iモード:2007年12月25日/Yahoo! ケータイ:5月1日)



 30代半ば。「これから死ぬまでの間に、自分には何ができるだろう」。そんなことを漠然と意識する年齢になった。20歳ごろと比べると確実に体力はなくなった。走ればすぐに息は切れ、一晩に飲める酒の量も減った。お腹のあたりの脂肪も気になるし、額の生え際も着実に後退しつつある。物覚えもかなり悪くなった。

 じゃあ悪いことばかりかと言われればそうでもない。当時と比べれば、多少なりとも収入は増えているし、色々とお金では買えないような経験もさせていただいた。モテナイ男なりになんとか結婚もできて、それなりに幸せな家庭を築いているつもりだ。

 歳を重ねること。言い換えれば、余命と引き換えに自分が何を得てきたのか、そしてこれから何を手に入れていこうとしているのか。人生の意義を考えるようになりつつあった私が、運命のように出会ったゲーム。それが「勇者死す。」だった。



■ 勇者に与えられた、たった5日間だけの命

 「勇者死す。」のキャッチコピーは「終わりから始まるRPG」。主人公は、魔王と戦い見事討ち果たした勇者。魔王との死闘の果てに、自らもまた命を落としてしまった。しかし神の導きによって、勇者はわずか5日間だけの生を得たのだ。魔王は倒したが、さらわれた恋人の消息は不明のまま。しかも、魔王によって記憶をすべて奪われてしまった勇者は、愛する人の名前も声も、顔さえも、何ひとつ思い出すことができない……。与えられた5日間を使って、行方不明の恋人と再会することが勇者の目的となる。

 魔王が倒されたにもかかわらず、冒険の舞台となる世界には、不穏な空気が蔓延している。戦場となった地域の荒廃は激しく、失業した騎士や傭兵が街にあぶれている。国全体が疲弊しており、体制に対する不満も民衆から噴出。協力し合っていた人間と亜人種は小競り合いを始めてしまう。しかも辺境の洞窟や廃墟には、今も魔物の残党が立てこもっているのだ。

 魔王との戦いで荒れ果てた世界。混乱が続く中で、勇者は愛した人を見つけ出すことができるのだろうか。既存のゲームでは描かれることのなかった、「魔王を倒した後」の冒険が幕を開ける。

【スクリーンショット】
勇者が死んだ瞬間から開始される。売り口上ではない、本当の意味での「今までにない」ゲームだ



■ エンディングは自分の葬儀。あなたのために何人が泣いてくれるだろう?

 ゲームは街やダンジョンなど、横スクロールのフィールドで主人公を操作。フィールドでモンスターシンボルと接触すると戦闘となる。戦闘シーンはターン制で、オーソドックスなコマンドバトルタイプ。ゲームに慣れたプレーヤーなら、直感ですぐに理解できるシンプルなデザインだ。

 恋人を探すのが勇者の目標だが、旅の途中で出会うヒロインたちの願いを叶えることもできる。プレーヤー自身の行動がその後のシナリオに変化をおよぼす「フリーシナリオシステム」を採用しているため、与えられた時間を、どのように、誰のために費やすかはまったくの自由。風の向くまま、気の向くままに世界を歩き回り、見て、経験するのが大切だ。

 障害となるのは時間経過。スタート時の勇者は、魔王を倒した時の状態。最高の能力値、装備、財産、地位名声を備えている。しかし時間経過とともに「死」が近づき、勇者の能力は衰え、呪文を忘れ、今まで軽々と扱えた剣すら重く感じ始めるのだ。勇者が行動すればするほど、弱くなっていくという緊迫した状況下で、何を行なって何をやらずにおくのか、取捨選択が重要となる。

 とくに時間の経過に大きく影響するのが「移動」。街から別の街へ、街からダンジョンへと移動するのに時間を消費してしまう。 徒歩なら9時間かかる場所に、お金を払って馬車に乗ると4時間で到着する。移動魔法を使うと時間はまったくかからないがMPは消費してしまう。時間をお金で買うのか、戦闘で苦労するのを覚悟してMPと引き換えにするのか、悩みどころだ。

 もうひとつ、時間を大きく費やしてしまうのが「休憩」と「宿泊」だ。勇者のステータスには行動を続けていると増加する「疲労度」がある。疲労度が溜まると勇者の能力値の減少割合が大きくなり、弱体化に拍車がかかる。疲労度を下げるためには適度に休憩、もしくは宿泊するしかないが、休憩は3時間、宿泊は6時間を消費する。休憩・宿泊すると、HPとMPが回復するので、通常のRPGと同じく回復のための休息が必要になることもある。移動と休憩をうまく見極めて行なわないと、貴重な時間がいたずらに過ぎてしまうことになる。

 戦闘で忘れてならないのはモンスターの持つ属性。「火」、「水」、「風」の3種類があり、ジャンケンのような3すくみになっている。相手の属性に対して弱い属性の武器や魔法で攻撃すると、与えられるダメージは極端に少なくなる。勇者の能力が高い序盤ではあまり問題にならないが、中盤以降は無視できない要素となる。

 パーティーは最大4人までで、最初は2人でスタートし、冒険の中で条件を満たすことでヒロインキャラクタたちが仲間になる。仲間にはそれぞれ特徴があり、使える武器や魔法が違う。効率のよい戦闘を心がけるならば、属性を考慮したパーティー構成も必要になる。

 やがて5日が過ぎ去り、勇者が天に召されるとエンディングが始まる。エンディングは勇者の葬式だ。プレイ中に出会ったキャラクタが勇者の墓前に現われ、別れの言葉を贈ってくれる。誰が登場し、どんな内容を語るのかは、プレイ内容によって変化するマルチエンディング方式だ。

【スクリーンショット】
伊藤賢治氏によるBGMが印象的。勇壮さの中にも物悲しさを秘めたメロディーが物語を盛り上げる
勇者の死後の国の行く末が語られ、葬儀に参加した人数、涙した人がカウントされる。この数字が勇者の活躍を現わしたスコアといえる



■ 魅力的なヒロインたち。美少女ゲーム的要素も

 勇者が出会うヒロインキャラクタたちは、みな魅力的に表現されている。

 森人(もりびと)と呼ばれる亜人種の女性・リューは、勇者が魔王を倒したときのパーティーメンバー。現在は森の樹木を乱伐しようとする人間と戦っている。胸の奥に秘めた勇者への想いをクールな振る舞いで隠す姿に、グッとくる。

 メリーアンは、戦争の被害が最も大きかった辺境の村に住む、自称・天才科学者だ。非常識な言動と行動から、周囲では魔女と呼ばれている。エキセントリックな性格の眼鏡っ娘キャラ。

 亜人種である穴民(あなたみ)のナオミは、豪快な性格と色っぽさが魅力の姉御的存在。穴民は坑道に逃げ込んだ魔物の残党に苦しめられており、助力を求められる。ナオミのストレートで色っぽい物言いにはクラクラしてしまう。

 サラは、「神の前の平等」を教えとする教会のシスター。戦火で焼失した礼拝堂の再建に尽力している。清楚な外見、控え目で優しい性格だが、熱い情熱と理想を胸に秘めており、ついつい手助けせずにはおられない。

 国中を旅する謎の美少女商人ビビは、廃墟の町を自由経済都市として復活させる夢を持つ。神出鬼没で、いつも元気に世界を駆け回る、おてんばな妹系。

 そしてパーティーには加わらないが、重要なキャラクタもいる。ユリアは神から遣わされた天使で、勇者の5日間を見守り、狂言回しの役割を務める。冒険を繰り返すたびに、くだけた性格になっていくのが面白い。

 王女のフローラは、以前から勇者を慕い続けていたキャラクタ。パーティーには加わらないが献身的にサポートしてくれる。

 そして勇者に協力してくれる唯一の男性、執事のトーマス。子供の頃から勇者の世話をしていたトーマスは、勇者が魔王討伐に向かったときにも付き従っていた。勇者が復活した直後に仲間となり、記憶を失った勇者にいろいろな情報を与えてくれる。

 リュー、メリーアン、ナオミ、サラ、ビビは冒険中にそれぞれの条件を満たすことで勇者の仲間になる。彼女たちを仲間にする、美少女ゲーム的表現でいえば「攻略」することは、プレーヤーのモチベーションの柱である。

 しかも彼女たち5人のヒロインとは、エンディングにもかかわる重要なイベントがある。あるアイテムを仲間のキャラクタにプレゼントし、宿屋に宿泊するとイベントが開始される。ヒロインは勇者が生きた証を私の中に残してほしい、残りわずかな命を受け継ぎたい、と申し出てくるのだ。このとき繰り広げられる会話はかなりきわどく、セクシーな内容。このイベントによってエンディングの別れの言葉が変化する。

 なお、このイベントは1回のプレイでは最初にプレゼントした相手としか発生しない。何度もプレイを繰り返せば、それぞれのイベントを見られる。

【スクリーンショット】
山下しゅんや氏によるデザインがキャラクタの個性に深みを与える。ヒロインたちの性格や内面がうまく表現されている



■ RPGのフリをしたパズルゲーム!? 固定観念をぶっ壊すゲーム性

 RPG作品である「勇者死す。」の面白さの本質は、「パズル的楽しさ」にある。

 時間が経過するたびに弱くなっていく主人公は、レベルアップとは無縁の存在だ。従来のRPGのような、主人公を育てていく楽しみは一切ない。刻一刻と、能力値が下がっていく様には恐怖すら覚える。勇者はひとつずつ呪文を使えなくなり、装備していた武器が重くなりダメージを受けるようになる。序盤では倒せたはずの敵と後半戦うと、まったく歯が立たない。何かに急き立てられるような不安な気持ちのまま、実時間で6〜8時間ほどプレイすれば、必ずエンディングが訪れる。

 初めてのプレイでは、おそらく満足いくエンディングは迎えられないだろう。しかもゲームの中にはランダム要素がいくつも配置されており、同じ手順でプレイしても、手に入らないアイテムが出てくる。逆に、時にはあっけなく必要な条件をクリアしてしまうこともある。

 そこでプレーヤーは気づくのだ。このゲームは、「与えられた条件」を「どの順番」で「どうやって処理」するのか、その時点での最善の一手を見つけ出す過程を楽しむものだと。この楽しさは、「テトリス」や「ぷよぷよ」といった落ち物系パズルに通じる。「落ちてくるブロック」を「どの場所」に「どの形」で落とせばいいのか。限られた時間の中で選択肢を提示され、ベストな方法を選び出していく。そして、これしかないという最上の一手を見つけだしたときの恍惚感。そんな楽しさを見いだせると、がぜん面白さが増してくる。

 あちらを立てればこちらが立たず、そんなヒロインたちの願いを、どの手順で叶えてあげるのか。ベストの選択肢を見つけるためには、仮説を立てて実行の繰り返し。何度もトライ&エラーするたびに、新しい発見をするのだ。

 繰り返して遊ぶことで広がる楽しさは、モバイルゲームに非常にマッチしている。携帯電話であるがゆえに、何時間も集中して遊ぶことは難しい。しかし本作は短いサイクルでエンディングを迎えるので、ほんのわずかな時間についついプレイしてしまう。操作も携帯電話のキーでプレイしやすく設計されており、制作者の丁寧な心配りが見て取れる。

【スクリーンショット】
全部のイベントを体験するには少なくとも3回、平均すると5回程度のプレイが必要だと、デザイナーの桝田省治氏は語る



■ エンタテインメントと融合した、深遠なテーマ

 「勇者死す。」は、モバイルゲームとは思えないほど豪華なスタッフが集結し話題になった。「俺の屍を越えてゆけ」など独特のセンスで知られる桝田省治氏がゲームデザインとシナリオを担当。音楽は「ロマンシング・サガ」シリーズなどを手がけた伊藤賢治氏。キャラクタデザインに「ファントム・キングダム」などでイラストを担当した山下しゅんや氏を起用している。

 本作は桝田省治氏が長年温め続けていたアイデアをもとにしており、氏の思想や考えが非常に色濃く映し出されている。桝田氏がゲームデザインした「リンダキューブ」は、自分たちの星が壊滅するまでの8年の間に、可能な限りの動物を集めて宇宙船で脱出するのが目標だ。そして「俺の屍を越えてゆけ」では、長くとも2年ほどしか生きられないという呪いを受けた一族が子孫を残し、代を重ねてゆくことで強くなっていくというゲームシステムを生み出した。

 限られた時間の緊張感の中でこそ、人間は物事の本質に思いを巡らせることができるのではないか。もしそうだとするならば、桝田氏は制限時間というものを使って、作品に込めたテーマを伝えることに成功している。

 「リンダキューブ」では、(舞台は地球によく似た惑星だが)地球上のすべての生き物、そして地球そのものの存在意義を考えさせられ、「俺の屍を越えてゆけ」ではもう少しテーマを身近に引き寄せて、「自分の先祖や子孫とは何か、生き物が自分の血を世に残そうとする理由とは何か」を、プレーヤーと向き合わせる。

 そして「勇者死す。」では、もっとパーソナルな領域に踏み込んできて、突きつけてきた。「あなたの生きる意味とはなんですか」と。

 勇者はおのれの能力値やお金、装備などのパラメータを失う代わりに、誰かの願いを叶える。なにかひとつを犠牲にして、ひとつ幸せを得る。そうやって獲得した「何か」を具体的に表現するのが、エンディングの葬式だ。勇者に与えられるクリアの報酬は参列者の弔いの言葉のみ。それをどうとらえるかは、プレーヤーに委ねられている。

 もしかしたら、私たちの人生とはこんなに単純なことなのかと思う。若さや体力を失いながら、収入や名誉、経験などを得る。ひょっとしたら、ほんのささやかな幸福感・満足感だけかもしれない。そうやって、残された時間に追われながら得られたものが何だったのか、自分の人生の最期でようやく理解できるだろう。

 プレーヤーに最善の一手を考えさせる「勇者死す。」というゲームに向き合うと、反対に「人生に最良の選択肢なんてないのかもね」という桝田氏の声が聞こえるようだ。

【スクリーンショット】
「死」というネガティブなテーマだが、重苦しいだけの作品にならないのは、桝田氏の持つ独自のエンタテインメント精神によるものだ



■ プレイのたびに新しい発見が生まれる。あなたが5日目に見つけるものは?

 プレイした人が最初に抱くであろう感想は、おそらく「何をしていいかわからない」ではないかと思う。最低限の情報は与えられるものの、恋人を探すためにどこに行けば、何をすればいいのか、誰も教えてはくれない。こんな状況で生き返らされ、しかも余命5日間と言われて放り出されるとは、なんと不親切なんだと思ってしまう。

 しかし、これも桝田氏の仕掛けなのだ。手探りの状態では、必ず失敗が生まれるだろう。しかし一見無駄に思えることや失敗も、後から思い返せば価値が生まれることもある。そんな人生の機微を伝えてくれる。

 個人的に残念なのはボリューム。もっともっと、この世界で勇者とともに5日間を過ごしたいというのは贅沢な悩みだろうか。アイデア勝負やインパクト重視な面もあるため、続編や第2弾は難しいだろう。そこで、現行ゲームのボリュームアップバージョンを提案したい。イベントやキャラクタを増やせば、ゲームのシステム上プレイ時間は加速度的に増えていくはずだ。現在のダウンロード売り切り形式では難しいだろうが、ついそんな望みを抱いてしまう。

【プロモーションムービー】



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□ジー・モードのホームページ
http://www.g-mode.jp/
□「勇者死す。」のページ
http://www.g-mode.jp/title/hero/
□関連情報
【2007年12月20日】ジー・モード、iモード「勇者死す。」12月25日より配信
桝田省治氏がシナリオ、伊藤賢治氏が音楽を手がける“5日間だけ”のRPG
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071220/hero.htm

(2008年6月11日)

[Reported by 山科明之進]



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