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会場:Moscone Convention Center Game Developers Conference 2008のCasual Games Summit初日は「万人のためのゲーム」という“約束”を果たす、という目標を提示して終了した。2月19日に行なわれた2日目のCasual Games Summitでは変化していく周辺の状況の分析と、これに合わせて進化していくカジュアルゲームが紹介された。
カジュアルゲームに大きな変化をもたらしているのは「アイテム課金制のビジネスモデル」と、「ユーザーの交流」である。この2つの要素は、韓国産MMORPGが入ってきてユーザーのニーズが変化していった日本の状況によく似ている北米のカジュアルゲームメーカーがどのような答えを出していくのだろうか。
■ オンラインコミュニティ、アイテム課金モデル……世界的な動きに対応するカジュアルゲームとは?
「コミュニティ」の代表作の1つが「Webkinz」だ。ペットを育成し、ペットの部屋やペット自身を飾り立てるだけでなく、ペットを中心にプレーヤー同士が情報交換をし、より繋がりを強め交流の輪を広げていく。アイテム課金ベースのビジネスモデルと言うところでも欧米では新しい存在だ。 もう1つがFacebookというソーシャルネットワークサービス(SNS)だ。元々はアメリカの大学生の交流のために作られたシステムだが、2006年9月に一般公開され現在爆発的な人気を得ているという。他のSNSと違う点は様々なツールやゲームがFacebook内で使用できるところだ。他のSNSではリンクを紹介し、そこからゲームを起動、もしくはインストールするというところだが、Facebookではアプリケーションとしてすぐに使用できる。様々なツールがユーザー自身の手で作られ、カスタマイズされ「流行」として取り入れられていく。厳密に言えばゲームではないが、北米のオンラインコミュニティでは大きな存在感を持っているという。 ゲーム性の進化の代表作としては特に「ビジュアル」の面で「PUZZLE QUEST」が取り上げられた。本格ファンタジーRPGのような重厚な世界観を感じさせるグラフィックスとシンプルなパズルゲームの融合だが、宝石をそろえたときなどに派手な稲妻が光るなど、演出面で大作ゲームのような雰囲気を造り出している。 もう1つがカジュアルゲームではなく、コアゲームとされる「BIOSHOCK」だ。この作品のハッキングを行なうための場面は水道管ゲームのルールを応用したミニゲームになっており、成功することでアイテムを入手できるなど、ゲームが有利になる。「この小さな成功の快感がゲーム全体の楽しさを持ち上げてくれる。カジュアルゲームとコアゲームは友人といえる関係だ」とChris Early氏は語る。 そしてビジネスモデルとしては「基本プレイ無料、アイテム課金制」で成功しているタイトルとして、NEXONの「カートライダー」が紹介された。“韓国型”ともいえるこのビジネスモデルに影響を受けたためか、北米でもアバター要素を前面に出した作品が多く出始めている。元々もビジネスモデルとしては欧米で生まれた形式かもしれないが、韓国のゲームの世界的な進出は北米市場でも大きな影響をおよぼしていることを感じさせられた。
キーノートスピーチの後はビジネスや開発者の立場で進化の方向性にどのような対応をしていくかが様々な登壇者の口から語られた。その中で「Diner Dash」と「ZUMA」というカジュアルゲームを代表する2つのタイトルはいち早くこの流れに対応し、さらに新しい方向へ進化している。次項では2つのタイトルの取り組みを紹介したい。
■ 「Diner Dash」と「ZUMA」、時代の要求に積極的に対応するカジュアルゲームの代表作
仲間は服装などを自由に設定できアバター要素が楽しめる他、、マッチングロビーによって他のプレーヤーと協力したり対戦することも可能だ。客の配置などで難易度が異なる多数のマップが用意されている。服装は追加アイテムを購入することでさらに個性的にカスタマイズできる。カジュアルゲームの“名作”である「Diner Dash」は“客の注文通りの物を届ける”というシンプルなルールそのまま、ストーリーが楽しめるスタンドアローンのゲームとしても、オンラインゲームとしても最近の流行に合わせた形で生まれ変わったのだ。 PopCap GamesのAsia/PacificVice PresidentのJames Gwertzman氏はアジアの巨大な市場や基本プレイ無料、アイテム課金制独特のマーケットが形成されているアジア市場に向けて宝石を打ち出し列を消していくパズルゲーム「ZUMA」のアジア版を紹介した。こちらはクライアントそのものは無料だが、無料のままだと限られたレベル(面)しかプレイできず、それ以上プレイしたいときに課金をする従量課金制のビジネスモデルとなっている。 ゲームが有利になるアイテムも販売し、これらが封入されさらにアジア市場に向けて飾り立てたパッケージを販売するといった方法で認知度を広めている。アジア市場に向けてゲーム内容をどのようにカスタマイズしていくか、指標となるアレンジといえるだろう。 課金方式の変化やオンライン要素の追加といった内容の進化は新たな市場に向けた物ではなく、韓国などのアジアのゲームが北米に進出したことを受けてのものだ。2日目はさまざまな場面で「今までのダウンロード販売の方式はもう古い」と言う声が挙がった。国内のユーザーの嗜好も変化しており、「コミュニティ」と「課金方式」はこれからさらに大きなテーマになりそうだ。 こういった取り組みに関しては日本の我々も共感できる部分がある。「基本プレイ無料」というビジネスモデルのオンラインゲームは、韓国の影響を受けてもはや一般的になりつつあると言える。その中で北米のMMORPGである「ロード・オブ・ザ・リングス オンライン」と「ダンジョンズ アンド ドラゴン オンライン」がクライアント無料の一定レベル以上のプレーヤーのみ課金するという方式を実行したところは注目したい。今後北米のタイトルが日本でサービスされる際、どのようなサービスプランを取るかも見ていきたいところだ。 今回カジュアルゲームの開発者達の取り組みを聞くことができ、時代のニーズに合わせた積極的なゲーム開発の姿勢に驚かされた。筆者はXbox 360やPS3のタイトルが北米で非常に好調なのを見て、北米のユーザーはみんなFPSや激しいスポーツといったテーマが好きなのか、という疑問を感じたことがある。カジュアルゲームの開発者達の積極的な活動とエネルギーは、北米のゲームユーザー全てがここで言う“コアプレーヤー”ばかりでなく、女性や低年齢層のユーザーの期待を受けてゲームを制作していることから来るものなのだとはっきりと感じた。
全てのユーザーを満足させるべく万人向けのゲームという難しい命題に答えるべく、現代のトレンドを積極的に取り入れ楽しく、面白いゲームを世に送る彼らもまた、「トップゲームクリエーター」というべき存在だ。日本の「ライトユーザー向け」ゲーム制作もまた昨今では大きな注目を浴びているが、北米のカジュアルゲーム制作者はそれ以上のエネルギーを感じた。彼らが今後どのようなゲームを作り、ムーブメントを起こしていくか、注目していきたい。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ (2008年2月20日) [Reported by 勝田哲也]
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