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Game Developers Conference 2008 現地レポート

Casual Games Summitレポートその1
“全ての人に向けたゲームを!”大きな課題に取り組むカジュアルゲームの現在

2月18~22日 開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Convention Center

 世界中からゲーム開発者が集うGame Developers Conference 2008初日と2日目はオーディオやプログラム、シリアスゲームなど様々な視点でゲームを分析し、知識の共有とそこからの発展を促す「チュートリアル」が開催される。本稿ではCasual Games Summitの初日の講演の模様伝えたい。

 チュートリアルは1つのテーマを午前10時から午後6時まで2日間たっぷりと掘り下げる。初日は「カジュアルゲームの現在」としてカジュアルゲームの基礎を説明し、次の日に行なわれる「カジュアルゲームのこれから」に繋げていくという構成だった。このため、昨年と内容がかぶるものも多かったが、確実に起きている変化や、カジュアルゲームが取り巻く状況などを確認できた。ここから「未来」へどう繋がっていくのだろうか。


■ コンソール機への進出、広がるユーザー層、進化する演出……改めて問われるカジュアルゲームの革新と本質

カジュアルゲーム全般の現在を語ったFreelance Producer/DesignerのDave Rohrl氏
キーノートスピーチを行なったPlayFirstのPresident & CEO John Welch氏
カジュアルゲームのプレーヤーを象徴する写真として選ばれたのが、「犬と主婦」だ。この他にも遅れたプログラムを紹介するのにぼろぼろの車の写真を出したり、資料からも講師のサービス精神とセンスが感じられる
 Casual Games Summit初日はFreelance Producer/DesignerのDave Rohrl氏や、Blue Fang Senior DesignerkのSteve Meretzky氏、Rebel MonkeyのPresident/Co-FounderであるNick Fortugno氏などによってカジュアルゲームの概要が語られた。

 ここで取り上げられる「カジュアルゲーム」とは、これまではPS2(PS3)やXbox360などで店頭販売されている3Dグラフィックスや長いストーリーを持つ大作ゲームとは違う1つのアイデアやコンセプトを押し出したタイトルを指す。転がってくる宝玉に同じ色の宝玉を当てて消していく「ZUMA」や、お客のオーダーに答えてテーブルに料理を運ぶ「Diner Dash」といったタイトルがヒットタイトルとして知られている。

 360の購入時にバンドルされている「Hexic」など、最近ではPS3やXbox 360のダウンロードタイトルとしても人気を集めている。これまでCasual Games Summitでは携帯電話で楽しめるゲームは、「PCへのダウンロード販売」という形に限定していたためか話題に上ることはなかったが、Xbox 360の「Xbox Live Arcade」をはじめとしてこれまでPCのみで展開していたカジュアルゲームがハードの垣根を越えて広く販売されるようになった。

 カジュアルゲームの基本的なコンセプトは「プレーヤーがすぐにゲーム性を把握することができるシンプルさ」、「ゲームそのものは奥が深く、遊びごたえがある」、「ハードに高レベルな3Dグラフィックス機能を要求しない」、「残虐さをテーマとしない」など様々なポイントがある。

 これまでのCasual Games Summitでは登壇者の傾向からか米国でのダウンロード販売によるPC向けカジュアルゲームに話題をあえて限っていたが、昨今では効果的に3Dグラフィックスを活かした演出のゲームなども出てきている。また、「Wii Sports」などカジュアルゲームがもつ間口の広い楽しさを実現させるゲームも登場し、コアゲーマー向けのコンシューマとPC向けカジュアルゲームの“対立”という単純な構図ではなくなりつつある。

 前回ではPS3やXbox 360については少しだけ触れられる程度だったが、今回はカジュアルゲームの有効なアピール・販売方法も取り上げられ、携帯電話もハードの性能上昇により、PCでプレイできたゲームがそのまま移植可能になり、有望な市場となっていることが紹介されるなど、カジュアルゲームを作っている業界全体に大きな変化の波が来ていることが語られた。

 カジュアルゲームはユーザーが直感的に操作できるマウスが「カジュアルゲーム向けデバイス」として捉えられていたが、Wiiのセンサーやポインティングデバイスとしての手軽さがゲームの間口を広げている点や、「Guitar Hero」のギター型コントローラのように今までのコアゲームファン以外の層を開拓したゲームデバイスも紹介した。

 カジュアルゲームの流行を後押ししているのが「ユーザー層の変化」である。米国でのカジュアルゲームは昨今では「母親をゲームの友達にする」ほどにゲームをプレイする“層”を広げるタイトルとなっている。一方で凝ったグラフィックスや音楽で強く世界観を主張したり、ストーリー性を入れるなどカジュアルゲームの枠を超える、コアゲーマーにもアピールできる作品も増えてきているという。

 カジュアルゲームの1ジャンルの中で「スキルゲーム」というものが紹介された。これはオンラインで対戦できるポーカーといったゲームでユーザー自身が実際のお金をかけてプレイできるのが特徴だ。オンラインのギャンブル法に関係するため、プレイできる州とできない州がある。というビジネス的には見逃せない要素ではあるがCasual Games Summitでは「こういうジャンルもある」という簡単な紹介のみにとどまっていた。来場者からも「ユーザーの不正行為にどう対処するか」といった質問にも、「真剣に対処している」といった簡単な受け答えのみだった。

 他にも、今回はほとんど触れられていなかったがカジュアルゲームのジャンルとしてソーシャルネットワークやMMORPGも多くのユーザーを獲得しているようだ。最近は「Club Penguin」というミニゲームも楽しめるコミュニケーションツールが人気だという。この作品は基本プレイ無料のアバターなどのアイテム課金によって運営されている。

 この他、NEXONの「メイプルストーリー」も人気とのことだが、初日にはこれらのタイトルを紹介する講師はいなかった。前回でも感じたことだが、Casual Games Summitという名前ではあるが、ダウンロードによるゲーム販売関係者のみが集まるという「狭い意味でのカジュアルゲーム関係者」という印象はやはりぬぐえなかった。

 “The Promise of Casual Games”という題でKeynoteスピーチを行なったPlayFirstのPresident & CEO John Welch氏はここまで語られたカジュアルゲームの概要と変化を紹介してから、「昨今のゲームはより高価に、より難しくなりつつある。我々のゲームもコンシューマ機でプレイできる様になってはいるが、コントローラではどうやってプレイして良いかわからないユーザーもいる。本来誰もがゲームをプレイすることが好きなはずだが、コントローラがゲームをプレイしたい人の障壁になっているのではないか」と語った。

 さらにWelch氏は作り手側、販売側の問題点も指摘する。20ドルでゲームをダウンロードするという固定的なゲームの販売体制はユーザーのニーズに一致しているのか、ゲームのクローンが出続ける作り手の創造性と、コピーを作り手に強要する販売側の問題、業界全体が常に「革新性」を求めなくてはならないとWelch氏は語る。Welch氏は「“カジュアル”はすでにゲームのカテゴリーではない。私達は“ゲームはみんなのためにある”という約束を常に果たしていきたい」という言葉で講演を終えた。

 Welch氏のコントローラへの考え方は、インベーダーからファミコンへとゲームをプレイしていた筆者の「ゲームプレイ」とは全く違うとらえ方で驚かされた。DSのタッチペンによる操作方法や、Wiiなどが中高年のユーザーを獲得しているという一面はあり、改めてゲームとコントローラの関係に考えさせられた。

 キーボードでドライブゲームやアクションゲームをプレイする韓国ユーザーを見るとどうしても「窮屈さ」を感じさせられたのだが、ここももう一度考えてみたいところだ。一方で「Xbox Live Arcade」のタイトルは使用するボタンを極力少なくすることでユーザーへアピールしている。カジュアルゲームに分類される「パックマン」など過去のタイトルはコントローラでプレイするのが一番しっくり来るし、今後インターフェイスがどうなっていくかは興味のあるところだ。

 カジュアルゲームの中にもより美しいグラフィックスや独特のストーリー、音の演出など様々な進化が起きている。シンプルであり続け、みんなに楽しんでもらうためのゲームであることと、作り手のこだわりと、創造性を活かす部分というのは難しいところかもしれない。「万人のためのゲーム」という“約束”にゲーム開発者がどのような答えを出していくか、注目したい。

Blue Fang Senior DesignerkのSteve Meretzky氏 Rebel MonkeyのPresident/Co-FounderであるNick Fortugno氏 Joju GamesStudio ManagerのJuan Gril氏
カジュアルゲームが配信されている多数のチャンネル。流行と共に大きな存在感を示した 「Guitar Hero」のギター型コントローラ。コアプレーヤー以外にも多くの人がプレイしている 3DグラフィックスとSF要素のあるカジュアルゲーム。異色の存在だ
開発に使われている言語。プログラムやツールの利点なども検証された 携帯電話への進出。プレーヤーの層は広がっていく ゲーム制作に求められる理念。コピーゲームは業界の発展を遅らせるだけだ


■ シンプルで、ユニークで、不条理で面白い。トップ開発者が紹介する注目の最新作

 Casual Games Summit初日の最後には、Nick Fortugno氏とJoju GamesStudio ManagerのJuan Gril氏による「The Year in Casual Game Design」というタイトルで注目のタイトルが紹介された。非常にユニークな物が多かったので紹介していきたい。

 各タイトルを見て感じさせられるのは作品からみなぎる独特の世界観と、クリエイターの強い個性である。日本のゲームもあり、どの作品もデモプレイを見ているだけで思わず触ってみたくなる魅力を持っていた。

【Azada】
 細かく描き込まれ、多数のオブジェクトがある場所をクリックして調べることで提示された条件をクリアしていくアドベンチャーゲーム。1つの場面ごとに限定されているのが特徴で、プレーヤーはその1つの風景に集中して探索できる。怪しいところでは星のような光がマウスの周りを飾ったり、マッチをするとリアルな音がしたり、演出も凝っていて、本格的なアドベンチャーゲームのような雰囲気と、カジュアルなゲーム性を両立している。

【マキビシコミック】
 日本の制作者による忍者を扱ったデジタルコミックとミニゲームが融合した作品で画面に隠れた忍者を捜し出すのが目的。ロボットのような忍者、独特のセンスで描かれた風景が面白い。日本語か英語でプレイできる。デモプレイは木の上で通せんぼするリーゼントの髪型をした猿と対峙する場面で、アル場所をクリックすると脈絡もなく半分機会のイノシシが猿に突進しはね飛ばす。しかしぼーっと見ていると帰ってきたイノシシに自分もはね飛ばされるため、他の所をクリックしてイノシシをそらさなくてはならない。展開するストーリーがとことん不条理でそこがこの作品の大きな魅力だ。

【CHOCOCOLATIER】
 世界中を旅して材料を貿易で入手し、パズルゲームで指定されたチョコレートを作るゲーム。チョコを作るゲーム部分は単純だが、世界中の港町の雰囲気など歴史を感じさせるゲームとなっている。

【Chat Noir】
 マルイ緑のタイルが敷き詰められたフィールドを気ままに歩く猫の影。プレーヤーはタイルをクリックすることで色を変え猫を囲い込む。プレーヤーがクリックすると猫はいずれかの方向に動き、画面街に逃げてしまうとミスになる。猫の動きを予測してタイルの色を変えていかなくてはいけない。猫の動きが非常に愛らしい。

【Crazy Mammoth】
 使うのはジャンプボタンのみ。坂を滑っていく氷漬けのマンモスをうまくジャンプさせライバルのマンモスとレースを繰り広げる。どこでジャンプすれば相手を抜けるか。抜こうとするマンモスをジャンプで下から押し上げて飛び越されるのを邪魔したりシンプルながら熱い攻防が楽しい。

【「Rayman's Raving Rabbids 2」】
 高いグラフィックス機能を要求する“Non-Casual Casual Game”とも言うべき作品。カーソルの上と下を連打してコーラを振り、不格好なウサギに飲ませるとふって増幅された炭酸によってウサギが大きなゲップを出す。そのゲップの大きさを競うのだが、ゲップの表現が秀逸で、ウサギのゲップで周囲の家は破壊され、走っていた車は木の葉のように宙を舞う。爆発のような大破壊が起きるのだ。PCが高性能であるほど大げさな演出が楽しめる作品だ。

□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□関連情報
【2007年3月6日】Casual Games Summitレポート
制作の姿勢、メーカー戦略……独自の展開を模索するカジュアルゲーム
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070307/casual.htm
【2007年3月】Game Developers Conference 2007 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070308/gdclink.htm

(2008年2月19日)

[Reported by 勝田哲也]



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