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会場:秋葉原UDXビルディング・UDXギャラリー
会場となった秋葉原UDXビルディング内には「CRYSIS」のプレイに自信を持つFPSプレーヤーたちが集まり、日本代表の座をかけて激しいデスマッチが繰り広げられた。
■ やや空きの目立つ選手登録枠。「CRYSIS」の持つ必要スペックの高さが影響か
この「CRYSIS」は、充実したシングルプレイゲームモードと高水準のマルチプレイモードも有しており、競技性の高いスポーツ系FPSとしても一定の評価を受けている。3月15日にシンガポールにて開催が予定されている「2008 CRYSIS REGIONAL TOURNAMENT CHAMPION FINAL」は、日本、オーストラリア、香港、シンガポール、タイ、韓国、台湾、南アフリカの8カ国が参加する「CRYSIS」国際大会であり、事実上のアジア最強プレーヤー決定戦となる。 今回実施された大会の主眼は、上記シンガポール大会へ出場する、8名の「日本代表選手団」を選考すること。主催のエレクトロニック・アーツは、オフライン予選大会の実施に先立ってオンライン予選を実施するなど入念な準備を重ねてきた。そして当日、日本代表の座を目指し、会場に集った選手は総勢26名。今大会の実施要綱によれば最大で32名の参加を見積もっていたところ、その実数はやや届かなかった模様である。
原因のひとつとしては、「CRYSIS」というタイトルが持つ必要スペックの高さが挙げられる。競技(eスポーツ)としてプレイされるゲームタイトルには、プレーヤーが持つPC環境にて「快適に動作する」ことが求められるが、「CRYSIS」は、抜群の映像品質を誇ると同時に、非常に「重い」ことでも知られるタイトルなのである。競技性を十分に発揮する60fps超のパフォーマンスを得るための必要スペックは非常に高く、このためeスポーツタイトルとしての「CRYSIS」は他のタイトルに比べて事実上間口が狭い。今回の大会規模を評するにあたってはこの点への注意が必要だろう。
■ 同時開催の「日本最強プレイヤー決定戦」で各選手が腕を慣らす
「日本代表決定戦」に先立ち、まず行なわれたのが「日本最強プレイヤー決定戦」。ここで26名のプレーヤーは3つのグループに分かれ、各グループごとに15分1本勝負の個人デスマッチを実施。各グループの上位4名が勝ち抜け、12名での決勝戦を戦う。 「CRYSIS」のデスマッチルールでは、各プレーヤーはハンドガン以外の武器を持たない状態でスタートする。ランダム地点に出現したプレーヤーは、ゲームフィールド上の各地に置かれた武器を拾って戦う。本作における武器は現実に即したアサルトライフルから、エイリアンテクノロジーによるクセの強い武器までバリエーション豊かだ。実際の対戦ではバランスの良いアサルトライフルを使って戦う場面が多く、各選手が慎重に戦う様子を見ることができた。 本作のもうひとつの特徴は、プレーヤーが装着しているスーツの特殊能力だ。各プレーヤーは場面に応じて「アーマー」、「ストレングス」、「スピード」、「クローク」の4モードを持つスーツの能力を切り替えながら戦う。銃撃戦では防御力を重視して「アーマー」を使い、接近戦では「ストレングス」に切り替えてパンチ攻撃といった按配だ。各選手とも全てのモードを完全に駆使しており、特にパンチ攻撃でのスコアラーが多かったことは、集まった選手達の高いスキルを証明するものだったと言える。 各グループのデスマッチを勝ち抜き決勝戦へ進出した12名の選手の中に、他のゲーム大会でも見かける選手の名があった。中でも筆者が注目したのがfumio選手だ。この選手は弊紙で度々お伝えしているeスポーツ大会「Eスポーツスタジアム」の「WARSOW」部門でトップを争い続けてきたFPSプレーヤーで、最近は「CRYSIS」に絞って練習を積んでいるという。今回の大会ではスコアトップを度々走っており、巧いプレーヤーは何をやっても巧い、という一般の感覚を実地で証明していた。
15分間の激戦を制し、ファイナルラウンドで見事優勝したのはgimeia選手。以下、2位fumio選手、3位soar選手と続き、各選手に入賞賞品が授与された。また、この「日本最強プレイヤー決定戦」における優勝選手にはシンガポール大会への日本代表選手枠が保証されていたものの、優勝したgimeia選手は代表選手規定である「20歳以上」の条件を満たしておらず、続いて行なわれた「日本代表決定戦」に全ての代表枠が託されることとなった。
■ シンガポール大会に向けた「日本代表決定戦」。8名の日本代表選手決まる
ヒットポイントが一定時間で自動回復するエネルギーアーマーのシステムをとる「CRYSIS」では、連続的な撃ち合いはタブーで、要所で「休む」ことが好成績を目指すうえの鍵となる。アーマーが削り取られた直後に攻撃を受ければ易々と倒されてしまうが、時間を置けば体力を全回復でき、初期条件と同等の状況で戦うことができるためだ。 しかし、決勝戦では、スキルの高い選手が集まった各選手が互いに「休むこと」を許さず、極めてハイスピードな戦いが展開された。試合開始後まもなくスコア上位集団を形成したのはfumio選手、bariantg選手、KayzE選手、DrivEShooT選手、yoppi選手など。特に2位~4位の争いは凄まじく、秒単位で順位が入れ替わり続けるというデッドヒートだ。これには観戦者からどよめきが起こり続けていた。 その先頭集団からいちはやく飛び出したのがfumio選手だ。決勝戦の序盤数分、エイリアンテクノロジーの「冷凍銃」を真っ先に入手、これを使って相手選手を凍らせ、動けなくしてからハンドガンで破壊するという作戦に出た。この作戦は実に効果的で、体力を削られる打ち合いをすることなく、一方的にスコアを伸ばし続けていた。ただし、この銃は重く、移動スピードが制限されてしまうためマトになりやすいのが欠点だ。それは照準動作と立ち回りの巧さで見事にカバーしていた。この冷凍銃を使った作戦は、ゲーム中盤以降は他の選手から対策されたためか別の作戦にシフトしていたものの、国際大会でもキーとなりそうな戦術だ。 15分間のデッドヒートはあっというまに過ぎ、最終ランキングが決定した。この結果、日本代表選手としてシンガポール大会に出場する権利を得た選手は以下の8名。
fumio、bariantg、KayzE、DrivESHooT
日本代表に選ばれた全選手には、エレクトロニック・アーツより、シンガポール大会への旅費および宿泊費が提供される。閉会式にて、エレクトロニック・アーツの土川真太郎氏が登壇。日本代表に決定した選手を祝福するとともに、代表選手団とともにシンガポールへ赴き、選手達の戦いを支援する旨を宣言した。
今回の大会は、1個のeスポーツイベントとしては必ずしも「活況を呈す」と言える様相ではなかったのは確かだ。「CRYSIS」というタイトルは、現時点ではネットワーク対戦の主流になりえない欠点を有している。それは、十全のパフォーマンスを発揮するために極めて高価なPCが必要となる点だ。現時点で最もプレーヤーの多いeスポーツタイトルは、「Counter-Strike」、「Battle Field」、「StarCraft」といった、いまや旧作の部類に属するタイトルのものが中心である。「CRYSIS」が主流となるまでには一定の時間が必要であろうことには議論の余地がない。 しかし、今回の大会を眺めてみて実感したのは、「CRYSIS」のもつゲーム性そのものは優れてeスポーツ向きであろうということだ。FPSとして素直な操作特性と、自動回復ヒットポイント制をとる本作では、プレーヤーの実力がきっちりと反映されると同時に、ハイスピードな立ち回りで劣勢の挽回がしやすい特性を有しており、観戦者にわかりやすく面白いゲーム展開になりやすい。今後、一般的なPCの処理能力が向上し、動作の重さという障害が取り除かれていくにつれ、「CRYSIS」というタイトル、及びそのフランチャイズタイトルは幾度となく再評価されることになるだろう。
その意味において、シンガポールで開催される「CRYSIS」国際大会は将来の普及期に向けた第一のステップとなる。そこで日本のプレーヤーにも活躍の場が与えられることは非常に喜ばしいことだ。今回の大会を主催したエレクトロニック・アーツには、今後ともプレーヤーの視点に立った営業展開を期待したい。長い目で見れば、健全なゲームシーンの成長という結果となって現われるはずである。
□エレクトロニック・アーツのホームページ (2008年2月12日) [Reported by 佐藤“KAF”耕司]
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