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★PCゲームレビュー★

人気赤丸急上昇中の「Civ4」を大幅強化!!
シリーズ史上最大の拡張パックを完全解説

シヴィライゼーション4
ビヨンド ザ ソード

  • ジャンル:ターンベースストラテジー
  • 開発元:Firaxis Games
  • 発売元:サイバーフロント
  • 価格:6,090円(動作には別途本編が必要)
  • 対応OS:Windows 2000/XP/Vista
  • 発売日:2007年12月7日(発売中)



 ターンベースストラテジーの最高峰としてファンを魅了して止まない「シヴィライゼーション4(Civ4)」。昨年末、この「Civ4」に驚くべき拡張パックが登場した。それが、今回紹介する「シヴィライゼーション4 ビヨンド ザ ソード」だ。7月末に英語版として登場したこの拡張パックは、海外ゲームメディアにおいては2007年のベストエクスパンション賞を獲得するなど、非常に高い評価を得ている。その本作を、いよいよ日本語版でも楽しめる日がやってきた。

 この「ビヨンド ザ ソード」がもたらす革命的要素とは何か? 本作は、1本のゲームとしては格別の情報量を持つ「Civ4」をさらに大幅に拡張するものだけに、簡単に語りつくす事は容易ではない。そこで今回のレビューは前後編に拡大してお届けする。1本目となる今回は、各要素のゲーム的機能についてじっくりとご紹介しよう。後編では、システムの働きを具体的に確認するプレイレポートをお伝えしたい。まずは本稿を基礎知識として楽しんでいただければ幸いである。


■ これぞ拡張パックの模範例。プレイする度に深みを増すゲーム性を、さらに強化する質と量

「ビヨンド ザ ソード」は傑作「シヴィライゼーション4」の拡張パック。プレイするには本編パッケージが必要だ
 本作は拡張パックであり、プレイするためには本編の知識が必須となる。そこで「シヴィライゼーション(Civ)」シリーズをご存じない方のため簡単に解説しておこう。'91年の初代「SID Meier's Civilization」に端を発するこのシリーズは、文明の曙たる紀元前4000年から、近未来2050年までの人類史を非常に大胆にゲーム化した、ターンベースのストラテジーゲームだ。

 シリーズが持つゲーム性の特徴は、ターン制であること、ステージとなる世界地図がランダム生成されること、本質的に戦争ゲームではなく、軍事的な征服以外にも複数の勝利条件があることなど、多岐にわたる。ゲームシステムは独特であり、類似ゲームも存在しないため、本音を言うと「このゲームは“シヴィライゼーション”である」としか紹介のしようがない。ゲーム本編の概略については拙著「PCゲームレビュー シヴィライゼーション4完全日本語版」も参考にしていただければ幸いである。

 その「Civ」シリーズには代々いくつもの拡張パックがリリースされてきたが、本作「シヴィライゼーション4 ビヨンド ザ ソード(BtS)」に匹敵するインパクトを備えていたものは少ない。そのわけは、本作が質・量ともに妥協のないクオリティを備え、ゲーム本編を正面から繰り返して遊ぶ、または別の角度で遊ぶ、そのどちらでも満足できる内容を持っているからだ。

 本作では、追加文明・指導者、新ルール、新ユニット、AIの改良など、ゲーム本編に対する無数の追加・改良だけでも満足すべき内容を備えている事に加えて、本編とは全く異なるゲームを含む10数本の追加シナリオを同梱する。「Civ4」に再び生命を吹き込み、多方面からしゃぶり尽くすのにうってつけのパッケージ内容なのである。

 具体的な解説に移ろう。本作を評価するにあたって、何よりも、本編のゲーム性を大幅に改良する部分に注目したい。タイトル「ビヨンド ザ ソード(剣を超えて)」には、武器としての剣が時代遅れになる工業化時代以降のプレイを改善するという意味合いと、ペンは剣よりも強し、というふたつの意味合いが込められている。本作によりゲーム本編に加えられる変化は、これら2つの点において徹底的だ。

 本作で加えられる無数の要素の中でも、特にインパクトを持つのは軍事関係の調整と内政・外交の新ルール追加、及びコンピューターAIの大幅な改良である。このあたりは本作の英語版レビューでもお伝えしたものだが、今回日本語版を御紹介するにあたって、あらためて要点を整理しておきたい。

「Civ」シリーズ伝統のゲームシステム。文明のあけぼのから中世、近代、外宇宙への植民まで、ゲーム期間は6,000年を超える。ダイナミックな文明の変遷が魅力だ

新指導者の一人、マヤ文明のパカル2世。「拡張」・「財政」という強力な志向を持つ指導者だが、AIの彼は文化遺産が大好きで引っ込み思案なためイマイチ存在感が薄い。プレーヤーのための指導者か
現代戦の雄「現代機甲部隊」、「機械化歩兵」に加えて、「自走砲」、「移動式SAM」が追加され、陸上の主力が全て移動力2を持つ機動兵器となった

    全体
     ・新しい文明と指導者。
     ・新しい都市建築物、世界遺産、後期の軍事ユニット。
     ・上記に伴う技術ツリーの変更と拡大。
     ・コンピューターAIを劇的に強化。
     ・AI強化に伴い、高難易度におけるハンディキャップが大幅に軽減。

    内政面
     ・時代や状況に即してランダムイベントやクエストが発生する。
     ・別大陸上の都市を独立させ、「植民国家」を作れる。
     ・ゲーム後半に登場する「企業」による新たな経済戦略。

    外交面
     ・ゲーム中盤に国際連合の役割を果たす「ヴァチカン宮殿」。
     ・ゲーム序盤から利用できる新たな外交要素「諜報」。
     ・宇宙船がカスタマイズ可能になり、宇宙競争が油断ならないものに変化した。

 各項目の具体的な内容については次章以降で詳しく解説する。本作では、前回の拡張パック「ウォーロード」で追加されたゲーム本編への拡張がすべて引き継がれており、「偉大な将軍」や「属国」などのシステムがそのまま適用されている(「ウォーロード」での追加シナリオは除く)。

 このため、現在「シヴィライゼーション4」本体だけを所有しており、そこに一味加えたいと考えるならば、本作「ビヨンド・ザ・ソード」がベストチョイスだ。「Civ4」をやりつくしたと思うプレーヤーでも、本作を導入することで、もう一度やりこむ価値が大いに生まれることだろう。

 本作に含まれる追加シナリオにも触れておこう。本作には11の追加シナリオ及びMODゲームが添付されており、これらは、ありがちな「オマケ」程度のものではなく、それぞれ存分に楽しめるクオリティを持っている点が大きな特色だ。ミニゲームとして手軽に楽しめるものから、本編並みのボリュームを持つものまで多彩なラインアップがあるので、好みに応じて面白そうなものからプレイしよう。それだけでもずいぶん楽しい時間を過ごせるはずだ。

新文明はバビロニア、ビザンツ、オランダ、エチオピア、神聖ローマ帝国、クメール、マヤ、ネイティブ・アメリカン、ポルトガル、シュメールの10種類。さらに既存文明への新指導者追加で、合計16人の指導者が新しく登場。指導者の総計は54人となったほか、既存指導者の「志向」に調整が加えられている

新建築物「堤防」が河川タイルのハンマーを生み出す(左)。海沿いの都市には「税関」が作れ、交易収入が多くなる(中央)。全体的に見ると、海沿い・川沿いの都市が強力に育つようになり、AIもそういった地形を優先して都市を作る(右)

追加シナリオやMODも楽しみのひとつ。こちらは「Next War」の未来兵器(左)。「FINAL FRONTIER」では大宇宙に植民する(中央)。その他、ミニゲーム的なものも含め11種のシナリオ/MODを搭載する


■ 改良されたゲーム本編。AI強化・システム改良により、さらに骨太のゲームへと変貌

地形改善「要塞」が、航空・海軍基地として使用できるようになった。この効果はもちろんAIも活用してくる
軍事面では、AIは海軍を積極活用する上、大規模なユニット群をまとめて運用してくる。沿岸都市の防備をうかつに怠れば、簡単に取られてしまい、反撃もままならない
 「BtS」によるプレーヤーへの最大の恩恵は、ゲーム本編が強化されたことに尽きる。新ユニットの導入、要塞の機能拡張、海軍の強化など、軍事面だけを見ても前回の拡張パック「ウォーロード」にも増して大量の変更点がある。プレイ感覚はかなり異なるものとなり、ゲームに厚みが増した。

 そして何よりも、コンピューターAIが本質的に強化されたことが最良の改善点だ。「BtS」のAIは、ほとんど1から作り直されたという。「熟練プレーヤーのようにプレイする」ことに注力して改善されており、結果として非常に人間臭く、強くなった。AIは「BtS」で追加された新規ルールも含めて巧妙なプレイ方法を知っている。陸海の軍事ユニットの使い方はもちろんのこと、内政面も熟練プレーヤーに近くなり、高難度設定での理不尽なブーストの必要が薄れたほどだ。無印の「Civ4」と「BtS」の同難度では、間違いなく後者のほうが難しい。

 本作のAIの特徴を挙げよう。まず、前バージョンに比べてAIが土地を有効活用するようになり「無駄な都市」をあまり作らなくなった点が大きい。都市を多数保持すると「維持費」が重くのしかかる本作において、生産性の高い都市に限定して領土を広げていくというのは、強いプレイの基本である。AIは、これを忠実に実行する。都市タイルの地形改善、労働者の割り当てなどにも顕著な改善が見られ、ゲーム終盤で見せるAI都市の生産性は中堅プレーヤーをしのぐほどだ。内政が苦手なプレーヤーは、まず地力で負ける可能性を視野に入れてプレイすべきだ。

 外交面においても、今回のAIは合性の良いライバル文明と積極的に「仲良しグループ」を組み、技術交換などでアドバンテージを得ようとするほか、不利な条件が重なると自発的な「属国」化を申請するなど、柔軟性を増している。プレーヤーはその中に参加する1文明として、個性溢れるAIプレーヤーの戦略を注視し、あるときは協力し、またあるときは妨害し、ゲームを有利に運ぶという必要性が格段に高まっている。難度の増した本作を攻略するポイントのひとつは、外交でうまくやれるかどうかだ。

 それでは、この「BtS」で拡張された本編をプレイするにあたって、戦略のキモとなる部分をご紹介しよう。

・[軍事] 追加ユニットと技術ツリーの変更による戦略変化

海上から発射できる「誘導ミサイル」は、安価ながら1発あたりの効果が大きく、攻防どちらにも使いやすい
火薬時代の騎兵「胸甲騎兵」は、弓騎兵から騎兵隊までのつなぎとして存分の性能を持つ。戦争のタイミングはなおさら難しくなってしまった
 軍事面では、従来バージョンで存在感の薄かった火薬時代1世代目のユニット(『マスケット兵』しかなかった)に、「騎士」と「騎兵隊」の間を埋める「胸甲騎兵」が追加されたほか、現代の主力「戦車」の対抗ユニットとして「対戦車兵」が加わる。ゲーム終盤には従来の「長距離砲」を後継する「自走砲」や、「SAM歩兵」を後継する「移動式SAM」が追加されている。これにより、現代戦において攻撃・防御の全ユニットが移動力2を持つこととなり、終盤の戦争はさらにスピーディで、破壊的なものとなった。

 また、高性能な爆撃ユニット「誘導ミサイル」が追加され、これを使えば容易に敵ユニットスタックを弱体化させたり、都市の防御力を剥ぎ取れる。海上戦力としては、それを運用する「ミサイル巡洋艦」、「攻撃型潜水艦」など終盤のユニットが登場。これらの拡充のため、沿岸都市は海からの攻撃に対して脆弱になっており、海戦の重要度がぐっと増した。そして「Civilization III」でお馴染みだった「私略船」が再登場。これを使って宣戦布告なしに攻撃したり、交易路を封鎖したりといった使い勝手も継承されているので、シリーズのファンであればすぐに自分の戦略に組み込めることだろう。従来と違って、沿岸都市ではとにかく海上ユニットを作りまくれ、というのが本作のドクトリンのひとつだ(特に「大陸」、「群島」マップにおいて)。

 軍事に関連する技術ツリーの変更としては、従来バージョンでやや消化不良の感のあった近代以降の変更点が面白い。無印の「Civ4」では、火薬時代に入るとゲームのペースが急激に早くなり、中世のユニットをマスケット兵にアップグレードする間もなく、ライフル世代に直行する戦略が常道だった。この点、「BtS」では「ライフリング」技術の取得への道筋が長くなったほか、近代兵種の解禁に新技術「軍事化学」が必要となり、「ライフル兵」、「騎兵隊」、「擲弾兵」の近代3主力ユニットが出揃うまでに時間がかかる。

 このため「BtS」では、「マスケット兵」、「胸甲騎兵」といった火薬時代のユニットが活躍する余地が生まれているほか、従来はゲームを決定付ける戦力とされてきた「騎兵隊」の登場時期がやや遅くなったため、その投入タイミングの判断が難しくなっている。少しでも遅れてしまえば近代ユニットである「歩兵」で都市が守られているといった事が多いのだ。それに対抗して工業化時代以降の主力「戦車」を出しても、そのアンチユニットとして安価な「対戦車歩兵」の存在もある。軍事志向のプレーヤーは、難しい判断に頭を悩ませ続けることになるだろう。

「空挺部隊」は「Civ3」以来の再登場。移動範囲内ならどこにでも降下でき、奇襲に最適だ(左)。機動力の増す現代戦では、何よりも数を揃えることが大事だ。これくらいは揃えてから攻め込みたい(中)。現代の技術ツリーは構造が変化し、最終世代のユニットはより多くの技術を研究しなければ解禁できないようになった(右)

・[諜報] スパイ活用で科学税率0%のプレイも可能。そこでの技術は「奪うもの」なのだ

「諜報」ポイントを溜め込めば、ライバル都市は基本的に丸見え。かなり余裕をもってプレイできる
「諜報」スクリーン。この画面では、各諜報効果に必要な各文明へのコスト、現在の値を確認できる。主敵となる文明には多くのポイントを割り振ろう
スパイユニットを使ってミッションを遂行。技術奪取には膨大な諜報ポイントの消費が必要だが、効果は絶大
 「BtS」で追加された「諜報」は、本作の持つ国力の基本パラメーター「科学」、「文化」に並ぶ基本大要素として組み込まれた。それだけに重要なゲームシステムなのだが、従来のゲーム概念とはやや性質を異にしており、「BtS」のプレイに慣れきるまでは活用しづらいだろう。とはいえ「諜報」は中級以上のプレーヤーになるためには必須の知識であるため、ここでポイントを解説しておきたい。

 これは、ゲーム序盤から使えるシステムで、やりようによってはゲーム終盤まで大活躍する。というのも、諜報活動で得られる各種の利益、例えば「ライバル都市の視界を得る」、「技術を盗む」など情報戦にあたる部分は、古代・中世だけでなく、文明の版図が広がり、1都市あたりの価値が上がり、正面からの戦争がハイリスクになる近代以降においても、ライバル文明に重大な影響を及ぼせるものだからだ。

 特に意識しておきたいのは、「諜報」には受動効果と能動効果の2種類があるということ。例えば、「都市の視界を得る」、「他国の技術研究科目を見る」などは、ライバル文明への諜報ポイントがある程度蓄積すれば自動的に発動する受動効果である。必要となる「諜報」ポイントは、「科学」、「文化」などと同じように、国家の「商業」を税率調整によって生まれ、各ライバル文明への諜報努力をあらわす数値としてターン毎に蓄積されていく。各ライバルへの諜報ポイントの割り振りは、「諜報」画面で重み付けを変更できるため、強大なライバルや、侵攻予定の文明には多くの諜報ポイントを割り振ると良いだろう。

 自動で発動する受動効果に対し、能動効果を発動するには「アルファベット」技術で解禁される「スパイ」ユニットが必要だ。スパイはライバル文明からは不可視の存在で、他国の領土を自由に歩ける。これをライバル文明の都市に駐留させると「都市反乱を扇動する」、「技術を奪取する」などのスパイコマンドが使用可能になる。ひとつの使い道は、先進国から新技術を奪うことだ。コマンドを実行すると対象国へ蓄積した諜報ポイントが消費され、失敗することもあるが、条件が揃えば技術研究に必要な科学ポイントよりも少ない諜報ポイントで技術を奪取でき、実に効率が良い。

 「諜報」には独特の性格がある。それは、ポイントを沢山割り振るほど、必要なコストが下がっていくというシステムだ。相手国に重厚な諜報ネットワークを構築すれば、様々な活動がたやすくなる、というイメージだろう。「沢山買えば安くなる」というこの仕組みのため、諜報を戦略に組み込む場合は、中途半端にやるよりも、全国力を注いだほうが効率が良い。従って、技術開発を全て「諜報」による奪取に頼り、科学税率を0%にするという国家運営も、実は効率が良いプレイの1形態なのである。

 また、「諜報」のコストは、対象となる文明の自文明の首都からの距離、スパイの滞在ターン数、国教、交易の有無、諜報機関の有無などによっても変動する。スパイ活動が最も高効率となるのは、対象文明が地続きの隣国で、国教が同じであり、国教の聖都を自文明が保有しており、相互通行条約に調印しており、スパイが5ターン以上滞在している状態、である。この理想的な条件が揃えば、技術奪取は研究に必要な科学ポイントの半分以下で実行可能だ。隣国が技術先進国になった場合には、積極的にスパイ国家への転換を考慮してみよう。

・[企業] 各種偉人を消費してゲーム終盤の生産性をブーストする経済戦略

企業「マイニング社」によりハンマー出力が倍増した都市。企業の生産は基本出力値として扱われるため、最終出力には工場などの補正もかかり、効果は絶大
 産業化時代を経て「企業」の技術を取得すると、都市に各種の企業が創設できるようになる。企業はゲーム終盤の経済戦略を大幅に拡張する存在で、金銭と戦略資源を使って都市の生産性を向上させることができるというものだ。企業は宗教と同じく7種類あり、「マイニング社」なら鉱石系の資源を使って都市のハンマー出力を向上させ、「シド寿司社」なら食料資源を使って都市の食料出力を向上させるといった効果がある。

 企業本社の創設には対応する「偉人」(例:『マイニング社』なら『偉大な技術者』)が必要だが、企業がおかれた都市で生産できる「企業重役」を使い、宣教師で宗教を布教する要領で各都市に支店を出すことができる。企業の持つ効果として最大のポイントは、企業活動による生産力のブーストが、都市の規模に関わらないという点だ。つまり、建立まもない都市や僻地の都市の生産性を一気に改善できる。

 ハンマー出力が少ない都市にはハンマー出力をもたらす企業を出店すれば絶大な効果があるし、食糧生産が限界に達して人口増がストップした都市に食料関係の企業支店を作れば、追加で4~8の人口を養えるようになる。現代以降では重要な戦略資源である「石油」や「アルミ」を、代替資源から生み出す企業もある。技術「マスメディア」で解禁される文化を産出する企業は、文化勝利を狙う際には是非とも戦略に組み込むべきだろう。

 ただし企業の維持費には要注意。企業は、支店1つごとに営業規模(企業が利用する戦略資源の供給数に比例)に応じた維持費が必要なのだ。若干の助けとして、支店1つごとに5単位の金銭が本社へのプラス収入として発生するが、維持費は1都市あたり15~30金銭にもなるのが一般的。「ウォール街(金銭収入を+100%)」などの国家遺産のある本社を置いた場合でも、国内への出店はまず赤字になると考えてよい。

 維持費の増大を払拭するためには、他国への出店(特に、それを必要としない都市に!)を積極的に狙おう。この場合、企業維持費は対象文明が負担しつつ、本社への収入は自分だけが獲得できるのだ。これをライバル文明にやられてしまった場合は、「国有化」や「重商主義」の社会体制を採用すれば企業を無効化できる。状況に応じて組み合わせていこう。

・[外交] 「ヴァチカン宮殿」による同宗教勢力のコントロールと早期の外交勝利

「ヴァチカン宮殿」の決議は国教と国力で票数が決まる。使い方によって強烈な効果があるほか、近代以前での外交勝利というオプションもある
 このほか、外交面では中世の国際連合とも言える「ヴァチカン宮殿」が追加されている。「ヴァチカン宮殿」を建設すると、国教を同じくする各文明を共同参加者とする国際組織が作られる。定期的に行なわれる選挙で教皇に選出された文明は、強制的な和平、特定国への通商禁止、都市の委譲など強制力を持つ決議を提案できるのだ。

 また、「ヴァチカン宮殿」を持つ文明と国教を同じくする文明は国教関連施設にハンマーボーナスをもらえるほか、正会員として決議の投票権を得られ、このために国教を変更するライバル文明も出現する。国教を同じくする文明同士にプラスの外交評価が付くことを考え合わせれば、中世に大勢力の宗教同盟が成立することもあるのだ。その中でうまく立ち回り、ゲーム中盤での外交勝利を狙うことも戦略の一つ。早期に決着がつかなくとも、「ヴァチカン宮殿」時代に親密になった文明は、「国際連合」の時代にも心強い仲間となるだろう。


 以上御紹介したように、本作では従来にも増してゲーム本編の内容が充実し、骨太のゲームとなった感がある。勝利条件としても、宇宙競争が「アルファケンタウリに到着するまでが競争」という形に変更され、宇宙船を発射できたとしても、到着前に首都を占領されれば御破算になるというシステムに変わった。また、「属国」システムにより制覇勝利の方法に幅が増え、「ヴァチカン宮殿」により外交勝利も中世から狙っていけるなど、初代「Civ4」に比べてずいぶんと勝利条件への道筋が様変わりしている。

 忌憚ない感想としては、このゲーム、やればやるほどシステムへの理解が増し、ゲームプレイに深みを増していく感がある。「あと1ターン」の魅力に加えて「あと1ゲーム」の魅力も強化されたのは間違いなさそうだ。「Civ4」ファンにとっては、眠れない夜がまだまだ続く。

ランダムに発生するミニイベントやクエストがゲームにちょっとした変化を加えてくれる。基本的にはプラスに働くものが多く、バランスを崩さない程度のお楽しみといった按配だ。外交に影響するものもあるので、選択肢はよく読んで選ぼう

海外領土は「植民地」として扱われるようになり莫大な維持費がかかるようになった。重すぎる場合は属国として独立させよう。左の写真は独立承認前の財政欄で、維持費が物凄いことになっている。右の写真は独立後。極めて健全な財政状況となった


■ 日本語化に伴う影響は基本的にポジティブ。早期のパッチリリースが望まれる

追加シナリオ・MOD等もしっかり日本語化してあり、安心して楽しめる
日本語版のバージョンは3.03。英語版の最新バージョンは3.13であり、パッチのリリースが待ち遠しい
 気になる日本語化の出来としては、サイバーフロントがこれまで手掛けて来たシリーズの日本語化の水準を保っており、十分に満足できる内容だ。個別の邦訳名については、「Apostolic Palace」が「ヴァチカン宮殿」(『教皇庁』などが望ましい)となっていた点、「Fresh Water」が「きれいな水」、「Power」が「エネルギー」のままであったりする点(初代『Civ4』日本語版から変わらず、『Fresh Water』は『淡水』、『Power』は『軍事力』が適当)、など細かい部分には違和感を覚えたが、プレイに支障はないので重箱の隅をつつくのはやめにしておきたい。それよりも、膨大なシヴィロペディア(ゲーム内百科事典)や、MODゲーム、追加シナリオも含め、ほぼすべてを日本語化しつくしたところに賛辞を送りたい。

 最後に、日本語版で気になる点として、バージョンの問題を挙げておきたい。この「BtS」日本語版パッケージに含まれるゲームバージョンはv3.03。オリジナル英語版の最新バージョンは3.13である。セーブデータについては、同バージョンの英語版との間であれば完全互換が保たれており、筆者環境でも、英語版「BtS」v3.03にてプレイしたデータをロードして、そのままプレイすることができた。この場合、都市名やユニット名など(自分でつけたものでなければ)自動的に日本語で表示されるようになっている。ユーザー作成のMODやシナリオの類も使える。

 だが英語版の最新バージョンでは、AI関連の挙動改良や、ユニットバランスの調整、ゲームシステムの改良、不具合修正など多数の改善が行なわれており、随分と魅力的な内容になっている。特に重大な改善点としては、「属国」との交渉画面で交易不可の項目が出てきてしまう問題(本来は全て奪える)、「ヴァチカン宮殿」が正会員に与えるハンマーボーナスが適切に付与されない問題、「三峡ダム」が各都市にエネルギーだけでなく不衛生も付与してしまう不具合、また、ゲーム終盤のインフレが激しすぎる問題、などなど、インパクトの大きいものが多数ある。

 英語版の3.13バージョンは昨年10月にはリリースされており、既に3カ月以上が経過している。このまま、日本語版向けのパッチリリースが行なわれない状況が続くのなら、最新の英語版でプレイするという選択肢も魅力的に映ってしまうだろう。販売元であるサイバーフロントには、ますます勢いを増す「Civ4」人気に水を差さないよう、早期のパッチリリースを期待したい。それを多くのユーザーが待ち望んでいるはずだ。


 さて、本レビューでは「前編」と称して、「BtS」で追加される新要素の解説に誌面を割いた。続けてお届けする「後編」では、追加各種のシステムの働きをもっとよくお伝えするため、実際のプレイに基づいたレポートをお届けしよう。予定するゲーム設定は標準サイズの「大陸」で、文明数は7、プレーヤーの指導者はランダム(どれが当たるかは開けてからのお楽しみ)。これらは最も標準的な設定と言えるが、これに加えて、「BtS」本来のAI特性が楽しめるという「攻撃的なAI」オプションを付けてのゲーム設定でプレイする。難度は難しめの「国王」。波乱万丈の文明史をご期待されたし。

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□サイバーフロントのホームページ
http://www.cyberfront.co.jp/
□「シヴィライゼーション4 ビヨンド ザ ソード」のホームページ
http://www.cyberfront.co.jp/title/civ4_bts/
□関連情報
【2007年7月6日】PCゲームレビュー「シヴィライゼーション4 完全日本語版」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060706/civ4jp.htm
【2007年8月3日】PCゲームレビュー「Civilization IV BEYOND the SWORD」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070803/civ4bts.htm

(2008年1月30日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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