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★PCゲームレビュー★

「Civ IV」に限界突破の超弩級拡張パックが登場
AI強化でますます手ごわく、追加シナリオも大充実!!

Civilization IV
BEYOND the SWORD

  • ジャンル:ターンベースストラテジー
  • 開発元:Firaxis Games
  • 発売元:2K Games
  • 価格:49.99ドル(英語版、動作には別途本編が必要)
  • 対応OS:Windows 2000/XP/Vista
  • 発売日:7月24日



 「あと1ターンだけ!」を延々続けてしまう中毒性でおなじみの「Civilization IV」。プレイし始めたら簡単に止められないほどの楽しさと奥深さを誇り、世界中のファンを慢性的な寝不足に追いやったほどの破壊力を持つ作品だ。今回紹介する「Civiliztaion IV: BEYOND the SWORD」は、本編からしてハマり度の高いゲームをさらに大幅にパワーアップする拡張パック。ゲーム本編に対する無数の改善と追加要素に加え、リプレイ性の高い沢山の追加シナリオを搭載。この夏、間違いなく世界中のゲームファンから大量の睡眠時間を奪うであろうビッグタイトルだ。


■ AI強化など無数の追加要素に加えて11本の新シナリオ。ものすごいボリュームに圧倒される拡張パック

本作では拡張パック第1弾「WARLORDS」の追加要素も全て含まれている
新ユニットなど近現代の追加要素がゲーム後半の戦略要素を強力に拡張する
 本作は、世界的な人気ストラテジーゲーム「Civilization IV」の拡張パックとしては第2弾にあたる作品だ。第1弾の「WARLORDS」は戦争の内容を大きく拡張するパッケージだったが、今回の拡張パックは「BEYOND the SWORD」と銘打ち、「WARLORDS」で取り入れられた要素を引き継ぎながら“工業化”以降のゲームプレイを全面的に拡張、近現代の戦争・経済・外交など多方面についてプレイの幅を大きく広げる作品となっている。また基本的なゲームの拡張だけでなく、柔軟性に優れた「Civilization IV」エンジンの特性を最大限に生かし、本編とは全く異なるプレイ内容の追加シナリオやMODを多数同梱していることも大きな特徴だ。

 「BEYOND the SWORD(剣を越えて)」というタイトルには、ふたつの意味が込められているという。ひとつは、装備としての剣が時代遅れとなる工業化時代以降のゲーム内容に注目し、より選択肢の多いプレイが可能になるよう拡張を加えたという意味だ。これは近現代に登場する軍事ユニットの拡張といった形で明瞭に現われている。

 これまでの「Civilization IV」では、終盤の戦争が現代機甲部隊や機械化歩兵による力押しになる傾向が強かったが、本作では対抗戦力となる対戦車兵や誘導ミサイルといった新ユニットが導入され、航空ユニットの扱いが再考されるなど、近現代軍事ユニットの力関係に大きな変化が与えられた。これまでよりも意味のある選択肢が増えたということで、戦争はさらに手ごわいものとなっている。

 タイトルのもうひとつの意味は、「ペンは剣よりも強し」。本作では外交戦略のオプションとして「Espionage(諜報活動)」が導入されたのが大きな変更点のひとつだ。諜報活動は従来の金銭と文化という文明の2大リソースに加わる新要素で、文明の経済力を投入することによりライバル文明都市の視界を得たり、スパイユニットを使って様々な妨害工作を行なうことができるようになった。

 また、外交オプションとして「WARLORDS」で導入された「属国関係」が継承されているのはもちろんのこと、中世の国際連合的な国際機関に相当する「法王庁」が導入され、外交戦略に新たな一側面が付け加えられた。さらに近現代の重大要素として、中世の宗教に変わる存在である「企業」のシステムが導入され経済面の戦略が増えたことも、ゲーム終盤の展開を大きく拡張する効果を果たしている。

 沢山の追加変更が加えられ一段と手ごわいゲームに成長した本作であるが、まずは本作で導入されたゲーム本編に対する新要素についてご紹介していこう。

新文明、新指導者などの追加により文明志向の組み合わせがおよそ全てカバーされた
・新文明と新指導者

 前回の拡張パック「WARLORDS」で追加された新文明と指導者に加え、本作ではさらに10個の文明が追加されている。その内訳はバビロニア、ビザンチン、オランダ、エチオピア、神聖ローマ帝国、クメール、マヤ、ネイティブアメリカン、ポルトガル、シュメールとなる。さらに既存の文明にもリンカーン、ダリウスI世、ペリクレスといった6人の新指導者が加えられ、「攻撃的」、「経済的」、「創造的」、「帝国的」といった志向の組み合わせがほぼ全てカバーされることになったことが基本的なポイントだ。

 新文明について、筆者の感想として強そうなのはオランダ文明。本作では沿岸都市の交易ルートの拡張や新建築物「Customs House(税関)」による交易収入のボーナスなど、海洋型のプレイスタイルが有利に働く設計になっているが、オランダ文明の指導者オレンジ公は金融志向を持つためこのアドバンテージを非常に強力に活用できる。また、オランダ文明の固有建築物である「Dike(干拓)」は、海洋タイルのハンマー出力を+1する新建築「Levee(堤防)」の効果に加えて河川タイルでのハンマー出力も+1するという優れもの。オランダは経済と工業の両面で強力になれる文明というわけだ。

新建設物により海洋タイルがハンマーを産出できるようになり、沿岸部を意識した文明建設が重要になってきた
・新ユニットと新建築物によるゲームプレイの拡充

 ユニットと建築物に関する新要素は、おもに近現代に関するものが付け加えられている。 まず新ユニットによって現代戦がより手ごわくなることが第一の特徴だ。「Anti-Tank Infantory(対戦車兵)」は、戦車を作れない文明に強力な防御手段を提供するし、「Paratrooper(空挺部隊)」は5タイル内への空挺降下が可能で、戦闘の展開を広げることができる。「Guided Missle(誘導ミサイル)」は一発消費型のユニットだが、航空機を作ることなく安価に爆撃効果をもたらせる便利なユニットだ。これにともない、地形改善である「Fortress(要塞)」には航空機や誘導ミサイルの基地として使える機能が附加された。また、沿岸に作った要塞は軍港としても利用が可能で、かなり使い道が広がっている。

 海洋ユニットとしては「Civilization III」からの復活となる「Privateer(私掠船)」が追加されたことも大きい。これは他国からは国籍を判別できないユニットで、戦端を開かずにライバル文明の沿岸を荒らしまわることができるのだ。さらに諜報活動システムの導入により、従来のスパイユニットが多くの破壊工作を行なえるようになったこともポイント。スパイは戦時・平時を問わず、ライバル文明の都市に駐留させれば諜報ポイントを使用して様々なコマンドを実行できる。「水源に毒を入れる」コマンドを用いて、都市の人口を大幅に減らしたり、都市に自文明の文化や宗教を流布して寝返りを促したり、都市や土地タイルの改善施設を破壊したり、金銭や技術を盗んだりとやりたい放題だ。こうして平時からライバルの国力を減衰させられるのは魅力だが、その分、諜報ポイントに国力を向ける必要がある。そこは自分流の戦略に応じて調整していこう。

 建築物に関しては、交易収入を増加させる「Customs House(税関)」、海洋タイルでハンマー産出を可能にする「Levee(堤防)」、都市の工業力を追加する「Industorial Park(工業団地)」、衛生を改善する「Public Transportation(公共交通機関)」、そして諜報活動関係の建築である「Intelligence Agency(諜報機関)」および「Security Breau(公安局)」だ。特に「税関」と「堤防」により海に面した都市を作るメリットが大きく向上しているので、この特性をうまく活用した文明建設が求められるだろう。このほか、7種類の不思議も追加されている。とても全てをご紹介するわけにはいかないが、「Civilization III」で存在したゼウス像が復活するなど面白い追加要素になっているので、実際にゲーム内で確かめてみてほしい。

「企業重役」が企業の宣教師役だ。他国にも店舗を展開して莫大な利益を上げよう
企業がおかれた都市の維持費に注意。企業活動の大きさに比例して、さっぴかれるコストも大きなものになる
・企業を制するものは経済を制する

 従来は単調な流れになりがちだったゲームの後半を彩る新要素として見逃せないのが「企業」のシステムだ。これは古代・中世からの宗教が時代遅れになる近代から立ち上がってくる要素で、文明の経済的側面を強く支配する機能に仕上がっている。企業は種類に応じて文明の持つ戦略資源(鉄、宝石、麦など)を別の資源に変換し、都市の経済に加えるという絶大な効果を持つ。「MINING INC.」ならば鉄や銅などの鉱物資源をハンマー出力に変え、「SID'S SUSHI CO.」は米、魚、貝類の資源を食料に変換して都市の成長を促す。「STANDARD ETHANOL」企業ならば小麦、砂糖、米といった食料資源を石油資源に変換するという按配だ。

 企業の立ち上げには「Corporations(企業)」の技術を開発し、さらに企業ごとの必要技術を満たすことと、その企業に応じた偉人消費が必要だ。例えば「MINING INC.」の立ち上げには技術「Railroad(鉄道)」と、偉大な技術者が必要。「SID'S SUSHI CO」には技術「Medicine(薬学)」と偉大な商人が必要、という感じになる。このため、偉人の使用についてはこれまで以上に計画的に考えていく必要が出てきているのだ。

 企業が立ち上げられた都市には本社が置かれ、これが宗教における聖都のような働きをもつようになる。企業が置かれた都市では宣教師にあたる「Corporate Executive(企業重役)」が生産でき、これを作って他の都市に支店を開業することができるのだ。支店は都市に企業活動による恩恵をもたらし、本社の置かれた都市には支店からの利益が納入されて文明の金銭収入にプラスされる。この収入は銀行やウォール街などの補正が働くので、都市施設が完成したゲーム終盤において企業を広げる効果は絶大だ。

 しかし注意すべきは、企業の維持費。各都市に展開した企業は、人口など営業規模に応じた維持費用を必要とするのがポイントだ。自文明の大都市に支店を置くと、時には維持費として30単位以上の金銭が必要になることもある。考えなしに企業を広げまくっていると国家の経済がガタガタになってしまうこともあるというわけだが、企業の維持費用はその都市が属する文明が支払うことになるので、実は国境を越えてライバル文明の都市に出店しまくるのが最も賢いやりかただ。こうすればライバルの経済を圧迫しつつ、自国の経済を潤わせることができる。が、文明が「Mercantilism(重商主義)」や「State Property(国有資産)」の公民を採用していると、企業活動はストップし利益を得ることができない。企業競争で劣勢に陥ったライバルがこれらの公民を採用しはじめたら、国連決議を使って無理やり市場開放させるという手段も活用していきたいところだ。

AIは地形効果を積極的に使うなど賢くなった。きちんと対応しなければ意外と苦戦してしまうだろう
・AIがとても賢く進化。難易度ボーナスが削減されフェアな戦いに

 AIルーチンが大幅に強化されたことは本作のゲームプレイにおける最も歓迎すべき改善点だ。本作のAIは特に都市運営に関して大きく進化し、プレーヤーが行なうがごとく効率的な生産と研究開発のポリシーを実行するようになった。従来のAIは特に産業革命以降、国力が伸び悩み失速するという悪癖を抱えていたが、この点は大きく改善された。鉄道などの経済的利益をきちんと利用する存在に変貌した。さらにAIは企業や諜報活動といった本作の新要素を完全に理解して活用してくるので、総合的に見て純粋に「強く」なっているのだ。AIは特定の目標を見つけて戦略的にプレイするようになったので、今回のゲームではAIが文化勝利することすらありえる。

 戦争では、AIは本作で追加された新しい軍事ユニットの利用法も熟知し、より洗練された戦法で攻撃や防衛を行なえるようになっている。カタパルトなど砲撃ユニットによる二次ダメージのある攻撃をうまく使ってくるのはもちろん、まとまったユニットスタックを構成して運用するようになったほか、海洋ユニットを非常に積極的に活用するようになったため、プレーヤーはこれまで以上に軍事の備えを周到に行なう必要が出てきた。特に「Aggressive AI(攻撃的なAI)」オプションをONにしたゲームでは、AIは本格的に軍事力を強化するようになる。このためモンテズマやアレキサンダーといった好戦的な指導者は、従来のように飼いならしやすい存在ではなく非常に獰猛な生き物に変貌している。AI同士で隣国を滅ぼすまで攻め立てることも起きるようになったため、プレーヤーの隣国にこういった狂犬タイプの指導者がいるゲームでは、常に軍備に気を使うプレイが求められるだろう。

 このAI強化にともない、従来AIプレーヤーに与えられていた高難易度でのボーナスはドラスティックに削減された。研究開発費用軽減ボーナスが削られたほか、ユニット維持費用、アップグレード費用など金銭面のボーナスも削減。プレーヤーはこれまでに比べてはるかに「フェアな」状態で競い合えるようになったのだ。これはシングルプレイ志向の本作において非常に大きな改善だ。いわば従来は、将棋に例えればプレーヤーは常に飛車角落ち、相手は歩を5枚も10枚も余計に持っている状態で対局していたようなもの。相手が強くなり、理不尽なハンディキャップをそれほど必要としなくなったとあれば、ゲームがより楽しくなることは当然の帰結だ。

新たな大不思議「リオのキリスト像」は公民と国教変更を著しく容易にする 新しい宇宙船画面は3Dに。パーツのカスタマイズも可能になった 外交画面も一新。この画面では各文明が採用中の公民や国教がすぐにわかる

企業の登場により該当技術の開発は本作において非常に大きな意味を持つようになった 7種類の各企業は、資源を使って様々なプラス要素を都市に与える重要な存在 「MINING INC.」を誘致した沿岸都市。海洋タイルが多いにも関わらず工業力が非常に高い


■ コアゲーム(本編)の拡充はソロプレイの内容を大幅に改善。低難易度でも手ごたえアリ!

オランダの志向は創造的、金融的。ユニーク建造物の「干拓地」もあり強力文明のひとつだ
 本作のプレイ感覚を確かめるため、まずは小手調べとして「Prince(王子)」レベルでプレイしてみたノーマルゲームの模様を簡単にお伝えしよう。マップ設定は「Continents(複数の大陸)」。文明は新しく導入されたオランダを選択した。

 プレイを開始してまず目につくのは技術ツリーの変更点。本作ではいくつかの技術が追加されているが、全体的にメインストリームから横道にそれる形で構成される技術が多くなり、有利にゲームを展開しても単独で全ての技術を開発することが困難になった。必然的に技術交換による補完が必要になってくるバランスといえるだろう。

 BC4,000年、スタート地点はオランダ文明に有利な沿岸部であったため、そのまま首都を建設。セオリー通りに戦士を数体作成し、近隣の探検に出かけさせる。そして最初に出会った文明が最悪の指導者モンテズマ率いるアステカだった。戦争狂のコイツが隣にいるということは、軍備を疎かにした時点でゲームオーバーということだ。自分は箱庭スタイルの平和的プレイが好みのため戦争は避けたいのだが、100%の確率で向こうから吹っかけてくるだろうから、それなりの覚悟をしておくことにした。

 というわけで技術は軍事方面を中心に研究することに。まずは青銅器を取り、斧兵と槍兵を中心に都市を固める。この間土地の探索が進み、この大陸にはオランダ、アステカ、クメールの3文明が存在し、大陸南部には無主の広大な土地が広がっていることを発見。アステカのモンテズマは北部に位置しているため、都市の文化圏でフタをして拡張させにくく仕向けつつ、南部の土地に積極的に入植を続ける。

敵は森林タイルに陣取って戦力を補充してくる。地形効果が強いため手が出しにくく、効果的な戦い方をされてしまった
・危うく首都陥落&滅亡の憂き目に遭う寸前に

 案の定、国境が接した瞬間にモンテズマがこちらに宣戦してきた。こちらもあらかじめ斧兵を中心に迎撃用のユニットを揃えているので安心していたところ、想像以上のスタックで攻めてきた。アステカは技術的には遅れているようで、主力はジャガー戦士だ。都市で迎撃しようと待ち構えていると、敵は首都のひとつ上のタイルにある森林に陣取り動かない。森林は防御ボーナスが強く手を出しかねていると後から騎乗兵を中心とするユニットスタックがぞろぞろと集まってくる。

 こちらも全都市で軍事ユニットを生産し増援を続けているがどうにもらちが明かない。そうこうしているうちに首都の隣に位置する第二都市に対してモンテズマの別働隊が圧迫を加えてきた。AIは森林、丘陵など防御ボーナスを利用できる地形をうまく使い、複数のユニットで弱点を消したスタックで進んでくるため、どうしても迎撃に手間取ってしまうのだ。これはなかなか手ごわく、従来のバージョンでは有り得ないほどの戦上手ぶりだ。こちらの主力を分割して対応していると、首都の守りが残り1ユニットというところまで追い詰められてしまった。第二都市も、守備兵がいない状態で2タイル先に敵のチャリオットがいるというところ。このときはさすがに滅亡を覚悟した。

 が、なんとか増援が間に合いモンテズマの主力撃退に成功。首都北部の森林地帯に守備隊を展開し、敵の侵攻を食い止める作戦に出てからは攻撃を完全に跳ね返せるようになってきたものの、敵はすぐ近くの丘陵地帯に新たなスタックを構築しはじめている。ちょっと長い戦争になってしまったが、にらみ合いを続けるうちにモンテズマが停戦に応じてくれるようになったため、戦争を終了。戦争終盤には隣国のクメールがこちらに宣戦し攻め込んできていたため苦戦しはじめていたが、なんとか痛みわけに終えることができた。

いくつかの技術が追加され、ツリー構成に若干の変更が加えられた。横道にそれる形の「スキマ技術」が増え、高難易度では技術交換の戦略性が増したことになるだろう

技術格差を利用して一気に押し切る。属国化してしまえば安心して内政に励めるというものだ
本作より、属国は宗主国の都市圏を文化侵食しなくなった。これで国境際の都市が押されることはない
・箱庭プレイを確実にするには属国化がポイント

 アステカ、クメールの攻撃を跳ね返す際、両文明の都市を奪取するにはいたらなかったが地形改善を徹底的に破壊することには成功した。これはボディブローのように彼らを苦しめることだろう。しかしモンテズマを放置しておけばすぐに脅威になることが目に見えているので継続的に軍事面を強化する戦略だ。ここで目標にしたのは「WARLORDS」で導入された属国化を相手に強要するまで叩きのめすこと。いち早く「Civil Service(公務員)」の技術を獲得し、中世の主力兵科であるメイス兵を解禁させた。

 この時点でアステカ、クメールともに古代のユニットしか保有していないので、軍事力優位を確保でき、しばらくの間箱庭プレイに徹することができた。大陸中部から南部にかけて広い領土に入植し、都市数では上回っていたのでこれはおいしい。本作では時代が進むことによるインフレの効果が非常に強くなっており、軍事ユニットを保有することで技術開発にあまり多くの国力を割けないという痛みがあるが、全体的には非常に有利な立場ではある。

 時代を進め外洋航海を可能にし、それぞれ中規模の大陸を独占するアラビア文明とバビロニア文明に接触。技術的にはこちらが先行していることを確認しつつ、セオリー通りに技術「自由主義」、「経済学」を真っ先に獲得。国力を加速しつつ技術「ライフリング」に直行し、非常に早い段階でライフル兵の解禁を果たし、大量生産を開始。手榴弾兵は本作から「軍事科学」というサブ技術への寄り道が必要になったが、これも取得。アステカとクメールの同盟がこちらに宣戦布告してきたのはちょうどそのタイミングだった。

 相手の主力はいまだに古代・中世の騎乗兵や剣士などだ。クメールのバリスタ象兵はなかなかタフでやっかいな相手だが、こちらのライフル兵から見れば勝率95%以上の相手。問題なくザクザクと撃退し、押し返す。この後すぐに技術「職業軍人」を得ることができたので近代最強ユニットである騎兵隊の大量生産を開始した。さっそく戦線に送り込みアステカとクメールの地形改善をひとつ残らず破壊しておく。そうしておいて都市をひとつづつ奪取して勝利を確実にすると、両国に対して属国化による和平提案を通すことに成功した。これで大陸は自分のものだ。

大技術者を使って「MINING INC」を創業。ハンマー出力を追加する強力な企業なのだ
宇宙船を発射すると、実際にマップ上を昇って行く。惑星到着までには十数ターンが必要だ
・企業を活用して工業生産力を大幅増加。しかし経済的には厳しい状況へ

 陸を平定したことで軍事ユニットの増産を停止。他の大陸とは最低限の技術交換だけ行なうことにし、宇宙勝利を目指して国力の増進を図ることにした。ここで活躍するのが新要素である「企業」だ。それも技術「鉄道」で解禁される「MINING INC.」。この企業は鉄や銅、金といった鉱物系の資源を消費し、その数に応じてハンマー出力を発生させるという生産重視のプレイにはうってつけの存在だ。ハンマー出力の不足しがちな僻地の都市に開業すると絶大な効果を発揮する。

 この企業の創業に必要とされる偉大な技術者が首都に誕生したので、早速立ち上げ。国内の全都市に出店を開始する。ここで気をつけたいのは企業が事業規模に応じて必要とする維持費用だ。今回のプレイでは鉱物資源をほぼ独占できていたため、「MINING INC」支店を開業することで都市に+18のハンマーが得られ(これにはさらに工場などのプラス補正がかかる)非常にありがたいものの、営業規模が大きいためか20~30単位を越える維持費用が都市の経費に追加されてしまう。10箇所に開業すれば毎ターン300近い出費だ。最初はこれをあまり意識していなかったためターン毎の金銭収入がガタガタになってしまい、技術開発に50%の国力も割けない状態になってしまった。

 そこで属国を含む海外にも企業を広げ、本社への金銭収入で相殺する作戦を試すことに。クメールの全都市、アステカの2都市に開業して幾分かの上がりを得ることができたものの、ここで彼らは「国有資産」の公民を採用してしまった。これで海外店舗からの金銭収入がなくなってしまったので他の大陸への進出も企てるが、そちらも「重商主義」の公民を採用しており開業が不可能。おかげで、国際連合設立後に議決による公民強制をおこなうまで、企業の莫大な維持費用に苦しむ展開となってしまった。

 とはいえ「企業」のパワーを生かして工業力では圧倒的トップに立てている。技術開発ではだんだんと追い上げられてきたもののリードを生かして順調に宇宙船のパーツを生産。セオリーどおり軌道エレベーターの大不思議を作ってさらに生産効率を加速しながら、合間にスパイを生産して近隣諸国の都市に毒を入れたり暴動を扇動したりといった妨害工作を楽しむ。

 今回の宇宙船は、パーツのちょっとしたカスタマイズが可能だ。部位ごとの色や形が複数のバリエーションの中から選べ、また推進力となるスラスターを1個から5個まで装着可能。スラスター1個で生産を終えて発射するとアルファ・ケンタウリに到着するまで19ターンの時間が必要となるが、5個のスラスターを装着すると11ターンで到達できるようになる。これは宇宙船競争でヒートアップしているときには面白い判断になるだろうが、今回は完全にリードしていたのでまったりと5個のスラスターを生産。AD2015年に発射し、AD2023年にゲームを勝利して終えることができた。

 全体的には簡単なゲームになったものの序盤に受けた猛攻は厳しく、あやうくゲームをリセットしかけるところまで追い詰められたというのはこれまでの同難易度では経験しなかった内容だ。また、工業化時代に入った時点では自文明が技術面で圧倒的に独走していたのにもかかわらず、ゲーム終了直前ではバビロニア文明とアラブ文明という二つの小大陸を独占する文明が現代の先端技術を研究するところまで追い上げてきており、もう少し長くゲームが続いていれば危ないゲームになっていただろう。本作のAIは確かに多方面で向上しており、かなりの手ごたえを感じることができた。次はより高い難易度でプレイしてみたいと思わせるゲーム内容だったというのが正直な感想だ。

諜報活動の受動効果の例。通常ライバル文明の都市は不可視だが、諜報画面を開き特定の文明に諜報ポイントの重み付けを配分。ターンが経過して諜報ポイントが充分に蓄積(City Visibilityの値)すると、該当文明の都市が丸見えとなる。さらに蓄積すると都市画面を開くことも可能だ


■ 技術ツリーすら存在しないゲームモードも。新鮮なプレイを楽しめる新シナリオ/MODを紹介

 「Civilization IV」エンジンのゲーム部分は、Python言語による改変可能な形での実装が行なわれており、ゲームの根幹部分から改造が可能という柔軟性がある。このためオリジナルのシナリオやMODといった追加のゲームが作りやすい環境であるわけなのだが、本作はその特性を生かしたMODコンテンツが目玉のひとつだ。本作の紹介の最後に、同梱されているシナリオとMODの中から特に興味を引くものをかいつまんでご紹介しておこう。

嗚呼茫漠たる大宇宙。入植は恒星系にのみ可能。全体的にだだっ広いため国境が接することは少なく、影響圏を広げるスペースコロニーの活用が鍵になる
・FINAL FRONTIER (最後のフロンティア)

 舞台は宇宙世紀。銀河宇宙に生存圏を広げつつある人類だったが、地球との連絡は途絶えていた。プレーヤーは勢力の指導者となり、複数の恒星系に活動範囲を広げ、巨大なジャンプゲートを作り地球に再降臨するという最終的な勝利を目指す。

 このシナリオは本編のゲームシステムの大部分を継承しつつも、全く新しい技術ツリーやユニットデザインによる新しいゲーム感覚が楽しめるようになっている。特筆すべきは、恒星系単位となる都市画面のシステムが、タイルでなく惑星を対象に操作をおこなう仕組みになっていることだろう。また都市の建設物は惑星毎に別々に建設するようになっており、ひとつの惑星の開発を終えてもまた別の惑星に建設を行なって生産力を改善できるというシステムが面白い。各惑星に配置できる市民の数はそれぞれの大きさにより限定されており、惑星の質によって食料やハンマーの出力が異なるため戦略性も高い。

 軍事ユニットは宇宙船スタイルのものだが、駆逐艦、戦艦、航空母艦といった各カテゴリの艦船が、技術の進歩とともにアップグレードしていく形態をとっている。宇宙は広く移動力は限定されており、工作船を使って各タイルにワープゲート(道路に相当する)を敷いていく必要がある。また工作船と金銭を使って建造できる宇宙基地は勢力の影響圏を広げる効力があり、星系間にある資源タイルを確保するためにこれをうまく活用する必要がある。宇宙的なグラフィックスも相まって、本編のゲームとは全くちがった雰囲気を楽しめる大作シナリオだ。

本作エンジンを用いてタクティカルバトルシミュレーションゲームを実現。5体のユニットを指揮し、ゾンビをなぎ倒しながらミッションクリアを目指せ
・AFTERWORLD (来るべき世界)

 このシナリオでは技術ツリーや外交といったゲーム本編の要素はいっさい存在しない。戦闘ユニットで構成される小隊を駆使してゾンビと戦い次々に現われる目標を達成していくという、タクティカルシミュレーション仕立てのゲームだ。「Civilization IV」のエンジンを使った全く新しいゲームと考えていいだろう。

 このゲームでプレーヤーが操作する戦闘ユニットは移動力が高く、遠隔攻撃の能力も備えている。ステージは暗い空間で構成されており、ユニットが向いている方向にいる敵しか見つけることができない。アクションRPGを思い出させるような構成のマップを探索し、ある地点に到達する、その場所で数ターン持ちこたえるといったミッションをこなしていく。

 戦闘ユニットは敵を倒し続けることでレベルアップし、新たな能力を獲得することができる。ゾンビやアンデッドなどの敵の単体は非常に弱いものの、集注した攻撃を受ければたちどころに分が悪くなるというバランス。敵を亜空間に吹き飛ばす攻撃や、補助ユニットとなるミニオンを作り出す能力を使って切り抜けていきたい。要所で登場するボスキャラ級の敵は非常に強力なので、難しい場面では5体のユニットをうまく連携させながら進めていくのがポイントだ。

ステージクリア型の戦術パズルゲーム仕立て。序盤のステージでは大量のライオンが延々と襲い掛かってくるので、森林の防御効果をうまく使って文明の火を守りきろう
・CIV DEFENCE (文明の守り)

 これはちょっとしたミニゲーム仕立てのシナリオで、大量にやってくる敵をひたすら撃退し続けるという、ちょっとパズル的要素の強いゲームになっている。

 プレーヤーはゲーム開始時やステージの合間に金銭を使ってマップ上に都市やユニットを配置することができる。準備をしてゲームを開始すると、最初はライオンや熊といった弱いユニットが大量に攻めてくるので、地形効果をうまく使って侵攻路を塞ぎ、撃退し続ける。

 ユニットは本編と同様に経験値を獲得してレベルアップしていくので、地形にあわせた昇進内容を選んで強化していこう。規定数の敵を撃退したらステージ完了。守りきった都市の数に応じて金銭ボーナスが得られるので、それを使ってまた都市を作ったり、ユニットを配置していこう。ステージを経る毎に敵はだんだんと強力に、賢くなってくるので、あらかじめ対策を立てて金銭をうまく使っていく必要がある。敵の猛攻をいつまでしのぎ続けられるか、ひたすら攻略法を考えていくのが楽しいゲームだ。

これはリアルなヒストリカルシミュレーションを志向するMOD。筆者は大航海時代のスペインをプレイしてみたが、ガレオン船が1ターンでアメリカ大陸まで到達できる機動性により年代的なリアリズムを生み出すようだ
・RHYE'S AND FALL OF CIVILIZATIONS

 上記3本のMODは、Firaxis自身による内部開発作品だが、こちらはファン・コミュニティで生まれた名作MOD「RHYE'S CIVILIZATION」をFiraxisの開発スタッフがさらに洗練させたMOD作品だ。基本システム的には本編のゲームに添った内容だが、歴史イベントや文明の誕生・滅亡などの再現に力をいれており、極めてリアル志向の作品。

 古代スタートのゲームでは、プレーヤーはエジプトなど初期の文明を選択してプレイすることになる。マップは実際の地球をリアルに再現したもので、文明の配置も史実の通りだ。時代が進むにつれて、史実と同じく新たな文明が地球各地に発祥していく。その際にプレーヤーは、新たに生まれた文明をプレイするかどうか尋ねられ、乗り換えることができる。例えばエジプト文明を放棄してギリシャ文明のプレイを開始するといった按配だ。

 このMODでは船舶の移動力が通常ゲームの何倍にも拡張されており、16世紀以降の大航海時代をイメージしたプレイが非常にダイナミックに展開できるようになっている。マヤやアステカなどアメリカ大陸の原住文明は技術的に非常に遅れているので、国土の狭いポルトガルやスペインなどのプレーヤーは、新大陸への植民と侵略という史実どおりの選択を迫られることになるだろう。各文明は独自の勝利条件が設定されており、歴史上の偉大な事件をリアルに体験することを主眼においたプレイを楽しむことができる。リプレイ性も高く、非常に優秀なシナリオである。


 拡張パックという言葉ではもったいないほどすごいボリュームをもつ本タイトルだが、価格相応を越える手ごたえに筆者は大満足。さらに上記で紹介した以外にも7つのシナリオ/MODが同梱されている。どれも新鮮なプレイを約束してくれる作品なので、是非とも寝る間を惜しんでプレイしてほしい。もちろん、ユーザーコミュニティから発表される新たなMODも楽しみのひとつだ。

 なお、本作はサイバーフロントから完全日本語版が2007年中にリリースされる予定。英語版には英語版の拡張パックが、日本語版には日本語版のものが必要なので、手持ちのバージョンに応じた製品を手に入れてほしい。では皆さん、楽しい「Civ4」ライフをご堪能あれ!

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    【Civilization IV: BEYOND the SWORD】
  • CPU:Pentium 4 1.8GHz以上
  • HDD:1.7GB以上
  • メモリ:512MB以上
  • ビデオメモリ:128MB以上


□「Civilization IV: BEYOND the SWORD」のページ
http://www.2kgames.com/civ4/beyondthesword/

(2007年8月3日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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