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CAPCOM KOREA代表取締役社長 Kang Jin-Koo氏インタビュー
オンラインゲームの開発が複数進行中、「MHF」は来年前半にも韓国サービス開始か!?

11月収録

会場:CAPCOM KOREA本社

 11月に韓国で開かれたG★ 2007は、韓国オンラインゲームの披露と海外オンラインゲームの商談の場という、オンラインゲームのショウとしての位置づけをより洗練化させた印象を海外メディアに抱かせてくれた。

 しかし、今年、韓国ゲーム市場を賑わせたのは、オンラインゲームではなくニンテンドーDSだった。G★運営事務局は、今年、任天堂の本格参入をふまえて同社の出展を目標に掲げたという。任天堂も出展を検討した時期もあったようだが、残念ながら、出展のメインとなるWiiの発売が来春に延期となったため、G★に任天堂出展というシナリオは幻となった。しかし、仮に出展していたなら、他のプラットフォーマーも追随し、G★の風景はまったく違ったものになっていたかもしれなかった。韓国コンシューマ市場は、水面下で確実に盛り上がりつつあるのだ。

 今回は、2007年5月に韓国に子会社を設立したカプコンの韓国法人CAPCOM KOREAを訪ね、代表取締役社長を務めるKang Jin-Koo氏に韓国コンシューマ市場の最新動向と、「モンスターハンターフロンティアオンライン」を筆頭とした、カプコンタイトルの韓国展開について話を伺った。


■ CAPCOM KOREA設立の狙いと、その業務内容について

編集部: 2007年5月にCAPCOM KOREAが設立されてから半年が経過しました。いまだ大きな動きはなく、水面下の動きが非常に長い印象を受けます。

CAPCOM KOREA代表取締役社長Kang Jin-Koo氏。ネクソンジャパンの初代代表取締役社長、SCEKソフトウェア事業部ジェネラルマネージャー等を歴任。極めて流ちょうな日本語を操る
CAPCOM KOREAはソウル市を南北に分断する漢江の南に位置する瑞草区にある。SCEKやNintendo of Koreaともほど近い距離にあり、韓国大手が密集する江南にもほど近い
Kang氏: 長いですか(笑)。CAPCOM KOREAを立ち上げる前からオンラインは動いていました。ご存じだと思いますが、G★でも色々うわさはありましたからね。他社さんに比べても頑張っているのは事実だと思うのですが、ちゃんと皆さんにご報告できるタイミングを待っているところです。日本企業独特の慎重なところがあって公式発表は控えています。

編: CAPCOM KOREAは何を目的とした韓国法人なのか、そこから教えてください。

Kang氏: まず、設立の意義についてですが、元々韓国にココカプコンというジョイントベンチャーがあったのですが、うまく業務が進行していない状況があり、カプコンが韓国にタイトルを持って来られない状況が続いていました。ご存じのように、現在韓国では任天堂が進出してきてコンソール3社が出揃い、まだまだ厳しい市場ではありますけれども捨てられない市場であり、コンソールがオンライン化する流れでもっと伸びるのではないかという期待が高まっています。

 加えて、カプコンは元々オンライン展開を準備していることがありましたので、色々な会社さんとの協力関係の構築が必要でした。オンラインゲームを作るとなるとワールドワイドで中国アジア圏での進出も考慮しなければならない。韓国は地理的にも近いですし、情報も入ってくる国ですので、韓国をファーストコンタクトにすることで世界展開が可能にするという意図があります。カプコン本社のオンラインビジネスをきちんと韓国という地域を含めてバックアップしていくために、CAPCOM KOREAを設立したというのが基本的な考えです。

 韓国だとどうしてもオンラインが前面に出てきてしまいますが、コンソールはやらないかといえば、そうではありません。CAPCOM KOREAの意義としては、他社さんとのコラボレーションがありますが、幸いにたくさんの会社さんがカプコンとの協業を考えてくださっています。これまでは、それが本社に直接行ったとしてもどの部署の誰に言えばいいのか分かりない部分もありましたし、本社の方でも連絡を下さった会社をよく分からないということがありました。

 今後そうした部分をCAPCOM KOREAに連絡を下されば本社のライトパーソンにつなげてビジネスのチャンスを最大限に活かしていきます。さらにCAPCOM KOREAができることがあればサポートさせていただきたいと考えています。今はコンソールとオンラインがメインですが、今後はアーケードやキャラクタ関係にも順次展開し、名実共に韓国現地法人としての役割を担っていきたいと考えています。

編: CAPCOM KOREAは、カプコンのアジア進出の拠点となるのでしょうか?

Kang氏: そのための専門の部署として別にCAPCOM ASIAが香港にあります。我々はあくまで韓国だけですのでアジア全体は彼らでカバーします。中国市場のまだ未進出ですが、やるならばCAPCOM ASIAが動くと思います。ただ、中国の会社はかなりの会社が韓国に支社を置いていますので、こちらからファーストコンタクトを取りつつお互い連携を取ってやっていきます。

編: 中国ビジネスにおいて、日本から直接中国にコンテンツを持ち込んで成功した例はほとんどありませんが、韓国や台湾を経由することで成功したというケースはありますよね。韓国をゲートウェイにすることで中国への浸透力を高める。CAPCOM KOREAはそのための組織ではないのですか?

Kang氏: 確かに日本から直接中国展開を行なうことは大きなリスクがありますし、どこの部隊を投入すれば良いのかという問題もあります。おっしゃる通り、韓国の会社の方が中国市場で成功した例が多いのですので、その可能性は高いと思います。

編: 一方、韓国メーカーとの協業は、どのようなビジネスを想定していますか。

Kang氏: 第1ステップはオンラインとコンソールでステップの土台を築いていきます。モバイルは本社と韓国が直接韓国の会社とやりとりをしていますので、その次としてアーケード、モバイル、キャラクタという感じです。特に範囲を決めるつもりはありません。

 いただいた案件の中で仕事をがっちりやるビジネスもあれば、単純に本社の部署を紹介するだけのビジネスもあると思います。カプコンとしても本社に連絡が繋がって、できるものはできる、できないものでもできるようにしていきたいのです。かつて私も韓国から日本の会社さんと取引したいけれど、どこに繋げばいいのかわからない、繋がっても尻切れトンボになってしまうというケースが多々ありました。韓国に限ってはこちらに連絡をいただければできるものはできる、できないものはできないというのをメリハリつけて整理していこうかなと思います。

編: キャラクタビジネスは、例えば「ロックマン」のキャラクタをウチのゲームに使わせて欲しいというIPのビジネスですか。

Kang氏: それはたくさんございます。弊社のこのIPをこのゲームに使わせてくださいとかですね。本社のしかるべき部署につなげて、交渉を進めていきます。

編: 最近は、バンダイナムコゲームスさんや日本ファルコムさんなど、有力IPを韓国メーカーにライセンスすることをビジネスとして取り組んできたメーカーさんが増えてきました。カプコンもその仲間入りを果たすということですか。

Kang氏: 現時点で、カプコンのほうで特定のビジネスを目論んでいるわけではないのですが、幅広く気軽にコンタクトを取れることを狙っています。どこに振ればいいのかと悩んでいるのでしたら、まずはこちらに下さいと。こちらからこういうビジネスを考えていてチャンスを作るわけではありません。

編: アーケードの展開とはどのような内容でしょう?

Kang氏: まさに日本のアーケードのようなビジネスです。具体的にどうやるかは見えていないのですが、うちはアーケードはやらないから、アーケードに関しては本社と話して下さいといった仕切りを作るのはやりたくないのです。

 韓国のオンライン、コンソール、アーケードのすべての市場がチャンスだと思っています。しかし1点でいけるかというとそうではないと思うのです。人員にも限りがありますし、マンパワーの問題もありますので随時ステップを追いながら広げていきたいですね。

編: 今の韓国の状況で、アーケード事業を口にされたことが驚きなんですが、むしろ厳しい状況だからこそチャンスがあるという判断なんですか?

Kang氏: ご存じのように、韓国といえばコナミさんの「DDR」もどきといいますか、それに着想を得たダンスゲームが非常に流行った時期がありまして、アーケード市場が非常に伸びました。それが昨年の成人ゲームの「海物語」の一件でガクッと落ちたのです。また、一時の伸びには虚数も入っていたわけです。実際ゲームだけのアーケードはあまり大きなものでは無いのです。それでもそれなりのタイトルがあれば需要がありますし、大きな需要でなくてもチャンスを見過ごすつもりはありません。

編: 韓国のアーケード市場は日本から見た場合非常にネガティブで、訴訟も多く市場規模も小さい。昨年の違法賭博問題もある。どこにうまみがあるのか分からないのですが。

Kang氏: 現在、韓国で活発にやっているのはセガさんやタイトーさんです。他社さんは、単発でどこかにお任せする形です。本社の場合はカプコンプラザが盛り上がっていますが、それと同じことを韓国でもCAPCOM KOREAがやるかといえばそうではありません。タイトルごとに韓国で人気の出るタイトルがあれば市場は小さいですが地道にやっていこうと考えています。

編: 例えば、最近発表された「ストリートファイター4」などはいかがですか。

Kang氏: もし出るようなことがあればやりたいですね(笑)。


■ 「モンスターハンター フロンティア オンライン」は年内韓国展開発表か!? 

「モンスターハンターフロンティアオンライン」の韓国展開について展望を語るKang氏
CAPCOM KOREAの入り口。最大キャパシティ12名ほどという比較的小さなオフィスとなっている
CAPCOM KOREA関連の噂としては「頭文字Nの会社が『MHF』を獲得した」というもの。頭文字Nの会社は韓国には無数にあるので断定はできないが、有力なのは今年のG★で大作不在だったNHNだろうか
編: CAPCOM KOREAには現在何人のスタッフがいるのですか?

Kang氏: 今は4人です。もちろん最初からもっとたくさん人員を抱えてやりたい気持ちはあったのです。しかし、韓国ではコンソールゲームがかなり厳しい状況で、最初からあまりに広げていくと失速してしまう危険があるので、最低限のスタッフでまわしつつ、収益があがった段階で徐々に伸ばして行こうと。

編: CAPCOM KOREAで現在行なっている事業、すでに行なった事業を教えてください。

Kang氏: コンソールではいくつかあります。新作では「戦国BASARA2 英雄外伝」があります。これまでに韓国で“ビックヒット”、日本では“ベストシリーズ”と呼ばれる廉価バージョンを3タイトル発売しまして、「戦国BASARA2 英雄外伝」で4作目となります。その前にPC「ロストプラネット」、PSP「モンスターハンターポータブル 2nd」があります。こちらは日本語版をSCEKが出したのですが、我々は英語版を出しています。厚いユーザー層がありますので、約1万3,000本と、日本から見れば小さい数字かもしれませんが、韓国市場では非常に大きな数字を出しています。

編: 韓国語版を出さなかった理由は何ですか?

Kang氏: 「モンスターハンターポータブル 2nd」は非常にテキストの量が多いタイトルでして、開発の方もぎりぎりのスケジュールで行なわれていたので実現しませんでした。韓国語版を出すためには開発段階から外国語を入れる必要があります。しかしその時点ではCAPCOM KOREAはありませんでした。今後は変えていきます。気持ちはあっても市場的に克服できないとできませんので、今後は流通も含めて考えていきます。

編: 韓国では自社流通ですか?

Kang氏: 今は社員が少ないので、今後増やすにしてもこの規模で直販は難しい と思うのですよね。当分は他の韓国でビジネスをやっている日本のゲーム会社の総販代理店を通じて販売していくだろうと思います。

編: ちなみに日本のパブリッシャーの中で自社流通をやっているところはあるのでしょうか。

Kang氏: 自社流通をやっているところは無いですね。一時期、EAコリアさんが自社流通をやられていた時期がありましたが、現在は代理店を使っています。SCEKも管理する人間はいますが総販代理店を使っています。韓国で自社流通は無いですね。

編: 昨今の話題と言えば、やはり「モンスターハンター フロンティア オンライン」です。韓国ユーザーがCAPCOM KOREAに一番期待しているのは、この韓国展開ではないでしょうか?

Kang氏: 設立当初も韓国のメディアから取材を受けまして、そのときに一番聞かれたのが「MHF」でした。韓国で我々が直接サービスすることは考えていないわけではないのですが、それなりのマンパワーや資金力が必要になってきます。現状ではまだ十分ではないので、すぐCAPCOM KOREAで何かやるということは考えておりません。韓国の優秀なパブリッシャーさんと組んで展開することを考えています。

編: 時期的にはいつぐらいを考えていますか。

Kang氏: 発表までいけるかどうかはわかりませんが、年内には決めたいですね。日本では4カ月以上が経ってみなさんに好評いただいていますが、日本サーバーは韓国からIP遮断しているのですよね。ですから、「やりたい」というご意見はいただくのです。できるだけ早く決めて皆さんにお知らせできればなと思います。

編: 正式サービス開始時期はいつぐらいを想定されていますか。

Kang氏: これはCAPCOM KOREAとしての希望ですが、年内にうまく話がまとまった場合には来年早々には行けるのではないかと思います。

編: ビジネスモデルについてはいかがですか。

Kang氏: その点はパブリッシャーさんとの話し合いに寄りますが、日本と大きく変わらないのではないかと予想はしています。月額になる可能性が高いと考えています。

編: 「MHF」をはじめとしたオンラインビジネスについては、どのようなビジネスを考えていますか?

Kang氏: カプコンでやっているオンラインビジネスをうまくワールドワイドでビジネスできる手助けをします。例えば日本で作った「MHF」を韓国のパブリッシャーさんにサービスに入る前にいろいろな折衝や契約の交渉をするといったものはあります。加えてカプコンに色々なIPがありますが、それらをオンライン化していくプロセスの中で、韓国のメーカーとの共同開発もあり得るわけです。また逆に韓国のメーカーに開発をお願いすることもあると思います。

 韓国人は、日本人と外見は似ていますが、言葉が違えば文化も異なることで、いろいろな誤解もあればトラブルもあるわけです。1番良いのは韓国と日本で直接やることだと言われますが、その中間でお互いの文化やお互いの問題を知っている人間が入ればスムーズに行くと思います。言葉、文化、習慣も違えば色々なモヤモヤが出てくるわけですよね。その辺りがジョイントベンチャーがうまくいかない理由だと思います。

 CAPCOM KOREAでは、そういうことがカプコン本社と韓国の会社とやりとりをする中でスムーズにいくようにするための取り組みを行なっていまして、開発を委託しているものも弊社からアセットを提供しているものをポンと渡すのではなく、より韓国のメーカーがわかりやすい形で提供しますし、事後もその内容が間違っていればこちらに訂正させますし、欲しがっているものがあればそれを渡します。韓国で行なわれている会議にも参加して、その段階でいろいろな意見を上げていきます。ビジネス全体がスムーズに進むようにサポートさせていただくわけです。

編: なるほど。小野(義徳オンライン開発部部長)さんが率いるオンライン開発部は「MHF」だけではなく、複数タイトルの開発を進めていると伺っておりますが、その一部は韓国で行なわれ、仲介をCAPCOM KOREAが行なっているのですか?

Kang氏: そうですね。厳密にいうと仲介だけではないのですが、カプコンのオンライン関係の一部のビジネスをCAPCOM KOREAでやらせていただいています。それが最も大きな最近の業務ですね。その部分をうまくやることが、大きな設立の理由でもあったわけです。サイドビジネスではなく、コンソールと並ぶ大きなビジネスですね。

編: カプコンが韓国に開発を投げる理由とは何ですか?

Kang氏: 色々理由はあると思います。開発コストの問題はどこも同じで、日本の開発コストより韓国の開発コストのほうが低いこともあります。オンラインを考えたときに韓国中国は重要な市場でもあります。また、韓国のデベロッパーは中国の事情を知っている部分もあります。また、韓国の会社からの積極的なオファーもあります。やはりゲームというものはお金だけ払って委託する外注先の会社に、うちがこういう企画だから作ってくださいというばかりでなく、うちの企画を作りたいのですと熱意を持っていただくと良い開発もできると思うのです。現在韓国でやっているところはそういったオファーをいただいて、開発をお願いしている会社になります。

編: 日本では「MHF」の次が見えてこず、やきもきしています(笑)。ボトルネックは実は韓国サイドにあったりしますか?

Kang氏: そのへんはどうなんでしょう(笑)。今年は発表できないと思いますが、来年には現在動いている2、3のタイトルは発表できるものがあるのではないかと思います。

編: するとゲームポータルとしての「ダレット」が「ダレット」らしくなってくると。

Kang氏: そこは見えていないですよね。基本的には「ダレット」さんがやることにはなっているのですが、そこはまだわかりません。「MHF」と開発をやっている数タイトルを全部が「ダレット」がやるのかといえばちょっとクエスチョンの部分はあります。

編: 「MHF」だけでは、「ダレット」の必然性がないですからね。

Kang氏: その辺は日本サイドの判断になりますが、韓国でオンラインビジネスをやっていく際に、日本のタイトルを韓国にもってくるだけかといえばそうではありません。韓国に色々なデベロッパーやパブリッシャーがゲームを作っていて、日本に展開したいという気持ちを持っています。私たちには「ダレット」がありますので、そこに韓国メーカーのオンラインタイトルを紹介するのも我々の役割かなと感じています。アグレッシブに展開できる状況ではありませんが、問い合わせがあればご紹介させていただくこともやっていきたいです。


■ コンシューマ市場の今と昔。廉価版、携帯ゲーム市場が急成長

2004年に比べると、廉価版が伸びてきたと語るKang氏
入り口にはカプコンが韓国で扱ってきたタイトルが並べられていた
編: コンシューマビジネスについて伺います。韓国でもようやく3つのプラットフォームメーカーが揃いました。そのタイミングを見計らったかのようなCAPCOM KOREAの設立ですが、韓国ではどのような戦略でコンシューマビジネスを展開していくのでしょうか?

Kang氏: 韓国のユーザーさんには、CAPCOM KOREAができたからには当然ローカライズされるだろうという期待があります。CAPCOM KOREAとしてもやはりすべてのタイトルをローカライズして提供することがユーザーさんにとっては良いだろうとは思います。しかし、そうするには韓国のゲーム市場は規模的に厳しい部分があります。そこを全部やるわけにはいかないですので、大作を中心に展開していくことになると思います。今後のものについてはなるべくローカライズできるように取り組んでいきたいと考えています。

 またローカライズだけではなく、対話集をつけるなど少しでも韓国のユーザーさんがゲームに取り組みやすい環境を作っていくと。それから、プラットフォーム的には最初はこれからやって後は次ということにはしたくないのです。できるだけタイムリーにやりたいです。そしてカプコンのタイトルでも並行輸入があるわけです。並行輸入は何かあったときのアフターサービスも受けられませんし、価格も高くなってしまいます。ローカライズが間に合わない場合でもユーザーさんが無駄な出費をしないようにやっていかなければならないなと思います。

編: ターゲットプラットフォームは日本と異なる感じで考えているのでしょうか。

Kang氏: いえ、同じです。本社のポリシーがマルチプラットフォーム展開ですので、それに合わせて展開していきます。Xbox 360やPS3はローカライズをしなくても販売を許していただけるところはあるのですが、任天堂の場合は土壌を作り上げていきたいということでローカライズしたタイトルでなければ許可をいただけません。後は本社の気持ちがどれだけあっても売れなければどうにもなりませんので、CAPCOM KOREAでも売れるようにがんばっていきたいですね。

編: Kangさんは、2004年に取材した際に、韓国のコンシューマは厳しいとおっしゃっていましたが、その認識は現在でも変わりませんか。

Kang氏: 2004年度はちょうど私が入ったくらいだと思うのですが、2002年から本格的なSCEKのビジネスが始まり2003年まではがーっと伸びて2004年は停滞して、2005年、2006年で少しずつ回復してという感じで。今はちょうど世代の入れ替えということもあってまた数字が落ちています。

 昔はまったく廉価版が売れなかったのですが、最近はかなり数が出るのです。新しくPS3が出てPS2が安く出て、そこでPS2を買ってゲームをやってみようという人がいるところなのです。今後そうした人がゲームに関心を持って、次世代のハイエンド機を買ってくれて、そうなると今よりも悪化してシュリンクしていくよりもパイが広がっていく可能性のほうがあるのではないかと思います。

編: Kangさんは元SCEKですが、やはりまずはSCEからという感じなのですか?

Kang氏: 私は元SCEKでしたし、色々とご協力をいただいていることも確かです。しかし、面白いことに韓国のコンソール業界にはSCEK出身の方がいらっしゃるんですね(笑)。どっちを優先してどっちをということでもないと思いますし、片方に全力投球した結果、片方が思い切り手薄になるといった大きな市場でもありませんので、万遍なくできるのではないかなと思います。

編: 人数的な規模を考えてもオールプラットフォームに展開するだけでも難しいように思えます。

Kang氏: 逆にローカライズされないタイトルで、日本語のままというのはさほど難しくはないのです。これをローカライズするとなるとかなり前の段階から開発との交渉もありますし、開発の方に納得していただけるような数字を出すことが必要です。数字的に取れないタイトルだと、いくら調整してもローカライズできないのですが、それについてはがんばりますとしか言いようがないですね。

編: 年間で何タイトルくらいを想定されているのでしょうか。

Kang氏: 今期末までで全プラットフォームで5、6本以上を考えています。

編: ポータブル機はPSPとDSがあります。ショップを見てもいずれも元気が良いように思えます。

Kang氏: PSPは機能重視、DSは本来のゲームの機能に焦点を当てていますよね。韓国の場合はアーリーアダプタが多くPSPが頑張っている印象を受けますが、現在はNDSが頑張っている。どこに行ってもNDSは売っています。とてもユーザー層が広いです。そういったものも今後コンソールゲーム市場の躍進の大きな原動力になると思います。来年の春という発表しかしていませんが、Wiiが出るから他のタイトルがだめになるかといえばそうではなく、コンソールに親しんでいただいて、他のコンソールにも興味を持っていただいてと。Wiiの展開には期待している部分も多いのです。

編: ポータブル機は2004年には並行輸入が少量あるだけで正規品はありませんでした。今でも依然として厳しいのでしょうか。

Kang氏: ソフトウェアの販売数だけを見ますと、任天堂DSのタイトルは数字的にはすごくいいのですよね。ゲーマーだけではなく、女性や低年齢層にライトでカジュアルなソフトが受けています。片やPSPはマニアックなゲームが多くユーザー層が狭いです。ソフトウェアの普及という観点でいくと、DSの方があるのです。DSのタイトルでいくともっと上があるのですが、PSPというタイトルでいくと1万が大台になっています。そこは元SCEKだから言うわけではありませんが、新型が出たことでもっとパイを大きくしてもらいたいと考えています。

編: ポータブル機が出てからゲームユーザーの底上げは行なわれたのでしょうか。ただ単に既存のユーザーがプレイしているだけなのでしょうか。

Kang氏: DSが出ていることを考えますと確実にパイは広がっていますね。

編: カプコンの携帯ゲーム機向けのメジャータイトルである「逆転裁判」シリーズは韓国ではいかがですか?

Kang氏: CAPCOM KOREAが設立される前に、リリースされたタイトルなので並行輸入が入ってきていた。ユーザーさんの中でローカライズしたテキストを回しあって楽しんでいるようです。非常に好評でありまして、これは私共が直接関与しているプロジェクトではありませんが、「逆転裁判」のモバイル版をNEXON Mobileでやっているものがとても好調らしいのです。こうしたことからも逆転裁判は韓国でも認知度のあるIPと考えておりまして、大事に展開したいと考えています。

編: 韓国で、日本人好みの一癖あるアドベンチャーゲームが受けるというのは意外ですね。殺人事件という非常にシリアスな問題を扱っているにもかかわらず、何度と無く笑ってしまうシーンがあるという。

Kang氏: 日本では法廷ドラマがありますよね。韓国でもなくはないのですがそこまで一般的ではありません。「逆転裁判」は企画がしっかりと固まったタイトルです。韓国で最も弱いのは企画の部分だと思いますので、そうした観点から見れば、今後韓国からも出てくるとは思いますが、日本のゲーム会社が一歩先んじているのではないかと思います。個人的には韓国のユーザーが日本語のままゲームを楽しんでいるところにびっくりさせられました。


■ 韓国コンシューマ市場を破壊する中古品と海賊版問題について

韓国コンシューマ市場の闇を語るKang氏。韓国の中古品問題は、日本とはまったく質が異なり、ゲーム市場そのものを腐らせる危険性をはらんでいる
ゲームショップのガラスケースの上に鎮座する中古ソフト。韓国未進出のWii以外のすべてのプラットフォームのソフトを扱っている
編: 「逆転裁判」の楽しさが理解できるのであれば、韓国のコンシューマ市場は意外に明るいのではないかと思いました。

Kang氏: 韓国市場の懸念は別のところにあると考えています。同じ韓国人として言いにくい話ですが、日本でも中古品は出回りますが遊んだゲームはコレクションしたり、そのまま持っていることが多いです。たとえば、「バイオハザード」を1から4まですべて持っていて飾ってある。韓国のお客さんはそうではありません。保管して眺めるのではなく、クリアしたら要らないみたいな感じで中古に回る率が高いです。

 また、最近では取締りをして改善しつつありますが、不正コピーがあることも事実です。他の人が作った著作権に対して正当な対価を払うという意識が高まってくれば、コンソールビジネスももう少し良くなるのではないかなと思います。そのためにはP2Pサイトは無くす必要があると思います。お金を払って買おうとしているユーザーも横の友達がダウンロードしていれば払いたくなくなるわけではないですか。

 この点、日本は非常に取締りがしっかりしている。ゲームはただでは手に入らないということは周知されています。しかし、韓国では、お金を払って買おうと思っても、横の友達が無料で落として遊んでいるような環境が普通にあります。「どこどこで無料で落とせるよ」と言われれば、やはり手に入れたくなると思うのです。

 ただ、「モンスターハンターポータブル 2nd」のようにきちんと買ってくださるユーザー層がいることも事実です。ネット上のBBSに行くと、「正規版を買わないと、ローカライズされなくなってしまうよ」という会話がなされていることも事実です。そうした面では今後良くなっていくのではないかと期待しています。

編: 日本にも、ネットからゲームを無料で手に入れようという層がいないわけではありませんよね。ただ、一般的なゲーマーの風景として、クリエイターに対するリスペクトがあり、だからこそ、そんなことは恥ずかしいからやってはならないという意識があります。韓国では、まだそうした意識が薄いのでしょうか?

Kang氏: 単純に「無料で手に入れるイコール犯罪」という意識がないのです。韓国のP2Pサイトで好例なのが、日本で放送されたドラマはほとんどがあがっています。それを無料でダウンロードできるわけです。著作権を持っている側からすればとんでもないことですよね。自分が罪を犯している意識もない。普通にインターネット上のコンテンツとして利用しているわけです。

 中にはとんでもないものがありまして、ダウンロードの有料サイトもあるわけです。サイトのお金がどこにいくかはわかりませんが、ユーザーさんはコンテンツに対価を払うという意識自体はあるんです。最近韓国のインターネット上で有名な俳優が出てきて視聴者に問いかけました。「最近皆さんはどちらで映画を見ましたか、映画館で見ましたか、パソコンで見ましたか。P2Pサイトで映画を見ていると今後映画が見られなくなります」。こうしたメッセージを伝えて、啓蒙活動を行なっているのです。こうしたことを音楽やゲームにも反映されて徐々に改善されていくことを期待していることも事実です。

編: 中国では所得が日本の10分の1以下ですから、理屈ではなくて経済的に買えないという層がほとんどです。こういう市場で、違法コピーに手を出すのは、認められないにせよ、自然の摂理的なものだと思うんです。しかし、韓国と日本で経済格差はもはやほとんどありませんから、所得格差云々ではなく、純粋にモラルの問題ですよね?

Kang氏: しかし、韓国のユーザーさんは、ゲームコンソール、ソフトの価格が高いという認識がいまだにあります。ただ、オンラインゲームと比較しますと、9,900ウォンを半年間払い続ければコンソールを買うのと同じ金額になるわけです。しかしオンラインではマイクロペイメントでは1,000ウォンから、或いは無料でお試しをすることもできます。かたやコンソールゲームというのは、最初からどういうゲームか最初はわからずマシンに大金を払うところに壁があるのではないかと思います。

編: 中古市場や海賊版市場にCAPCOM KOREAとして動くことはあるのでしょうか。

Kang氏: 私の意見としてですが、ちゃんとローカライズしたものを買ってくれる人が対価を払ったときに損をしたということにはならないようにしたいのです。その取り組みが取り締まりなのか使用者への法的処置なのかはわかりませんが、そうでなければ悪循環になるわけです。ローカライズしても売れないし、その結果ローカライズされなくなる。ちゃんと買った人が楽しんでいただけるようにしたいと思います。


■ 韓国での3大プラットフォーマーのゆくえ

Kang氏もWiiの進出に期待を寄せる。ローンチタイトルは「宝島」を含む、2タイトルほどを予定しているようだ
ゲームショップの人気商品はニンテンドーDS。市場価格は13万ウォン前後。コピー問題に悩まされているようだが、ショップでの中古品の扱いは少なく、韓国語版の正規品が多い
ライバルのPSPは、新型PSP&値下げという2軸でDSに対抗する。Kang氏も指摘しているとおり、SCEKのビジネスは韓国語、日本語、英語が混在しており、これがカジュアルゲーマーに対する利用障壁となっている
編: 3つのプラットフォーマーさんに対してどのような感想をお持ちですか?

Kang氏: SCEKはSCE Asiaと連携を取りつつ再び動き出した感じですね。MSはどちらかというとハードウェアがメインで、ソフトウェアに関してはシンガポールのヘッドクォーターでやっているイメージがあります。任天堂はまだ弊社としてタイトルを出していないので正直なんともいえない部分がありますが、ローカライズを絶対条件として前面に押し出す換わりに、しっかり展開するための下準備をきちんとされている印象を受けます。

編: 中でも任天堂は、ニンテンドーDSを発売してあっという間にPSPを抜き去りました。テレビCMを集中投下して、マスマーケティングで一気にユーザーを集めるという任天堂の成功の方程式が韓国でも通用したことが印象的でした。来春にはWiiが発売されると聞いておりますが、韓国市場ではどのような反応になると予測していますか?

Kang氏: 韓国で流通を担当している総販代理店の方もおっしゃっていますが、あるお店の方は、今後Wiiを主力にするという方がいました。任天堂さんはこれだけ短期間にニンテンドーDSを韓国に広めたわけです。すでに十分な実績はあるわけで、Wiiにも何か策があるだろうという期待感が大きいんですね。あとは、Wiiは日本と同様に家族向けに展開していくと聞いていますので、パイとしては既存のゲームユーザーより広いと思うのです。その形がPS3やXboxに繋がっていければいいなと思います。

編: ちなみにこれまで韓国でもっとも売れたコンシューマタイトルは何ですか?

Kang氏: 「鉄拳」ですね。韓国では非常に売れておりまして、PS2のシリーズで10万本以上売り上げていると思います。「鉄拳タッグトーナメント」も10万本以上出ているタイトルで、「鉄拳」は代々強いのです。PSPでも売れていますし。「鉄拳」は自分がやりこんでユーザーがスキルをつけていくゲームではないですか。技も引き継がれてキャラクタも引き継がれてとまた次回作もやってみたくなるわけです。

編: SCEKが「戦国BASARA」をラインナップのひとつに選んだのは、韓国では格闘ゲームの人気が高いという理由もあるわけですか?

Kang氏: いえ、私がSCEKにいたときには「戦国BASARA」は出しませんでした。日本では1、2が出ていますが、SCEKでは2を売ります。現在はCAPCOM KOREAがあります。本体のIPを大事に売っていくことはとても重要な役割なのです。大切に育てて次回作と続けてブランドを作っていく必要がありますね。

編: これまで韓国の場合は、プラットフォーマーさんがサードパーティのタイトルも一緒に売っていくパターンが多かったですが、CAPCOM KOREAさんは自社で販売を行なっていくのでしょうか。

Kang氏: サードパーティの中にはプラットフォーマーに全てマーケティングを任せているところもあります。KONAMIさんやバンダイナムコさんがそうです。バンダイブランドはバンダイコリアが扱っていますが、ナムコブランドはSCEKがやっていますよね。CAPCOM KOREAでは、流通は総販代理店ですが、マーケティングは自社で行なっています。これが韓国にブランチを置いているサードパーティの一般的なやり方です。

編: 韓国でも来春、任天堂コリアからWiiが発売予定ですが、ローンチタイトルにカプコンタイトルはありますか?

Kang氏: すでにお願いはしてあって、本社からも2タイトルくらいは許可をもらっています。最終的には任天堂さんの戦略にも関わってくる部分なのでどうなるかはわかりませんが。

編: というと、韓国ローンチではあえてラインナップを絞り込むかもしれないということですか?

Kang氏: 最初のタイトルは家族に向けてという話をされているので、ある程度ラインナップを選択されるのではないかと思いますが、そこは任天堂さんとのお話し合いの中で足並みを揃えていきます。

編: 2タイトルには何を選びましたか?

Kang氏: カプコンのWiiタイトルはそこまで多くないですから、さすがに数は絞られますよね(笑)。まずは「宝島」が選ばれると思いますが、任天堂さんと協議の上決めていきます。

編: 日本では「モンスターハンター」はPSP、Wii向けに新作展開が発表されましたが、韓国ではどのように見ていますか。

Kang氏: 「モンスターハンター」は既にブランドができあがって沢山のお客さんがいらっしゃいますので、もちろんこちらでも展開していきたいと考えています。ただWiiの場合ローカライズが必須ですので、そこをうまくCAPCOM KOREAで数字を提供していかなければなりません。いくら気持ちがあっても数字が提示できなければいけませんのでそこは大きな宿題ですね。

編: 目安として何万本売れればローカライズが可能になるのですか?

Kang氏: 本社の方で何万本売れという話は来ないのです。こちらの方から何万本売ります、収益はこうですというのを提案して、本社で開発コストがペイできるかを見るので、絶対これだけ売らなければだめだというのはないのです。しかし、僕の感覚的にはきちんとローカライズをして売っていくためには、最低でも1万本売れなければ厳しいですね。

編: 1万本がローカライズの壁というわけですね。

Kang氏: 数字が出せても、今度はスケジュールの問題があります。開発部隊の予定もあります。次回作のスケジュールが組まれる早い段階から話をしなければなりません。

編: ただ、世界規模で見ると、マルチプラットフォーム展開、マルチランゲージ展開は常識化しつつあります。カプコンさんの中ではマルチランゲージ展開の中に韓国語は含まれていないわけですか?

Kang氏: 開発の方でも考慮してはいるのですが、言語がひとつ増えると単純に開発期間がより長くかかります。また、他社さんもそうですが言語を増やすより、クオリティの高さを重視することがあります。ローカライズといっても1つ1つ作りこまなければいけないので、今はカプコンとして何カ国語に対応しているということは断定できませんが、CAPCOM KOREAとしては今後韓国語も入れていただくようにお願いしなければなりません。そういうアピールを今後社内でもしていくつもりです。


■ 2008年のCAPCOM KOREAのビジネスについて。韓国メーカーとのコラボに期待

「1人またげば繋がる」という韓国人脈を駆使してKang氏がどのようなビジネスを展開していくのか楽しみだ
編: 2008年以降のCAPCOM KOREAの目標を教えてください。

Kang氏: いたずらに規模を大きくするのはやめようと思っています。着実に収益を上げて徐々に大きくなるような、小さくても密度の濃い会社にしたいです。カプコンの現地法人として韓国で仕事をして収益を上げる会社にしていきたいと考えています。何かあればあそこに聞けばお仕事が進むという会社に育てていきたいです。

編: 個人的な目標としては何がありますか?

Kang氏: CAPCOM KOREAで直接オンラインのパブリッシングも考えていきたいですね。ただ、開発やコンソールが韓国では難しいのはわかっていますが、本社でまだ動いていない複数のIPを韓国のいいところとコラボを組んで韓国主導で作り上げていきたいという気持ちがあります。

編: SCEKというプラットフォーマーの立場から、CAPCOM KOREAというパブリッシャーの立場になって、周辺環境はどのように変わりましたか。

Kang氏: 楽になった部分はあります。プラットフォーマーの場合は、自社のプラットフォームのソフトが売れなければダメですから、他のプラットフォーマーさんがイベントをやったりして、その結果何万本売れたという話を聞くと、「ああこんなに売れたのか」と思うわけですね。一例を挙げれば、任天堂がテレビCMを打っているときに、ウチは停滞しているなとかですね。

 CAPCOM KOREAに来てからは、どのプラットフォームが売れても嬉しいわけです(笑)。開発はマルチプラットフォームですのでどことでもお付き合いができて、個人的には気が楽になりました。昔はサードパーティにいつまでに提出しなければならないとか、マスターをいつまでにと。別に意地悪をしているわけではないのですが、物理的にダメなものはダメなのです。その要求を受けるために本社の方に電話して早急にやってくれませんかということをやっていたこともあったのですが、サードパーティの立場からは要求をしたらそれで終わりなのです。もちろん、プラットフォーマーさんから「それでは納品間に合いませんよ」といわれて慌てることもあるわけですけど。そうした意味ではSCEKさんにはよくしていただいていると思いますよ(笑)。

編: Kangさんは、元々ネクソンジャパンの代表でしたが、元オンラインゲーム業界の人間として、韓国の大手パブリッシャーの動向をどのように見られていますか?

Kang氏: オンラインゲームの業界は広いようで狭く、横のつながりが大きいです。1人またげば大抵はつながります。インナーサイクルというわけではありませんが、知っている方が要所要所にいることは幸せだと思います。皆さんの取り組み方を見ていますと、日本の会社より平均年齢が若いせいか勢いはありますよね。物事をやると決めて動くのも早いことは韓国パブリッシャーの強みだと思うのです。

 しかし、皆さんはオンラインゲームというところだけを見ていまして、ワールドワイドで見ればコンソールという大きな市場があるのを見ていらっしゃらない。オンラインは韓国が飽和状態で中国に行っています。中国では、免許がないとオンラインゲームのサービスができない。それが来年1年間で20本しか出ないし、そのうち10本しか韓国のタイトルには当てられない旨の発表がありました。それが本当かどうかは政府の文化広報部が確認しているのですが、それが確かだとするならば韓国のオンラインゲーム会社の次が中国市場では厳しくなりますよね。

 ですから韓国のメーカーは最近ではヨーロッパやアメリカに行っています。Nexonさんをはじめ大手さんが現地に法人を立ててサービスをしています。カプコンもオンラインゲームを扱っていますが、コンソールゲームもあるわけです。私がSCEKにいたときに、そうした大手のオンラインゲーム会社をコンソールに引っ張ってこられなかったというトラウマもあるわけですが、彼らなりの色々と理由はあるとはいえ、もう少しコンシューマも見ていただけたらなと思うのです。

編: カプコンなら、「一緒にコンシューマゲームを作りませんか」というビジネスもできそうですね。たとえばNCSoftさんはPS3向けにタイトルを供給することが発表されていますし、カプコンとなら組んでも良いという韓国メーカーは多いのではないですか?

Kang氏: 現在はどちらかというと開発マターになりますが、カプコンのIPを使ってオンラインを作るのがメインです。今後は、DS向けの次回作を韓国の会社にお願いすることもやりたいわけです。そこのコラボは難しいと思います。カプコンのクオリティに合うということも重要です。開発コストを考えるとメリットもありますので、そういったところもできればなと思っています。現在、数社ほどコンソールゲームで動いている会社さんもありますので、次のステップとしては韓国産のコンソールタイトルを本社に提案できればなと思います。

編: 最後に、日韓のユーザーやメーカーに一言お願いします。

Kang氏: まず、日本のユーザーさんに対しては、CAPCOM KOREAでは、カプコン本社と協力して色々なオンラインゲームを開発しています。それは韓国ではもちろん日本でもサービスを考えています。そうした今後の新しいカプコンのオンラインタイトルに期待してください。

 韓国のメーカーには、我々は何かビジネスに関して縛りをもうけているわけではありませんので、カプコンと仕事をしたい場合は遠慮なく私たちにお問い合わせ下さい。最後にカプコンファンである韓国のユーザーさんには、“設立された”イコール“ローカライズしてくれる”という期待が高いことはわかっています。そこは全力でやっていきますが、スケジュールやコストの面があって、必ずしもすべてができるという保証はないのですが、できるだけローカライズできるように頑張っていきます。

編: ありがとうございました。

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□CAPCOM KOREAのホームページ
http://www.capcomkorea.com/
□関連情報
G★2007 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071111/gslink.htm
【11月13日】SCEK PRマネージャーKang Hee-Won氏インタビュー
新型PS3と韓国独自のVODサービスでPS3の本格展開をスタート
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071113/scekint.htm

(2007年12月7日)

[Reported by 中村聖司]



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