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会場:SCEK本社
やはり韓国ではコンシューマゲームは成立しないのかと思いきや、実際にショップを見てみると、ニンテンドーDSや新型PSP、Xbox 360、PS3といった最新ハードが店頭にずらりと並び、例年になく活況を呈していた。中でもニンテンドーDSは、今年1年弱の間に58万台を売り上げ、韓国コンシューマ市場では過去に例のないスピードでシェアを拡大している。日本でも人気の高いPSPが、3年間で36万台という数字と比較すると、その凄さがわかる。 現地で調べてみたところ、それぞれの韓国法人には出展をためらうだけの理由があった。まず、Nintendo of Koreaは、現地レポートでもお伝えしたように今冬に予定していたWiiの発売が、来春にずれ込んだためだとしている。Microsoft Koreaは、Xbox 360のいわゆるレッドリング問題で大規模なリコールが発生した上、現地の卸業者と訴訟問題となり、流通が一時ストップしていた。 Sony Computer Entertainment Korea(SCEK)は、昨年、SCEグループ全体の戦略転換の一環として大規模なリストラを敢行し、今年からSCE Asiaの管轄で韓国ビジネスを再スタートしている。アジア取材で毎回思うことだが、やはりアジアビジネスは一筋縄ではいかないということを感じさせるエピソードである。
本稿では、韓国コンシューマ市場の最新事情を知るために、韓国では最古参のプラットフォーマーであるSCEKに話を伺った。取材に応じていただいたのは、SCEK PRマネージャーのKang Hee-Won氏。Kang氏とは、2004年に一度取材した経緯があり、3年ぶりの再会となった。
■ 2004年からこれまでのSCEKの軌跡と、現在の韓国コンシューマゲーム事情
Kang氏: 営業戦略とマーケティング戦略が大きく変わりました。2004年当時はコンシューマゲーム市場があまり大きくありませんでした。現在はそこで広がった市場基盤を、より磐石なものにしていく方向にシフトしています。 編: 2004年に比べて韓国のコンソールゲーム市場はどのように変化しましたか? Kang氏: 2004年から2005年に大きく成長しました。2006年からは次世代ゲーム機に向けた期待感が市場を支配した時期で、この間、ややコンソールゲーム市場は伸び悩みました。2007年でXbox 360、Wii、PS3が出揃い、再び市場が伸び始めました。 編: 韓国での3大プラットフォームのシェアはどうなっていますか? Kang氏: 現在、膨大なPR費用をかけている任天堂がもっとも勢いがいいです。また、ゲーム機の販売台数をみると1年早く展開が始まったXbox 360が先んじています。しかしながら、PSPも含めた全体の販売台数ではSCEKが最もシェアを獲得していると思います。 編: 2004年当時はSCEK単体で韓国ビジネスを行なっていましたが、今年からSCE Asiaの1ディビジョンとして韓国展開を行なっていくことになったと伺っています。ビジネスの進め方などに何か変化はありましたか。 Kang氏: 戦略的な決断が日本に変わりましたので、我々が自由に裁量できる部分は減りましたが、単独で韓国ビジネスを成功させるという責任からも開放されました(笑)。現在のSCEKがおかれている状況を考えますと、SCE Asiaからの支援を得られるようになったことで仕事がしやすくなりました。 編: 具体的にはどういった部分でメリットがありましたか。 Kang氏: 例えばソフトウェアの開発面では、SCE Asiaが日本の開発会社と話をしてくれるので、価格面や展開面でもより迅速に行なえるようになりました。また契約時のミニマムギャランティについてもSCE Asiaから支援が得られますので、その点でも恩恵があります。また、以前はこうした頼みごとをするのに、1つ1つ部署別にお願いしなければならなかったのですが、現在はSCE Asiaに言えば何とかなるという状況があります。これが一番の恩恵ですね(笑)。 編: 結果して、韓国語版のタイトルも増えたのでしょうか。 Kang氏: 数字的には変わってはいません。これは発売日が早くなったことで、逆に韓国語にすることが時間の問題でできなくなることがあるためです。ただ、プレイステーション 3は、SCE本社の指針としてマルチランゲージ化が基本にありますので、SCE Asiaの協力とは関係なく、製作段階から韓国語化のプロセスが含まれています。ですから、今後再び増えていくのではないかと期待しています。 編: 反対にどういったデメリットがありますか。 Kang氏: 悪いことがあってもはっきり申し上げることはできませんが、これまでハードの販売日などは、韓国市場を考えた上でSCEKが独自に設定してきましたが、アジア戦略の動きで韓国の発売日を設定しなければなりませんので、それが大きく変わったところでしょうか。 編: 2004年に取材させていただいたときに、PS2が販売台数100万台を突破したところでした。現在までの各ハードの販売台数を教えてください。
Kang氏: 当時の100万台というのは並行輸入の20万台をあわせて100万台です。現在は並行輸入と合わせて135万台です。PSPは36万台です。PS3の累計台数は公開していません。 ■ PS3では11月よりVODサービス「MegaTV」の配信をスタート
Kang氏: 特別に韓国でPS2に力を入れているわけではないですし、PS3に特別力を入れなかったわけではないのですが、PS2はいまだに韓国に限らず世界のユーザーさんに愛され続けておりますので、そう見えるかもしれません。韓国でのPS3の展開は、他の国と比べて遅かったことと、価格の高さから積極的なマーケティングを行なうことができませんでした。 しかし、これからは違います。11月11日に韓国でも40GBの新型PS3を発売する予定ですが、これと並行してIPTVの提供も開始する予定です。韓国のKT社との協力で家庭でインターネットを通じてテレビが見られるサービスです。これを機に、40GBのPS3の新筐体を積極的に展開していくつもりです。 編: IPTVのサービスの内容と、ビジネスモデルを教えてください。 Kang氏: 80GB、40GBの2種類のPS3を利用して、KT社の「MegaTV」を視聴できるサービスです。PS3を起動すると「MegaTV」のアイコンが出てきます。ユーザーさんがサービスに加入し支払う定額料金の一部をロイヤリティとしてSCEKにいただく形です。 編: 「MegaTV」のサービスについて詳しく教えてください。 Kang氏: 韓国でKT社が展開しているインターネット網を利用したVOD(Video On Demand)サービスです。TV放送されてから24時間後に、ドラマやニュース、音楽といったテレビコンテンツを見られるサービスです。テレビという定義は韓国ではあくまでリアルタイムに視聴できなくてはなりませんが、TV放送のインターネット配信に関連する法整備が韓国では進んでいません。ですから、まずはVODサービスから始めていきます。 編: PS3で視聴するユーザーのメリットを教えてください。 Kang氏: PS3を通じて利用する場合は、「MegaTV」のサービスはもちろんですが、ブルーレイディスク再生機能やゲーム機能など様々なPS3の機能を楽しむことができます。価格の面でも従来のセットトップボックスを用意することを考えれば割安です。 編: セットトップボックスはいくら位ですか? Kang氏: HD表示に対応したもので20万ウォンから30万ウォン程度です。PS3の80GBが518,000ウォンで、40GBが348,000ウォンです。80GBモデルとはまだ価格差がありますが、40GBモデルの価格はセットトップボックスとさほど変わりがないので、SCEKから見ると韓国のユーザーは「MegaTV」の他に様々な機能を持ったPS3を選ぶのではないかと考えています。 日本でも携帯電話を購入する際に契約で何年以上使用すると携帯電話本体が安くなる販売方式がありますよね。「MegaTV」の加入者に提供しているセットトップボックスも、何年間かの契約を結んで、安価で提供していますので、実際に現金で20万ウォンをユーザーが支払うことはありません。しかし、PS3の場合はどういった形で提供されるかはまだ協議中です。 編: 現在の韓国国内の「MegaTV」の加入者数とビジネスモデルを教えてください。 Kang氏: KTが行なっているサービスなので、正確なところはわかりませんが、23万人ぐらいだったと思います。利用料金は月々8,000ウォンを払って見放題という方式です。 編: PS3を経由して視聴する場合も同じ料金プランとなるのでしょうか。 Kang氏: そうです。ユーザーが支払う料金も映像の内容も同じです。従来のセットトップボックスを利用してきたユーザーとのサービスの差異はありません。ブルーレイディスクの視聴やゲームといったPS3独自の機能が付加価値となります。 編: 視聴した「MegaTV」の映像をハードディスクに保存することはできるのでしょうか。 Kang氏: 保存は可能ですが、法律の問題があるのでキャッシュを3日間に限り保持するといった具合に限られています。そのため保存してから期間を過ぎると再生が不可能になり、ハードディスクが埋まった際には古いものから順に消えていきます。VODサービスなので、ハードディスクに保存するメリットはあまりありませんね。 編: MegaTVの提供により、何%程度の販売数の増加を見込んでいますか。 Kang氏: それ以前に、何が原因で売り上げが上昇するのかはなかなか分析が難しいんです。新型PS3かもしれませんし、クリスマスシーズンに合わせてリリースされる新タイトルかもしれません。昨日も今日もKTとサービス形態について協議を続けている最中ですので、目標は当然ながらあるのですが、具体的には申し上げにくいです。 編: MegaTVの提供開始はいつからでしょうか。 Kang氏: 近日中にリリース日程は発表予定です。11月中にはサービスを開始いたします。このIPTVサービスは、他の国で実施されていないオリジナルのサービスですので期待しています。 編: 念のために伺いますが、韓国外のPS3ユーザーが「MegaTV」のサービスを受けることはできないのでしょうか。
Kang氏: できません。PS3の問題ではなく、法律的にMegaTVが実施しているコンテンツサービスを海外に向けて行なうことができません。 ■ 韓国独自の展開について。Wiiは韓国の家庭事情から考えると難しい!?
Kang氏: 基本的にはSCE Asiaと足並みをそろえたマーケティングが基本にありますが、韓国はインターネットが普及していますので、韓国だけのHDコンテンツの確保や、「鉄拳」のような格闘ゲームを使ってe-Sportsに対する取り組みを行なっています。 また「メガボックス」という韓国木洞にある映画館をPS3の体験シアターとして準備しています。ユーザーが無料でPSのすべてのタイトルを体験することができます。韓国には「メガボックス」と「CGV」という2大映画館チェーンがあるのですが、「メガボックス」木洞店では、必ずしもこれが原因かはわかりませんが、PS3体験シアター設置以降、観客数が伸びたとのことです。 編: 韓国メーカーのPS3への参入や独自のオンラインゲームの開発はないのでしょうか。 Kang氏: すでにNCSoftとの提携を発表していますが、ゲーム開発には膨大な費用がかかります。現在は韓国だけではなく全世界的なPS3の普及率が低いです。韓国に対して積極的に開発を行なうという企業は少なかったのですが、40GBが登場して世界的な普及率も上昇すると思います。すると韓国でもゲーム開発に取り組む企業が出てくるのではないかと考えて、SCEKも声をかけていくつもりです。 編: 現在は韓国のメーカーでPS3のタイトルの開発に着手しているのはNCSoftのみですか? Kang氏: それは契約上お話することはできません。もちろんほかにもいます。 編: 2004年に訪れたときにはSCEKは自社で開発も行なえると伺っていました。現在はいかがですか。 Kang氏: PSPを2005年に韓国で発売した際に同時発売されましたが、その後は市場性が無いという最終的な判断で、ソフト開発は取りやめ、IPTVの開発に振り向けられました。 編: 韓国ではPS3がXbox 360を追撃する形ですが、となると決め手はやはりIPTVサービスとなるのでしょうか。 Kang氏: 現在、詳細は申せませんが、Xbox 360が流通面で問題を抱えているようです。PS3については価格の高さやタイトルの少なさがネックとなっていたのが、40GBの登場でそれがなくなるのではないかと思います。また、SCEKは昨年リストラを経験しましたし、積極的なマーケティングを行なうことができませんでしたが、これからは積極的に売っていきたいと思います。現在、MegaTV以外のPS3のサービスも準備していますので、そうした面も注目していただけると思います。 編: 今回の韓国取材でショップをたくさん回りました。その中でショップ側のWiiに対する期待の高さを感じましたが、SCEKとして、Wiiについてはどのような印象を持っていますか。 Kang氏: Wiiは値段的なメリットもありますし、短期的には人気が出るのではないかと思います。しかし長い目で見た場合にはPS3の方が人気が出るのではないかと考えています。 これはSCEKの意見ではなく、私も含めたユーザーの総評とお考え下さい。その理由として考えられるのは、テレビは主にリビングに置いてあるのですが、そのチャンネルの権利をほとんどが子供ではなく親が持っているのです(笑)。ドラマが見たいから勉強しなさい、という感じです。Wiiはリビングで家族で楽しむというのをコンセプトにしていますが、韓国でその光景が受け入れられるかは難しいのではないかと思いますね。 一方、PS3は自分の部屋でPCのモニターなどでプレイしているユーザー層がメインですが、そうしたユーザーが自分の一人部屋にWiiを持ち込んで1人でWiiをやるかということは、これもやはりあまり想像できません。また、疲れて家に帰ってきて1人でボクシングをしたりして体を動かすのでしょうか。というのも、韓国のユーザーが本当に興味があると考えるならば並行輸入市場も非常に活発なものになるのです。Wiiにそれが無いのです。PS3やPSPに比べてWiiの並行輸入が少ないのです。 編: 私はむしろ逆の印象を持っています。日本と韓国を比べた場合、韓国のユーザーは体を動かす タイトルがとにかく好きだという印象を受けます。「ギターヒーロー」や「EYE-TOY」、アーケードでのダンスゲームの人気がそうです。まさにWiiのように体を使うコンソールは、韓国の国民性に極めてマッチするのではないかと思います。 Kang氏: 任天堂さんがどうやって韓国市場を攻略していくかがポイントになると思います。「EYE-TOY」の場合もSCEKは有名タレントを使ってコマーシャルを打ちました。こうした影響もあり人気が出たと考えています。また、韓国では親たちのゲームに対する印象がそこまで良くないので、勉強をせずにリビングでゲームをすることをどのように見ていくのかがポイントになると思います。
コマーシャルなどのマスマーケティングを行なうと、韓国のゲーム市場の特性上、一気に売り上げが上がることはありますが、韓国市場は世界規模で見てそこまで大きいわけではありません。そこで膨大な費用を投入していくべきかということと、マーケティングの費用対効果を考えるとそれは考え物だと思っています。 ■ コンシューマ市場の成長を妨げる海賊版と中古品問題について
Kang氏: 任天堂の人気は否定できませんし、人気はすごくあると思います。SCEKの意見ではありませんが、任天堂が抱えている問題として海賊版が非常に問題になっています。もちろんプラットフォームの販売も必要なのですが、ゲーム市場の特性上タイトルの販売が伴っていないと利益の計上は難しいし、その点での費用対効果をみていくと、人気こそありますがそれをどのように分析するかは難しいと思います。 一方、SCEKは積極的にTVCMを行なっていましたが、昨年のリストラなど財務的な問題がありました。現時点ではマニアではありませんが、CMなどを打たなくてもすでにPS3を知っていらっしゃるユーザーさんに向けたピンポイントマーケティングを行なっています。Webの販売ランキングを見ると、1位になっているのは任天堂の「リズムヒーロー」ですが、これは韓国でCMを行なったもので、上位もやはりは任天堂さんのタイトルですが、それ以下はSCEのタイトルでしめられています。DSでは、任天堂さん以外のタイトルが売れていないのです。不法なコピーが出回っているということが任天堂のサードパーティの不満なのではないかと思います。 編: SCEKさんは2004年の時点で海賊版対策を行なっていくと言明していました。現在はいかがですか。 Kang氏: グループ政策として、ソフトウェアのアップデートを常に行なっていますし、韓国ではSCEKの法律チームが販売店の組合に対し、カスタムファームウェアの不正改造を不正行為でありアフターサービスを行なわない旨の再通告を行なっています。実際に何箇所か摘発されています。正規店に「我々は不正改造を行ないません」というステッカーを貼っていただくということも行なっています。先日、政府の文化観光部で色々なゲームの代表者が集まる会議がありましたが、そこで不正改造について政府から資金を援助してもらってキャンペーンを行なっていこうという話題が出ました。 編: そうしたキャンペーンはSCEKのビジネスで効果をあげているのですか。 Kang氏: カスタムファームウェアが違法であるということに関して無知なユーザーがいると思うのです。故意にやるユーザーにはどうしようもありませんが、知らなかったユーザーにはそうした喚起を行なっています。アフターサービスが一切できない発表を数日前に行ないました。同時にネット上のカフェやブログにカスタムファームウェアの話題が載せられているところに警告を行なっています。 編: SCEさんのプラットフォームでは、本体もソフトも両方売れるスキームができているというわけでしょうか。 Kang氏: 他の会社と比べて費用対効果としては、一番高いと思います。 編: 今回ショップを見て思ったのは、どの店でも新品ソフトと中古ソフトが並んでいます。これはSCEKが販売店に対して認めているビジネスなのでしょうか。 Kang氏: 正式には認めていません。SCEKとしてはできればなくなって欲しいと考えています。 編: といっても本当にどこにでも中古品がありました。日本だとヨドバシカメラやビックカメラで大々的に中古ソフトが売られているような状況です。とても日本ではあり得ない光景だと思います。 Kang氏: 日本と比べて韓国の中古市場が異なるのは、日本は中古品を販売しても税金をしっかり支払いますよね。しかし韓国では中古品を売買して発生した利益はすべて販売店にいってしまいます。法的に税金を払う根拠もありません。それが一番の問題です。 ですから、利ざやの薄い新品を販売して、法的に見ても正当な売り上げを計上するより、中古商品をやり取りする方が業者の利益が大きいのです。このため中古売買を販売店の方が積極的に誘導するため市場開拓を非常に困難なものにしています。こうした理由で中古市場はなくなってほしいと考えていますが、これらの問題が解決されればSCEKもそこまで中古市場を問題視することはありません。 編: ショップでは新品がいきなり安売りされていて、その隣にあまり値段が変わらない中古品が置かれていますが、話を聞いてみると買い取り価格もびっくりするぐらい高いんですね。しかし店の人は儲かっていると言う。幾ら話を聞いても、私はどこで利益を出しているのかわかりませんでしたが、初めてそのからくりがわかった気がします。 Kang氏: 新品ソフトは、仕入れコストの他にこれだけ売れましたと申告する必要があります。しかし、中古ソフトはその必要がありません。新品で1,000ウォンだけを儲けてその代わりに税金を払わない中古で利益を上げたほうが販売業者としても大きな利益につながります。 編: これは極めて深刻な問題ですよね。今後政府に働きかけていくことになるのでしょうか。
Kang氏: こういった問題を抱えているのが現状ですし、SCEKの立場としては良い状況ではないのが事実ですが、数多くない開発会社と関連企業だけでの改善は難しいのです。しかし、これからも訴えかけていくつもりですし、乗り越えるべき課題となると思います。こうした中古販売だけではなく、eマートなどのちゃんとした新品を安売りする流通モデルを持っているところにソフトウェアのやりとりを任せていくことに力を入れていきたいです。 ■ SCEKの今後の展望について。目標は3プラットフォーム鼎立時代もトップシェアを維持
Kang氏: 韓国の場合は日本と同じで会計年度が同じです。まだそうした目標を決めるには早いかなと思います。また、SCE Asiaでもまだはっきりとした施策が決まっておりませんので、来年の目標を言うには早いと思います。独自で発表するのは難しいです。 編: 来春にはWiiが発売されて全プラットフォームが出揃うことになりますが、2008年の韓国コンシューマ市場の展望をきかせてください。 Kang氏: Xbox 360とPS3を見ると、残念ながら現在の状況は9対1ぐらいだと思います。来年になれば6対4か、5対5になると思います。理由としては40GBモデルの投入が大きいです。性能面ではPS3の方が上だと自信をもって言えますし、またブルーレイでのアドバンテージも大きいです。 ソニーピクサスが韓国でのブルーレイに関する業務をやっているのですが、それを見ているとブルーレイ再生機としてのPS3の優位性は間違いありません。来年にかけて追撃が可能ではないでしょうか。また、韓国を代表する家電メーカーであるサムスンやLGはいずれもブルーレイ陣営ですし、HD-DVDを支持しているユニバーサルは韓国にはその支社がありません。そのためブルーレイ陣営の伸びがブームの追い風になるともいえるでしょう。 ブルーレイの記事なのですが、韓国日報という日刊紙ですが韓国でブルーレイの記事が出てくるたびにPS3が出てくるのです。その理由としてサムスンやLGといった大手がブルーレイを作っているので、ブルーレイのシェアが加速するのではないかと思います。HD-DVDを支援する大手企業が現在の韓国にはありません。実際ブルーレイディスクのラインナップは35種類ほどありますが、HD-DVDは1つもありません。 編: 来年は6対4あるいは5対5とのことですが、これにWiiを入れた場合の比率を教えてください。 Kang氏: それは難しい質問ですね(笑)。WiiもDSと同じように膨大なPR費用を投じるとすれば早期の展開が考えられます。そうなった場合はXbox 360が4、PS3が3、Wiiが3といった比率になるのではないでしょうか。分析や希望もありますし、そうなってほしいなという数字です。 編: 携帯型ゲーム機についてはいかがですか。DSとPSPの差は開いてしまうことになるのでしょうか。 Kang氏: ハードウェアだけを見ると任天堂は普及しています。ハードウェアとタイトルとの装着率を考えるとどちらが効率的かは未知数です。 編: 装着率で見ると、DSよりもPSPの方が高くなると。 Kang氏: 純粋に装着率だけでは任天堂のタイトルのほうが高いと思いますが、DSの場合は特定のタイトルのみが売れている状態です。これに対してPSPの場合はサードパーティも含めてバランスよく売れているので、効率的にはPSPのタイトルのほうが良いのではないかと思います。また、DSの場合はマスメディアからタイトルの情報を得るケースが多いです。ユーザーたちがそれらを見てタイトルの購入に繋がります。PSPの場合はユーザーが自分で探して購入するタイトルを決めています。あくまで市場の予測です。 編: 今回、ショップを見た限りでは、今年の韓国市場は任天堂さんが持って行ってしまったなと思いました。SCEKとしては任天堂をどのように見ていますか。 Kang氏: 任天堂の勢いは本当にすごいと思いますし、我々としても羨ましいなと思います。しかし、SCEもPS3の新型を出しますし、PSPも新型が出たばかりです。従来のPSPが持っていた不満、例えば値段も安くなっていますし、軽くなっています。世界的に見ても勢いがあります。PSPに関しては現在需要に対して供給が追いつかない状況ですので、これが解決されるとDS以上にPSPは売れると思います。 また、DSタイトルがカジュアル寄りなのに対して、SCEKも提供するタイトルを精査する1つの基準になると思います。SCEKの場合は一般ユーザーへのマーケティングは行なったことがないのです。DSは大物の俳優を採用してゲーム全体の浸透を図りました。これはSCEKとしてもびっくりしました。新しい観点だと思います。 編: 任天堂さんの進出は良い意味で刺激になっているようですね。 Kang氏: はい。市場全体の底上げのために任天堂さんの成長も願っていますが、我々の下でお願いしたいですね(笑)。 編: 来年も1位の座を保持したいということでしょうか。 Kang氏: ポータブル市場に関してはDSに1位の座を取られてしまったのはありますが、全体では1位を保持していきたいと思いますし、技術の面では完全に上です。たとえば、PS3のIPTVをPSPで見ることも可能なのです。これは今後対応し、相互に売り上げを伸ばしていきたいです。PS3の2.00アップデータでPSPでPS3を操作することのできるシステムが追加されました。これによりいっそうの連携が期待されます。 編: そういったSCEの高い技術力を活かしたサービスは韓国でも人気が出そうですね。 Kang氏: ゲーム市場はマラソンだと思います。任天堂やMSと共に競争しているわけです。SCEKは、3社の中で一番長く韓国でビジネスを行なっていますので、成功も失敗も経験してきているつもりです。現在のSCEKは、一人で早く走りすぎてきて、息切れし、調子を整えて再び走り出そうとしているタイミングだと思います。長い目で考えていますので、3社の中でSCEKが優勝したいと、そう思って社員一同がんばっています。 編: 日本、韓国のユーザーに一言お願いします。 Kang氏: 今後、韓国のユーザーからの小さな不満も大きく包み込んで満足で返してあげたいと思います。もう少し韓国のユーザーに特化したサービスを受けてもらいたいと常に考えています。また、韓国のユーザーは日本で開発されたゲームを非常に多く楽しんでいます。韓国ユーザーを考慮したタイトルやハングル化を見込んだタイトルを日本のメーカーには是非とも多く作っていただけたらなと考えています。
編: ありがとうございました。 (2007年11月13日) [Reported by 中村聖司]
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