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★PCゲームレビュー★

合戦シムの決定版に拡張パックが登場
ヨーロッパ・中東・新大陸を舞台に戦う

メディーバル2:トータルウォー
キングダム

  • ジャンル:戦略&戦術シミュレーション
  • 開発元:CREATIVE ASSEMBLY
  • 発売元:セガ
  • 対応OS:Windows XP(Windows Vista動作確認済み)
  • 価格:6,090円(日本語版、要「メディーバル2:トータルウォー」本編)
  • レーティング:CERO:C(15歳以上)
  • 発売日:11月22日(発売中)



 今回紹介する「メディーバル2:トータルウォー キングダム」は、合戦シミュレーションゲームの決定版として好評を得ている「メディーバル2:トータルウォー(M2TW)」の拡張パックだ。

 「M2TW」はヨーロッパ中世の幕開けの時代から、新大陸の征服が本格化する時代までをテーマにした歴史シミュレーションゲームで、数千のキャラクタが有機的にうごめく大迫力の合戦シーンが最大の特徴だ。今回登場した拡張パック「キングダム」は「M2TW」がテーマとする歴史上の4つの局面をさらに詳細に再現し、それぞれに別個のキャンペーンゲームとして追加するものだ。

 なお、「メディーバル2:トータルウォー キングダム」をプレイするためには「メディーバル2:トータルウォー 日本語版」が別途必要になる。「メディーバル2:トータルウォー 日本語版」に関する情報についてはこちらのレビュー記事を参照いただきたい。


■ スペシャルルールを仕込んだ4つのキャンペーンゲーム+ゲーム本体の機能改善。舞台は中近東から新大陸まで!

「キングダム」拡張パックでは、4つの異なるキャンペーンが追加される。そのうち、これは「アメリカキャンペーン」のタイトル画面
大規模な軍勢をリアルタイムに指揮する魅力は健在。本作では4つのテーマでキャンペーンを戦う
 一般的なゲームの拡張パックでは、ゲーム本体をそのまま拡張して追加ユニットや新ルールを加えるものが多い。それに対して「キングダム」は、ゲーム本体を拡張するというよりも、新たな別個のゲームを複数追加するというスタイルが特徴的だ。「メディーバル2:トータルウォー 日本語版」に本作を追加すると、それぞれ独立した別個の新しいゲームとして4つの歴史キャンペーンゲームがインストールされるようになっている。

 追加されるキャンペーンゲームの内訳は、「アメリカキャンペーン」、「ブリタニアキャンペーン」、「十字軍キャンペーン」、「チュートン騎士団キャンペーン」の4種類。それぞれに異なる時代、異なる場所を局所的に再現し、ワールドマップが完全に異なるほか、ゲーム本体から継承される基本システムにも変化が加えられている。

 「キングダム」に共通するゲーム本体の変更点もある。ひとつは、キャンペーンゲームの「ホットシート」マルチプレイに対応したということ。要するに1台のPCで複数のプレーヤーが交代で操作するというマルチプレイの方式だ。欲を言えば、ネットワークでのキャンペーンにも対応してほしかったところである。

 もうひとつは、合戦シーンにおいて従来は同時に20部隊までしか登場できなかったが、援軍の形で追加の軍勢を同時に投入することが可能になったということだ。参戦する追加の部隊はAI制御になるものの、プレーヤーの手で「攻撃的」、「防御的」、「遠隔攻撃」の3つの戦闘態勢を指定できる。これにより戦場に登場する最大キャラクタ数が倍増することになり、これまで以上に大規模な合戦シーンを演出することが可能になった。

 本作で遊べる4つのキャンペーンは、上記のゲーム本体の拡張に加えて、各キャンペーン独自のルールが付け加えられている。例えばスペインによる新大陸征服を模した「アメリカキャンペーン」においては、スペイン陣営の新大陸におけるユニット生産力が著しく制限され、部隊を消耗してしまえば弱兵である現地の傭兵に頼らざるを得なくなる。さらに、収入源として税収がアテにならず、交易と略奪、本国からの支援が中心になるという按配だ。無論、他のキャンペーンでは全く異なるルールが導入されているので、違った気分でプレイできるようになっている。

今回新たに追加された「砦」。純軍事施設であり、厚い壁が堀に囲まれ、防御に最適 キャンペーン毎のワールドマップは完全に新規となっている。これはイングランドキャンペーン



■ リプレイ性抜群のゲーム性に、充実のシナリオ・演出。グラフィックス以外も抜かりない手応え

アメリカキャンペーンでは新大陸原住民族を含む4勢力がプレイアブル
新大陸に馬は居ない。そのためスペインのコンキスタドールの破壊力が強みを持つ
 本作で最も気分良くプレイできるキャンペーンは、何と言っても「アメリカキャンペーン」だ。このゲームでは1521年、アメリカ大陸への征服事業を開始したスペインと、それに反抗しようとする原住諸文明国家との対決がモチーフになっている。ここではやはりスペイン軍の圧倒的な強さが際立つ。

 鉄製の鎧兜に身を包み、新大陸には存在しない生物である馬に騎乗するスペイン軍のコンキスタドールたち。マスケット銃やカノン砲まで装備した精強な軍隊は向かうところ敵無しだ。現地文明、例えばアステカやマヤといった中南米所帝国は防具や武器に関する知識が皆無で、単体での兵力が著しく劣っている。変わりに大量の動員力を生かして、数の力で圧倒しようというのが所定の戦略だ。

 この温度差のため、戦端が開かれてしまえば小規模な軍勢が大規模な軍勢を散々に打ち破ってしまうという、ヨーロッパ文明国同士の争いではほとんど起こり得ない戦いがそこかしこで展開されることになる。プレーヤーがスペイン側でプレイするというのであれば、カノン砲で超遠距離から一方的に敵部隊を砲撃したり、棍棒を装備した原始的な歩兵部隊にコンキスタドールの騎馬突撃を加えて粉砕したりと、数の差をものともしない圧倒的な戦闘を堪能できることだろう。

・スペイン経済は占領と略奪が中心という自転車操業。エコな戦が勝利の鍵だ

本国から得られる報奨金は莫大。侵略行為が主収入になるだろう
 軍事で圧倒する代わり、このキャンペーンではスペイン陣営に決定的なビハインドが存在している。それは、現地社会に確固たる政治支配を及ぼせない征服者の立場であるため、占領した都市からの税収がほとんど得られないということだ。ヨーロッパでの歴史キャンペーンならば都市の税収を上げて軍隊の維持費をまかない、永続的に活動できる状況を作るのが常道になるが、アメリカ大陸でのスペインは基本的に維持が不可能という軍勢を常時運用しなければならない。

 このためスペイン軍は大陸に数多く存在する貴重な交易品を使って収入を上げることが重要になるが、それ以上の収益となるのが現地都市の征服と略奪、そのことによるスペイン本国からの支援である。征服事業継続にあたり、プレーヤーにはスペイン本国からの指令が常に言い渡される。その多くは「都市を征服せよ」というもので、達成すれば5,000フロリンから10,000フロリンを越える財源を支援してもらえる。

 スペイン軍はこれを常に効率よく達成し、次々に現地都市を征服していかなければならない。現地軍に押されてまごついていれば、すぐに軍団の維持費に財源が押しつぶされてゲームオーバーになってしまうだろう。逆に現地文明をプレイする場合は、いかにスペイン軍の侵攻を遅らせるか、ということがゲームの重要な鍵になる。現地文明は総じてユニットは弱いものの大量の動員が可能。損害をいとわず戦えるというわかりやすさもまた、気分良くプレイできるひとつの方向性といえるだろう。

アステカを初めとする原住勢力はとにかく兵数が多い。都市を攻めるときは必ずカノン砲を持って行き、城壁の外から容赦なく撃ち減らす必要があるだろう。砲撃の角度やタイミングのセンスが問われるシーンだ

野戦においてはマスケット部隊のアウトレンジ攻撃と、コンキスタドールの機動力と突破力を活用することが鍵となる。500人程度の部隊で一度に4、000人規模の敵を相手にすることもあり、名将気分でプレイしたい


■ ブリテン島制覇を目指す「ブリタニアキャンペーン」ほか、個性あるゲーム性で変化を加えつつ楽しむ

イングランドの強みは何と言ってもロングボウ部隊。戦う地形を選べば無敵の強さを発揮する
イングランドは版図が広く、敵国に攻め込むにも数の上で劣勢になりがちだ
砦に高価な騎士部隊を駐屯させれば維持費を大きく軽減できる。うまく活用したい
 筆者のもうひとつのお気に入りは、イングランド勢力が主人公となる「ブリタニアキャンペーン」。このキャンペーンの舞台は1258年か始まり、ワールドマップはブリテン島とアイルランドで構成されている。歴史的にはイングランドの玉座にヘンリー3世があった時代で、スコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスが活躍した年代でもある。

 この時代、イングランド王はフランスとの抗争と同時にスコットランドや各地諸侯の反発に手を焼き、玉座が極めて不安定な状態だった。これを舞台に、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドといった各諸国の王、あるいは海を越えてやってきたバイキングであるノルウェーの王となり、ブリテン島征服を目指すのが本キャンペーンの目的だ。

 このゲームで導入されている特殊ルールのひとつは、従来の都市や城塞のほかに、国境ぎわの要衝に「砦」という新たな戦略施設が建てられているということだ。砦は住民や生産力をもたない純軍事的な施設で、国境を越えて進軍してくる敵の攻撃を防ぐのに向いている。はじめから分厚い石の城壁に守られている上、正門を除き深い水堀に囲まれているため、大軍を少数で撃ち減らすという戦いに向いているのだ。

 また砦には純軍事ユニットを駐留させると維持費を一部無料にしてくれるという経済面での利益も与えてくれる。都市の経済力が貧弱なゲーム初期においては軍団の維持費だけで国家予算が赤字になるという状態なので、維持費の高い騎士部隊などを砦に入れておくことで負担を軽減することが戦略上非常に重要だ。砦の存在が軍事・経済の両面で鍵を握るとういわけである。

 戦闘に目を向けてみると、この「ブリタニアキャンペーン」をイングランド勢でプレイするときに大活躍するのが、ゲーム初期から使えるロングボウ部隊だ。正確にはわからないが、本作では遠隔射撃武器の正確性が増したような印象がある(弓だけでなく砲撃兵器も比較的正確に着弾するので効果絶大)。長射程と高い攻撃力を持つ弓兵として、ロングボウ部隊は敵が接近する前に致命的な打撃を与えることが可能だ。また、高い城壁で守られていない村落を攻めるときには、防柵の向こう側から一方的な攻撃を加えることもできる。イングランドをプレイするときに鍵を握る部隊といえるだろう。

今回のキャンペーンAIは、軍勢の規模を大きく取る傾向があるようだ。5部隊以下で守る都市に20部隊近くで攻めてくるのもザラ。緊張感のある戦いになる


■ さらに2つのキャンペーンもあり、「M2TW」が好きならば充分な遊び応え

迫り来るエジプト兵にギリシャ火で応戦するビザンチン軍。十字軍キャンペーンの1シーンだ
チュートン騎士団は中世最強の騎兵を使えるのが最大の魅力だ
 上記2つのキャンペーンを遊びつくしても、あと2つのキャンペーンが残されている。1174年の中近東を舞台とする「十字軍キャンペーン」では、エルサレム王国、アンティオキア公国、ビザンチン帝国、あるいはエジプト、トルコのいずれかを率いて各国の首都「パワーセンター」を支配する。このキャンペーンでは、各国を率いる当主がヒーローユニットとして特殊能力を持つのが最大の特徴だ。

 例えばエルサレム王国を率いるリチャード獅子心王は、壊走する味方全員を一気に戦線復帰させる「獅子の心」の能力を発動できる。対するエジプトのサラディンは全ユニットの士気を最大値にまで上げて粘り強く戦わせることができるというものだ。いずれの能力も各戦場で1回もしくは一定時間に1回と制限はあるものの、劣勢を覆す「英雄」の戦いはプレイを盛り上げてくれることだろう。

 残るひとつのキャンペーンである「チュートン騎士団」キャンペーン。舞台となる東欧地域の主役となるリトアニアやノブゴロド公国は騎兵中心のお国柄で、機動力を生かしたスピーディーな戦いが中心になる。チュートン騎士団陣営をプレイするときには、特殊ルールとして都市を巨大化できないというペナルティの代わりに、城塞の建設オプションが豊富というシステムが導入されている。またチュートン騎士団は部隊の召集に土地の宗教が影響するので、宣教師を使った布教活動も即軍事に繋がる。軍事色・宗教色の非常に強いゲーム性となっているのだ。

 本拡張で導入される新システムや新ルールは、あくまで個別の新キャンペーン向けのもので、ゲーム本編を更新するというものではない。このため拡張パックに全く新しいものや革新的な新システムの導入を望むプレーヤーにとっては少々物足りない部分もあるだろう。「Total War」シリーズに長らく求められている戦闘AIの改善も、本作では非常に限定的なものだ。そこをピンポイントで求めているプレーヤーには、それほどお勧めできるコンテンツではないことは確かである。

 しかし本作は、各キャンペーンがそれぞれに別個のゲーム性を持つということに注目してみれば、1本の拡張パックとしては充分な遊び応えを持っている。それは、「M2TW」そのものが好きで、変化を加えてまだまだ遊びたいと考えるプレーヤーにとっては非常に魅力的な構成だ。何しろ、すくなくとも4回は繰り返して遊べることは保証されているわけである。「Total War」シリーズの愛好者ならびに、「M2TW」で合戦ゲームの面白さに目覚めたユーザーは本作を是非楽しんでみよう。

(C) 2006 The Creative Assembly Limited. Total War, Medieval: Total War, Medieval II Total War: Kingdoms and the Total War logo are trade marks or registered trade marks of The Creative Assembly Limited in the United Kingdom and/or other countries. SEGA and the SEGA logo are either trade marks or registered trade marks of SEGA Corporation. All rights reserved.


    【メディーバル2:トータルウォー キングダム】
  • CPU:Pentium 4 1.8GHz以上
  • メインメモリ:512MB以上
  • HDD:12GB以上の空き容量(本編を含む)
  • ビデオメモリ:128MB以上
  • DirectX:DirectX 9.0C以上


□「メディーバル2:トータルウォー」のページ
http://sega.jp/pc/soft/medieval2/
□関連情報
【6月25日】PCゲームレビュー「メディーバル2:トータルウォー日本語版」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070625/totalwar.htm

(2007年12月5日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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