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自動進行型オンラインスポーツシミュレーションという、オンラインゲームの新しいジャンルを切り開いた「プロサッカークラブをつくろう! ONLINE」(STO)。コンシューマの人気タイトル「J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!」(サカつく)シリーズの魅力を凝縮し、オンライン対応させたタイトルだ。 もっともプレーヤーの操作は、はじめにチーム編成を済ませたら、後は時々ログインをして、練習方法を指示したり、チーム編成を変更するなど、大局的な指示を出すだけでいい。後はサーバー上で自動的に試合が進行され、結果が積み重ねられていく。1日10分アクセスすれば楽しめるという、忙しいビジネスマンにも最適のオンラインゲームになっている。
ただし「サカつく」の冠が付くだけあって、ゲームシステムは本格的だ。シーズン終了後には、成績に応じて上位ディビジョンに昇格したり、下位ディビジョンに降格することもある。ディビジョン1への昇格、そして欧州チャンピオンの座をめざして、日夜全国のユーザーによって熱い戦いが繰り広げられているのだ。ゲームを楽しむだけでなく、専用のSNSも用意されており、プレーヤー同士でコミュニケーションを取り合ったり、オークション機能を通して選手やアイテムカードなどの売買もできるなど、幾重にも楽しみが用意されている点も特徴だ。
インタビュー前編では、「留学」、「リーグ制覇ボーナス」、「ボーナスチャンス調整」など今回のアップデートの内容とフリートライアルについて、瀧井氏を中心に詳細を伺った。
■ 留学 今回のアップデートで最も大きな追加点となるのが「留学」だろう。本家「サカつく」でもおなじみの機能で、「STO」でも実装が待ち望まれていた機能だ。これによって、より多彩な選手育成プランがとれるようになった。 もっとも、「STO」の育成は「サカつく」とは若干異なっている。「サカつく」では3カ月から1年間、選手を留学に出すことによって、実能力値と共に成長の限界点となる「仮限界値」を上昇させるメリットがあった。最新作「5」では1人の選手を3回まで留学に出すこともできた。
しかし「STO」では留学年数は1年、留学回数も1人につき1回と固定されている。留学効果についても、「潜在能力の覚醒」、「将来性のアップ」、「スキル効果アップ」の3点というように、大きく変更されている。
練習メニューによって能力値の各パラメータを上昇させていく「サカつく」と異なり、「STO」では各選手にスキルスロットがあり、これにスキルカードをセットすることで能力値を上昇させる、カードゲーム風のシステムを採用している。スキルカードのセットを3枚張り付けると、特定のプレイスタイルが修得できるコンボ効果も狙える。各選手カードには選手ランクによって、最大5個までスキルスロットが設定されている。
ところが、スキルスロットの中には鍵マークがついており、スキルカードをセットできない物がある。このロックされたスロットは、留学を経験することで解放され、通常のスキルスロットとして使えるようになる。これが「潜在能力の覚醒」だ。スキルスロットには「コモン」、「アンコモン」、「レア」、「レジェンド」の4種類があり、どのスロットがオープンするかは未定だが、比較的高位のスロットが開くという。言うまでもなく、これはスキル修得において大きなメリットとなる。
スキルスロットの中には「×1.2」などと、スロットボーナスが設定されているものがある。これは、そのスロットにセットしたスキルカードによる能力値増加を、ボーナス分だけ高められるというものだ。留学に出すことで、各スロットのボーナスが「0.1」ずつ上昇する。これが「将来性のアップ」だ。スロットボーナスは最大1スロットにつき「1.5」まで効果が付く。以後そのスロットにセットされるスキルカードには、すべてこのボーナスが加算されるので、これもまた大きな効果が期待できる。
スキルカードの中には☆ボーナスがついている物がある。留学に出すことで、選手にセット済みのスキルに☆ボーナスがつく。これが「スキル効果アップ」だ。1枚のスキルカードに対して、「☆」→「☆☆」→「★」→「★★」と4段階で効果がアップする。ただし、あらかじめスキルカードが張られていなければならない。
瀧井氏 : この3点は通常の練習ではまったく得られない効果なので、非常に大きな成長に繋がっていきます。1年間の留学期間中に5回の獲得チャンスがあり、だいたいリーグ戦の6節ごとに1回チャンスがきて、3点のいずれかの効果が付くことになります。もっとも、条件次第では獲得チャンスを生かせず、フェイルド(失敗)してしまうこともあります。留学中は通常の練習や試合による成長は望めないので、こうなると1年を棒に振るだけでなく、その選手の将来性まで摘んでしまうことになります。
椎野氏 : 「サカつく」では留学で能力値の限界突破ができる点が最大のポイントでしたが、「STO」ではちょっとイメージが違います。留学に出す時期も、新人選手を獲得してすぐではなく、ある程度成長した段階で出すのがセオリーになります。
各留学先には、それぞれ特徴があり、潜在能力の覚醒・将来性のアップ・スキル効果アップのどれを得意としているかが異なる。「サカつく」では基礎体力を高めるにはアフリカ地域に留学など、ある程度のセオリーが存在したが、「STO」はそれとは異なるので注意が必要だ。留学先も最初から全て選択できるわけではなく、特定のスポンサーミッションをクリアしたり、各リーグで上位ディビジョンへ昇格することで、次第に提携先の留学先が増えていく。カップ戦をクリアすることで開くなど、さまざまな条件が用意されているのだ。最初から選択できる留学先はおよそ30カ所だが、最終的にその数倍の留学先が選べるようになるとのことで、これらを探していくのも楽しみのひとつになるだろう。 「コネクション」とは、各地域ごとにどれだけの繋がりがあるかを示す指標だ。スカウトの人脈値と同じく、欧州A~D・アジア・アフリカ・北米・南米と世界8地域ごとに設定されており、最大「3」まで上昇する。コネクションが高い方が、その地域にある留学先で高い効果が得られ、留学が成功する確率が高まる。コネクション値を増やすには、スポンサーミッションでその地域にある企業のミッションを成功させればいい。欧州A地域の企業のミッションを成功すると、欧州A地域のコネクション値が上昇するわけだ。メインスポンサーの場合は「2」、サブスポンサーの場合は「1」上昇する。もっとも、せっかく上昇したコネクションも、何もしなければ1年に「1」ずつ減少してしまう。 「選手の成長状態」とは、「低成長」、「高成長」、「超成長」、「低衰退」、「高衰退」などの、年齢に応じて変化する選手の成長状態のことだ。もちろん「超成長」状態で留学に出すのが一番効果が期待できる。成長状態の変遷は「早熟」、「晩成」など、各選手の成長タイプによって異なってくる。そのため、例えば「超晩成」の選手を若い段階で留学に出しても、大した効果が狙えないのだ。 このように効果的な留学を行なうには、選手が「超成長」状態の時にあわせて、スポンサーミッションで留学先のコネクションを上げておき、選手にあわせた留学先を選定する、という3つの要素をうまく組み合わせることが必要になる。もっともチーム事情がそれを許してくれない場合もあるわけで、チーム編成を見越したビジョンがより重要になってくるだろう。
椎野氏 : 留学でスロットが開いた方が、後の成長には有利ですよね。そのため「早熟」、「超早熟」の選手が見直されるんじゃないかと思います。「早熟」だと「超成長」になるのもそれだけ早いですからね。逆に確実に留学効果を狙おうとして、「晩成」の選手が「超成長」状態になるまで待っていると、26~27歳くらいになってしまいます。この場合は、あえてスキル効果アップを狙って、若いうちに留学に出すのも1つのテクニックです。もっとも、コモンのスキルカードに☆がついても効果が薄いので、レアやレジェンドのスキルカードを張っておくなどの配慮も必要でしょう。
「早熟」の選手はスロットが空くのも早いので、留学に出すことで成長の限界点も高まりますが、早めに引退してしまう。逆に「晩成」の選手は少し能力が低くなりますが、その分だけ長く使える。このように、「早熟」、「晩成」などの選手の成長パターンの意味が、留学を経ることで、より大きくなりますね。
椎野氏 : ワールドマーケットでも、スロットが開いている選手の方が高値で売れるはずです。そのため2人留学に出しておいて、戻ったら1人をワールドマーケットで売る、などもしやすくなる。これがフランスの大きな強みになっていきます。 ちなみに「STO」では、プレーヤーは最初に英・伊・蘭・西・独・仏の6カ国のいずれかのリーグに所属して、上位ディビジョンへの昇格を目指すことになる。この時、イングランドは自国選手優遇、イタリアは資金力が豊富、オランダは発掘・育成、スペインは南米選手とのコネクションもあって、資金力もある、ドイツは特性がないぶん、プレーヤーの裁量権が大きい、というように地域にあわせて特性がある。フランスも新人選手の育成という特性があったが、実際には効果に欠ける点があった。留学におけるフランス優遇には、このバランス是正の意味も含まれている。
椎野氏 : Jリーグでは留学は一般的ですが、実際の欧州リーグではレンタル移籍が多くて、留学はあまり見られないんですよ。だから「STO」でも留学ではなくて、レンタル移籍でボーナスがもらえるなども考えていたんですが、わかりやすい方がいいかなと。欧州サッカーが好きな人からすれば、設定としてどうかなと思われるかもしれませんが、そこは「ゲーム」として割り切っていただければ。そもそもスキルカードをセットする点からして「ゲーム」ですからね。そう考えています。
留学が入ることで、大きくゲームの中身がかき混ぜられて、今までの育成セオリーがリセットされます。いろいろ挑戦してみてください。 ■ リーグ制覇ボーナス
「STO」では各リーグがディビジョン1から9まで9段階に分かれており、新規プレーヤーはディビジョン9からスタートすることになる。そこで好成績を納めると上位ディビジョンに昇格し、成績が悪いと下位ディビジョンに降格する仕組みだ。また一定のディビジョンに到達すると、スタジアムを拡張できたり、新しい施設が作れるようになったり、チームの最大統制値が上昇したりと、成長や編成の自由度が増すことになる。これがリーグ昇格ボーナスで、昇格意欲を促すもの。ただし、これらはクラブリセットを行なうと初期値に戻ってしまう。 それに対して、今回追加された「リーグ制覇ボーナス」は、リセット後も残り続ける。各リーグでディビジョン5から1まで昇格するごとに、「留学地の追加」、「設備の上昇」、「初期人脈値の上昇」のボーナスが追加される。追加される内容の詳細については、リーグによって異なる。また過去にディビジョン5以上に到達した経験がある場合も、同様にボーナスが追加される。
今回追加されるボーナス内容は、チームを一度リセットして、他のリーグに移籍した場合でも残り続ける。そのため特定地域で開拓した留学先を、別のリーグに移籍した後も使用する、などの行為が可能になるわけだ。
椎野氏 : ひとつのチームで続けるのも、クラブリセットを行なうのもユーザーの自由ですが、クラブリセットを行なうひとつのモチベーションとして、今回のリーグ制覇ボーナスを入れました。また、チームをリセットするにしても、あのディビジョンまで到達してみようとか……ひとつの動機づけにもなると思います。
瀧井氏 : 今だと、ユーザーさんの中にはクラブランクを上げるための経験値稼ぎとして、各リーグ内で一定のディビジョンまで上昇したら、すぐにリセットして他のリーグに移る、などの方もいらっしゃいます。これが追加されることで、じゃあディビジョン1に到達するまで目指してみるか、などと考えられる方も増えるかなと思います。 ■ ボーナスチャンス調整 最後の大型追加要素が「ボーナスチャンス調整」だ。 「STO」ではリーグ戦の1試合を消化するごとに1回、スキルカードかスカウトカードを行動ポイントを払って購入する権利を得ることができる。場に10枚配られたカードの中から、無作為にカードを選択してゲットする仕組みだ。この時、優れた試合を行なうほど、場にいいカードが配られる。試合結果は内容によって「青」、「黄」、「赤」の3段階に分かれており、「カード購入画面」の「最近の試合結果」で確認できる。 またカードを購入するごとにチャンスゲージが蓄積され、チャンスゲージがたまると、よりレア度の高いカードが得られる「ボーナスチャンス」にも挑戦できる。カードを購入した時に、「チャンスカード」を引いた場合も同様だ。 もっとも、これまでは試合結果によって変動するのは、カードに追加される「☆」マークの数に過ぎなかった。ボーナスチャンスにおいても同様で、レア度の低い「コモン」、「アンコモン」カードばかりが場に並び、それぞれに☆マークが1個追加されるのみ、などの場合も多かった。
これが今回のアップデートでは、試合の評価・ボーナスチャンスともに「レア」、「レジェンド」といったレア度の高いカードを引く可能性が増加する。具体的には、そのクラブで場に出てくるカードより、1ランク高いカードが出る確率が高くなる。そのため、よりリーグ戦の戦いぶりや、ボーナスチャンスの重要度が高まった。
■ クラブリセット時の初期選手変更
「STO」には約27,000名の選手データのうち、欧州サッカー界で活躍するスター選手が約9,000名、実名で登場する(独ブンデスリーガ所属の選手を除く)。新規チームを登録したり、一度クラブをリセットして新しく作成する際は、こうした有名選手を1名、リストから選択してチームの中心選手として登録できる。ただし、これまでは中心選手のリストは全リーグで固定されており、EU圏外の選手しか選べなかった。 これが今回のアップデートでリストの自由度が増し、選択したリーグの国籍をもつ選手から選べるようになる。イングランドを選択した場合は、中心選手もイングランド国籍の選手から選べるように、リストの一部が更新されるのだ。特にイングランドリーグでは、自国籍選手のボーナスが得られるため、大きな効果が期待できる。またリーグ選択時には自ずとプレーヤーの思い入れも反映されるはずなので、その国籍を持つ選手が選べるというのは、非常に嬉しい要素だろう。
佐藤氏 : いぶし銀の活躍をするベテラン選手や、若手の有望株的な選手などを中心にリストに反映させているので、かなり思い入れが増すと思いますよ。だいたい半分くらいの選手リストが更新されています。同じリーグでずっと遊ぶのも楽しいですし、時にはクラブをリセットして、他のリーグに挑戦してもらうのも、けっこう楽しめるかもしれません。
■ その他の追加要素 このほか、細かいところではチャット時のインターフェイスが改良され、ショートカットキーとメッセージログの切り替え機能が実装された。これによって、今まではメインウインドウ上で「リーグ」、「個人」などと、送信ボタンを選択する必要があったのが、ALT+対応キーで選択可能になる。またメッセージの種類ごとに、ログの表示・非表示も簡単に切り替えられるようになった。これでカードをトレードする時は、他のメッセージを閉じておき、トレードが終了したら表示するなど、より使いやすくなっている。
他に「STO」では「ユーザー大会」など運営側の主催で、特別なイベントが行なわれる場合がある。こうした特別な大会についても、秘書がゲーム中に告知してくれるなどの要素が追加された。過去にも「第0回サカつくプレイヤーズカップ」が開催されたことがあったが、告知が乏しかったので、気づかなかったユーザーもいるのではないだろうか。どのようなメッセージになるかは未定とのことだが、こうした機能が加わることで、特別イベントの増加が予想される。
■ フリートライアル 大型アップデートと同時に開催されるのが、「STO」未体験ユーザーを対象としたフリートライアルキャンぺーンだ。一般的なオンラインゲームでは、ゲーム開始時に無料期間が設定されている場合が多い。昨今主流のアイテム課金モデルなら、基本プレイは無料で楽しめる。しかし「STO」ではチーム登録時に1,500円、月額課金でさらに1,500円と、ゲーム開始時に3,000円の費用が発生する。そのため、これまで興味はあっても二の足を踏んでいたユーザーも多いのではないだろうか。そうしたユーザーでも気軽に体験できるサービスとなるわけで、実施が遅すぎたきらいもあるほどだ。 内容については、すでに過去のニュースでもお伝えしたとおりで、実施期間は8月1日の定期メンテナンス終了後から9月3日の午前10時まで。このうち10日間でフリートライアルが可能だ。「STO」では現実の4日間で1シーズンが終了するので、1人につき約2シーズンが体験できる仕組みだ。もっとも、2シーズンでできることは限られているため、下記のような特別措置がとられている。
<初期設定特典>
――本サーバーに入れなかった理由は何ですか?
また、月額課金に加えて自動進行型ということで、今はユーザー層も7割が社会人なんですよ。これは通常のMMORPGなどと比べても、かなり高い割合だと思います。それが無料サービスで大きく変わる可能性がある。その場だけということで、場を荒らしたりする行為が増える可能性もあります。それによってコミュニティが崩れる危険性もあるので、最初は大事に行こうかなと思っています。 本当はプレイする前に10日間なりの無料期間があって、気に入ったらそのまま課金して継続してもらう、というのがオンラインゲームの定番だと思いますし、そうした検討も将来的には行なっていきます。ただし、今回はそういう形にはしていません。 ――フリートライアルを終了後に本サービスをプレイすることで、何か特典などはありますか? 椎野氏 : 特に考えていません。これもまた微妙なんですよね。無料サーバで遊んでもらうとボーナスがあるというようにすると、最初から課金して遊んでもらっているユーザーさんと格差が出てしまう。それに最初からフリートライアルで遊んでもらって、そこから課金という流れにすると、今度は最初に障害を作ることにもなってしまう。なのでユーザーさんの手元に残るのは、「STO」の基本的な遊び方であるとか、ノウハウのようなもので充分かなと。ただし、ご要望が多ければ次のトライアルで考えるかもしれません。 ――ということは、今後も継続してこの種のサービスは行なわれる予定ですか?
椎野氏 : そうですね。一度結果を見て、どういった形で行なうとより効果的なのか、お客様に満足していただけるのか、見極めた上で再度実施するという流れになると思います。
インタビュー後編では、今回のアップデートの話題から少し離れ、「STO」の開発にいたる経緯や、ゲームの目指している方向などについて、幅広く話をうかがっていく。こちらもご期待いただきたい。 (C)SEGA
□セガのホームページ (2007年8月1日) [Reported by 小野憲史 / Photo by 石田賀津男]
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