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会場:Shanghai New International Expo Center
入場料:50元(約800円)
そこで今回は、2007年2月のTaipei Game Showレポートでご好評頂いた台湾ゲームショップ特別レポート 完全保存版と同じノリで、ゲームと親和性の高いショップが入居する動漫城と電脳街に狙いを付けて上海各地を巡ってみた。 なお、念のため述べておくと、このレポートの目的は、中国上海におけるゲーム市場の実態調査であって、上海旅行者に対して便宜を図るものではない。海賊版の購入、国内への持ち込みは法で禁止されているので、利用しないように注意してもらいたい。中国では海賊版が、市民はおろか観光客にもあまりにもありふれた存在であったため、念を押させていただいた次第である。
■ 中国のオタクの拠点“動漫城”。並行輸入版、海賊版、中古版まであらゆるものが揃う
今回「眩動楽百動漫城」と「上海動漫城」と「都市風情街」の3箇所を周ったが、確かにアキバ系のオタクショップと、街のホビーショップとデパートの玩具コーナーを足して4で割って薄めたような、たとえば人形だったら精巧な美少女フィギュアから、欧米にあるようなドールやリアル系のゲームフィギュア、ケロロ軍曹の等身大人形、キティちゃんといった具合で、焦点の定まらない品揃えが印象的だった。特定のテナントショップレベルでは、経営者の趣味が爆発したようなもの凄い品揃えの店もあるが、全体としてはオタク文化をカバーするまでには至っていない。このあたりのキャッチアップは、台湾のほうがうまいという印象だ。 さて、「眩動楽百動漫城」は、昨年も訪れた2年以上の歴史を持つ動漫城だ。現在は、不人気のためか、それとも取り締まりがあったためか、改装中のエリアが目立ったが、1階には新しいゲームショップができていた。ショップ名はTG BUS。上海に5店、中国全土に20店舗もの支店を持つゲームショップチェーンだ。 正規のゲームショップであるにもかかわらず、ゲームソフトがほとんどないのが中国らしいが、ハードウェアの品揃えは充実していた。日本や欧米から持ち込んだ並行輸入品がメインで、一部はiQue DS Liteのような正規品も置かれている。また、中国で企画生産されたWii用の充電機や、冷却用の送風機、レースゲーム用のハンドルなども置かれていたが、プラットフォーマーの許諾を受けたオフィシャルグッズではなかった。 ゲーム機は、Wii、PS3、PS2、PSP、ニンテンドーDS、ニンテンドーDS Lite、Xbox 360まで一通り揃っており、価格は競争の激しい電脳街と比べてさらに1~2割ほど高かった。たとえばWiiは、2,188元(約35,000円)、PSPは1,600元(約25,600円)と、値引き交渉前提の値付けだ。店頭ではWiiの体験コーナーも設けられ、並行品が多いとはいえ、まともなショップの部類に入るといっていいだろう。 2階に上がると、ゲームを扱う小さなテナントショップがずらりと並び、その奥には、フィギュアやコスプレ、アニメなどを扱うショップが点在していた。この2階のゲームショップは、完全にイリーガルなアイテムばかりを取り扱っている。ダウングレードキット付きのPSPを筆頭に、チップを埋め込んだXbox 360やPS2、テーブルの上には、パッケージのジャケットをファイルしたクリアファイルがずらりと並ぶ。もはや隠されていないことに驚かされた。
価格は、Xbox 360タイトルが10元(約160円)、PSPが8元(約128円)、PS2が5元(約80円)。「DSは?」と聞くと、500本入りのCD-ROMパッケージを取り出して見せてくれた。価格は40元(約640円)。常連になればさらに半額になるという。正規の価格からすればもはやタダのような値段で売られていることに大きな衝撃を受けた。
ゲームに関しては、PCゲームの正規パッケージがメインとなっていたが、その隣にさりげなく海賊版が並んでいた。こちらの海賊版は、紙製の簡易パッケージにビニール包装がなされた一見まともな外装で売られていたが、その内容は、PCゲームだけでなく、PS2やPSPなども扱われている。ただ、パッケージを裏返してよくよく見てみると、ゲームそのものではなく、ゲームのプロモーションムービーや壁紙といったものもあった。海賊版の海賊版のような見るも無惨な話である。価格は10元(約160円)から15元(約240円)。 3カ所の「都市風情街」は、正確には動漫城ではなく、公園の地下に作られた小規模のテナントが密集した地下街である。名前からもなんとなく想像できるように、単なる地下街ではなく、'30年代の上海の港町の雰囲気を再現したオシャレな地下街となっている。地理的に観光客はまず通らないところにあるが、レトロな雰囲気が味わえて、むしろ観光客向きの地下街だ。 内容的には、コスプレ、マニキュア、入れ墨、鉄道模型、ボーイズラブ系、おもちゃ、プラモデル、美少女フィギュア、ゲームとサブカルチャー系ならなんでもありといった感じで、テナントに入居しているオーナーの趣味が全開の地下街といった印象である。
ゲームに関しては、日本語版の中古品を扱うお店が数店あったぐらいで、ゲームファンがわざわざ定期的に足を運ぶような類の地下街ではないようだ。ただ、フィギュアやプラモデルに関しては、買い付けのために定期的に日本を訪れているようなショップが数店有り、その筋のファンには行く価値があるのかもしれない。
■ 海賊版がどこでも手に入る電脳街。「ゲーム機+ストレージメディア+海賊版」が基本セット
淮海路にある電脳城は「賽博数碼広場」。ビルに入ると、VAIOやDell、Lenovo、Acer、BenQといったメーカーの正規店が目に飛び込んでくる。扱っているのはノートPCが中心。デスクトップPCは、3~4階に自作PCエリアで、イスに座って店員と膝詰めで自作PCを組むというスタイルが一般化しており、自作PCの誘いの声がかまびすしい。 ゲームを扱っているショップは主に2階に集中していた。どの店も判を押したように店頭にWiiとPSPの箱が積み上げられ、ガラスケースの中には周辺機器、記憶メディアがずらりと並ぶ。ゲームプラットフォームはほぼすべて揃っており、人気ハードはダントツでPSP。そしてWii、ニンテンドーDS Lite、Xbox 360と続く。PS3はほとんど見ることができなかった。 値札は一切付いていないため、見つけるたびに値段を聞いてみたところ、値段はPSPが1,250元(約20,000円)から1350元(約21,600円)、Wiiが1800元(約28,800円)から1900元(約30,400円)、ニンテンドーDS Liteが980元(約15,680円)から1150元(約18,400円)。流れが速いためか動漫城より1~2割程度安いが、それでも日本に比べるとずいぶん高い。 特徴としてはやはりゲームソフトの扱いが極端に少ないことと、いくつかの店には、POS用と見せかけたノートPCが置かれ、購入者に対してゲームソフトのコピーサービスを行なっていたことだろう。1階にはデカデカと「海賊版を辞めよう」というスローガンが掲げられていたにも関わらず、やはりコピーは行なわれていた。
徐家匯の電脳城は、淮海路よりゲーム機の品揃えがよく、PS3やXbox 360もよく見かけられた。PSPに関しては、ゲーム機というよりデジタルメディアプレーヤーの最高級製品というような位置づけでほとんどのショップで販売されていた。 ガラステーブルの中にはストレージメディアがずらりと並び、奥にはテーブルが置かれ、その上にはエクスプローラが起動したノートPCが鎮座している。極端な例になると、ガラステーブルに海賊版を選ぶためのクリアファイルが無造作に置かれていることもあった。クリアファイルはPS2、PSP、Wii、Xbox 360と、PS3以外はすべて揃っていた。この街でゲームソフトビジネスが成立するはずがないことをまざまざと見せつけられた。 アジアの海賊版というと、少なくとも2000年前半までは、駅前の路上で古びた木箱にギッシリ詰めたCD-ROMの束をゲリラ的に売っていたり、路地裏の一軒家風の建物の中や、店の奥の隠し扉の奥にこっそりあったりと、いかがわしさとワンセットの存在だった。しかし現在は、PCやネットワークと直に結びついたことで、皮肉なことに、より洗煉された形で、よりおおっぴらに海賊版が出回ってしまっている。 深刻なのは、Xbox 360やWiiといった現行機もすでに海賊版が出回ってしまっていることだ。これらはやがて近隣諸国に広がり、日本や欧米といったメジャーな市場にも流れてくることは間違いない。現行機を展開するプラットフォーマーとしては極めて憂慮すべき事態だ。
唯一の救いは、PS3が今のところ海賊版をシャットアウトしていることだが、これもPS3が本格的に普及してくれば保証の限りではない。海賊版を元から絶ちきるために、完全なデジタル流通化やアクティベーションシステムなどの導入も考えられるが、本来遊びの道具であるゲーム機にそうしたシステムは好ましくないだろう。やはり期待したいのは、正規ビジネスの本格参入による違法業者の駆逐である。実際、台湾ゲーム市場では、SCE Asiaが正式参入したことで目に見えて海賊版が激減した。中国でも近い将来、ゲームソフトウェアビジネスを成立させ、市場として大きく成長させるためにも、ドラスティックな変革を期待したいところだ。
□China Digital Entertainment Expoのホームページ (2007年7月16日) [Reported by 中村聖司]
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