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★PS2 ゲームレビュー★

手堅くまとめられた2Dライクな3D対戦格闘
「史上最強の弟子ケンイチ
激闘! ラグナレク八拳豪」

  • ジャンル:対戦格闘
  • 発売元:株式会社カプコン
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(3月15日発売)



 週刊少年サンデー連載中で、TVアニメも放映されている人気漫画「史上最強の弟子ケンイチ」。元々は少年サンデー超増刊に掲載されていた作品が、人気が高まったため、新たに週刊少年サンデーで連載をスタート。現在は「デスパレート・ファイト・オブ・ディサイプル(弟子の死闘)」編が連載されているが、今回ご紹介するプレイステーション 2「史上最強の弟子ケンイチ 激闘! ラグナレク八拳豪」は、その直前まで展開されていた「ラグナレク」篇が題材になっている。

 原作を知らない人のために説明すると、本作はいじめられっ子の高校生「白浜兼一」が、転校生の美少女「風林寺美羽」の悪に迷わず立ち向かう姿にあこがれ、武術の達人が集まる道場「梁山泊」に入門、厳しい修行と、武闘派軍団の不良グループ「ラグナレク」ら、強敵との戦いを通して少しずつ成長していくといったストーリー。

 原作ファンはもう入手済みだろうが、様子見もしくはまったく知らないでいた人向けに、まずは基本操作から順次ご紹介していこう。

【オープニングムービー】
本誌でも既報のとおり、オリジナルアニメーションをバックに嘉陽愛子さんが歌うOPテーマ「勇気のチカラ」が流れる。ちなみにEDもオリジナルアニメを収録、テーマ曲も嘉陽さんの「Destiny ~未来という名の物語~」となっている



■ シンプルで整理された操作系 ~3すくみを中心とした攻防~

 操作系は、方向キーがキャラクタの移動、□が弱攻撃、△が強攻撃、○が返し技、×が虚実技、L1が挑発、R1が気の発動、R2が真必殺技にそれぞれ対応。これらはオプションモードで自由に変更が可能。

 弱と強攻撃は、連続もしくはテンポ良く押していくと一定の組み合わせでコンビネーション攻撃に発展。組み合わせはキャラクタによって異なる。慣れないうちは、攻撃判定の発生が早く使い勝手のいいコンビネーションを優先的に覚えていくといいだろう。

 返し技は、相手の打撃技にタイミングをあわせて隙を作り反撃するというもの。打撃技の出鼻をくじくように使っていくが、タイミングがシビアなため入力が早くても遅くても潰されてしまう。最初のうちは、コンビネーションのガード中に○ボタンを連打して狙っていくのが無難。タイミングがわかってきたら、モーションが大きい技に即反応して出せるよう練習すると、なおのこといい。

 虚実技は、画面左下に表示されている“気力ゲージ”を使って防御不能の攻撃を繰り出す。ちなみに、気力ゲージは攻撃もしくは防御をするごとに少しずつ蓄積されていき、最大3本までストック可能。その中で、虚実技はゲージ1本を消費し、後に紹介する“静”状態の相手をのぞけば返し技すら無効にする強烈な技だが、それゆえに攻撃判定の発生がやや遅く、高難易度設定のCPUには潰されがち。とはいえ、対人戦の駆け引きにおいて絶対に欠かせない重要な存在であることに間違いはない。

 気の発動は、気力ゲージを3本消費する特殊な技。ストーリーモード以外ではキャラクタ選択時に“静”と“動”いずれか一方を選択。発動中は、作中にも登場する“静”、“動”と表現される武術家タイプにのっとった特性が得られる。

 “静”発動中は、青いオーラがキャラクタを包み込む。地上で相手の攻撃を受けている最中であればいつでも発動できる。発動中は、体力回復、防御力アップ、ガード直後に必殺技のコマンドを入れてガード硬直を解き素早く反撃するガードキャンセル、虚実技に対して返し技が有効になるといったメリットがある。

 “動”発動中は、キャラクタが赤いオーラを身にまとう。地上にいて攻撃中であれば、技をキャンセルして発動させることが可能。発動中は攻撃力がアップするほか、通常は気力ゲージを消費する真必殺技が使い放題。必殺技をキャンセルして、真必殺技につなげるといった荒業も可能。

 真必殺技は、気力ゲージ2本を消費して繰り出される大技。相手に与えるダメージの凄まじさもさることながら、原作でおなじみの技が自分で使えるインタラクティブな面白さは、原作ファンにとってこのうえない快感といえる。難点は、漠然と出しても当たらないこと。大ぶりなど相手の隙を突いて確実に当てるか、もしくは、前述の“動”で連続技に組み込むといった使い方が有効だ。

 ゲーム中における攻防の基本は、技同士の相性。打撃技は虚実技に、虚実技は返し技に、返し技は打撃技に強いといった“3すくみ”が明確にシステム化されており、対CPU戦はもとより、対戦では特に重要な概念となっている。慣れないうちは打撃やコンビネーションに終始しがちだが、3すくみを意識してプレイすれば、より深みのある攻防が楽しめるようになる。

【コンビネーション】
弱と強を組み合わせてタイミングよく押していく。ボタンの組み合わせはキャラクタによって異なる。対人戦ではワンパターンに陥らないよう注意が必要。読まれると返し技など手痛いカウンターをくらってしまう。キャンセルして必殺技につなげることも可能
【返し技】【虚実技】【真必殺技】
タイミングは結構シビア。失敗すると隙ができるため乱用は控えたほうが無難だ 気力ゲージを1本消費するが“防御不能”でヒット直後の無防備状態に連続技が狙えるのは大きい 直撃すれば最低でも体力ゲージの3割は奪い取れる。気力ゲージ2本消費はダテじゃない!
【気の発動】
キャラクタ決定時“静”と“動”の2種類から選択。静は防御、動は攻撃にそれぞれ特化したイメージ。初心者には動のほうが使いやすい



■ 多彩なゲームモードと隠し要素

 本作には「ストーリーモード」、「スコアアタックモード」、「タイムアタックモード」、「VSモード」、「サバイバルモード」、「プラクティスモード」、「ミッションモード」、「オマケモード」といったゲームモードが多数用意されている。

 モードの一部は“隠し要素”となっているため、原作を知っている人も知らない人も、まずは「ストーリーモード」からプレイすることをおすすめしたい。ストーリーモードは、主人公・兼一の視点で原作「ラグナレク篇」をダイジェスト風になぞっていくモードで、3すくみなどのチュートリアル要素もふんだんに盛り込まれている。不慣れな人でも道場シーンなどで戦闘システムを順次覚えていけるというわけだ。

 ストーリーモードは、格闘ゲームに慣れている人なら数時間~半日もすれば余裕でクリアできるコンパクトな内容で、原作ファンの立場からすると「ちょっとはしょりすぎじゃない?」といった印象。とはいえ冗長すぎても困るため、ゲームに慣れるためのファーストステップと考えれば丁度いいのかもしれない。グラフィックは紙芝居的だが、キャラクタはフルボイス仕様。このあたり、アニメでファンになった人には嬉しい要素だろう。

 本モードは、主にキャラクタ同士の会話で物語が進んでいくストーリー、ライバルと戦う3D格闘、梁山泊の師匠たちから与えられる修行メニューをこなすミニゲームの3パートで構成されている。ミニゲームは、タイミングよくボタンを押していく、アナログスティックを素早く回転させるなど極めてシンプルな内容。クリアすると「体力がアップした!」などのメッセージが出現するものの、以降その効果が実感できないのが難点。クリア後はオマケモードでプレイできるようになるが、何度も遊びたくなるかと言えば、若干キビシイ内容で、こういったバラエティ要素の強化も必要かもしれないが、個人的には技やモーションのより一層の充実を目指して欲しかった。

 主だったキャラクタ、イラストなどのオマケ要素はストーリーモードをクリアすると大部分がアンロックされるが、オーディーン、新島春男、一部追加コスチュームやゲームモードについては、スコアアタックなどの他モードを該当キャラでクリアする、などの条件を満たす必要がある。条件については明らかにされていないが、筆者がプレイしてわかった範疇では決して難しいものではなく、順次プレイしていればいずれ出現するといった印象。あせってコンプリートしようとせず、色々なキャラクタで各モードをじっくり楽しんだほうがいいだろう。

【まずはストーリーモードから】
ストーリーモードは、主に会話で話が進んでいくストーリー、ライバルと戦う3D格闘、修行をこなすミニゲームの各3パートで構成される。基本操作が学べ得るチュートリアル要素が盛り込まれており、初めてゲームに触れる人はこのモードからプレイしたほうがいいだろう



■ 原作抜きでも評価できる手堅くまとまった内容 ~一方で若干ボリューム不足かも?~

 コミックのタッチを再現したトゥーンシェードのグラフィック、華麗な技モーションなど、原作ファンの期待を裏切らないクオリティを誇る本作。3すくみを中心とした攻防システムも(ハーミットなど若干高性能なキャラクタもいるが、これはご愛嬌ということで)大きな破綻はなく、いち格闘ゲームとしても綺麗にまとまっている。

 戦い自体は2Dライクだが、3D軸の移動も単発の必殺技などにきちんとタイミングを合わせれば相応に機能する。一般の3D対戦格闘のようにフレーム単位、もしくは上段、中段、下段といった攻防に重点を置くのではなく、格闘ゲームに不慣れな人でもすぐシステムになじめるよう各要素がきちんと整理されている。よって「これは凄い!」と唸らされるような斬新さは無いが、そのぶん対戦の駆け引きが誰でもすぐに堪能できるよう手堅く作られた“実感”みたいなものが、そこかしこからヒシヒシと伝わってくる。原作ファン=格闘ゲームファンではないだろうから、このあたりは賢明な判断といえる。

 その一方で、コアな格闘ゲームファンから見れば「キャラ、技、システム、どれも物足りなくない?」といった印象を受けかねない“希薄さ”がある。実際、隠しも含めた総登場キャラクタ数、それぞれに用意された技数などは、昨今主流の3D対戦格闘ゲームと比較した場合、圧倒的に少ないといわざるを得ない。原作に特に思い入れがない人がプレイした場合、数時間でストーリーモードをクリアした後でどこに継続的なプレイのモチベーションを置くかといえば、それはもう「対戦」しかないわけだが、はたして昨今の“大盛りつゆだく”的な3D対戦格闘ゲームに慣れた対戦格闘ゲーマーにどれだけの訴求力を持つかは、恐らく「どこがどう気に入った」など、極めて趣味的な嗜好レベルの範疇に収まってしまうだろう。

 よく言えば綺麗にまとめられているが、悪くいえば突出した部分がないアベレージ優先的システム。キャラクタゲームとしては良い出来だが、いち3D対戦格闘ゲームとして「コレ!」といったフックが無いのが、実に惜しい。強くオススメできるのは、どうしても原作やアニメの雰囲気をベースに楽しみたい人が対象となってしまい、予備知識がない人に無条件でやらせるには、少々つらいかもしれない。とはいえ、3すくみを中心とした攻防システムを熟知するなら、コアな格闘ゲーマーにも対戦ツールとして十分な訴求力を持っていることは、ここで改めて強調しておきたい。操作性も良好でテンポ良くサクサクとプレイでき、友だち同士で遊ぶときに持ち寄る1本にも向いている。

 最後に余談ながら、マイキャラとして兼一の“師匠”たちが使えない点を挙げておきたい。これには賛否両論あるだろうが、筆者個人としては“アリ”だと思っている。「そんなの使えたほうがいいに決まってるじゃん!」と憤懣やるかたない人もおられるだろうが、原作で異次元の戦闘力を発揮するアルティメットな師匠たちに“そのまんまの強さ”で出てこられても困惑するし、だからといってバランスを踏まえたフツーの強キャラとして出てくるのも興ざめというもの。「弟子の喧嘩に師匠は手を出さない」という原作のセリフにあるとおり、ここは「弟子同士」の戦いを存分に楽しむのが健康的というものだ。


(C)松江名俊/小学館
Presented by Shonen Sunday
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□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「史上最強の弟子ケンイチ 激闘! ラグナレク八拳豪」のページ
http://www.capcom.co.jp/kenichi/
□関連情報
【2月11日】カプコン、PS2「史上最強の弟子ケンイチ 激闘!ラグナレク八拳豪」
新キャラ、ゲームモードなど新要素を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070211/ken.htm
【1月16日】カプコン、PS2「史上最強の弟子ケンイチ 激闘! ラグナレク八拳豪」
先着特典決定、OPテーマは嘉陽愛子さん
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070116/capcom.htm
【1月5日】「バトル三竦み」による駆け引き重視の3D対戦格闘
カプコン、PS2「史上最強の弟子ケンイチ 激闘! ラグナレク八拳豪」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070105/ken.htm
【2006年10月26日】カプコン、少年格闘マンガが3D対戦格闘ゲームに!
PS2「史上最強の弟子ケンイチ 激闘! ラグナレク八拳豪」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061026/deshi.htm

(2007年3月28日)

[Reported by 豊臣和孝]



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