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Game Developers Conference 2007現地レポート

スクエニ村田氏ら、「FF XII」のワークフローを公開
「FF XII」の開発ノウハウは「FF XIII」のホワイトエンジンに昇華

3月5〜9日開催

会場:Moscone Center

 昨年のCEDEC(CESA Developers Conference) 2006で高い人気を集めたスクウェア・エニックスのセッション「『ファイナルファンタジー XII』解体新書」。このGDC版とも言えるセッションがGDC4日目に開催された。

 「FINAL FANTASY XII Postmortem」と題されたこのセッションは、スクウェア・エニックス研究開発部部長村田琢氏、研究開発部デザイングループディレクター皆川裕史氏、研究開発部共通技術開発グループエンジニア土田善紀氏というCEDECと時と同じメンバーで行なわれた。内容的には、CEDECのセッションとほぼ同一だったが、解説の仕方を各グループごとの取り組みから、ワークフローを明示したグループごとの繋がりがわかるものに変え、よりわかりやすい内容になっていた。

 今回は、研究開発部共通技術開発グループディレクターの片野尚志氏が参加しておらず、片野氏が解説を担当した、「FF XII」における技術的課題であるシームレスバトルにおける時間停止制御のノウハウやメモリ管理などについては公開されなかったが、その分、インハウスツールがより詳しく解説されたほか、質疑応答で新たな情報も公開されたため、改めて取り上げておきたい。


■ ワークフローでわかりやすく紹介されたGDC版「『ファイナルファンタジー XII』解体新書」

研究開発部の取り組みを説明するスクウェア・エニックス研究開発部部長村田琢氏
ワークフローの解説を行なった研究開発部デザイングループディレクター皆川裕史氏、研究開発部共通技術開発グループエンジニア土田善紀氏
「FF XII」の開発ワークフロー。キャラクタまわりにフォーカスしたワークフローであり、全体の一部分のみを切り取った形になる
主要な制作ツール一覧
 「FF XII」の開発ワークフローは、「Photoshop」、「Maya」といった既成のグラフィックスソフトウェアでテクスチャデータやモデルデータ、モーションデータなどを生成するCreationを皮切りに、内製ツールを駆使し、VFX(スペシャルエフェクト)やキャラクタのモーションの作成を行なっていくProcessing、それらをカットシーンに結合していくIntegrationの3つのレイヤーにわかれている。皆川氏は、これは極端に簡略化した概略図ということで、当然のことながら実際にこれだけではないようだ。

 まずCreationの段階では、Photoshopでテクスチャデータを、Mayaでモデルデータを、Softimageでモーションデータを作成していく。「FF XII」は、結果として非常に長い期間開発を行なうことになったため、「Maya」は4.5(最新は8.5)を使っていたなどバージョンが古いソフトウェアを使って制作されたという。

 PhotoshopとMayaで作成されたテクスチャとモデルデータは、CEDECでも話題になった即時プレビュー機能を用いて実機で確認したり、実機を見ながらPhotoshopで微調整を加えていくことになる。これは内製のプラグインによって実現しており、実機での解像度や、ライトを当てた状態、キャラクタにポーズを取らせた状態で確認が行なえるという非常に便利な機能を備えている。

 「FF XII」におけるイヴァリース世界のリアリティは、この即時プレビュー機能によるところが大きいと思われるが、皆川氏によれば、「2003年なら自慢できたが、いまはあって当然の機能」と屈託がない。というのも、内部的にはこの機能は完全に過去のものになっており、現在はプレイステーション3に向けたフルHD環境での即時プレビュー機能を実現し、「FF XIII」の開発で活用されているようだ。

 こうして生み出された素材をProcessingの段階で、VFXを施したり、キャラクタへと仕上げていくことになる。ここで開発チームから出てきた要望としては、まずVFXチームからは、日本のアニメーション的な表現を半透明を多用した特殊なエフェクト表現をするための専用ツールの作成、キャラクタチームからは、単なるモデル表示だけでなく、他のキャラとの比較したり、体にエフェクトを載せた特殊なモンスターをエフェクトを載せた状態で確認できる機能がほしいといった要望が寄せられたという。

 皆川氏によれば、研究開発部には、常時こういった要請がさまざまなプロジェクトチームから寄せられ、一定の優先順位を付けて裁いていくことになる。裁可されたツールは、共通技術開発グループに回され、開発に移されることになる。ここで皆川氏から、実際にインハウスツールの開発を担当した土田氏にバトンタッチし、「FF XII」で開発されたインハウスツールの中から代表的なものがいくつか紹介された。

 まず土田氏が紹介したのが、VFX用のモデルデータ編集ツール「モデルさん」。「FF XII」ではMayaから出力されたモデルデータは、「モデルさん」を通して加工した上で使用される。土田氏は具体的な例として、モデルデータにVFX用の情報を追加するという動的なテクスチャの貼り付けを取り上げた。そのほかにもテクスチャの持つ頂点/法線データの調整、頂点カラーの調整を行なう機能も備えているようだ。

 2つ目に紹介された「ZEEK3」は3Dアニメーションパターン編集ツール。スプライトやアニメーションシーケンスを組んだり、パレットチェンジプレビューアー機能や複数テクスチャの合成機能などを備えている。

 3つめに紹介されたのがエフェクト総合ツール「えふぇくちゃん」。パーティクルやモデルデータの挙動をタイムシーケンスに従って編集するツールである。具体的な活用例としては魔法のエフェクト、召還獣の大技、足から出る砂煙、剣のヒットエフェクト、滝や川のエフェクト、ユーザーインターフェイス上のエフェクト、ボムのようなモンスター自身が発するエフェクトなどが紹介された。

 「えふぇくちゃん」の大きな特徴として、親子関係の階層構造を備えていることが紹介された。パーティクル同士の親子構造を構築することで、エフェクトパートのより複雑な表現が可能になったという。また、エフェクトにからむ外部ツールとも連動し、ホーミング型のファイアーボールといった表現を外部連係機能により実現しているほか、カメラやサウンドの制御も「えふぇくちゃん」を通じて行なえるという。

 エフェクトはこれらのツールを経た段階でゲーム用の最終データが完成するが、キャラクタに関してはさらにエフェクトやモーションを取り込んでさらに作業を行なうことになる。そこで使用されるインハウスツールが「も〜ちゃん」である。もともとモーションプレビューワーとして誕生した「も〜ちゃん」は、ゲーム内のモーションルーティンとまったく同じデータを出力して、その挙動を確認し修正を加えることができる。

 これらのデータは、実機ではメモリ制約の関係からデータ圧縮された状態で実装されるが、そのままでは解凍時にノイズが現われ醜く見えてしまう。これを防ぐために、スクウェア・エニックスでは、「ファイナルファンタジー X」の時代から、アーティストの手作業による修正を行なっているが、その作業を効率化するための機能も「も〜ちゃん」に実装されている。具体的には圧縮率の変更、モーションカーブの微調整機能、物理演算、影、Level of Detail等の設定などが行なえる。

 ここで、キャラクタエフェクトのデモが行なわれた。登場したキャラクタはボムとエレメンタル。共に派手なエフェクトが特徴的なモンスターであり、ボムは後ろに流れる炎のエフェクトの色を、実際のモーションシーンを見ながら微調整を加えていくプロセス、エレメンタルは実はエフェクトだけで構成された珍しいモンスターとなっており、その生成過程が披露された。

【ボム】
燃えさかる炎に身を包むボム。ボムのアニメーションを「も〜ちゃん」でリアルタイムで確認しながら、炎のエフェクトの色を調整していく

【エレメンタル】
階層化された複数のエフェクトだけで構成されているモンスター「エレメンタル」。各階層のエフェクトをすべて取り除くと実体がなくなってしまう


■ 即時プレビュー機能を活かしたCut Scene Editorによる調整

「FF XII」であらゆるシーンで大きな効果をもたらした即時プレビュー機能
Photoshopで描いた内容が即座に実機の映像に反映される
 キャラクタまわりのワークフローの最後に位置するIntegrationで行なわれるのが、完成したデータをインハウスツールであるCut Scene Editorで結合、調整を施した上でシネマティックス(インゲームムービー)に入れ込んでいくというプロセスになる。

 Cut Scene Editorは、非常に多くの機能を包含したツールであり、欧米でいうところのレベルエディターに近い存在になる。そのため、このツールにアクセスするスタッフもカットシーンの担当者だけでなく、アーティスト、カットシーンデザイナー、マップデザイナー、サウンドエンジニア、バトルデザイナーなど多種多様なスタッフがこのツールを使って最終データを作り上げていくことになる。そうした多種のスタッフの使用に耐えるように、マップの敵の配置や、ダンジョンのライティングの設定、音源の設定などもこのツールで行なえるようになっている。

 ここでは、アーティストの分野を担当した皆川氏が、自身の担当分野であるライティングやポストプロセッシング(ポストエフェクト)、ブラー処理といった処理の工程とその効果を紹介した。以下、写真と共に解説していく。

【ライティングその1】
右奥にいるヴァンとアーシェは、このイベントでの重要性は低いので暗めに、重要度の高いバルフレアは陰影を付けて印象深くしている。個別にライティングをあてているところがポイントである

【ライティングその2】
一般フィールドをイベントシーンとして使っているため、そのままではシーンとして平坦になってしまう。これを防ぐため通常ではありえないライティングとフォグをかけてシーンの奥行きとドラマ性を際だたせている

【ライティングその3】
アーシェの頭部に注目。即時プレビュー機能を使って、ライティングの位置をリアルタイムで調整している。リアルタイムで見ると、凄い機能だと思わず唸ってしまう

【ライティングその4】
イベントシーンで、急にカメラ視点が切り替わるとライティングがおかしくなってしまうため、視点ごとのライティングを設定していく

【カラーフィルター】
ブラーを利用して色味の調整を行なっているシーン

【被写界深度】
被写界深度の設定は、距離を指定するのではなく、感覚的に理解しやすいようにZバッファを利用して赤青で色分け表示してどこにピントがあっているのかを明示している


■ 「FF XII」の内製エンジンは「FF XIII」のホワイトエンジンへ

村田氏が最後に示したサマリー。中でも大きな成果を報告している即時プレビュー機能は、PS3環境でも実現していくという
 皆川氏はキャラクタまわりのワークフローのまとめとして、専用ツールによって各スペシャリストが担当工程に集中できる環境が整い、全体としてもクオリティを統一しながら大量のリソースを作ることに大きな力になったと力説した。

 ただし、個々のセクションに集中できるようになったことで、他の作業に対して連絡がうまくいかないことが発生したという。今後もリソースは肥大化していくことから、乗り越えていくべき課題だという。

 土田氏は、ゲーム開発イコールツール開発として捉えており、大規模な会社でなければ内製ツールの開発ができないというのは誤りで、良い内製ツールがあればデバッグの工程を減らすことができるという。

 村田氏は、皆川氏の発言を受けて、ゲームの一層の大規模化が各日される次世代ゲームにおいてワークフローの整備は必要不可欠であることを強調。そして「FF XII」の開発で培ってきたノウハウを、次世代機向けに当てはめていく作業を重点的にやっていることを報告。その一方で村田氏は、どのようなゲームを作るかによってその開発ワークフローは変わっていくため、今回紹介したワークフローがすべてのゲームで当てはまるわけではないと補足した。

 最後に村田氏は、「FF XIII」に関して「ホワイトエンジン」という名前の最適な開発環境を整備していると同時に、今年の1月にライセンス獲得を正式発表した「Unreal Engine 3.0」を使ったゲームの開発に着手していることを明かした。そして村田氏は、これらの新しい取り組みに関する報告を近い将来に行なうことを約束してセッションを締めくくった。

 村田氏によれば、「ホワイトエンジン」と「Unreal Engine 3.0」は、あくまで別のエンジンであり、相互補完関係にすることは「まったく考えていない」という。また、「FF XIII」において「Unreal Engine 3.0」テクノロジーを使うことも考えていないという。あくまで「ホワイトエンジン」1本で勝負する「ファイナルファンタジー XIII」は、どのようなR&Dを経た上で次世代エンターテインメントとして完成するのか。またその一方で、高額でライセンスを受けた「Unreal Engine 3.0」をどうスクウェア・エニックスのビジネスに役立てていくのか。その回答が公表される日が非常に楽しみである。

□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□関連情報
Game Developers Conference 2007 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070308/gdclink.htm

(2007年3月10日)

[Reported by 中村聖司]



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