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会場:東京都写真美術館
3月4日に開催されたエンターテインメント部門のシンポジウムには、プレイステーション 2用ネイチャーアドベンチャー「大神」で大賞を受賞した神谷英樹氏と「CORNELIUS “Fit Song”」で優秀賞を受賞した辻川幸一郎氏が出席。「文化庁メディア芸術祭実行委員会」エンタテインメント部門審査委員主査の石原恒和氏が聞き手となり、来場者を前に様々な話題について話し合われた。 石原氏は大賞と優秀賞について「受賞作はいくつかあるが、大賞と優秀賞は抜きんでていた」と評価。「大神」について石原氏は「神様をテーマにしてアマテラスを描こうと思っていたことを大胆だと思った」とコメント。神様を描くことに抵抗はなかったのかと神谷氏に尋ねたところ神谷氏は「別にアマテラスへのこだわりから入ったわけではなく、まずテーマを決める所から入り、テーマは自然と決めていた。きれいな自然を描きたいということで、10人くらいのスタッフを前にしてプレゼンを行なったら、個性あるゲームだけどいまいち地味だと言われた。その時は狼の群れを操って自然の中を駆けめぐる内容でした」と初期プロットを明らかにした。 当初「自然を描くのだから人など人工的なものは一切出さない」などこれまでにないイメージの内容である一方で、スタッフから各種意見が出され「荒れ地に一気に自然が広がることで、そのギャップから自然の美しさを表現できないだろうか」と広げていったという。すると「そんなことができるんなら、それは神様だよね」といった意見が出たことから、「じゃ、この狼を神様にしよう」という事になったのだとか。 神谷氏は、初めはどこの自然を描きたいといったこだわりはなかったというが、美しい情景を描きたいと思ったときに一番最初に故郷の情景が頭に浮かんだので「やっぱり日本の情景を描きたいよね」といった所からグラフィックスの絞り込みなどが行なわれていった。神谷氏は地元に帰ったときなどに開発が進むのを見て残念に思うことがあるという。こういったところが今回の「大神」の制作の原動力になったのだという。 グラフィックスについてはリアルなグラフィックスに対する思い入れが薄くなっていたと言い、日本の情景を描くときデジタルにこだわる必要性はない、アナログな感じが良いと言うこととなった。ここでデザイナがあげてきたグラフィックスが筆で描かれたもので、このインパクトが大きかったため、そのまま採用する事となった。グラフィックスのモデル自体はそれほどポリゴン数も細かくないが、和紙っぽいフィルタや墨が揺らぐような効果のフィルタにパワーが割かれているという。ちなみに神谷氏は秒間60フレームにこだわってきたと言うが、「大神」では達成できなかったという。しかし、この30フレームについても「(このグラフィックスの) 味わいを出したのかなと思う」としている。 神谷氏は新作について「新しい物作りに挑戦している。ぼんやりしたイメージから優秀なスタッフが高めていってくれている。すでにテストで動いているものがあり、こんなに速いペースはこれまで無かったので、手応えを感じている」という。しかし同時に「『大神』でもここからごちゃごちゃとやって時間がかかりましたが」と語り、ゲームの質を高めるここからの試行錯誤が重要なようだ。 最後に神谷氏は「評価と売上げが結びつかない。ユーザーにものを届けることについてどのように考えているか」との問いに「クリエイター側が純粋に作りたいものと、それがユーザーに受け入れられるかどうかとが、一致しないところが我々にとっても苦しいところでもある。『大神』も遊んでさえもらえれば絶対喜んでもらえる自身はあるのですが、なかなかそこまで届かない。それが届くような努力も自分たちはしていかなきゃいけないんじゃないかと思っています。それは、ユーザーに迎合してやりたいことを押さえるのとは全く別で、お互いの理想的なところを目指していくという点で、非常に難しいことなのですが」と答えた。
さらに神谷氏は「ボクはこれまで100人の人が遊んだとき、100人の人が結構面白かったと言ってくれるよりも、10人が最高に面白かったと言ってくれるゲーム作りを目指していました。ですが、それは視野が狭すぎたのかなと最近は思っていて、100人が100人、最高と言ってくれるような物作りができるんじゃないかと今は思っています。いま、作る環境が変わって、ハードルが高くもてたので、そう言ったところに向かってチャレンジしていきたいと思っています」とこれからの作品作りへの意気込みを語り締めくくった。
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□「文化庁メディア芸術祭」のホームページ (2007年3月5日) [Reported by 船津稔]
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