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★PCゲームレビュー★

新システムで内政・成長面が大幅強化
仙境的な古代中国世界がより美しく

「三國志11 パワーアップキット」

  • ジャンル:歴史シミュレーション
  • 開発/発売元:コーエー
  • 価格:6,090円(本編同梱版:12,800円)
  • 対応OS:Windows 2000/XP
  • 発売日:9月8日



 「三國志11 パワーアップキット」は、「三國志11」に新たなコンテンツを追加する拡張ディスク。「三國志」シリーズにおける「三國志11」の特徴は、2つある。1つは初めて中国全土を3Dの1枚マップで表現し、3陣営や4陣営の部隊が1カ所で睨み合うような重厚な駆け引きが楽しめるようになったということ。2つ目にキャラクタが中国語でボイスを発したり、年齢によりグラフィックスや能力値が変化したりと、プレーヤーキャラクタが君主のみの選択ながらも、ユーザーの各キャラクタに対する没入感を高めている点だ。

 「三國志11 パワーアップキット」では、これらの要素に加え、吸収合併システム、能力研究システム、決戦制覇モードといった3つの新機能と、パワーアップキット恒例の追加シナリオが6本追加された。また、バランス調整という面では、ウリとしていた3対3での騎馬戦や舌戦をゲーム中により多く取り入れる工夫をすることにより、その魅力を引き出すものとなっている。本レビューでは、追加された新機能とその魅力をご紹介する。


■ 大雑把になりがちだった内政面を充実化。吸収合併システム

 本作の内政は、各都市にある10数箇所の“施設建設可能マス”に市場や兵舎といった各施設を建設していくシステムを採用している。各施設はすべて城外にあり、部隊と同じマス上に設置されている。効率よく国力を蓄えていくためには、ただ単に配置させるだけでなく、市場の隣に建てることで市場からの収入を増加させる造幣や、同じく農場の隣に建てることで農場からの収入を増やせる穀倉といった特殊施設もふまえた上で全体のプランを立てる必要がある。要するに、狭い開発可能地域からいかに効率的な都市計画を進めていくかという内政システムだった。

 本作では同一施設同士を1つにまとめ、その効果を高められる吸収合併システムを新たに採用した。基本システムはそのままに、さらに高い戦略性を持たせることに成功している。具体的には、市場、農場、兵舎、鍛冶といった生産施設の隣のマスに同じ施設を建てることで一方を吸収し、効果を増していくシステムだ。建物にはレベル1~3まであり、生産量が1倍、1.2倍、1.5倍となる。プレーヤーが建てた施設はすべてレベル1で、隣り合ったマスの同一の施設をもう片方に吸収することでレベルを上げていく。強化したい施設の隣のスペースを誤って違う建物で埋めてしまうと、それ以上施設が発展できなくなるので注意が必要だ。スペースを無駄にせずいかに有効利用するかを考えてみたいところだ。

 また建設できる内政施設の種類も新たに10種類が追加された。大都市や沿岸都市で建設できる「大市場」や「魚市場」といった経済施設の他に、「人材府」、「計略府」、「軍事府」、「外交府」といった各コマンドの消費行動力を軽減する施設という、大まかに2つのアプローチで追加がなされている。この中でゲーム開始直後に序盤で必ず建てておきたいのは人材府だ。ゲームのスタート直後はどのシナリオでも各地域に未発見の在野武将が眠っていて人材探索や武将登用の機会が多いので重宝する。また、敵の城を落として武将をまとめて捕縛した際には「符節台」を立てるといい。符節台を立てると、ターンごとの行動力の回復量が増えるばかりでなく、捕虜にした敵武将の忠誠度が下がりやすくなり、登用しやすくなる。

吸収合併を行おうとする地域では、次のターンで忘れてしまわないうちに合併の命令を行なった直後に次の施設を立ててしまうとわかりやすい。駐屯する兵士の数が増えるほど兵糧収入が増える「軍屯農」など各都市の役割にあわせた都市計画を立てたい。中国全土が見渡せるメリットを活かして他勢力の君主達の開発状況も見習うと良いだろう


■ 武将個人に対する成長システムを実装「能力研究システム」

 「三國志11」では成長要素として、「技巧システム」を採用し、各種部隊兵科に対し勢力ごとに得意分野をつけられるようになっている。プレーヤーの好みによって勢力全体の部隊の移動力や基本的な強さを強化するテクノロジーを開発できる。本作では技巧システムによる勢力全体のテクノロジー開発に加え、武将1人1人についての能力を開発する、能力研究システムが追加された。

 能力研究システムでは、独特な鎖状の能力研究のツリーによって武力、知力といったステータスアップと特技を武将に付与することができる。政治、武力、知力、統率力の低めの武将を鍛えるところから始まり、特技や能力に勢力の傾向が出てくる仕組みになっている。「槍兵の移動力強化」といったテクノロジーの開発のために何人かの武将が長期間取り掛からなければならない技巧の研究と違い、能力研究に必要なのは期間とお金だけなので、どの勢力もほとんど平等に武将の能力のツリーを開発していくことができる。

 能力研究での各研究は、最大3人に付与できる特技と、自勢力の武将に対し各ステータス+5を最大5回まで行なえるステータスアップの2種類。ステータスアップでは政治力や、知力などにそれぞれ高中低とあり、それぞれ95、80、70までを上限に武将の各基本ステータスに+5を付与する。一度に何人もの武将に付与することはできないが、集中して陣営の1人のキャラクタをコツコツ鍛えていくと、元がどんなに悪くとも万能な天才キャラクタが陣営に1人は作れる計算だ。お気に入りの武将を鍛えつつ自分だけの家臣団育成していくといいだろう。

勢力の多寡によらず、1勢力で武将に施せる能力強化の回数は同じだ。少数精鋭の家臣団を養成したり、勢力全体の能力底上げをはかったりと使用コンセプトはさまざまだ。技巧システムにも移動系の強化ツリーが一部追加された


■ 三国志の有名シーンを手軽に体験、決戦制覇モード

 決戦制覇モードは、詰め将棋のようなカジュアルなシナリオモードだ。最初は「虎牢関の戦い」、「ギョウ兵器戦」、「赤壁の戦い」、「定軍山の戦い」の4つからプレイでき、すべてクリアすると次々に新しいシナリオをプレイできる。全部で19本のシナリオが用意されている。

 たとえば、「赤壁の戦い」は、呉軍対魏軍の水軍対決で、限定された戦場空間で、手持ちの部隊だけで敵部隊の全滅を目指すシナリオだ。呉の黄蓋が魏の曹操の船に接触すると一面大火災になるなどイベントも盛りだくさんだ。シナリオは短いもので10~20分程度から遊べ、負けても簡単にやり直しできるのでミニゲーム要素としても面白い。

 「虎牢関の戦い」では三国志最強武将の1人、呂布を操作しながら一騎討ちだけで押し寄せる連合軍の敵兵をなぎ倒していく。うっかり飛び出すとたちまち全滅してしまうのだが、首尾よく連合軍の武将を倒していくと有名な劉備、関羽、張飛の義兄弟との一騎討ちシーンに発展する。三国志の世界で複数武将が入れ替わり立ち代り一騎討ちをする有名なエピソードなだけに、何度も楽しむことができた。

「赤壁の戦い」では、黄蓋、甘寧といった呉の名将達が大活躍する。魏軍の船団は圧倒的な兵力ながら1度の火計が決まるとたちまち火ダルマに


■ 追加シナリオは全部で6本。雰囲気たっぷりのオープニングムービーに注目

 追加シナリオは架空も含めて6本収録され、それぞれにオープニングムービーが収録されている。水墨画のような柔らかいタッチのキャラクタと中国語のナレーションがかもし出す独特の雰囲気は、仙境で仙人達が下界を見下ろしながら三国志の世界に興じるような本作を通じたコンセプトそのままだ。

 追加シナリオでは「呂布討伐戦」や「袁家の戦い」といった根強いファンを持つ人気武将にスポットを当てており、ファンとしてはにやりとさせられる演出が嬉しいところ。さらにゲーム進行中に発生するイベントが30種類追加されている。6本の追加シナリオのうち、最初にプレイできるものは5本で1本は隠しシナリオとなっている。こちらも是非プレイしてみてほしい。

 また、「三國志11」では舌戦や一騎討ちといったバトルイベントが、目玉の1つであるにも関わらず、プレーヤーが戦闘や調略に縁が無いとなかなか発生しにくい部分があった。本作では配下の武将と縁のある武将をプレーヤーに引き合わせるイベントがしばしば起こるようになっている。武官ならば一騎討ち、文官系ならば舌戦が必ず発生し、紹介者の配下武将と比較的能力が近い武将を連れてくるので、接戦が楽しめる。勝利すると仕官してくるという嬉しいおまけ付きである。また戦場での各種軍事施設の効果範囲が拡大し、それぞれの役割が増している。とりわけ軍楽台は設置すると3マス以内では武将同士の一騎討ち成功率が高まるなど、ユーザーを熱くする仕組みが整っている。

 また、コーエーの歴史シミュレーションシリーズのパワーアップキットならではのステータスエディット機能も健在だ。誰にも負けない自分だけの武将を作って三国志世界に降り立たせるのもいい。詰め将棋的な要素を持つ決戦制覇モード以外の各モードで、各武将の能力や都市の財産、行軍中の部隊の能力の細部にいたるまで随時編集可能だ。

 最後に気になった部分を付け加えておくと、数値やパラメータをいじれるエディット機能だけでなく、ゲームのエンディングに関してもユーザー側に選択肢を与えてほしいと思う。というのも、「呂布討伐戦」といったタイトルが付いているにも関わらず、すべてゲームのエンディングは中国全土の統一に設定されているから。せっかく呂布陣営を他勢力と協力してやっつけても、その数ターン後にはまったく別の陣営に仕官した呂布に、再び領土を蹂躙されるという光景があったからだ。それ以降、ゲーム開始時の平原を巡る群雄の争いというプロローグムービーの内容とどんどんかけ離れていってしまう中で、中国全土まで頑張るのはしんどいところがある。シナリオの狙いと、実際のゲームプレイとの乖離を防ぐ意味でも、例えば袁紹などが活躍する群雄割拠を描いたシナリオでは、1つの陣営が中原一帯を統一した時点で一旦エンディングにするかどうか決められるような仕組みがほしいところだ。

それぞれに用意されたオープニングムービーでは中国語のナレーションにより雰囲気たっぷりにバックストーリーを語ってくれる。またキャラクタが移動時に発する掛け声も日本語音声と中国語音声の切り替えができるようになり、その種類も増えている

本作のハイライト。「三國志11」で盛り込まれたド派手なカットインや一騎討ちが、追加シナリオをプレイしていると実に頻繁に発生する。マクロ的な戦略性と、一騎討ちのような局所的なイベントのバランスもよく、「三國志11」の本来の姿が本作にあるといえよう。「三國志11 パワーアップキット」が出るまで買い控えていたユーザーにとっても、すでに「三國志11」をプレイしているユーザーにとっても是非試して欲しい一作に仕上がっている

(C)2006 KOEI Co., Ltd. All rights reserved.
※画面は開発中のものです。


【三國志11 パワーアップキット】
  • CPU:Pentium III 1GHz以上(Pentium 4 1.7GHz以上を推奨)
  • HDD:1GB以上
  • メインメモリ:512MB以上推奨
  • ビデオメモリ:32MB以上(64MB以上を推奨)


□「三國志11」のページ
http://www.gamecity.ne.jp/sangokushi/11/
□関連情報
【4月6日】PCゲームレビュー 「三國志11」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060406/sangoku.htm
【8月18日】コーエー、Win「三國志11 パワーアップキット」武将を育成する新機能「能力研究」を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060818/san.htm

(2006年9月6日)

[Reported by 三浦尋一]



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