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特別インタビュー

RPGが持つ“ストーリー”の魅力を2つのモードで増幅
PS2/Win「ファンタシースターユニバース」
(左)見吉隆夫氏 プロデューサー (右)酒井智史氏 ディレクター


 8月31日に発売される株式会社セガのプレイステーション 2/Windows用ネットワークRPG「ファンタシースターユニバース」。長年にわたって開発を続けてきたプロデューサーの見吉氏、ディレクターの酒井氏のお2人に、発売直前の状況でお話を伺うことができた。早速その模様をお届けしよう。(文中敬称略)


■ 製品版発売直前。「PSO」ではできなかった“シナリオ展開の魅力”に注力した「PSU」

――まずは、発売直前の今のお気持ちからお願いします。

見吉 オフラインのみのタイトルよりもずっとドキドキしています。発売の日にどんなことが起こるかを考えると恐ろしいですね。オンラインということもあってユーザーの皆さんからも反響がすぐに返ってきますし。

 オフライン用のタイトルだと、なにかしら要望や不満があっても調整ができないわけですが、オンラインタイトルであると、バージョンアップなどによって変更できる可能性があるんですよね。そういう面で、ユーザーの皆さんから寄せられる意見には性質の違いがありますし、期待して頂いているのを感じます。量も多いですね。

――注目度の高いオンラインタイトルであればあるほど、サービス初日にはアクセス集中などのトラブルが起こる可能性は上がるという側面がありますが、そのあたりはいかがでしょうか?

見吉 「PSO」から数えて6年近くオンラインタイトルの運営を行なっているので、初動の対応などにはノウハウがあります。現在はプレミアディスクによる運営も行なっていますし、漕ぎ出しにはあまり不安を感じてはいないです。ただ、少し不安があるとすれば課金処理の面でしょうか。これだけはβテスト的なものでは試せないですから。

――プレミアディスクのお話が挙がりましたが、プレミアディスクの運営はどのような状況でしたか?

見吉 プレミアディスク自体は1万枚以上を配布しています。そのうちオンラインモードに接続してきているのは約8割ほどのユーザーさんでしょうか。

酒井 思っていた以上にプレイステーション 2でネットワークに接続してくる人が多いんだなぁと感じました。仮にプレミアディスクを1万枚以上配っても、ネットワークに接続してくるのは1,000人ぐらいかなと思っていました。今は2,000人の方が平均的にネットワークモードに接続しています。

――「PSU」はストーリーモードにもかなり注力されたということなのですが、そのあたりをお聞かせください。

見吉 「PSU」はストーリーモードとオンラインモードの二本柱で開発してきたタイトルです。ストーリーモードは決してオンラインモードのおまけ的なものではなく、一般に言われる大作RPGとして打ち出しています。総プレイ時間は30時間を越えるものに仕上がっています。

 また、ストーリーモードには、オンラインモードへと誘導していく入口としての意味合いもあります。ストーリーモードをプレイすることで、ネットワークモードを唐突感なく遊べるようになります。極端な言い方をしてしまうと、壮大なチュートリアルのような。基本的な遊び方や世界観をストーリーモードで得ていると、ネットワークモードがよりスムーズに楽しめます。

 今までネットワークゲームを体験していない方や、敬遠していた方、そういった方に楽しんでもらえるようなアプローチを重視した結果です。

――ストーリーモードではイーサン・ウェーバーという固定された主人公を設けましたが、それはなぜでしょう?

見吉 念頭にあったのが“「PSO」でやれなかったことをやりたいな”というものなんですね。「PSO」ではあくまで主人公はプレーヤー自身であって、キャラクタ性を見せにくいものだったんです。RPGにはシステムを楽しむタイプと、シナリオや世界観を楽しむタイプという二通りがあると思うのですが、「PSU」ではシステムだけでなく、シナリオの魅力も楽しんでもらうために、個性の強いキャラクタを立てて、世界観を広げていく。そうした発想の中で固定されたイーサンという主人公が生まれました。

酒井 ストーリーモードとネットワークモードは当初からまったく別の魅力にしたいと考えていました。どちらのモードでも主人公に同じキャラクタを使える「PSO」のシステムでは、主人公がストーリーへ参加する形になるんですが、ストーリーの中心的な存在にしていくのは難しいです。そこで性格を持った主人公が立ちました。

――ストーリーモードはRPGの魅力の中でもシナリオ面の魅力を出していきたかったものなんですね。シナリオの魅力やテーマ的なものはどのようなものでしょう?

酒井 “君の守るべきものはなんだ”というものがあります。種族であったり、団体であったり様々な要素で形成されている世界がSEEDという災厄に見舞われたときに、協力して、または反目していくのかという。その中で若いイーサン・ウェーバーという主人公が、出会いがあって、それぞれの思惑を見て、自分が守るべきものはなんだろうかと気づいて成長していくというものです。


■ ネットワークでも壮大なシナリオ展開を予定。ストーリーモードを踏まえるとより魅力的に

――ストーリーモードではシナリオの魅力を前面に押し出しているということですが、ネットワークモードでもシナリオ展開などはあるのでしょうか?

酒井 あります。むしろ、ネットワークモードでもその魅力はメインになると思っています。プレミアディスクではフリーミッションだけを楽しんで頂いてますが、今後はストーリーミッションというものが配信されます。それらもストーリーモードを楽しんだあとにプレイすると、より楽しめるものです。

――ストーリーモードのシナリオを先に味わってもらいたい、ということですか?

酒井 踏まえておくべきというものです。ネットワークモードのシナリオでは、NPCとしてストーリーモードの主要キャラクタが登場してお話に絡んでいきます。ストーリーモードを踏まえたうえで楽しむと、各キャラクタの個性や背景をわかった状態なので、相乗効果でより楽しめます。

――ネットワークモードのストーリーミッションは、2~3カ月で区切りがついていくタイプなのか、壮大に続いていくものなのか、どちらのタイプでしょう?

酒井 今手がけているものは、壮大に長く連なっていくタイプのものです。2週間にひとつほどのペースで配信を予定していて、連続ドラマのように楽しめるものです。

――今見越しているストーリーミッションは、どれくらいの期間で配信を完了していくものになっているのでしょう?

酒井 完了するんですかね(笑)。

見吉 ぶっちゃけた話、まだ今も作っていますから(笑)。

――現時点でも今年、来年の初頭は続いていくほどのボリュームはあると思ってよいですか?

酒井 そうですね、「PSO」では、つき詰まっていった先にレアアイテム集めのモチベーションが残っていったんですが、「PSU」では継続的にストーリーミッションが配信されることで、お話を楽しみにしてもらう、というものが加わります。ゲームをやり尽くしたあとでも、ストーリーの続きが登場したタイミングで定期的にまた遊んでもらうようなイメージですね。

 ストーリーミッションを遊んで、友達と話すネタになっていけばいいなぁと。テレビドラマを見た翌日に学校なんかで友達と「あれ見た?」っていう会話をするような。そういうシーンも生まれるとくるといいなぁと。

――「PSU」ではコミュニケーションに使う機能も拡充されていますね。中でもマイルームの機能は充実していますが、マイルームのコンセプトはどのようなものですか?

見吉 今回の「PSU」で表現したかったもののひとつで、「PSO」ではログインしているときだけ世界が動いているという印象があったのですが、「PSU」ではログインしてなくても世界が動いている、という感覚を出したかったんです。

 自分のマイルームがあって、ショップを開店したりもできて。お店のアイテムがログインしていない時間に売れていたりとか、プレイしていない時間にも「PSU」の世界が動いていて存在しているという感覚が生まれますよね。そうしたある種MMO的な魅力を加えるものですね。

――市街エリアのNPCが販売するアイテムより、ユーザーが開くショップのほうが重要になるのでしょうか?

見吉 市街エリアのショップは品揃え自体もあまり充実していなくて、基礎的なものです。ある一定以上のアイテムを獲得していくには、人が作ったものを購入したり、もしくは素材を手に入れて自分で作ったり。アイテムの獲得方法にもいろいろな選択肢が生まれるようにしています。ユーザー間の取引、物流で成り立っていくような形を考えています。

――アイテム合成の話が出ましたが、アイテム合成でしか作れないものも多いでしょうか?

見吉 大部分がそうですね。基本的なアイテムしか市街エリアでは手に入らないので、そのレベルより上のものを手に入れる方法はアイテム合成になります。

――ガーディアンズコロニーにはイベントスペースとして「クラブ」が用意されていますが、公式からのイベント展開的なものはいかがでしょう?

見吉 “ステージ”と呼べるものが欲しかったんですよね。劇をしたり、歌謡ショーをしたり、そういったものをみんなで楽しめるといいなぁと思って。一段高い舞台がないと、人が集まると周りからは見えなくなってしまったりしますよね、そうした意味でも適した場所としてクラブがあります。

酒井 季節イベントや「PSO」でもあったマキシマムアタックのような公式イベントは考えています。これまでに「PSO」で行なったイベント、タイアップしたものなどはやっていくと思います。フィールドの拡張などの盛り上がりどころもある種のイベント展開として考えると、1カ月に1回はなにかをするようなことを考えていますね。

――「PSU」ではエステがあったり、ファッションアイテムがあったり、キャラクタの外見にもこだわれる要素がありますね?

酒井 キャラクタクリエイトを細かくこだわれるようにしていますね。モーフィングで顔も変えられるようにしようとか。そのあたりは「PSO」の時以上にこだわってます。

 防具と関係のない普段着の“着替え”もありますね。つき詰まっていくと防具が似通ってくるじゃないですか。それが嫌だなぁと思って。ロビーでは好きな服を着てもらおうというものです。コーディネートの差もユーザーさんによって出てくるでしょうし、オシャレもひとつのモチベーションになって欲しいと思います。イベント専用の服もすでに用意しています。


■ コンシューマー機でネットワークゲームを開発する苦労とは? 海外展開に関する話題も

――「PSU」の開発を開始したのどれくらい前でしょうか?

見吉 「PSO」の「エピソード1&2」が終わった直後から始まっているので、3年ほど前ですね。

――「PSO」の運営と「PSU」の開発は長く平行している期間があるのですね。「PSO」で得たノウハウのお話や、そこから「PSU」に反映されたという点をお聞かせください。

見吉 まず「PSO」を作ったときには「コンシューマー機でネットワークゲームを遊んでもらおう」という最初の挑戦であることがありました。そこから6年間、コンシューマー機でのネットワークゲームとして先頭を切ってサービス運営をしていきました。社内にもノウハウはなくて、いろいろな苦労があったのですが、「PSO」で得た最も大きなノウハウは長く運営し続けていくための知識や情報ではないでしょうか。

 「PSO」は最初の設計思想が1~2カ月のプレイを想定したものだったんです。ですが、実際に始めて気がついたら早6年です。そこで「PSU」では、5年先にもプレイされ続けているだろうと想定しています。最初からいろんなネタを仕込んであったり、想定してあったり。基本的な設計をはじめ、ユーザーのみなさんの目に見えない部分のほうが進化しているかもしれません。

――そのお話はゲームの拡張性に関わるお話でもあるのでしょうか?

見吉 そうですね、サーバーサイドでいろいろな仕掛けを行なえる設計になっています。ここが大きいのではないでしょうか。

――HDDレスのPS2でプレイできるというところでは、バージョンアップをはじめとした拡張面の対応がどれぐらい可能なのかが気になります。

見吉 クライアント側でいろいろな制御をすると、チート行為のようなデータ改ざんができてしまったりと、セキュリティ面でも苦しくなります。そうした面も含めて、拡張性の部分もサーバーで制御する設計思想をしています。

――今回初めてPS2で開発をされたわけですが、どのへんに苦労がありましたか?

見吉 メモリが足りないのが、今のネットワークゲームを開発するのには厳しい点でしょうか。もっとグラフィックのクオリティを下げれば多くを表示していけるとは思うのですが。

 Xbox 360版も開発していますが、Xbox 360ならメモリが潤沢だからいっぱいキャラクタを表示できるだろう、と思っていました。これが意外と思ったほどは出していけない。画像の密度が4倍になるので、ひとつあたりに同じく4倍のパワーを使う。ベースのクオリティは高まるので綺麗ですが、それだけでもかなりパワーを取りますね。

酒井 ドリームキャストやゲームキューブ版の「PSO」でも、かなり高度なことをやっていたのですが、それよりもさらにメモリ的に厳しいことを「PSU」ではやっていますね。すごく苦労しています。

見吉 「PSU」では機種別に接続するサーバーを分けたくなかったんですよね。ネットワークゲームはユーザーがたくさんいることが楽しいですし。そうした意味合いでもPS2での動作は開発のベースに置かれています。PCにもピンからキリまでありますが、高性能なスペックを基準に開発してしまうと敷居が高くなってしまいますから。

酒井 PS2では簡易モデルで表示させたりなど、いろいろ手法に苦労しつつバランスを考えました。例えば、割り切ってキャラクタを2パターンだけとかにしてしまえば表示していくことはできますが、キャラクタクリエイトにこだわっているところとしては譲れないところでもあります。

――遊び方としては、どれぐらいのログイン率、1回あたりのプレイ時間を考えていますか?

見吉 標準的な遊び方としては、1日に1時間とか、週末に2~3時間とかでしょうか。毎日何時間も遊ばないとついていけなくなるような、ユーザーにとってヘビーなものにはしたくないというのがありますね。さっと遊んで、さっと終えれるようなものですね。

――ヘビーユーザーとライトユーザーであればライトより?

見吉 ライトよりですね、ネットワークゲームを遊んだことない人に体験してもらいたいという思いは「PSO」から今もありますから。

酒井 MMORPG自体もたくさんありますし。その中でも間口は広くありたい。いろいろ遊びってあるじゃないですか。映画見たり、どこかに遊びにいったりとか。そういうライフスタイルのひとつとしてゲームがあればいいなと思います。

――海外での展開についてはどのようにお考えでしょうか?

見吉 まずは北米、欧州は見据えていて、それ以降のアジア圏に関してはまだ考えている段階ですね。

――サーバーの接続先は国ごとに分けているのでしょうか?

見吉 海外は別ですね。今回はストーリーに重点を置いている点もあるので、日本と海外では発売日が異なる点を考えても、やりとりの面でも、サーバーを分けるべきと考えています。

――最後に「PSO」からのファン、「PSU」からの新しいファンに向けてひとことお願いします。

見吉 まずはストーリーモードを遊んでいただいて、面白いなぁと思えたらネットワークモードを体感してもらいたいと思います。30日間の無料プレイ期間もありますので。可能なら、友達を誘って一緒に遊んでもらいたいなと思います。知り合い同士で遊ぶのがやはり気兼ねもなくて楽しいですから。

酒井 ストーリーモードだけでもかなり楽しめるものを用意したつもりですし、それを踏まえて、ネットワークモードを遊んでもらえると、より楽しいです。ストーリーモードを踏まえると楽しさはすごく変わると思いますので、オススメです。

――ありがとうございました。

(C)SEGA

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□「ファンタシースターユニバース」のページ
http://phantasystaruniverse.com/
□関連情報
【8月28日】セガ、「ファンタシースターユニバース」
先行体験版「プレミアディスク」プレイレポート
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060828/psu.htm
【7月12日】セガ、PS2/WIN「ファンタシースターユニバース」
2種類の音楽CDとワイヤレスUSBキーボードを発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060712/psu.htm
【7月6日】セガダイレクト、PS2/WIN版を予約した人の中から抽選で2,000名に
「ファンタシースターユニバース」先行体験版をプレゼント
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060706/psu.htm
【6月2日】セガ、PS2/WIN「ファンタシースターユニバース」
8月31日に発売決定。最新ムービーを公開
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【5月23日】セガ、E3 2006出展タイトルムービーを3本公開
「ソニック」、「クロムハウンズ」、「PSU」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060523/se3.htm
【4月20日】セガ、「ファンタシースターユニバース」
Xbox 360版の発売を決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060420/psu.htm

(2006年8月31日)

[Reported by 山村智美]



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