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会場:Netclue本社
Hwang氏は、元サムスングループでファッションやインターネット事業といったビジネスプロデュースを手がけ、アーリーアダプタ事業への興味からゲーム業界に転職したという異色の人材である。静かな物腰から繰り出される言葉は常に自信に満ち、そして力強い。一見して切れ者という印象を受けた。 今回はNetclueの韓国代表として、新生Netclueのビジネスの内容とそのミッションについて話を伺った。新作ゲームのファウンダーとしても意見を伺ったが、メーカーが出す上っ面の数字にはまったく触れず、徹底してエンドユーザーの動向に着目し、かなり厳しい見解を示してくれた。機会があれば、もう一段掘り下げて意見を伺ってみたいところである。
■ GMO Gamesの100%子会社Netclueのビジネス内容
Hwang氏: Netclueは日本のGMO Gamesとゲームビジネスを共同展開していまして、主に韓国のオンラインゲームを日本にサービスする提携関係を結んでいます。韓国のオンラインゲームを日本により円滑にサービスすることをメインのミッションとしています。 これらのゲーム事業以外に、売り上げに占める割合は少ないですが、ライセンスビジネスもやっています。日本の漫画やアニメーションのライセンスを獲得して、韓国の情報通信会社やポータルサイトにサービスをするお手伝いをしています。今後も日本と韓国でそれぞれサービスをそれぞれ展開して、よりよいエンターテインメントコンテンツを提供していくということで、日韓の関係を深めていくビジネスを考えています。 編: 韓国でオンラインゲームをパブリッシングするというビジネスはしていないのでしょうか? Hwang氏: 村岡と話はしてはいますが、現在はそうしたビジネスはしていません。日本での「コルムオンライン」や「アニス&フリッキー」を確実に成功させてからの計画になっています。理由としては「アニス&フリッキー」でリソースを集中して投入することと、加えて「コルムオンライン」でのリソースの集中です。 村岡氏: 今後検討していることとしては、4月1日に旧GMOエンターテインメントの「デコオンライン」をGMO Gamesに組み入れたのですが、グループシナジーということで、Netclueのノウハウやリソースを使って、より「デコオンライン」がサービスできる形での検討も必要かと考えています。 編: つまり、今後はNetclueで「デコオンライン」も取り扱うようになると? 村岡氏: 「デコオンライン」に関しては、韓国のリソースとノウハウを使って、支援といいますか、情報共有によるシナジー効果が出るような検討もしています。 編: Hwang社長のこれまでのキャリアを教えてください。 Hwang氏: 2年前、Netclueに来る前にサムスングループのビジネスプロデュースとブランドマーチャンダイズの業務に携わっていました。主にファッションやインターネット事業です。2004年の9月にNetclueへ取締役として入社し、去年の10月から村岡と共に共同代表取締役に就任しています。以来、特に大きな組織の変更はありません。 編: なぜゲーム業界に転職されたのでしょうか。 Hwang氏: もともとビジネス立ち上げに関するアーリーアダプタ事業に興味がありました。飽和状態にあるビジネスではなくこれから成長していく業界にチャレンジしたいと思っていたところ、偶然もあり、このようになりました。 編: 本年度の戦略目標はどのような構想をお持ちですか。 Hwang氏: 今年来年の戦略目標としては、第一に「コルムオンライン」の成功を拡大させることと、2番目に新規タイトルの「アニス&フリッキー」を成功させることです。「コルムオンライン」の活性策としては、既存ユーザーの維持と新規ユーザーの開拓になります。「アニス&フリッキー」については10月中にオープンβを行うつもりです。資本とノウハウを集中させてアイテム課金の展開をするつもりです。 編: 日本にGMO Gamesというパートナーがいることに、どういったメリットを感じていますか? Hwang氏: NetclueとGMO Gamesが展開する差別化されたビジネスモデルについて自信を持っています。韓国の大部分のパブリッシャーが日本に子会社を設置していますが、GMO Gamesは日本と韓国に組織があります。ここに大きな利点があると考えています。Netclueが日本でサービスを行なうにあたって韓国でしかできない仕事をしており、逆に日本でしかできない仕事をGMO Gamesで行なっています。こうした業務分担は他のパブリッシャーではできないところですので、大きな利点と考えています。
■ 日本市場と日本人ユーザーに対する印象
Hwang氏: 韓国のユーザーはブームに乗じて極端にたくさんの人が集まります。例えば、今月あるゲームに100万人集まれば、次の週には違うゲームにごっそりユーザーの山が移動することがあります。しかし、日本のユーザーの場合ですと自分なりの好みや価値観を持ってゲームをプレイするユーザーが多く、一度好きになればいつまでもファンでいて頂ける方が多いと見ています。 また、日本のユーザーは有料のゲームをプレイする層が多く、一方韓国のユーザーはフリーゲームに人気が集まります。韓国のユーザーは熱狂的である反面、一度ネガティブなイメージを抱いてしまうとあっさりと離れてしまうユーザーが多いです。ですから、韓国の場合はマスマーケティングを中心としてビジネスを展開していますが、日本のユーザーの場合にはターゲットマーケティングを展開しています。 村岡氏: 韓国ではゲームに限らず、ポータル業界であったり、広告業界だったり、SNSであったり、すべての分野でそうした傾向があります。これは韓国人のいいところであり、ビジネスをする側から見ると考慮すべきポイントです。日本の「コルムオンライン」にしても現在のユーザー層を見るとβテストからのファンがほとんどです。サーバーが止まっても、アイテムが消えても、掲示板でまた暖かく見守ろうかという視点で接していただけている。ユーザーが一緒に製品を育ててくれているということは「コルムオンライン」だけではないかと思います。これが日本人のよさ、日本のユーザーのありがたさをHwangも肌身に感じていると思います。 編: 反対に日本のユーザーに対する難しさというのはどの編でしょうか? Hwang氏: 韓国のユーザーと日本のユーザーの差に帰結すると思いますが、韓国の方ではイベントを企画したり、広告を打ったりするとユーザーが集まります。しかし日本の場合ですとイベントや広告を打っても、ユーザー自身の興味のある範囲で選択するので、そうした戦略を取っても取らなくてもそれほど極端な差が出ません。 編: そうした日本のユーザーに対して、ローカライズを含めてどういったサービスを展開していかれるつもりでしょうか。 Hwang氏: 韓国のゲームを日本に向けてサービスするビジネスですので、言葉やキャラクタデザインは日本向けにアレンジする必要はあります。アップデートにもこうした言葉やキャラクタといったデザインを日本向けに合わせていくということは必要だと思います。ユーザーからの要望事項に関しては、開発者との間でなるべく早く対応できるような体制を敷いています。ポイントとしては、なるべく早くユーザーの要望事項に応えるようなサービス、ゲーム作りをしていくということです。「パルリパルリ」(なるべく早く)という言葉は、韓国の国民性の特徴をよく言い表した言葉ですが、他のゲームとは違って、アップデートをするのもイベントをするのもなるべく早く対応していきます。 編: 次に言葉ですが、韓国語のパンマルのような言葉をローカライズする際に気をつけていることは何でしょうか。 Hwang氏: まず第1段階として、Netclueにいるスタッフが日本語に翻訳し、第2段階として日本のGMO Gamesの運営チームのバイリンガルがこれをチェックします。パンマルを翻訳する際は似たような雰囲気を持っている日本語を使うように気を使っています。 編: MMORPGにおけるハングルのテキストは丁寧語なのでしょうか。言葉にはいろいろな表現の仕方がありますが、どういう種類の言葉なのでしょうか。 Hwang氏: 大部分は尊敬語になっています。シチュエーションによっては面白い雰囲気を出すためにパンマルを使っている場合もあります。会話は口語体です。「コルムオンライン」と「アニス&フリッキー」に関してはそうですね。
■ プロのファウンダーからみた韓国オンラインゲーム市場の現状
Hwang氏: 韓国のMMORPGは昨年末から今年の初めまでに、大作がたくさん開発され、サービスがスタートしました。そのような制作費に60億ウォン(約7億2,000万円)から100億ウォン(約12億円)かかったゲームがいくつも出てきた一方で、カジュアルゲームもたくさん出てきました。そこで出た結果は高額な投資を要した大作より、比較的投資も開発期間も少ないカジュアルゲームのほうにユーザーの人気が集まったということです。 大作のMMORPGが人気が出なかった原因として、昔からサービスされているMMORPGのユーザーが、新作のMMORPGに魅力を感じなかったということが挙げられます。この業界に友人も多いので、個別のタイトル名については名前を控えさせていただきますが(笑)、様々な大作が、同時接続者においても登録ユーザー数においても予想を遙かに下回りました。 その一方で新しいジャンルのスポーツゲームやレーシングゲーム、FPSに人気が集まっています。新しいジャンルのカジュアルゲームは老若男女問わず誰でも楽しめるゲームであるというところが大きな特徴です。口火を切ったのがNexonの「カートライダー」です。スポーツでは「FIFA Online」、「Free Style」。FPSでは「Sudden Attack」、「Special Force」といったゲームに人気が集まりました。それでMMORPGとは異なる観点からX-RPGという新しいジャンルである「アニス&フリッキー」を選択しました。
編: プロのファウンダーとして次の韓国オンラインゲームは何がトレンドになると見ていますか? Hwang氏: 現在韓国ではすべてのジャンルのゲームがありますが、これからは韓国市場をターゲットにゲームを開発するのではなく、ヨーロッパなりアメリカなり東南アジア等に向けた開発が必要だと思います。開発段階からグローバル展開を目論んだ上で包括的に開発されたゲームが伸びると感じています。 あと今後予想される動きとしてはゲームメーカー間のM&A(買収)でしょうか。現在韓国には大手メーカーと呼ばれるものが数社存在しますが、中には体質的に弱いところもあります。今後は我々のような少数精鋭で小回りのきくメーカーが台頭してくるのではないかと思っています。できれば我々は買収する側に周りたいですね(笑)。 村岡氏: カジュアルゲームはその国の国民性に左右されるところがあると思います。その国でどういうスポーツが支持されているのか、どういうものが楽しまれているのかということが基盤にあります。韓国で人気があるものでバスケットボールやワールドカップ関連でサッカーがあります。それらを日本に持ってきて成功するかどうかは別にして、現在の韓国トレンドとしてそのようなジャンルに人気が集まっていますね。 Hwang氏: 韓国ではゲーム会社や開発会社が多く、激しい競争が行なわれています。斬新でオリジナリティのあるゲームでないと成功するのは難しくなってきました。Actozソフトの開発会社でも既存のMMORPGとは異なるオリジナリティ溢れるゲームが開発されています。7月20日にローンチした「アニス&フリッキー」も他のゲームとは違い独創的だという評価を受けています。 村岡氏: 1週間で30万人が集まり、「アニス&フリッキー」のリリースの流れでActozソフトの株価が40%ほどあがりました。他社でどことどことが契約したというところではほとんど株価は反応しなかったのですが、それだけゲーム業界以外からも評価されていると思います。今後の開発次第というところはありますが、現時点ではある一定の評価を得たなと感じています。 編: Hwangさんから見て「アニス&フリッキー」は、カジュアルゲームが流行している韓国市場において、ヒットする要因をすべて備えているオンラインゲームではないかと見ているのでしょうか? Hwang氏: あくまで「アニス&フリッキー」はカジュアルゲームではなく、新しいRPG「X-RPG」だと考えています。RPGの要素もアーケードの要素もアドベンチャーの要素も持ち、若干のカジュアルゲーム的な要素も持っており、他のゲームとは明確な差別化が計られています。オープンベータ開始後の評価でも、このような評判を頂いています。韓国では現在オープンβ中ですが、NetclueとGMO Gamesは9月に日本版のXテストというクローズドβを行い、10月にオープンβを予定しています。 村岡氏: 100%ではないのですが、常にアップデートしていくことで、常に求められているカジュアルゲームの像に近い要素を取り入れていきたいと考えています。よりよい商品に仕上げていくためにActozさんと継続的に協議しながら取り組んでいきたいと思っています。
■ 「アニス&フリッキー」日本展開の抱負について
Hwang氏: 既存のMMORPGとはゲームコンセプトも世界観もジャンルも違うというところで明確に差別化が図れると思っています。いろいろな人たちが一緒に遊べるというのがオンラインゲームの醍醐味です。「アニス&フリッキー」もXテストの時からユーザーの皆さん共に、一緒に参加し、一緒に楽しめるゲームを作っており、愛情を持ってプレイして頂けるように正式サービスの準備を進めています。 もちろん、まだ完全なバージョンではありませんが、我々と一体感を持っていただいて、悪いところも一緒に直していけるような形で正式サービスまで育てていきたいと思っています。「コルムオンライン」のオープンβのときもそうでしたが、アイテム課金の実施方法についても他社と差別化を計る形で進めていますし、NetclueとGMO Gamesの関係についても他社とは異なる新しい方式で提携を結んでいます。「アニス&フリッキー」は他のゲームとは異なる新しいポイントを持ってサービスしていきたいと考えています。 編: その新しいポイントというのはビジネスモデルということでしょうか Hwang氏: 具体的な話については、まだお話しできる段階ではないですね。すいません。 村岡氏: いまHwang氏のほうから両社の関係についてお話させていただきましたが、「コルムオンライン」の開発元のNet Time Softもここから10分で、Actozも30分圏内で行けます。1週間の間に何度も何度もあっちに呼んだりこっちに呼んだりして、密接な関係を作れています。もちろん、パブリッシャーはパブリッシャーしかできない仕事をすべきです。パブリッシャーは開発の仕事はできないし、開発会社もパブリッシャーの仕事は契約している以上口出しすべきではない。お互い信頼関係を持ってやるべきです。 日本にしか法人がないゲームメーカーや韓国にしか無いゲームメーカーが、過去に進捗ベースでどういう失敗を犯してきたかということを考えると、フェイストゥフェイスで24時間向き合える環境が整っていることは大きな強みです。昨夜も「アニス&フリッキー」のローカルチームは開発会社に詰めていました。韓国法人Netclue、日本法人GMO Gamesという関係は我々のアドバンテージです。「アニス&フリッキー」についてもこれまで以上にやっていきたいと思います。 編: 最後に日本のユーザーにメッセージをお願いします。 Hwang氏: Netclueは日本のユーザーの皆さんのために健全で楽しいゲームを提供し、他社より早くよりよいサービスを提供できるために努めたいと思います。今はまだ2つしかゲームタイトルがありませんが、より多様なサービス、ゲームを提供できるよう力を尽くしたいと思います。楽しいゲームを提供する一方で我々も大きくなりたいと思います。愛情を持って見守って頂ければと思います。 編: ありがとうございました。
□GMO Gamesのホームページ (2006年8月18日) [Reported by 中村聖司]
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