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Gravity新本社訪問レポート

「ラグナロクオンライン」開発チームインタビュー
アルナベルツの実装プランと、今後の展開について聞く

8月11日収録

会場:Gravity本社



 「Gravity Festival 2006」開催前日にあたる8月11日、GAME Watch取材班は、各タイトルの取材のため、ソウル市江南区にあるGravity本社を訪れた。

 ソウル特別市を南北に分断する漢江の南側一帯に広がる江南区は、IT企業のメッカとして、ここ数年目まぐるしく開発が進められているエリアだ。Gravityは、昨年12月に江南区内で引っ越しを行なっており、以前は、地下鉄で通うには少し不便な奥まったビル数カ所に入居していたが、今回新たに江南区の目抜き通りである江南大路の真下にある地下鉄江南駅のすぐ側のビル「メリッツタワー」に入居していた。

 周囲にはオフィスビルが建ち並び、まっすぐ北へ延びる江南大路は新たな観光スポットになっている。大通りは、昼夜を問わず、若いカップルやビジネスマンなど、雑多な人混みで賑わっている。

 Gravityはメリッツタワーの7階と11~14階に入居しており、開発を含むオンラインゲームパブリッシャーとしての全機能が入っている。14階が会長室、IR、経理、法務などの会社機能、13階が海外支援室と呼ばれる海外パブリッシャーに対するGravityの窓口担当がおり、12階以下、3階分を開発部隊が占めている。

 今回は、「ラグナロクオンライン」、「ラグナロクオンライン II」、そして「Time N Tales」の3タイトルの開発チームに話をお伺いした。本稿では、まず「ラグナロクオンライン」開発チームインタビューをお届けしよう。

【Gravity本社】
江南区の一等地にあるGravity本社。夏休み期間ということでビルは閑散としていた。通りには屋台などが建ち並び、高層ビルと昔ながらの屋台街とのギャップが凄い

【江南区】
江南駅の北口を出ると江南大路のショッピング街が広がり、多くの人で賑わっている。地下には広大なモールがあり、地下鉄に通じている

【Gravity社内】
今回14階から7階までひととおり見せていただいた。イベント直前ということもあり、社内は閑散としていたが、開発部隊はいつもと変わらず業務を行なっていた。右の写真は、「ラグナロクオンライン」担当の開発第1部、「ラグナロクオンライン II」担当の開発第2部が入っている12階の様子

【Z Studios】
11階、「Requiem」開発チームの隣に、「Z Studios」と名付けられた部門が存在した。Z Studios代表のリー・ヤンスー氏に話を伺うと、柳日栄氏直属の新規タイトル開発チームだという。現在、カジュアルゲームの開発に取り組んでいるという


■ シュバルツバルトの次は、宗教国家「アルナベルツ教国」が実装

左が「ラグナロクオンライン」プロジェクトディレクターのホン・サンキル氏、右がプランニングマネージャーのリー・ミンスー氏。サービス精神旺盛なおふたりだ
リー・ミンスー氏は、2004年のKAMEXでもインタビューを行なっている。
3カ国の位置関係を図に書いて説明するリー氏。「アルナベルツ教国」の実装により、ミッドガルドに新たな紛争が巻き起こるようだ
編: 現在「ラグナロクオンライン」ではシュバルツバルド共和国関連のアップデートが続いています。日本ではノーグハルトがアップデートされていますが、次のアップデートはどのようなものでしょうか。

Lee氏: まだ日本のアップデートのスケジュールは決まっていませんが、3、4カ月後に現在の韓国のバージョンが日本に適用される予定です。

 現在我々開発チームが取り組んでいるのは「RACHEL(ラヘル)」と呼んでいるアップデートで、ミッドガルド世界に新たにアルナベルツ教国が追加されます。「RO」の既存世界と違い、オーディンではなくプレーヤーを主な神として拝んでいる宗教的名意味合いが強い国です。狂信的な部分もあって、他の国と宗教的な対立が引き金となって新たな戦いが繰り広げられるというストーリーが展開される予定です。

編: ラヘルのアップデートの特徴を教えてください。

Lee氏: 一言で言うとリー・ミョウジンさんが原作漫画で構想した世界観が今回のアップデートでようやく完成します。そういう意味では大変意義深いアップデートです。今後の「RO」のアップデートは3カ国の争いを中心にして、ストーリーが組まれていく予定です。

編: アルナベルツ教国は、どれくらいの広さなのですか?

Hong氏: シュバルツバルドの3分の2から半分くらいです。

編: ルーンミッドガッツ王国やシュバルツバルド共和国と三つどもえのRvRが展開されたりするのでしょうか?

Hong氏: 今のところその予定はありません。

編: 以前、世界マップを公開した際、周辺に空白地帯が結構ありましたよね。アルナベルツの位置としてどのあたりになるのでしょうか。

Lee氏: たぶん2004年に発表したものですね。2004年にはラヘルは発表されていませんでした。位置としてはシュバルツバルド共和国の西になります。ミッドガッツ王国からは船を利用していくことになります。徒歩でいく場合にはシュバルツバルドから迂回していくことになります。

編: アルナベルツの対象レベルはどのぐらいですか。

Lee氏: 80~70台の人ならソロで狩りが可能なレベルです。パーティでは50~60台でのプレイが適しているでしょう。

編: 中級レベル以上ということになりますが、新規ユーザーを含む初級者層に対するコンテンツは何か企画していますか?

Lee氏: アルナベルツというより、既存のマップ全体に対して調整wo 行ない、初心者がプレイしやすい環境を提供したいと思います。

 具体的にはモンスターのHPやSPを下げる方向で調整します。これにより初心者が狩りをしやすいようにします。「RO」の世界の最高の難易度がリヒタルゼンのダンジョンなので、それをリミットとしてそれに合わせたレベル調整をやっていきたいと思います。そして、「今日のTips」のようなヘルプを充実したいと思います。公開できるのはこれくらいですが、ほかにも色々考えています。

編: リヒタルゼンを含むシュバルツバルドエリアは、確かに高レベル向けという印象がありましたが、ラヘルの位置づけはどのようなものになりますか

Lee氏: 基本的には高ユーザーの方のためのリージョンですが、シュバルツバルドに比べるともう少し易しいです。

編: アルナベルツでの新しい仕掛けは、どういったものを検討しているのですか?

Lee氏: 神器アイテムが取得できるようなクエストを企画しています。サーバーのプレーヤー全員が参加できるようなイベントです。サーバーにいるプレーヤーが協力して何かを集めたり、クエストをこなして成し遂げるようなイベントです。

編: そのイベントを達成すると、ワールドにどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

Lee氏: それについてはまだ企画段階です。


■ 新職業、傭兵システム、部分有料化構想とは何か?

何かというと図解で説明してくれるため非常に理解しやすい。たたき上げのプランナーといった印象だ
質問の回答に困っているわけではなくて、日本語で応えようとして奮闘しているシーン。日本の立場からすると、非常に開発担当に恵まれているといえる
編: 職業についてですが、転生システムの先に何か企画していることはありますが。

Lee氏: 新しい職業の企画としてはいくつかあるのですが、現時点で公開できるような内容はありません。

編: その中に3次職という構想は含まれているのでしょうか。

Lee氏: 構想としては考えています。

編: 日本にはテコンキッドが追加されました。忍者、ガンスリンガーといった職業もあると聞きましたがこれはどういった職業なのでしょうか。

Lee氏: 忍者とガンスリンガーは、転生などはできない、従来の職業とは別の成長概念をもった一次職業です。

編: コンセプトはどのようなものでしょうか。

Lee氏: 一言で言うと万能型の職業です。育成の仕方が一通りでなく、どんなアイテムを持つか、どんな装備を持つかでいくらでも変わる仕組みとなっています。

編: スキルは新しいものなのでしょうか。

Lee氏: はい。新しいものです。たとえば忍者はクナイや暗器のような武器を持ち、日本の忍者をコンセプトに作られています。

編: ホムンクルスについてですが、今後拡張される予定はあるのでしょうか。

Lee氏: ホムンクルスではなく、その拡張版ということで企画は進んでいます。1つだけお出しできる内容としては傭兵システムがあります。

編: ホムンクルスに変わるシステムということですか?

Lee氏: そうなります。バトルに参加したり、経験値を獲得して成長したりとあくまでホムンクルスの拡張版となります。

編: 傭兵はどこで雇い、またどんな種類があるのでしょうか?

Lee氏: 街で雇用します。傭兵の職業には3つあります。剣と弓と槍を使う傭兵が用意されていて、好みに応じて雇用して戦闘に参加させることができます。2003年に傭兵という構想システム自体は発表したことがあったのですが、これをもう少しレベルアップさせて公開ということになりました。

編: ナイトやプリーストといった具体的な職業のキャラを雇うことはできるのでしょうか?

Lee氏: できません。3種類からいずれかを選びます。傭兵によってそれぞれスキルがあって、10段階までのスキルが戦闘を繰り返すにつれてにあがっていきます。弓を使う傭兵はプレーヤーにヒールも使ってくれます。

編: 韓国での実装予定はいつでしょうか。

Lee氏: 社内的には9月くらいと見ています。

編: ラヘルのアップデートはどれくらいの期間で完成していくものなのでしょうか。

Lee氏: アルナベルツ全体が韓国の基準で2007年上半期中の完成を予定しています。

編: アルナベルツに関連した、新しい要素はほかにどのようなものがありますか?

Lee氏: 今はまだ企画段階なので詳しくは申し上げられませんが、それとは別に部分有料化を検討しています。これは韓国運営での話なので、日本で採用されるかどうかはわかりません。

編: 部分有料化というのはアイテム課金という感じでしょうか。

Lee氏: 予定としては、パッケージに同梱されているレアアイテムを、有料で販売するという形になると思います。実際には、パッケージで使ったアイテムではなくて、新しいアイテムになる予定です。


■ 今後の「ラグナロクオンライン」展開戦略について

「RO」の評価について思わず回答に詰まるリー氏。運営が長くなるにつれて、ほころびが出てきたコンテンツをどうブラッシュアップしていくのか注目されるところだ
今回ほとんど回答をリー氏に委ねていたホン氏だが、ガンホー元社員の不正アクセス事件については「内部に敵がいた」と遺憾の意を隠さなかった
編: 「RO」全体のことについてお伺いします。開発側から見てどのように評価していますか。

Lee氏: 難しい質問ですね。Gravityを辞めるような時が来たらお話したいと思います(笑)。

編: 「RO」に足りない部分は何だと認識していますか。

Lee氏: 「RO」はサービスから時間が経ってだいぶ古いゲームになりつつあります。最新のシステムを導入も検討していますが、元々のシステム的に問題があるなど、技術的な部分で新しいシステムの導入が難しい部分があります。

編: システム的な古さに対して今後どのように対応していくつもりなのでしょうか。

Lee氏: コミュニティ性が非常に高いというところで、ゲーム全体のユーザー間のコミュニティを盛り上げるような構想や、チャット機能を充実化させてブログと連動させたりということを考えています。

編: 逆に現時点で自信を持っている部分はどこでしょうか。

Lee氏: 可愛いキャラクタとコミュニティがよく出来ているという部分でしょうか。

編: 2004年にインタビューをさせていただいたときに、Leeさん自身の中に理想の「RO」というものがあるというお話をお伺いしました。その理想には近づきましたか?

Lee氏: 難しい質問ですね。まだ自分の理想とは遠いという気がします。2006年の主な課題というのがゲームとしての商品性を高めることですので、それに向かって頑張っていきたいと思います。まだまだやりたいことがたくさんあります(日本語で)。

編: それはたとえばどういったことでしょうか?

Lee氏: 「RO」の長所はコミュニティシステムやチャットベースのゲームシステムだと思います。そうした長所をもっともっと強化していきたい。次世代のゲームとしてブログベースのゲームや自己PRができるゲームのようなものがありますが、「RO」も中でそうした新しい部分を取り入れて連動できるようなものにしていきたいと考えています。

編: 2004年のテーマはゲームとしてのボリュームの充実とストーリー性を高めるということでしたが、2006年のテーマは何でしょうか。

Lee氏: 以前の2004年の目標に追加するものとして、新規ユーザー、既存ユーザーに限らずゲームに易しく取り組めるような環境を作っていきたいと考えていますし、新規のユーザー層を増やしていきたいと思います。

編: 新規のユーザー層を増やす試みが新たなコミュニティ機能であったりブログとの連携であったりするのでしょうか。

Lee氏: そうです。一口に商品性を高めるといってもやり方としてはいろいろあると思いますが、ブログと連動することによって既存のユーザーの満足と新規ユーザーの開拓という点では両方狙っています。

編: 日本では7月にガンホーの社員が不正アクセスで逮捕されるという事件がありましたが、お聞きになってどのような感想をお持ちになりましたか。

Hong氏: どうやって言ったらいいでしょうかねえ。ご存知かと思いますが、Gravityは今年の初めから日本を最優先の順位でサポートしてきました。しかしそうした事件が起きたことに関しては、虚しいといいますか、遺憾だとしか言いようがありません。内部に敵がいたということですね。

編: 問題の根源にあるのはRMTだと思いますが、これに関してはどのような対策を行なっているのでしょうか。

Lee氏: RMTは卑怯な行為だと考えていますが、実際に存在していますし、法律では裁けない。そういう状況ですので、現状のようにアンダーグラウンドなところで放置しておくのではなくて、公式化させ部分有料化に繋げていくことも考えています。

編: 公式的にRMTをサポートするような体制にしていくということでしょうか。

Lee氏: そういうわけではありませんが、こちら側でシステム的な対策を行なうことでアンダーグラウンドでの取引をやりにくくする方策をいろいろと考えています。

編: 「RO」の進化に期待している日本のユーザーに一言コメントをお願いします。

Hong氏: 「RO」のサービスを始めて一番ユーザーさんに気に入って頂いた部分がかわいいキャラクタとコミュニティ性だと思っています。そうした部分を活かして「スーパーマリオ」のような長く愛されるゲームを作っていきたいです。

Lee氏: 心から楽しめないとゲームではないと思いますので、ユーザーさんとコミュニケーションを取りつつ、新しい「RO」を作っていきたいと思います。

編: ありがとうございました。

□Gravityのホームページ
http://www.gravity.co.kr/
□「ラグナロクオンライン」のホームページ
http://www.ragnarokonline.jp/
□関連情報
【8月12日】韓国Gravity、「Gravity Festival 2006」をソウルにて開催
「ラグナロクオンラインII」を本格始動、日本はガンホーが獲得
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060812/grav_01.htm
【2004年11月27日】「ラグナロクオンライン」クリエイターインタビュー
今後はボリュームの充実とストーリー性の高さで勝負
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041127/ro2005.htm

(2006年8月14日)

[Reported by 中村聖司]



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