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会場:Shanhai New International Expo Center
現在中国では、ゲームに関して様々な規制がある。コンソールゲームのハードやソフトが販売できないのはその最たるものといえるだろう。こういった規制が、中国ならではの独特の状況を生んでいる。今回の取材では全体像をとらえられたとは言い難いが、様々なことを考えさせられた。
■ 上海のコンソールゲームは現在並行輸入のみで、マニア向けのイメージ
50mくらいの奥行きのある美羅デパートの地下には、30件ほどの店が幅2メートルくらいの小さなスペースにショーケースを構え、営業を行なっている。だいたい2軒おき、3軒おきの割合で、PS2、PSPやDSといったハードと、数本のハードを販売していた。価格は大体新型のPS2が1,180元(約18,880円)、ニンテンドーDS Liteもほぼ同価格である。価格は店によって幅があり、1,300元(約20,800円)近くの所もあった。もっとも、実際の価格においては値切ることも可能なようで、日本での店頭価格と比べて数千円高い程度、という感じだろうか。ハードは日本製ばかりだが、任天堂の中国での合弁会社iQueが販売したDSもあった。 ソフトの値段は500元(約8,000円)~300元(約4,800円)ほど。ほとんどのソフトはショーケースの中に大事にしまわれており、手軽に見ることはできない。PSPのタイトルが比較的多めだったが、多い店でも20タイトルほど。ハードをこれだけ販売しているのにソフトが少ないのは不自然な気がした。タイトルの販売時期はまちまちで、日本語版以外も、英語版、中国語版もあった。価格だけを単純に比べると、並行輸入品の価格設定はそれほど高くは感じられないかもしれないが、現在、上海の20代の一般的な月収が800~1,000元ほどである。子供はもちろん、サラリーマンですらそれほど気軽に買える商品ではない。 PSPには更に別な事情があった。価格を聞いてみたところ、必ず「1.50版は1,690元、2.5版は1,590元」というように2つの値段を提示するのだ。1.50というのは、PSPのファームウェアのバージョンを指す。バージョンが古い製品の方が価格が高い。実はここには「エミュレーター」の存在が深く関係している。1.50版のPSPでは、メモリースティックを使うことでエミュレーターソフトやゲームのイメージをダウンロードし、色々なゲームを違法にプレイできる。 言うまでもなくこれらの行為は違法行為であり、中国でも処罰の対象になるが、街頭で10元程度で購入できるゲーム雑誌を開くと、わざわざエミュレーターの動かし方が写真付きで解説されており、非常に根の深い問題である。 ちなみに1.50版のPSPは、ほとんどの正規のゲームや、インターネットコンテンツなどを使用できない。PSPは正式タイトルをプレイすると、ファームウエアが更新され、最新のものに書き換えられる仕組みになっている(現在の最新バージョンは2.8)。つまり、1.50版のPSPを購入するユーザーはエミュレーターを使うためだけにハードを購入しているのだ。 この他に少ないながらもGBAの違法ソフトなども販売されており、現状の上海でのコンソールゲーム事情は健全とは言い難い。こういった事情のコンソールゲームに手を出すのは、極めて限られたマニアのみだ。メーカーによるゲームハードの正式販売が行なわれる前の台湾では、コンソールゲームは極めて限られた一部マニアだけのものだった。現在の中国では、政府の規制の下、ユーザーは望んでもゲーム機もハードも入手できない状況にある。かつての台湾以上に、コンソールゲームは上海のユーザーに縁遠い存在であることが感じられた。 個人的には、やはりこれは残念な状況だと思う。ゲームメーカーの多くは、幅広いユーザー層を意識し、「健康的」なゲームを作るために努力をしている。ハードメーカーも、ソフトメーカーも独自の規約を設定し、健全なゲームを作るために最も努力しているがコンソールゲーム業界といっても過言ではないだろう。
規制や規約は必要ではあると思うが、コンテンツと正面から向き合わないまま一方的に下される決まりは、健全な未来を模索する方法論さえ禁じてしまっているようで、ゲームファンにとっては残念なところだ。
■ ゲームセンターは新旧混合のカオス空間
その中でも主流の遊びであるリデンプションゲームは、日本で言う「メダルゲーム」のこと。日本のメダルゲームと違うのは、ゲームをプレイして得られるのがメダルではなく“クーポン券”というところだ。このクーポンは思わず笑ってしまうほど大量に出てくるのが特徴で、数枚コインを投入すればたちまち何10枚という数のクーポン券が出てくる。片手でどうにかクーポンの束をつかまえながらゲームに興じる子供たちの姿は非常に印象的だった。 クーポンの束を持っていくと、店員がクーポンを計数機に入れてくれる。カウントされた数に応じて景品に取り替えてくれるのだが、数十枚、数百枚単位で持ち込まれるので、カードが詰まったりうまく入らなかったりと、交換所の前はすぐに計測を待つ人の列ができる。自分の獲得したクーポンの束を他のユーザーにさらりと見せ付けるということもリデンプションゲームの楽しみの1つのようだ。 クーポン券は数百枚で文房具やぬいぐるみと交換できる。店によっては、加湿器や電子炊飯器のような高額商品を用意している所もあった。目にした中で1番高い景品は携帯電話だった。家電は5,000枚~8,000枚ほどのクーポンで交換できるが、携帯電話は10万枚を越えるものまであった。 なお、アーケードゲームでは、どの店舗でも、すべての筐体に上海市の「認可証」を貼っているということが大きな特徴だろう。2000年に44号文書が発効されたことにより、現在中国では、表向き新たにビデオゲームの筐体を増やすことができない。しかし、実際には筐体はそのままで中身を代えるといった方法で、新規タイトルが導入されている。 このような状況のため、筐体のコンディションは悪く、傷が目立ち、レバーやボタンもがたがた、という筐体が多かった。「真サムライスピリッツ」の横に「鉄拳」の最新作があったりと稼働タイトルは新旧様々だ。ゲームは英語版、日本語版がほとんどだが、台湾のゲームメーカーIGSの中国語版のゲームも確認できた。 一方、大型筐体は「頭文字D Arcade Stage Ver.3」や「THE HOUSE OF THE DEAD 4」といった最新タイトルも見られた。どういった経緯で認可されたかわからないが、1つのゲームセンターの中でいろいろな時代のゲームが設置されている光景はまるで「ゲーム博物館」のようで面白い。クレーンゲームは、いずれもアームの力が強く、置かれている景品の位置を問わずしっかり引っかかれば1回で取れる。ただし価格は少し高めで、通常のゲームのプレイが1枚のコインでできるのに対し、コインが4枚必要なものもあった。
店舗によっては、1つの筐体で10タイトル以上のゲームが遊べるものや、日本のゲームを参考に、オリジナルのキャラクタをかぶせただけのように見えるゲームなど、グレーゾーンを感じさせるものもあった。上海のゲームセンターは、厳しい規制が逆により混沌とした空間を生んでいる、という印象である。
■ 健全で安価、クリーンなイメージのある上海のネットカフェ
もっとも、中国のネットカフェは、政府によって「全体を照らす照明をつける、小中学校から200メートル以内のネットカフェでの休日以外の未成年者立ち入り禁止」など様々な規則が設けられている。台湾や韓国では極めて劣悪な環境のネットカフェが目に付くが、中国では政府の指導がいい方向に働いている。 今回見ることができた店舗でのユーザー層の主体は20歳~30歳の男女。ゲームにかじりついているユーザーがいる一方で、ブラウジングやチャット、映画鑑賞といったゲームコンテンツ以外で過ごしていた。自宅にはパソコンが無く、基本的にインターネットはネットカフェでというユーザーも多いようで、利用コンテンツの割合的に見てもかなり日本のネットカフェでのPCの利用方法に近い。 ネットカフェに来ている大半のユーザーは中国で普及しているメッセンジャーソフト、「QQ」を起動していた。ビデオチャットも人気で、カメラの向こう側のユーザーと話しながらカジュアルゲームを楽しむ姿が印象的だった。一番人気は9YOU「Audition」。他に「FreeStyle」や「QQ」から起動できる将棋なども人気。欧米のタイトルでは「Warcraft」シリーズや「カウンターストライク」が人気があった。 利用料金は1時間あたり3元(48円)からとかなり安いが、3時間パックや5時間パックといった割引プランはない。部屋はそれぞれ、3元、5元といったように値段でランク付けされているが、基準は、“CRTモニターか液晶モニターか”、“17インチか19インチか”、“ウェブカメラが使えるか”といったところで料金に幅を持たせていた。カジュアルゲーム中心の低スペック動作タイトルがメインストリームで遊ばれているだけに、CPUやビデオカードといったPCのスペックが利用料金に結びついていないようだ。 今回、上海のネットカフェを訪れてみて、台湾や韓国のネットカフェに比べると、明るく、安価であることに驚かされた。中国政府の規制と監督が厳しいことが、ネットカフェの健全性を生んでいると感じられた。
□China Digital Entertainment Expoのホームページ (2006年7月31日) [Reported by 勝田哲也/三浦尋一]
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