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会場:Shanhai New International Expo Center
しかし、今回のChinaJoyでは、「今までとは違うゲームを!」と考えていた制作者の思いが花開いたかのような完成度の高いコンテンツが生まれ始めている。本稿では今回出展した韓国メーカーブースレポート、という切り口でいくつかのタイトルを紹介したい。
■ 制作会社に出資し、パブリッシャーに紹介する“ゲーム配給会社”Sidus
ブースでは、コミカルなキャラクタがレースを繰り広げる「Super Jam」、ラジコンカーを操作するレースゲーム「RC ONLINE」、多数のキャラクタが銃撃戦を繰り広げる「BTZ ONLINE」、水墨画のようなグラフィックスの武侠MMORPG「破天一剣2」をプレイアブルな形で出展。さらにパンチングマシーンや、実際にラジコンで遊べるコーナーなどを設置し、ユーザーにアピールしていた。 現在韓国国内ではたくさんのゲーム開発会社があるが、うまく制作が進まなかったり、パブリッシャーとうまくいかなかったりと、ユーザーがプレイできる前に制作中止になってしまうゲームが多くなっている。こういった状況でSidusは、コンテンツを審査し、出資を行なうことで韓国国内でクローズドβの段階まで開発をバックアップしたところでパブリッシャーを募るという。 ChinaJoyでの出展も、中国のパブリッシャーへのアピールという側面もあるという。映画配給会社のノウハウをゲーム産業で活用しようというユニークなスタンスを持つメーカーである。中国、韓国にとどまらず、日本でもタイトーの「武刀街」のオンラインゲーム化権を取得するなど活発な活動を行なっている。 今回Sidusが出展したタイトルはカジュアルゲームが中心だ。これは韓国では「1つのMMORPGをメインとして、複数のカジュアルゲームをプレイする」というスタイルが多く、パブリッシャー側も運営が大変なMMORPGよりもカジュアルゲームを好むという傾向があるからだという。 ブースでは、他のプレーヤーが遊ぶ姿を見て後ろに並び、すぐに操作を覚えてゲームを楽しむユーザーが多かった。今回特に印象に残ったのは、各タイトルの技術の高さである。日本のコンソールゲームとも引けを取らないグラフィックスや軽快な操作性は、以前の韓国のカジュアルゲームでは実現できていなかった部分である。韓国の制作者のレベルアップを感じさせる作品が多かった。
多くのオンラインゲームを制作、運営している韓国でも、のようなスタンスを持つSidusはユニークな存在である。より新しく、楽しいゲームが生みだすために、メーカーがどんなアプローチをこれから行なっていくのだろうか。
「蒼天」、「青燐」、アクション性の高い2作品をを大きく出展したwemade
「蒼天」は「三国志演義」を題材にしたMOタイプのオンラインアクションゲーム、プレーヤーは三国志に登場する英雄を操り、敵と戦っていく。フィールドにはたくさんの敵兵士が待ちかまえており、プレーヤーを取り囲む。キャラクタは槍や剣を振り回し、群がる敵をなぎ払い、フィールドを進んでいく。 ゲームの展開、テーマなど、ぱっと見ただけでも、本作がコーエーのアクションゲーム「真・三國無双」を強く意識したゲームであることが伺える。武将が画面の右下に現われ、プレーヤーにアドバイスをするところもそっくりだ。 「蒼天」はその美しいグラフィックスに大きな特徴がある。キャラクタの武器防具はとても細かく描き込まれ、とにかく他の人がプレイをしていると自分もプレイしてしまいたくなってしまう。キャラクタはきびきび動き、技のモーションもしっかりとしていて、必殺技はド派手だ。 しかし、実際に触ってみると、敵はプレーヤーを待ち受けているだけで、戦場を駆け抜けるという臨場感に乏しい。まだまだこれからのタイトルという印象を受ける。wemadeが本作をプレイアブルな形で出展するのは今回のChinaJoyが初めて。まだまだ開発中のタイトルなのだ。 本作の韓国でのテスト開始は、2007年の最初を予定している。韓国で11月に開催される「G★2006」ではより完成された作品を出展する予定だという。今後、どのような方向に作品を煮詰めていくかは興味深い。コーエーは、シリーズの感触を受け付きながらオンライン対戦アクションというベクトルで、「真・三國無双BB」を生み出した。「蒼天」にもユーザーに驚きをもたらすような作品になることを期待したい。 wemadeブースでは、「青燐」もまた多くのユーザーの人気を集めていた。こちらはかわいらしいキャラクタが活躍するオンラインアクションゲームだ。本作の最大の特徴は、プラットフォームがPCであるにもかかわらず、試遊台にキーボードを置かず、ジョイパッドだけでプレイさせていたところだろう。 キャラクタはプレーヤーの操作に合わせてジャンプをし、攻撃をする。フィールドにも仕掛けがてあったり、コンソールの3Dアクションゲームに劣らない作り込みが感じられた。こちらも2007年にサービス予定とのことで、オンラインゲームとしての楽しさを付加していくのはこれからだ。 ジョイスティックでの操作は、特に子供達に人気が高く、実に楽しそうにプレイをしているユーザーが多かった。現在、韓国・中国のオンラインカジュアルゲームのほとんどは、キーボードでの操作を前提としているが、インターフェイスをパッドにすることで、今まで以上の若年層のユーザー達にもアピールできるのではないか、と感じさせられた。
今回のChinaJoyではゲーム制作者のレベルアップを確かに感じさせられる質の高いコンテンツが増えていることを実感されたが、wemadeは特に挑戦心を持ってコンテンツを制作している会社だと感じた。今後の活躍にも期待したい。
■ Webzenは、「一騎当千」一タイトルに絞ってブースを展開
「SUN」や「MU」、「Wiki」など多くのタイトルを展開・開発中のWebzenだが、今回はオンラインアクションゲーム「一騎当千」の1つだけを、多数の試遊台で紹介するという手法をとっていた。他の国でも何度かWebzenの取材をした筆者にとってはいささか意外だった。 スタッフによれば、今回1つのタイトルに絞った出展を行なったのは、「一騎当千」の前評判が非常に高いこと、そしてなにより「一騎当千」がWebzen中国のオリジナルタイトルであり、特にこのタイトルをプッシュしたかったためだという。 「一騎当千」は三国志演義をテーマにしたオンラインアクションゲーム。プレーヤーはバトルフィールド上で、矛を振り回したり、幻術で竜巻を巻き起こしたりして他プレーヤーと戦いを繰り広げる。スキルを効果的に発動させるためのタイミングや、遠距離攻撃をしてくる敵にどう近づき剣で斬りつけるかなど、アクションの駆け引きが楽しい作品である。 会場でのユーザーの注目度はとても高く、プレーヤーの周りにギャラリーが集まり、試遊台の周りはいつも混み合っていた。実際に本作を触ってみると、多少大味さを感じるが、攻撃のアクションが楽しく、敵を狙うことに夢中になってしまう。エフェクトも派手で、軍師の稲妻攻撃で多くのプレーヤーを一度に攻撃したときは強い爽快感を感じた。 ただ、激しくプレーヤーが入り乱れるゲーム性のためか、ラグでキャラクタが操作できないこともあった。バトルフィールドと一般フィールドの区別もなかったため、出現した瞬間に集中攻撃され、また復活する、という展開もあって、ちょっとゲームの完成度に疑問を持った。 実は本作は6月に一度オープンβテストを行なったが、現在ゲーム全体のブラッシュアップを計り公開を中止しているという。特にサーバープログラムに「ラグナロクオンライン」に関わっていたスタッフを迎え改良を行なっている。試遊台を触った限りでは、まだプレーヤーが望むスピード感を実現させるためにはもう一段ハードルを越える必要がありそうである。
ブースとコンテンツからはスタッフの気合い、とユーザーの期待の大きさを強く感じることができた。「多くのプレーヤーが広大なフィールドで、スピード感のある戦いを繰り広げる」というテーマは、現在、多くの制作者がチャレンジしている課題である。「一騎当千」の制作者は、どんな形でこれに応えてくれるだろうか。
□China Digital Entertainment Expoのホームページ (2006年7月30日) [Reported by 勝田哲也]
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