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BBA、第9回研究会「みえてきたオンラインゲームの未来像」を開催
ゲームと違法賭博との線引きに揺れる韓国ゲームポータル

7月21日開催

会場:東京大学 本郷キャンパス 山上会館

 有限責任中間法人ブロードバンド推進協議会(BBA)の傘下組織オンラインゲーム専門部会は7月21日、東京大学本郷キャンパスにおいて、第9回研究会「みえてきたオンラインゲームの未来像」を開催した。

 「みえてきたオンラインゲームの未来像」では、オンラインゲームの今後の進化を比較的分野の近いウェブの進化をテーマに、駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部助教授の山口浩氏と、韓国中央大学助教授でコンテンツ経営研究所所長の魏晶玄氏による講演が行なわれた。

 両氏の講演とも次世代のオンラインゲームとは何か、どうあるべきかといった哲学的な内容で、エンドユーザーにはあまり関係のない話だ。しかし、Web 2.0に象徴される産業構造の変化は、同じくオンラインゲームにもパラダイムシフトをもたらそうとしている。両氏とも経営学という専門分野からの学術的観点から、こうした点に迫った。

今回講演を行なった韓国中央大学助教授でコンテンツ経営研究所所長 魏晶玄氏(左)と駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部助教授 山口浩氏(右)


■ 韓国PCバンでの賭博行為の批判の矛先はゲームポータルへ

 韓国の中央大学助教授である魏晶玄氏は「日本のオンラインゲームの進化・発展の方向性は正しいのか」と題した講演を行なった。

 魏氏は講演の冒頭で、日本で流れている韓国の情報が実情と大きく違うという現状を報告。逆に日本の情報も韓国に表面的には伝わっているが、同じく解釈や捉え方となると大きく異なっているとし、日韓を行き来する魏氏ならではのソウルからの最新ニュースを紹介した。

 特に魏氏が取り上げたのが韓国のPCバンで行なわれているという違法賭博の実態報告。賭博行為を行なっているPCバンは「成人PCバン」や「射幸性PCバン」と呼ばれている。客はまず違法営業を行なっているPCバンに行き、掛金を店員に支払う。次に指定されたゲームポータルや店で用意したゲームサーバーで花札やポーカーといったゲームをプレイする。

 ゲームに勝った場合には店員から点数を書いた紙を受け取り、その紙を持って店の前に停めてある車の中に入ると、紙と引き換えに現金を受け取ることができる。韓国に2万店舗存在するとされるPCバンのうち、実に20%にあたる4,000店舗がこうした違法営業に手を染めていると報告。今年6月までの半年間で実に1,300件約8,500人が立件されたことを紹介し、韓国全体で一大騒動になっていると説明した。

 魏氏はオンラインカジノとゲームポータルとの、射幸心を煽るという部分での明確な線引きが必要な点を強調した。オンラインカジノのポーカーで使われるゲームのシステムも、ゲームポータルで使われるゲームのシステムも基本的には同じだ。このため、稼いだゲームのポイントを使ってアバターのようなサービスを手に入れられる一般的なゲームポータルのシステムが射幸心を煽りすぎるとして批判にさらされているとした。ゲームポータルがゲーム性との微妙なバランスを取っていく中で、当局の監視も厳しさを増し、現在ゲームポータルの存亡を揺るがす事態になっていると述べた。

 ちなみに日本のパチンコ店に相当する「成人ゲーム場」はソウル市内を歩いていても簡単に見つけることができる。中に入るとメダルゲームが一様に置かれ、競馬やメダル落とし等のプレイで得た商品券を外の関連店舗で換金するのが一般的だ。韓国ではアーケードのメダルゲームは成人向けにカテゴライズされ、韓国のゲームショウ「G★ 2005」でも成人向けエリアに「成人ゲーム場」向けのメダルゲームの筐体が多数出展されていた。こうした既存のギャンブル施設との政治的な駆け引きにも原因がありそうだ。

魏氏は他に韓国でサービス中のオンラインゲームについて述べ、NEOWIZ「FIFAオンライン」が同時接続18万人を記録した一方でMMORPGの苦戦を報告。NEXONの「ZerA」は失敗し、Webzen「SUN」は健闘、Hanbit「Granado Espada」の人気はまだまだ様子見の状態と報告。相変わらず手厳しい


■ 韓国次世代ウェブ「知識in」にみるオンラインゲームの哲学

車のパーツをモジュール化したおかげで、ユーザーの細かい需要に応えられるようになった例を紹介
次世代ウェブの概念を「開放性」、「参加」、「共有」、「連結」という言葉で説明した
Naverの検索画面。知識検索以外に統合検索やブログやイメージ、映像、ニュースといったレイヤーで検索することができる。「以前にPCバンでゲームのやり過ぎで死亡した人についての記事を張ってください」という質問に対する回答に、魏氏の名前が登場
 魏氏は韓国での次世代ウェブとして、検索サイトで7割のシェアを占めるNaverから「知識in」を紹介。日本で「ハンゲーム」を展開しているNHNが提供している「知識in」は日本の「はてな」に相当するような、ユーザー間のQ&Aを検索するサービス。2000年から蓄積したユーザー間のQ&Aを2002年から検索サービスとして提供されている。

 Naverの検索画面が示され、「魏晶玄」という単語を例に知識検索をかけると様々なQ&Aのシチュエーションで登場した魏氏の名前がヒットする。さらに一部OPEN APIになっており、インターフェイスをユーザー自身の好みに変え、公開することができる。

 これら次世代ウェブの特徴を、誰にでもオープンな「開放性」、みんなが一緒に「参加」、みんなのものとして「共有」、どこでもいつでも「連結」という4つの単語でまとめた。その上で、これらは元来オンラインゲームで実現してきた精神であると述べ、真新しいものではないとした。

 魏氏はガソリンエンジン車とモジュール型の燃料電池車の違い、NEC PC98シリーズとIBMのPCの違いをコンソールゲームとオンラインゲームの違いに合わせて説明。単体としては性能が弱そうに見えたそれぞれの後者が、とりわけサードパーティの充実によって前者を押しのけた例を取り上げた。

 成功した要素としてインターフェイスの標準化、共通化とサービス構造のモジュール化、サードパーティの活性化という3点を抽出した。オンラインゲームの海外展開の際、海外パブリッシャーはどこもその国の実情に即したアップデートやイベントを打っていきたいと考えている一方で、なかなか韓国の開発陣に伝わらないといった現状を踏まえ、これらの点は必要不可欠だとした。

 次に魏氏は様々なコンシューマービジネスが駆逐されつつある現状を説明。2万人に及ぶ市民記者による「オーマイニュース」や自分のモニター画面を放送可能な「Afreeca」で、一般市民がリアルタイムで記事を配信している現状を紹介。締め切りの存在する新聞各紙は軒並み死に体だと説明。エリートとして存在しているコンテンツ製作集団である新聞社が素人の大多数の集団に駆逐されようとしているという現状を解説した。

 また韓国では人々の表現活動の場としてオンラインゲームも重要なアプローチとなっているという。「君主オンライン」ではゲーム内の有志によるニュースが紹介された。原稿を読むアナウンサーは現役の女子アナで「君主オンライン」のユーザー。本物のテレビのニュースを見ているような映像だが、リアルなウソニュースとゲーム内の本当のニュースを流している。放送関係の法律に抵触しないための措置だそうで、ゲーム内で起こるデモ行動や活発な意見交換がメディアの影響力としても看過できないものになってきているようだ。

 最後に日本のゲームはコンソール市場の影響でサービスとしての認識が弱く、青少年の人材育成という点でも、韓国ではサイワールドというオープンなコミュニティに人気が集まっているのに対し、日本ではmixiのような閉塞的なコミュニティに人気が集まっていることに懸念を表明。バーチャル世界の人口がさらに増えて一層グローバル化が進展した際に、世界の中で日本のユーザーが取り残される要因になりうるという見解を示した。

 しかしながら魏氏の言うように、Naverやサイワールドがオープンかというと実はそうでもない。外国人がNaverの新規登録する際にはハングルで書かれた「外国人」というボタンをクリックし、さらにはハングル表記で書かれた自分の国名をプルダウンから探し出して選択しなければならない。

 また、サイワールドでも同じく国民番号を持たない外国人はサイワールドの事務局まで免許証等を物理的に送付する必要があり、プロセスはすべて韓国語を理解している必要がある。外国語圏の人々には根本的にサービス対象から除外されているため、サービス対象となる人口の母体数から考えてもどの程度まで多くの人に開かれているのかそもそも疑問である。

 また、日本でサービスされているサイワールドと韓国のサイワールドでは、今のところフレンドリストに追加したり、プレゼントを贈るといったことはできず実際のサービスの互換性は無い。まるで隔絶したゲームサーバーのワールドそのものである。

 mixiの場合はコミュニケーションを取れる間柄の人が招待をするので、外国人であれ少なくとも登録や利用までは招待をした人に面倒を見てもらえるはずである。そうした点でどちらが閉塞的かと考えると、韓国のほうが圧倒的に閉じたコミュニティであるといわざるを得ない。

 今回の講演では、オンラインゲームの未来というよりは、新しいネットワークテクノロジーに対する人々の意識を問う側面が強かった。オンラインゲームがコンテンツからメディアへのパラダイムシフトを多くのユーザーは乗り越えなければならないという点で、今後研究会がエンドユーザーやオンラインゲームに触れないユーザーに対しいかなる提言を行なっていくのか期待したいところだ。

山口氏の「ウェブサービスとしてのオンラインゲーム」と題された講演では、梅田望夫氏の「ウェブ進化論」から、総表現社会の到来による産業界やメディアビジネスの構造変化を説明。メディア構築にかかるコストが劇的に下がることにより、人々の最も貴重な資源は“時間”に集約されていくとした。人々がゲームに支払う平均額が下がることで生じる、ゲーム企業の体質の変化の必要性を指摘。オンラインゲームそのものがエンドユーザーの生活やビジネスのプラットフォームとして捉えられ、単なるゲームから大きな役割を果たしていく可能性を示唆した

□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bbassociation.org/
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(2006年7月24日)

[Reported by 三浦尋一]



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