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会場:ガンホー・オンライン・エンターテイメント本社
「ECO」は、まだまだ数が限られる純国産MMORPGのひとつだが、メジャーアップデートに関しては他の国産MMORPGとは異なり、拡張ディスクビジネスを採用せず、「ラグナロクオンライン」など韓国産MMORPGと同様に、完全無料によるアップデートを貫いている。また、アンケートやコンテストなど、ユーザーが気軽に参加できるユーザー密着型の運営スタイルも特徴のひとつ。中でもβテスト開始以前から始まった「みんなで作ろうキャンペーン」シリーズは、現在に至るまで継続しており、ユーザー発の多くのアイデアがゲーム開発や運営に役立てられているなど、ユニークな運営が目立つタイトルである。 同作の場合、ユーザーの意見を吸収しすぎるあまり、オンラインゲームとしてのポリシーが不透明になりがちなところがネガティブな材料として挙げられることもある。これは、ユーザーの意見を聞きすぎるとゲームの世界観の整合性やゲームバランスがゆがんでしまうことを前提にした考え方だが、体験会、そしてインタビューを通じて運営チームに話を伺ってみた限りでは、運営とユーザーの間で、綺麗に幸せのサイクルができあがっており、オンラインゲーム運営のひとつの理想型だという印象を受けた。ユーザー主導型の運営でもオンラインゲームは回していけるという好例だと思った。 今回は、その仕掛け人である開発本部コンテンツ制作部第四制作課課長 岩田容賢氏と、マーケティング本部第二マーケティング部第一企画課課長代理 山本征幸氏の両氏に、「ECO」の最新アップデート「SAGA 4:興国の風」の内容と、「ECO」全体の今後の展開について話を伺った。
■ クローズドβテストからもうすぐ運営1年、これまでの「ECO」を振り返る 編: 実は「ECO」の正式サービスが始まってから、運営チームにインタビューするのは今回が初めてです。正式サービスから今回の「SAGA4」まで、どのようなアップデートを行なってきたのか。簡単な「ECO」の歩みを教えてください。
マップに関しても、当初は上や下の世界も企画していたのですが、それよりもユーザーさんから意見をいただき、我々も「これは必要だったね」と思う部分に手を加えて調整しながらやっていったという形になります。 ですから、一番最初に引いたラインからはかなりずれていたり、予定より遅れている部分もあるのですが、その代わりに新しく派生した枝があって、調整しながらバタバタと1年間やってきたという感じです。 編: 現在の「ECO」は、MMORPGとしてどういった方向性を狙っているのですか? 岩田氏: 最初は「簡単、やさしい、楽しい」というテーマで、やってみたら楽しくて、あちこちにやり込み要素があるものにしよう、ということでスタートしました。現在もそこから大きくは変わっていませんが、「ECO」の世界が好きでずっと遊んでくださる方と、新しく入ってくださる方、この2つのユーザーさんを、どうやって接点を持たせて結びつけていくかが課題だと思っています。 そもそも口コミで作られたコミュニティは一番強いのですが、現在これだけゲームがあると、メインでプレイしているゲームがあって、その上にサブがあって……という方も多いと思いますし、「ECO」が初めてのMMORPGではない、という人もいると思います。プレーヤーなりの思いや、ポリシーをゲームに持っている人達が以前より多くなっています。昔よりも様々なゲームをプレイしているユーザーに、どうやって「ECO」をプレイしてもらうかは、今後のテーマの1つです。 編: この1年間の運営に関して、チーム内でどのように評価していますか? 岩田氏: まず反省をしなくてはならないのは、私たちとしても初めてのことだらけだったので、実際にやってみたらこうしたら良かったとか、ああいう風にするべきだったとかいうことがいくつもあったことですね。他のゲームの運営に関わってても、教えていただくことがたくさんありました。それでも1年間やってきて、色々な経験を積むことができました。今後はこれを活かしながら、ユーザーにアプローチをしていきたいと思います。
■ 11種類もの新しい職業が追加されるSAGA4。ジョブバランスはどうなる?
岩田氏: 初期の構想が全部入るということで、1つの完成形だと考えています。もちろん、まだまだ足りないものや、開発を進めているものはあるのですが、1つの「ECO」の形がこれで見えたのではないかなと。 編: SAGA4では11種類ものテクニカルジョブが一気に入りますが、ジョブバランスは大丈夫なのですか? 岩田氏: これまでの新しい職業を導入した時も、私たちの方で試行錯誤してバランスを調整しています。こちらとしてもちゃんとバランス取れているか、すごくドキドキしているというのが本音ではあります。当初の予定では、テクニカルジョブはエキスパートジョブとの対ではなく、同じ一次職から直接テクニカルジョブになるということを考えていました。 しかし、そうなるとバランスを取るのがさらに難しくなってしまい、開発でもちょっと振り切れない部分が出てきていました。こんな職業ができて、こんな特色を持っていて、ユーザーさんにも喜んでもらえる。こういったアイデアはたくさん出てくるのですが、しかし、その職業は今のゲームバランスで育成できるのか、友達に仲間はずれにされないか、といった問題が出てきます。 こういったことを解決するために、スイッチングという形で、両方のスキルが使えて、自分の好きな時にジョブを変えることができれば、テクニカルジョブの特性がかなり振り切ったコンセプトになっていても、現在のバランスで大丈夫だろう、と作ってみました。 編: ジョブスイッチングシステムはとてもユニークなシステムですが、AとBの職業を動的に切り替えられるこのシステムは、どういったコンセプトで実装されることになったのですか? 岩田氏: 今まで私たちが関わってきた韓国のゲームは、キャラクタを成長させる時に、一度ステータスの割り振りを失敗するともう2度と取り返しができない、もう一度キャラクタを作り直さなくてはいけないという割とシビアな設定のものが多かったと思うんです。 「ECO」では、もっと自由にやらせてあげられないかなということで、スキルリセット、ステータスリセットを、当初は期間限定とアナウンスしていましたが、結局現在に至るまで残しています。 アップデートでバランスが変わったら、それに合わせてユーザーがキャラクタを変えてみる形で、言い方は失礼ですけど、バランス調整にご協力をいただいている形で、ユーザーさんにお付き合いいただいています。 ユーザーさんからは、「テクニカルジョブが導入されると、職業の色を活かしきれなくなるのでは?」という声もいただいています。「スイッチできるならば、その職業で頑張っている気持ちがそがれてしまうのではないか」という意見もありました。 その一方で、職業を切り替えつつ、気に入ったスキルはリザーブスキルとして継続できるということは、1つのキャラクタに対する思い入れをより強くしてもらえるんじゃないかと思っています。それがスイッチの面白いところかなと。 編: 今回、新しいジョブとスキルが導入されましたが、まだ発展途上ですよね。今後ジョブレベルの上限の引き上げや、それに伴う新しいスキルの追加など、ジョブまわりのアップデートプランはどのような計画を立てているのですか? 岩田氏: 現在の予定ですと、実装時のテクニカルジョブのレベル上限は30になっていて、そこまでのスキルが実装されています。その後はエキスパートジョブをやった方が良いんじゃないかなと思っています。 ただ、ユーザーさんから、「テクニカルの方が面白いから早くレベルキャップを開放してくれ」という意見が多かったら、我々としても考えなくてはいけないですね。私たちは、「このスキルは面白い」というアイデアをこつこつ貯めているので、これをどんなタイミングで実装するか、ユーザーさんの反応を見ながら決めていきます。 編: テクニカルジョブ専用の装備やクエストなどもあるのですか。 岩田氏: テクニカルジョブは既存の職業の装備品に加えて、トレジャーハンターの鞭や、ガンナーの銃、バードの楽器などが登場します。テクニカルジョブ以外にも、たとえば、ずっと昔から「アサシンはなんでクローを両手につけられるのに、短剣を両手で持てないんだ」という意見をずっと投稿してくださる方がいるんです。こうした意見にも応えたいなと思うんですが、他にも開発しなくてはいけないものがたくさんあって、ジレンマですね。 ゲームが落ち着いてくれば、こういったユーザーさんの要望にどれだけ対応できるのか、開発と相談して考えたいと思っています。それがユーザーさんが感じてくれる魅力になり、我々のやりがいになるでしょうし。 編: テクニカルジョブはPvPを意識したスキルも多く、色んな意味でとんがったジョブが揃っていますが、これらはどういった遊び方を想定しているのですか? 岩田氏: まず、「戦う」という要素は、「ECO」の簡単、やさしい、たのしいというところから外れちゃうんじゃないの? と思う一方で、やはりないとつまらない。一部のユーザーが勝って利益を独占できるような形ではなくて、誰でもどこの軍隊に参加できて、運動会のように盛り上がる形ならば面白いだろうと、騎士団演習を入れてみました。 現在、東西南北各100人、全部で400人で戦うことができるのですが、そこでコミュニティができたり、いつも勝つプレーヤーや、参加するのを楽しみにしているプレーヤーがいらっしゃったりするので、ここにテクニカルジョブが入っていくことで、どうなるのか。 私たちはPvPをまだ「ECO」のコアだとは考えていなかったのですが、新しい騎士団演習の形やギルド戦のようなものがほしいといったことなどたくさんの要望をいただいています。スキルとバランスが調整できれば、後は、ユーザーさんに遊び場を提供するだけなので、新ルールの騎士団演習など、新しい遊びを提示していけるかもしれません。その時にユーザーさんが、自分が使うことができる手数が増えていることでより楽しんでいただければいいかなと。 編: ようやく今回で一通り実装できて、4カ国揃いました。今後、国同士の戦い、騎士団同士の戦いを期待していいのでしょうか? 岩田氏: 今まではわけもわからず西軍に入ってしまった方にとっては、母国であるモーグが未実装でどうすればいいの? といったこともあって、なかなかうまくストーリーを転がせない部分もありました。これからは自分たちの所属している街が明確になって、ストーリーを回していくのも自然になります。 「ECO」のバックストーリーでは、4つの軍がすくみ合いになっているというのがあるので、ここで戦争が起きてしまったらどうなるだろうというのもあるのですが、演習じゃない騎士団の戦いや各地でもめ事が起きるスペシャルクエスト、シナリオもこれから発生しても面白いですね。 編: 今後はそういったRvR(Realm vs Realm:国対国の戦い)的な仕様も増えていくのですか。 岩田氏: 企画はいくつかは残していますが、一応は基本的な要素は実装しました。今後は、やはりMMORPGとして必要な要素を実装していこうかと。RvRに関するユーザーさんの要望が強いのであれば、どこまでお応えできるか、というところですね。
■ ユーザーの意見を積極的に吸収するのが、「ECO」のポリシー 編: 「ECO」はコンテストという形や、そのままユーザーの意見を取り入れたりと、ユーザーの意見の反映率が非常に高い印象を受けますが、これはどういったコンセプトに基づくものでしょうか。
自分たちの意見でゲームがダイレクトに変わったり、一夜でゲームバランスが変わってびっくりするけれども、その分新しい発見があって楽しかったり、自分たちで情報を探っていったりするような、そういう体験をしてもらいたいと考えていました。 日本でも国産オリジナルコンテンツでプレイをしているユーザーさんは、そういう体験をしているとは思いますが、我々はそういうことをやっていなかった。それでユーザーさんの反応を見たかったし、一緒に作ってみたかったのです。 編: 「ECO」はユーザーの意見を積極的に取り入れるあまり、運営側、制作側のポリシーが見えにくいという部分がありますが、むしろユーザーの意見を吸収する、というのが1つのポリシーだと? 岩田氏: そうですね。中にはずっと要望を出してもらっているけど、システム上難しかったり、はなから「ECO」というゲームに合わないために、はじいている意見も残念ながらあります。そういうところで運営や開発が持っているものはかっちりあるのですが、それ以外のところで、ユーザーさんが求めているのならばまずやってみましょう、というのは1つのポリシーかと思います。 編: 「ECO」の有料化後の変化で、私は“視点の開放”を大きく挙げたいのですが、これが実現したのは、制作側なのか、それともユーザーの意見なのかどっちなのでしょうか。 岩田氏: そもそも、私たちがヘッドロックさんのところでようやく動き出したゲームを見せてもらった際に、視点がクォータービューなのは仕様だと聞いていたのですが、こちらの判断ではやはり苦しいなと思っていました。せっかくの3Dキャラクタなのに近付いて見れなかったり、ゲームを楽しむ上で大きな足かせになっていると感じていました。 ただ、視点を制限することで軽く動くようになったりとか、コストパフォーマンスが良くなっているところは確かにあったので、とりあえずこれでいきましょうということになりましたが、これはどこかの段階で大きな問題になるよね、ということを感じながら運営を始めました。実際に始めてみると、この環境だからゲームを始められたユーザーさんも多かったのですが、予想通り、もう少し視点が何とかならないのか、という要望がすごくたくさん来ました。 そこで開発元と打ち合わせを重ねた結果、そんなに言うんだったら試しにやってみましょうということで、視点開放のテストエリアとして「タイニーアイランド」を実装してみました。実際動かしてみると、重かったり、正常に表示されなくなったという報告もあったのですが、不具合の報告は思ったより少なかった。そうなると、現在遊んでいるユーザーの大部分は、今後受け入れられるかもしれないと。 それならば今後追加していくマップは土台だけでも作っていこうと、視点開放を対応可能な形で作っていきました。SAGA3以降のマップに関して、3Dでいけるところは視点開放でいこうと。既存のマップも、一部視点変更に対応したマップに差し替えています。 編: 今回のモーグや光の塔に関しても3Dの高低差を活かした、見上げたり、見下ろしたりするのが楽しいマップですが、これも視点を開放したからこそ実現できたアイデアですよね。 岩田氏: そうですね、ぶっちゃけてしまうと、視点開放がオッケーになってしまったら、あとはヘッドロックさんのこだわりだったり、思い入れになりますので。企画も制限がなければ、自分たちでもワクワクするようなものを作れることが多いので、我々も後から見て同じところで「わあっ、すげえ」と、同じように感じると思いますね。 編: クリエイターの魂を感じる要素といえば、マシンナリーのロボットが、他の職業の人から見ればちょっとズルいんじゃないかと思ってしまうぐらい凝っていますよね(笑)。 岩田氏: 確かにロボットは現状マシンナリーしか乗れません。それにしてはあまりに豪華だし、男の子としてはたまらんという感じですよね(笑)。ただ、将来を見越して、マシンナリーしか絶対に乗れない、というようには作っていません。多分実装すれば、「私たちも乗りたい」という要望が山ほど来るので、ミニチュアにして乗せてあげたら満足してくれるのかな、といった落としどころを探さなくてはいけないかなと。 山本氏: 武器とか手とかなくていいから乗りたい、という要望絶対来ますね(笑) 編: 要望が多かったら全ジョブに、ということですか。 岩田氏: 本当にその要望ばっかりだったら、こちらとしても真剣に考えますよ。じゃあマシンナリーはどうすればいいのか、2倍のものに乗せてあげればいいんじゃないか、とか(笑)。落としどころは悩みますけど、やると決まったらやらざるを得ないので、無理だからといって足蹴にするのではなく、制作会議で悩めるのは、我々としても嬉しいところです。 編: ロボットのバリエーションは今後も増えていくのですか。 岩田氏: 基本的に初期の企画では、パーツが変えられるようになっていたりとかありましたが、「マシンナリーだけしか使えないから。最初からそんなに作り込んじゃダメだから(笑)」と、止めた部分はあります。 騎乗ペット扱いなのに、普通に成長するのではなく、何らかの回路を集めるとステータスが上がる、という特殊なシステムを採用しています、さらに腕がドリルになるといったことを、作っている人間はすごくやりたかったと思うのですが、それはまだ入っていません。ただ、せっかく作ったので色々やりたいですね。 山本氏: どこかとタイアップしますか(笑)。ロボットが出てくるアニメとか。 岩田氏: そういうことができるのも「ECO」だけなので、ユーザーさんが望むならありじゃないかと。
■ 滅んでしまった前時代の文明の秘密に迫る、「モーグ」、「光の塔」 編: 「SAGA4」で実装されるモーグと光の塔は、どういったコンセプトで開発されたエリアなのですか?
今後は、モーグという新しく独立したよくわからない国があって、そこが現在唯一残っている化石燃料が採れて、なおかつ自国の領土に近い位置に、過去の遺産であるパーツが取れる場所がある。そこから掘り出したものを使って、「ECO」の世界に新しいものをもたらす、といったことを実装したいと思っています。 光の塔で冒険者は“新しいもの”を見つけて、「ECO」の世界に触れることになります。それは、昔滅びた文明は何だったのか、何で滅んでしまったのかといったことや、今回の銃器や精密機械などがどんどん増えてきます。さらに機械的なものとファンタジー的なものが混じったようなものを提供するための土台といった感じです。 編: 中でも光の塔はネーミングとは裏腹に、現代建築のような鉄筋コンクリートの塔が立っていましたが、あれが前時代の遺物ですか。 岩田氏: 基本的には過去の文明の高層ビルだったのだと思うのですが、それが崩壊した後に、冒険者達が過去の遺物を発掘しにいく場所となっていて、誰が呼ぶようになったか「光の塔」という設定がベースになっています。 バックストーリーというわけではないんですが、そもそも「ECO」には上の世界と下の世界があって、最初に「無限回廊」を設置しましたが、あれは設定的にはどんどん地下に降りていくものなのです。そして光の塔は、どんどん上に上がっていく。今後、なぜこういったものが「ECO」に存在しているのかという、今後の展開のカギになる建物の1つです。 そして、本当はどうなのか、光の塔と無限回廊で上と下の世界に繋がっていたのかどうか、みたいなストーリーを今後体験していただきたいと思っています。 編: それはクエストで、という形になるのでしょうか。 岩田氏: そうですね、我々がサーバークエストと呼んでいるような、ユーザーの皆さんが全員で協力をして、例えばアイテムを何万個集めたら次の世界にいく、次の展開になる、といったようなもの。あるいは、1人1人のフラグによってストーリーが管理されてストーリーで体験できるもの。 それをうまく混ぜ合わせて、上位の人達が頑張ったから次に進むのではなくて、みんなで頑張って、週に1~2回しか入らない人も世界が進むのに参加していけるというものを感じてもらえるようにしていきたいです。ただ、先に進んでいる人はあり得ないくらい進め方が速いので、サーバーみんなで頑張ってくれるだろうな、というものも、上位の人が高速回転で3日でクリアしてしまったりしてしまうので、落としどころが難しいですけどね。 編: あの塔は下から見上げた時にてっぺんが見えませんでしたが、光の塔はどこまで続いているのですか? 岩田氏: 現在いくことができる階層より上も用意しています。21日の時点で行けない上の階に関しては今後検討していきます。 編: 今回、新しいジョブを色々試してみましたが、マリオネストのモンスターテイミングなど、新機軸の要素の割にはシンプルな説明しかありませんでした。スキルの詳しい解説などは、今後やっていくのですか? 岩田氏: ゲームに関する説明が薄いというのは、ユーザーさんからもいただいている意見です。実は現在チュートリアルなども作り直しているのですが、今まで作っていくことと、ゲーム内で補完するというのがどうしても追いついていない部分があります。その分、公式サイトではちゃんと誘導しようと思ってページを更新したりはしているのですが、やはりゲーム内で確認できるのがベストですから、これは今後の課題ですね。 編: 基本的にはコミュニティー内で話し合ってくださいねという感じですか? 岩田氏: そうして欲しいと思うこともあります。初心者の投稿の中には、ゲーム内で「誰か教えてください」といえば、すぐわかるのにな、という質問も多いです。公式サイトに載っていて、質問の単語をECOの公式サイトの検索フォームで入れればすぐに答えがわかる質問が、運営に来てしまっています。こういった問題も、初心者と既存のユーザーをどうくっつけていくのかな、という問題にかかっているのかなと。 編: 今後の展開としては、SAGA4の次は、どうなるのでしょう? 岩田氏: 次はSAGA5と続きますが……。 山本氏: こちらとしては見えているものもありますけど、まだお話しできる段階ではありませんね。 岩田氏: 一応、開発ライン、運営ライン、実験ラインと走り続けていて、次はSAGA5に向けてスケジュールは立てています。 編: SAGA5はどういった方向性になりますか。1から4までは、四方の国が追加されます、というわかりやすい内容でしたが、次がどうなるのかは見えてないですよね。 山本氏: 光の塔と無限回廊のストーリーが少し進むでしょうね。 岩田氏: あとは、実はアクロニア大陸もとっておきにしている場所があって、まだいけないマップって意外とあるんです。行けないことに対してフォローが何にもないのはごめんなさいと言うところですが……。他にも島がいくつかあるんです。単純にフィールドを増やすというアップデートが今回で終わりというわけではありません。とっておいた部分をその理由も含めて、ストーリーとして楽しんでいただきたいです。 山本氏: 画像は正式サービス時に公開しているんですよ。そういった世界が入ります。 編: 以前、上の世界、下の世界があるという話があって、とても期待しているのですが、それはまだ進んでいかないのですか。 岩田氏: そこは現在実験部隊がテストしている段階です。なので、SAGA5で「天界入ります」といったような衝撃的な発表は、多分できないと思います。まずはアクロニア大陸を埋めるのが先というところです。 編: ジョブの進化はどうなるでしょうか。現在35で、ギャンブラーを入れて36職になりますが。 岩田氏: そうですね。各職業に要素が足りないよね、といった部分を我々も探って埋めています。実験部隊も色々動いていますが、他のゲームに比べても職業が多いので、これ以上ジョブを増やす必要あるのかな、とも考えています。 テクニカルジョブと、エキスパートジョブをスイッチングして、なおかつリザーブスキルによってカスタマイズしたら、組み合わせはいくつあるのだろうと考えると、全くオリジナルの職業を追加する以外は、あまり必要ないのではないかとも思っています。ただ、いろいろ実験はしていますよ(笑)。 編: では当面はジョブバランスの調整をしていくと? 岩田氏: そうですね。
■ ハートフルオンラインRPGの実現とは? スタッフの考える「ECO」の3つの課題 編: 「ECO」は国産のMMORPGとしては珍しく、拡張ディスクによるパッケージビジネスをしていませんが、これは今後も変わらないわけでしょうか?
編: 現状では、月額制をベースに、「ECOくじ」などもやっていて、部分的ハイブリット課金という感じですよね。 山本氏: 「ECOくじ」、「ECOプレイチケット」に関しては、特にアイテム課金という意識はありません。ですので、ハイブリット課金であるという認識もありません。「ECOくじ」に関しては、お楽しみ要素のひとつとして実施しているもので、お祭りのクジみたいなイメージでやっています。「ECOプレイチケット」に関しては、通常プレイとは違ったECOの新しい魅力を見いだせるように設計しています。両方とも、ECOをより楽しんでいただくために実施している施策になります。 編: 最近はアイテム課金に移行するゲームが増えていますが、「ECO」はそれは考えていないと? 山本氏: 現在のところは考えていないですね。 岩田氏: 先ほどのジョブに関連してですが、新しいスキルが生まれる度に、私たちも見せてもらって、「すげー、おもしれえ!」と喜ぶわけですが、「それで、これどの職業に入れるの?」となると、「うーん」みたいな(笑)。たとえば、「このスキル使うと体が大きくなります」、「それで?」、「いや、それだけです」という(笑)。 こういったものがすごくたまっていて、でも実際には実用性がないものが多くて、これをユーザーさんに違った形で提供できないのか、といった時に、山本が「チケットに使わせてもらって良いですか」と。作ってはみたものの、というのが、そちらで活かされていて、ユーザーさんに好評をいただいています。 第1弾が好評だったので、現在第2弾ということで、普通のラインはパンパンなので、別注でラインを作ってやっています。こういう体制ですので、メインの開発の方がアイテム課金用のアイテム制作に、ということにはならないと思います。 編: 「ECO」は、「ハートフルオンラインRPG」、というキャッチフレーズですが、今回の要素は新ジョブにしても、新エリアにしても、とんがっているものが多くて、ハートフルな部分では、今後どういった展開があるのでしょうか。 岩田氏: 作っている中でもどんどん追加案が出てきていて、マーケティング的に「こんなシステムを実装!」とアピールできるほどのネタでもないのにコストかかっているな、というものもあります。それでもやっぱり作っているのは、新しい人が正直もう入ってこれない、入ってきてもついてこれない、という問題が今後発生してきてしまうからです。 たとえば、キャラクタのレベルキャップもわざと設けて、それに達する人がかなりいても少しだけ我慢していただいて、できるだけ下の人が上の人に追いつくのを待ってから開放しています。なので、「ECO」の現在のユーザーの分布図って、極端なことを言うと逆3角形のような、上のレベルの人達が多くて、複数のキャラクタがレベルキャップです、みたいな形になっています。 ただ、レベル70の人が多い世界で、レベル1で入ってきてどうよ、というところをどうやって繋げていくのか、できないとハートフルになれないんじゃないか、ということは我々としても考えていかなければいけないと考えています。 編: ハートフルな機能として、憑依やマリオネットがありましたが、今後もそういった機能的な強化はあるのでしょうか。 岩田氏: ハートフルなシステムとして、初心者に向けて、一般的に言われるメンターシステムのような、初心者をあまり悪くないイメージでパワーレベリングできるようなシステムや、ギルドのようなところに巻き込んだり、頂点の人が配下を従えていくようなシステムなど色々考えたのですが、どれを取ってみてもあんまりハートフルじゃないんですよね。 では、システムじゃないところで、ユーザー自身でお友達を誘ってもらったり、新しいコミュニティーを作れるかというと、それこそ我々が色々なコンテンツで学んだことを、活かすところかなと思っているんですが、やっぱり苦しくて、そこで四苦八苦しているところです。 編: 現在考えている課題と、アップデートの方向性について教えてください。 岩田氏: 一番私たちが課題だと感じていて、力を入れているのはゲームバランスです。現状でも正直なところゲームバランスが完全だとは言えない状態だと我々も思っていて、日々調整しているのですが、テクニカルジョブも入ってきてさらに調整が必要になってきました。 ただ、テクニカルジョブが入ってきたことで、今まで不遇だと言われていたジョブも、スイッチングとリザーブスキルで補うことができるということを、私たちは考慮して入れました。こういったバランスで、ユーザーさん達に実際にプレイしていただいて、調整を取っていこうと。 もう1つは、今までのアップデートで置いてきぼりになっていた感もある世界観や、シナリオやストーリーをどうやってユーザーさんに感じてもらうのかという面で、システムでもオブジェクトでもないアップデート。そして新しい人をどうつなげるのかという、この3点が我々が今、力を入れている点です。 編: 今回のマシンナリーはすごく魅力的ですが、それはブラックスミスが比較的不遇だったからなのでしょうか? テクニカルジョブは実はそういう味付けになっているという感じなんでしょうか? 岩田氏: 否定はできません(笑)。ブラックスミスの役割については今後、もちろんしっかりと打ち出していきますが、ジョブスイッチングしたらきっと楽しいはずなので、「ブラックスミスの方は、もう少しまって」とずっと思っていました。
■ 海外展開や、コラボレーションなど、今後の「ECO」のビジネス展開 編: 「ガンホーゲームズ」が7月13日からオープンしましたが、その中で「ECO」のアバターアイテムが実装されていますよね。あのアバタービジネスに「ECO」の運営チームはどの程度関わっているのですか?
編: 今後はどういった形のアップデートを考えていますか? 山本氏: アップデートに沿った形で各職業のアバターが出せたらいいなあと思っています。それぞれの職業の衣装が入れられたらいいなあと。人気のモンスターやマリオネットも当然入ります。アバターアイテムは通常有料ですが、無料のアイテムも入れていきたいですね。 編: ガンホーゲームズでは、ゲーム内のアバターアイテムを着用して、ゲーム外でコミュニケーション取れる機能を持っていますから、コミュニティーが大きくなるという意味でも、期待しているユーザーは多いと思います。 山本氏: ECOのコミュニティに関しては、「Filn」というSNSでもすでに実験しているんですよ。現在、1,100人ほどのコミュニティができています。ちょっと裏サイトのようになっていて、ヒントが足りないかな、というところの情報をリークしたりしています。他にも連動したオンラインイベントを行なったりと、色々な実験をしています。そこをガンホーゲームズでも活かせればいいかなと。 編: ビジネス的にはそれをガンホーゲームズに移管し、さらに発展させたいというところですか。 山本氏: いえ、FilnはFilnで続けていきたいなとも思っています。 編: それから「ECO」に関しては、海外展開を告知していますが、これの進捗はいかがでしょうか? 岩田氏: 私たちも協力していて、Gravityさんの方で着々と進行しています。 編: 発表から結構間が開いていますが、まだ動きがないですよね? 岩田氏: 「ECO」の海外展開については、全部Gravityさんから出すということになっているので、具体的な話についてはお話しできないですね。もちろん、実作業でどのくらい進んでいるかは私も知っていますけど、どのように発表していくかについてはGravityさんからということになりますね。 編: 今月、オフラインミーティングを札幌で開催しましたよね。そこでは「ラグナロクオンライン」の質問ばかりで、「ECO」に対する反応がわからなかったのですが、「ECO」における不正行為はやはり存在するのでしょうか? 岩田氏: βの頃からありましたが、ゲーム自体を1から作っているので、どういった仕組みなのかも我々も開発もわかっていますし、おかしいことがあったらすぐわかるのです。そしておかしいことがわかったら、それをつぶせば良くて、基本的には大きな問題になる前に全部つぶせたと思います。 編: 非常にセキュアなゲームだ、ということでしょうか。 岩田氏: システムに関してはそうだと言い切っていいと思いますね。最初に中村さんと話をした時に、「Windowモードでマクロとか大丈夫?」という話になりましたよね。多分そこに問題があるとは思いますが、それほど大きくはなってなくて、数件投稿がありますが、それはGMで対応できるレベルです。 編: ベーシックな質問ですが、βテストからユーザー数の推移はどうなっているでしょうか。 山本氏: βテスト時は公表しているところでは、35万人まで達したということです。しかし、それ以降の数字は公表していません。「非常に好評をいただいている」と言うことで。数字は言わない方針に転換しました。35万人に達した後も、順調に伸びていて結構言いたいんですけどね(笑)。継続率はすごく高い、ということしか言えないですね。 岩田氏: 伸びています。下がっていたら我々も開発続けられませんしね(笑)。 編: では、今年の目標は何万人に設定しているのですか? 山本氏: だから言えません(笑)。そうですね、大きな区切りとして100万人としておきます。 編: 最後に、ユーザーの皆さんへメッセージをお願いします。 岩田氏: 今回で一通り実装できたと思っています。現在「ECO」をプレイしている人はもちろん、以前プレイしていた方、このインタビューを見て興味を持たれた方、お願いですから、一度プレイをしてご意見をください。仮に「つまらない」と感じた方は、どうつまらないかを具体的に書いていただければ、できるだけ改善します。どうぞよろしくお願いします。 山本氏: このインタビューが掲載される頃には発表しているはずですが、「エヴァンゲリオン」とコラボレーションをします。ブロッコリーさんの企画商品なのですが、綾波レイと、惣流.アスカ.ラングレーの2つのパッケージを、コミックマーケットで先行販売した後に、8月25日から一般販売をします。 それぞれのパッケージには4~5つのオリジナルアイテムが入っていて、プラグスーツとか、武器とかが入手できます。それをキャラクタにコスプレみたいな感じで着用させることができます。これは、アニメーションとのコラボレーション第1弾で、第2弾、第3弾もやっていこうと思っています。「ECO」でないと、アニメとのコラボレーションってできないと思うんですよ。他作品では世界観が壊れてしまうおそれがありますが、「ECO」には“コスプレ”という概念もありますからね。 「ECO」はみんなで作っていこう、というコンセプトのゲームですので、どんどん投稿やご意見を送っていただきたいなと。それが岩田の手によって、実装されていくと思います。マーケティングに関しては、コミック化やタイアップ、コラボレーションを、今年の後期にたくさん用意しています。とても面白い試みも用意しているので、ご期待ください。 コミックに関しては連動のイベントをやったりとか、連動によってはコミックのストーリーが変わっていくような、試みもやっていきます。他にもドラマCDなどでもストーリーの補完をしていきますので、楽しみにしていてください。 編: ありがとうございました (C) 2006 BROCCOLI/GungHo Online Entertainment,Inc./HEADLOCK Inc.
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2006年7月21日) [Reported by 中村聖司]
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