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BBA、第8回オンラインゲーム専門部会を開催
国際分業の要は“ブリッジスペシャリスト”の確保

7月7日開催

会場:LMJジャパン東京研修センター

 有限責任中間法人ブロードバンド推進協議会(BBA)の傘下組織オンラインゲーム専門部会は、7月7日、都内研修センターにて、8回目となる定例研究会「ブロードバンド時代のグローバルコンテンツ開発」を開催した。

挨拶を行なうオンラインゲーム専門部会部会長 新清士氏。今回のテーマである国際分業は、CEDEC2006でも取り上げられることを報告
 今回のテーマ「ブロードバンド時代のグローバルコンテンツ開発」は、海外産がメインストリームを占めるオンラインゲーム市場において、コンテンツ制作の一環としてごく一般的に行なわれてきた海外メーカーとの分業について、現場を知る識者がその実態や将来的な展望を語るというもの。BBA会員を中心に、国内のオンラインゲームメーカー関係が集まった。

 正直なところ、エンドユーザーにとってはあまり関係のある話ではないが、ここ数年で急成長を遂げつつある日本のオンラインゲーム市場を牽引するパブリッシャーなり、デベロッパーが、水面下で何をしてきたか、平たくいうと、韓国産のMMORPGを日本で展開するということはどういうことなのかが浮き彫りになって興味深い。

 これまでこうしたバックグラウンド部分の話は、あまり表に出てこなかったが、後進や新規メーカーにより多くの情報を提示するという意味でも、当部会の趣旨にかなう議題であり、大いに歓迎したい動きである。

 さて、研究会は、オンラインゲーム専門部会部会長の新清士氏の挨拶からスタートした。新氏は、「フラット化する世界」(トーマス・フリードマン著、日本経済新聞社刊)を掲げながら、「世界は丸いと思っていたら、実はフラットになっていた」と切り出し、米Microsoftは、コールセンター業務をインドに外注しているが、インターネットやTV会議を通じて、あたかもニューヨークやサンフランシスコ郊外にいるような感覚で業務が行なわれていると報告。実際、インドに業務の一部を外注しているのはMSだけではなく、DELLやIBMといった大手ハードベンダーも進出しており、そうした動きがようやくゲーム業界でも顕在化しつつある。「しかし、その実態はどうか」というのが今回のテーマである。

 「フラット化する世界」では、こうした国際分業の動きを「グローバライゼーション3.0」と命名している。新氏によれば、この動きは決して一時的なものではなく、これからもしばらく続き、当部会でも国際分業をテーマにした講演を続けていくという。現在、国際分業のメッカとなっているは、インド、中国、そして東南アジア地域。特に日本のオンラインゲーム業界から熱い視線を集めているのが、人件費が安く、物理的にも近く、ビジネスまわりの環境も整備されつつある中国である。


■ 中国では大規模な国際分業体制が整備

アジア諸国の国際分業に関わる動きを報告する立命館大学政策科学部助教授 中村彰憲氏。北京に長期滞在した経験を持つ中村氏は、独自の豊富な知識を披露した
第二部を担当したハイファイブ・エンターテインメント代表取締役CEO澤紫臣氏。タイトルは「ケンカするほどにコンテンツ力がアップ」。刺激的な話が多数飛び出した
 講演のトップバッターを切ったのが、中国ゲーム市場のスペシャリストとして知られる立命館大学政策科学部助教授 中村彰憲氏。中村氏は、経済産業省のゲーム産業戦略研究会のレポートをベースに、現地取材等で得た知識や実感等を交えながら、中国、台湾、東南アジア地域の国際分業の状況を報告した。

 なんといっても印象的だったのは、中村氏が冒頭で放った「躍動している感覚、アジア各国がこちら(日本)に向いている」という発言。中国では、政府主導で、国家網遊動漫産業発展基地(動漫基地)と呼ばれる産業クラスター、日本でいうところのハイテクパークのようなものが続々生まれつつあり、行政レベルでの産業支援体制が確立されている。“動漫”というと通常アニメのことを指すが、この場合、漫画、アニメ、ネットワークゲームなどのデジタルコンテンツの総称として使われている。

 こうした動漫基地では、コンテンツ制作と同時に、人材育成も行なわれており、中国コンテンツビジネスにおける大きな受け皿になりつつある。第二部の講演を行なった澤紫臣氏がCEOを務めるハイファイブ・エンターテインメントでも、その認定基地のひとつである北京石景山区にて、新規タイトルにおいて国際分業を行なっている。現在は、国家コンテンツ産業振興地区として北京、成都、上海、広州の4都市が指定され、そのほかにも深セン、蘇州、怡景、武漢、常州など、動漫基地は中国全土に広がりつつある。今後、日本ゲームメーカーの進出が期待される分野である。

 その他の国では、台湾も国家の支援が手厚い。両兆双星(半導体と液晶、バイオテクノロジーとデジタルコンテンツ)政策のもと、メーカーが日本のクリエイターを招いて各種講演、講義を行なったり、TCA等の団体がメーカー同士のマッチングをアテンドしたりなどの国際交流や、大学にゲーム関連学科の設置、専門学校の設立といった教育分野の充実など、将来を見据えた体制が整えられつつある。

 タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアといった東南アジア諸国は、デジタルコンテンツ市場そのものが黎明期にあり、韓国、台湾といった地域に比べると、オンラインゲームの急速な需要拡大に、政府として業界団体として対応しきれておらず、現状では民間レベルでの場当たり的な対応に留まっている姿が浮き彫りになっている。中村氏も「マーケットとしては厳しい。市場そのものが小さいため、ゲームの開発工程の一部を担うレベルに留まるのではないか」と慎重な見解を示した。ただ、いずれも政府の長期計画の中で、オンラインゲーム産業も含めたICT産業の振興を掲げている。2、3年後にはおもしろくなってくるかもしれないといった印象である。

 そんな中、東南アジア地域では唯一明確な立ち位置で存在感を示しているのがシンガポールである。同国は、アジア地域のハブとしての役割を国家政策の第一義に掲げており、現在もナレッジハブ構想の一環として、ゲーム産業の振興、そして国際交流が進められている。

 ゲーム業界でもすでにElectronic Arts、Vivendi Universalなど大手企業のアジア拠点が設置されている。日本でも2005年2月にコーエーのシンガポール法人Koei Entertainment Singaporeが設立され、「三國志 Online(仮称)」の開発が行なわれている。外資系企業の税制優遇体制、国家レベルでの支援体制もしっかり整えられており、現地法人を設立するメリットは大きい。その一方で、国際分業の最大のモチベーションとなる人件費のアドバンテージはもはや薄いため、アジア地域での立ち位置は意外と危ういという印象がある。

 続いて中村氏は、国際分業のモデルケースを4パターンに分けて紹介しながら、重要なのは「ブリッジスペシャリスト」の存在だとした。あまり聞き慣れない用語だが、日本と現地の橋渡しをする人であり、言語能力はもちろんのこと、クライアント側(この場合日本)の文化嗜好を理解できるという特殊性の高い人材のことを指す。

 中村氏はわかりやすい例として「アートディレクターが指示するモチーフでキャラクタを開発する能力」があるかどうかを挙げた。モチーフのレベルからキャラクタを想像するためには、文化的なニュアンスの理解が必須であり、そのためには優良な「ブリッジスペシャリスト」の存在が必要不可欠というわけである。

 ベストな国際分業のあり方として、各エリアに現地法人を設立し、現地にプロジェクトマネージャーを派遣して、中長期的視野での人材育成と市場開拓を挙げた。中村氏は、UbisoftやElectronic Artsといった世界を代表する大手ゲームパブリッシャーを挙げ、こうしたグローバルネットワークを持つメーカーに名を連ねるためにも、中長期視野での国際分業が必要不可欠と、来場するメーカー関係者に発破を掛けた。

中村氏が示した4つの国際分業モデル。タイプAからタイプDまで、徐々に複雑になっていくが、いずれもブリッジスペシャリストが必須としているところは共通。タイプDになると、UbisoftやElectronic Artsのようなグローバルパブリッシャーのビジネスモデルにまで発展する

澤氏の講演では、国際分業のメリット、デメリットが語られた。中国市場については「パクリというとそれまでだが、どんどん吸収して血肉にしていくどん欲さ」を第一印象として挙げた。中村氏同様、ブリッジスペシャリストの重要性を強調したが、その一方で、現地担当者が板挟みに遭い、ノイローゼになって帰ってくるようなケースもあることを報告。デベロッパーとパブリッシャーという立場の違いから来る利害の衝突の実態が生々しく報告された。パネルディスカッションでは、中国のユーザーの嗜好について、中国人はコピー品等を通じて安く多くの日本のコンテンツに触れており、政治の力では推し量れない変なジャパニーズリテラシーが身についているという。違法品を通じて日本文化を知る。このカオスさが中国市場である

□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bbassociation.org/
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(2006年7月10日)

[Reported by 中村聖司]



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