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会場:ガンホー本社会議室
ジュノーの北東エリアに「タナトスタワー」、「アビスレイク」を拡充し、サービス開始以来となる久々の1次職「テコンキッド」を含む、3つの新職業も追加される。そのほか、ホムンクルスの新要素、新クエスト、新スキルなどなど、内容盛りだくさんのアップデートである。今回は、東京ゲームショウやRJCなどのイベントでもお馴染みの「ラグナロクオンライン」制作担当 廣瀬高志氏に、ノーグハルトアップデートについて話を伺った。 それに合わせ、大枠での「ラグナロクオンライン」の今後の方針についても話を伺った。というのも、正式サービス開始から3年半が経過した「ラグナロクオンライン」は、さまざまな意味でエンターテインメントコンテンツとして大きな節目を迎えつつあるように見えるからだ。 中でも衝撃的だったのが、今年5月27日に開発元のGravityが公開したファイナンシャルレポートの内容である。ガンホーは基本方針として、全コンテンツのユーザー数を一切公開しないため、Gravityが公開するこのIR資料が「ラグナロクオンライン」のビジネス規模を知るための唯一の資料になっている。そのレポートの中で同作のユーザー数(最大同時接続者数)が急降下していることが明らかになった。 興味のあるユーザーは、直接資料を参照していただきたいが、同作の世界展開においてメジャーな市場となっている日本、台湾、中国、タイのユーザー数が、2005年第1四半期から2006年第1四半期に掛けて文字通り激減している。これらの地域で爆発的な人気を集めた2004年第1四半期から2年弱の間、安定して70万人を越えていた最大同時接続者数(PCU)が、2006年第1四半期には42万7,583人まで減っている。 ユーザー数減少の要因のひとつとして挙げられるのが、BOTをはじめとした不正行為が蔓延しているというイメージが拭えないことにある。オンラインゲームがパブリックなインフラを利用したエンターテインメントである以上、構造的に不正行為は根絶できない。だからこそ、不正が発生した際の運営側の“動き”が非常に重要になる。その動きに不満を感じたユーザーが多かった結果が、今回の数字として表れているという見方もできるだろう。 ガンホーでは、今期に入ってからこうした負の流れを断ち切るために、公式サイトでの情報開示を増やし、不正対策の取り組みについてわかりやすくユーザーに説明する努力に力を注ぎ始めている。先週末に北海道で実施された第4回オフラインミーティングでも、不正対策について同作運営における最優先課題である旨をあらためて強調し、本腰を入れて取り組む姿勢を明らかにしている。 今回のインタビューの中でも、廣瀬氏は、不正対策のゴールとして「ユーザーがBOTを目にしなくなること」という明快な目標を掲げている。限られた時間でのインタビューだったため十分に聞けたとは言い難いが、意志と覚悟が確認できたのは収穫だった。同社の今後の動きをじっくり見守りたいところである。
■ 上級者向けのコンテンツを集めたノーグハルトアップデート
廣瀬氏: アップデートに対する準備自体は、ほとんど完成に近づいています。バグに関しては、一部残っている部分があるのですが、修正の目処はついていますので、前回のアップデートよりはスムーズだと思います。 編: 新職業「テコンキッド」は、サービス開始以来となる久々の1次職ということですが。 廣瀬氏: そうなります。これまで2次職や上位2次職の追加はあったのですが、1次では久々ですね。基本的には上位2次職にしろ2次職にしろ、新職が入ったときには、新しい目標をもってゲームが進められるので、ユーザーさんのモチベーションも高いのですけど、1次職が追加されるのと2次職が追加されるのとでは僕の中でそんなに差はないかなと感じているんですよ。 というのは、上位2次職が増えれば1次職自体の遊び方が変わったりしますし、新しい職業を作るという意味では今までのものとは変わらないと思います。ただ、今回に関しては、職業の特性上、割とトリッキーな動きをする職業が多いので、どちらかというと強いキャラクタを育てようという遊び方より、プレーヤースキルを活かして技を色々見せたいという方にウケる職業かなと思っています。 編: 韓国でのテコンキッドの人気はいかがですか。 廣瀬氏: 実はGravityさんにも同じことをヒアリングしたのですが、なにぶんトリッキーな職業ですから、やはりユーザーさんには茨の道の職業として認識されているようです。必ずしもこの職業になったからといってすぐに活躍できるわけではないので、じっくり育てるタイプのプレーヤーさんにウケているということです。 編: 日本ではどうなると予測していますか? 廣瀬氏: テコンキッドは1次職なので、皆さんそこに留まらずに2次職を視野に入れてプレイされますよね。となると、テコンキッドは拳聖かソウルリンカーになるための通過点になるわけです。 個人的にテコンキッドが辛いと思うのは、たとえばソウルリンカーは非常に支援を重視した職業なので、攻撃が得意なテコンキッドの時代にその利点をある程度犠牲にして育てないといけないところです。そういった意味でテコンキッドの時代で辛いなと感じる方もいらっしゃると思います。 拳聖では、そういった部分は少ないのですが、しかし、依然として武器の制約がありますし、基本的に足で攻撃しますので強力な武器は装備できません。そういった意味で最初から強力な武器を装備できる職業に比べると、辛いかなという印象がありますね。 編: つまり、ROに慣れた上級者向けの職業というわけですか。 廣瀬氏: そうですね。結構長く「RO」をプレイしてくださっているユーザーさんであれば、ある程度楽に進められるだろうと思います。他のゲーム、たとえば格闘ゲームでも同じことが言えると思いますが、いわゆる王道を行くキャラクタではないので、プレーヤースキルを含め、色々な知識や技術を習得されている方ほど楽しめるかと思います。拳聖は特に場所を指定したりモンスターを指定したりといった限定的なスキルが多いですからね。 編: ちなみに、拳聖の場を支配するタイプのスキルは、テコンドーという格闘技の文化に根ざした要素なのですか? 廣瀬氏: いえ、拳聖はテコンキッドとまた切り離した職業なので、そういう考え方ではないと思います。風水とか陰陽とかそういう含みがテコンドーに取り入れられているのであればそういった可能性も無くはないと思いますが、そういう話は聞いていませんね。 編: 前回に続いて、再度アップデートが行なわれるホムンクルスですが、前回のアップデートを機にアルケミストをプレイするユーザーの数は増えたのですか? 廣瀬氏: 実際にそうした割合を計っているわけではないので正確な数字はわからないのですが、今までアルケミストは作ったけれどもセカンドキャラとして置いておいたユーザーさんがメインキャラと入れ替わりにして育てているという場合ですとか、ゲームの中で見るアルケミストが増えたなという感じはしますね。 編: ただ、今回のアップデート内容は、新要素を享受するためのハードルがとても高いですよね。ホムンクルス関連の終着点というのはどこなのでしょうか。 廣瀬氏: ホムンクルスの進化というのは、今回のアップデートで一応最終形態なのかなという感じはします。なぜかというと、現時点で把握しているアップデートの中でホムンクルスは予定に入っておらず、ホムンクルスとは別にプレーヤーと一緒に戦ってくれるという要素の開発を検討しているからです。 編: 中でもホムンクルスのスキルの中で奥義スキル。今回30万とか凄いダメージを与えてましたが、その反面、何カ月もかけて積み重ねたホムンクルスとの親密度が大幅に下がってしまいますよね。これはどういう使い方を想定しているのですか? 廣瀬氏: ダメージからしてもMVPクラスのボスモンスターのHPに匹敵するような大ダメージが入ります。MVPモンスターはモンクの阿修羅鳳凰拳でダメージを重ねることが多いですが、それに対抗するアルケミストの手段として考えられるでしょうね。 編: ダメージの大きさからいってもMVPモンスターあたりが使いどころだと? 廣瀬氏: んー、実際、使いどころは難しいですね。たとえば生体工学研究所に、MVPモンスターに近い体力を持っている敵がいますけれども、果たして親密度を犠牲にしてまで使うかというと難しいところがあります。 編: ホムンクルスの乗り換えの際とか、ホムンクルスを辞める際とか、一発花火的ですよね。考え方としては数カ月に1回使えるスキル。ホムンクルスを可愛がっている人ほど使えないスキルのように思えるのですが。 廣瀬氏: 私も実用レベルに基づいて作られたものではないと思います。実用性を考えるのであれば、あれほど親密度を犠牲にしてしまっては実用とは程遠いと思います。使用後のペナルティをもう少し緩和してやるといったことが必要かと思います。ホムンクルスというものの存在にそったスキルなんだろうと自分では解釈しています。 編: 今回アビスレイクダンジョンとタナトスタワーを見せていただきましたが、コンセプトとしてはハイエンド向けですよね。 廣瀬氏: アビスレイクダンジョンはもともと中級プレーヤーでは立ち向かえないような設計になっています。タナトスタワーのほうでは、さらに3層からは5人パーティーでないと入れないとか、さらにいくとその職業にも制約が加わります。 編: 生体工学研究所のアップデートと比べて、タナトスタワーではストーリー性を重視した内容のように感じました。 廣瀬氏: はい。あります。タナトスタワーの存在自体が謎に包まれたものだというのはお伝えした通りです。タナトスタワー内部でクエストをこなさないと上層に上がっていけないということもあります。 また、なぜそもそもタナトスタワーが建てられたのかという問い自体が、タナトスタワーのクエストだけでなく他にあるクエストに参加しない限りわかりません。「RO」の世界というのは人間と魔族と神々の戦いだというのが基礎にありますが、その辺りの話が出てきます。レベルの制約ですとか条件が厳しいですけど、結構長くプレイされているユーザーさんであれば楽しめるような内容です。 編: タナトスタワーの階層が進んでいく中で、パーティーによる制限の先にその職業構成にも制限があるとのことですが、どういった制限が加わるのでしょうか。 廣瀬氏: 生体工学研究所にあったようなしばりを設ける予定です。詳しくは、実装後に明らかになると思います。 編: 新しく追加されたクエストスキルについてはいかがでしょうか。 廣瀬氏: クエストの内容についてはちょっと申し上げられません。ネタバレになるからいえないというわけではなくて、職業によってさまざまということです。ものによっては事件に巻き込まれるといったことですとか、職業ごとにいろんなバリエーションがあります。 編: 基本コンセプトとしては、1人でクエストをこなして取得するという形になるのでしょうか。 廣瀬氏: 基本的には、これまで実装しているクエストスキルと同様に、ごらんになっていただいたように見た目は地味なスキルなのです。ただ、地味ではあるのですが、職業によっては非常に有用性の高いスキルもあります。たとえば、マジシャンのエナジーコートですとか、アーチャーのチャージアローですとか、2次職になっても使っていただいています。 編: 今回追加された新マップ、クエストスキル、テコンキッドと新しい要素がハイレベルとまではいかなくとも、どれもある程度ゲームを知り尽くしたプレーヤー向きです。このところ上級者向けのアップデートが続いている印象がありますが。 廣瀬氏: 最近追加されているマップやアップグレードは、大抵長くプレイされている方に向けた要素が多いのは否めない事実ですね。今回の内容でいえば料理システムは低レベルのプレーヤーさんでも参加しやすく楽しめる要素にはなっていると思います。 編: しかし、材料のハードルが意外と高い。 廣瀬氏: レベルによります。料理はレベル1から10までありまして、レベルが高くなるほど取得するハードルが高くなっていきます。レベル10の材料は高レベルの敵からのドロップが多く初心者のユーザーさんではなかなか手に入りにくいです。 しかし、レベルの低いアイテムであれば、材料のアイテムそのものが街で売っていたりもしますし、低レベルの敵から手に入れられますから、難しくはありません。料理アイテムが作りたいので該当する敵がいるマップに行ったり、逆もまたしかりといった楽しみ方ができると思います。
■ 不正対策について~廣瀬氏「満足できる状態ではないと私自身感じている」
廣瀬氏: 我々が現在「RO」の展開を考える中で、最大の課題として掲げているのが不正対策です。私共としても当然のことながら新しい企画もどんどんやっていきたいのですが、その前に現状をどうにかしないといけないという認識を私自身持っています。 今の「RO」のプレイ環境が安心してプレイできる環境かといえば、厳しいと思います。現状、満足できる状態ではないと私自身感じています。不正者の監視や取り締まりをより一層強化していきたいと思います。これだけ言ってしまうと不正対策だけで頭がいっぱいなのだと思われてしまうかもしれませんが、確かにその通りで、この取材を受ける直前も取締りの基準について話し合っていました。不正対策を設ければ、すぐ破られるといったいたちごっこの現状に、ユーザーさんの見ている目は厳しくなってきていると思います。 編: 不正利用者に対する対策のゴールとは何ですか? 廣瀬氏: それはもう明確にお客様がゲームの中でBOTを目にしなくなることです。アカウント停止の数を積み上げるということが目的ではありません。 編: ガンホーさんの不正対策については、堀(誠一 取締役開発本部長)さんがROを担当されている時代から、一貫して「やらなきゃいけない」という話を伺ってきていて、もう4年近くが経っているわけです。ユーザーの総意としては、「やります」という言葉を信じようにも信じられなくなっています。 廣瀬氏: 現状結果が出ていない以上、そう思われるのは仕方ないと思います。皆さんにそう感じさせてしまっているのは私としても力不足と認識しています。であればこそ結果を出すしかありません。しかし、いつまでにBOTを0にしますといってもそれができるかといえば難しい。BOT対策に限らず、取り締まりの仕組み自体を見直していくということに力を注いでいかなければいけないと思っています。今まで取締り自体をまったくしていなかったわけではありません。現在進行形で様々な角度から対策法を練っている段階です。結果を出せるように努力します。現時点では、「今後の運営を見ていただきたい」としかいいようがありません。 編: 大変心強い発言ですが、その背景にはやはり、不正対策に関する新たな技術的進化が見込めるため、と理解していいのでしょうか? 廣瀬氏: それは私の口から申し上げるのは難しいです。私が申し上げられないというのは、決まっているが言えないこと、決まっていないことも全部含んでいますが、いずれにしても現状を変えなければならないという認識は持っています。新しいことにチャレンジしたいというのはあるのですが、まずそういった部分をないがしろにすることはできません。 編: 制作チームの今年の目標というのは。 廣瀬氏: 私個人としては不正対策が最大の目標といってもいいのではないかと考えています。 編: 大いに期待させていただきますけども、変わったなと実感できるのはいつぐらいになるのでしょう? 廣瀬氏: それはまだ申し上げられません。今も方法を変えながら取締りを行なっている段階です。現状評価がユーザーさんからみても望ましい評価ではないというのは認識しています。継続的に対策を重ねていくことによって形成していくものですので、こちらもあの手この手でできることを考え、実行したいと考えております。 編: 話は変わりますが、このところROのパッケージ版をどんどん発売していますよね。スターターの枠を越えた、プレミアムパッケージを次から次へリリースしているような状態ですが、特典として必ずアイテムチケットが付き、それを目的に購入するユーザーもいる。その一方で、「ラグくじ」を利用することでもアイテムを手に入れられる。要するにユーザーが現金を投入していくらでもアイテムを生み出せる環境にあるわけですけど、こうしたアイテム周りの大幅な仕様変更は、制作側ではどのように捉えているのでしょうか? 廣瀬氏: うーん(笑)。制作側としては答えにくい質問ですが、やり方自体、それ自体が悪いことではないと思います。どちらかといえば、ゲームバランスを考えながら、必要があればマーケティングチームと協議の上、ストップをかけることもあるといった状態でしょうか。 編: 現状というのは、制作側としてはウェルカムな状態とは言い難いと? 廣瀬氏: うーん、難しい質問をしますね(笑) 編: アイテム付きパッケージやラグくじというのは完全にマーケティング側の施策ですが、それがゲーム世界に影響を及ぼしているように見えます。そのことに対して、ゲーム作り、運営を司る制作側は、どのようなスタンスでこのビジネスに取り組んでいるのかは、不正対策と並んでユーザーの気になる部分だと思います。 廣瀬氏: ゲームバランスのことは常に考えています。もし、深刻な影響が及ぶ状況が想定された場合は、制作側として何らかの対応は取らなければならないと考えています。マーケティングチームとは、お互い反発ではありませんが、いい意味で社内でもぶつかりあい切磋琢磨しあって「RO」を良くしていこうという思いは同じです。ただ、制作の立場として考えると、できるだけユーザーさんの気持ちをくんでいきたいと思っています。 編: 理想の落としどころというのはどのあたりを考えているのでしょうか。 廣瀬氏: そうですね、純粋にマーケティングと切り離して、制作側の意見としてお答えすると、大人買いというのはあまり好きではありません。忙しくてプレイ時間が足りないので、何個か買ってみようという形で利用してもらえればいいかと考えています。 マーケティングチーム新田達弘氏: マーケティング的には、「RO」はアイテムを得ることによって楽しめる要素が増えるオンラインゲームですから、ゲーム内バランスを考えながら、便利なアイテムをくじとして提供していくという考え方です。何が当たるかな? というくじ感覚で楽しんでいただきたいという感じでしょうか。 編: ほどほどにして下さいと? 廣瀬氏: 時間がなくてプレイできない方への助けになれば幸いかなと考えています。箱が欲しいのだけどとてもとても時間が追いつかなくて箱をとりにいけないですとかそういった方に楽しんでもらいたいです。 新田氏: パッケージに関しては、ダウンロードだけではインターネットという限られた層にしか訴えられませんでしたが、量販店においてあるということでまた新たな層を取り込むということもありますし、プロモーションという効果も含めて、新しい所でシェアを広げられていけたらいいなということも1つあります。スタート時から楽しんでいる方も初心者の方もそれを使って楽しんでいただけるというきっかけにもなります。 編: 今夏よりガンホーゲームズのサービスがスタートしますが、ガンホーゲームズ以降のROの運営はどのようになるのでしょうか? 廣瀬氏: それについてはまだ答えられる段階ではないです。時期が来たらお知らせしたいと考えております。 編: 最後にユーザーさんにコメントをお願いします。 廣瀬氏: 今回のアップデートについても当然楽しみにしていだきたいのですが、それ以外に、現在制作チームでは安心して遊べる世界を作るということを最大の目標として取り組んでいます。結果を出していきたいと思いますので今後ともよろしくお願いいたします。
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□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2006年7月3日) [Reported by 中村聖司]
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