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★DSゲームレビュー★

人を選ぶのではなく、人に合わせてくれるRPG
「コンタクト」



 ニンテンドーDSで発売された「コンタクト」は、プレーヤーが第三者としてゲームの主人公の冒険を助けるというコンセプトのRPG。プレーヤーがゲーム世界と交信する、という発想自体は様々なゲームで使われていて画期的ではないが、タッチスクリーンを介してゲーム世界と「接触」できるという点では奇妙な説得力があるゲームだ。

  開発はPS「シルバー事件」、PS2「ミシガン」などで知られるグラスホッパー・マニュファクチュア。グラスホッパー作品というとPS2「Killer7」のように須田剛一氏のディレクションで人死が頻繁に起こるアブノーマルなテイストをまず思い起こしてしまう。それを想像していた筆者は「タッチスクリーンで残虐行為をやってしまうのか!? バッチこい!」と構えていたのだが、「コンタクト」のメインディレクターは須田氏ではなく(ちなみに「コンタクト」を開発したチームは有限会社アウディオとしてグラスホッパー・マニュファクチュアから独立した)内容もライトで健全なタッチのRPG。須田氏のファンは肩すかしをくうかもしれないが、お子様にも安心して渡してやれるような健全さは大きなポイントといえる。

   上画面にいる「ハカセ」とDSで偶然に通信が繋がったプレーヤーは、ハカセから頼まれて少年チェリーに指示を出すことになる。指示といってもチェリーは意志を持って動かず、移動から戦闘まで全てプレーヤーがこなす。悪くいえばプレーヤーもチェリーもハカセの使い走りで、なぜハカセに素直に従う必要があるのかが少々引っかかった(この辺りは後の伏線にもなるのだが)。

上画面ではハカセと犬のニャンニャンが動き回る。下画面は少年チェリー(名前変更可能)の操作画面となる


 ゲームの目的はチェリーを操作して、各地にちらばる「エレメント」という物質を探すこと。「エレメント」はハカセの探しているもので、ダンジョンの奥地でボス敵などが所持している。ゲームの流れは戦闘を繰り返してチェリーを鍛え、ボスを倒してエレメント回収、次のエリアに移動するというオーソドックスなものとなっている。

主人公チェリーの自室で、移動先のエリアを決定。体力回復は入浴、ベッドでの睡眠でセーブすることができる


 ハカセは敵の強さを測定してくれたり、「その辺に宝の気配がする(実際には無かったりする)」とアバウトなアドバイスを発する。猫になりたい宇宙犬のニャンニャンは、爪をといだり昼寝をしたりと犬らしく振る舞っている。セーブ後のコーヒーブレーク(?)ではハカセとニャンニャンの部屋が下画面に移り、ニャンニャンをいじって遊ぶことができる。

ぺしぺしとタッチすると、「ニャーン」と猫のような鳴き声で身をよじる。一応、かまってやることで育成することができる



■ 少年チェリーを操作してエレメントを探す

 先にも述べたが、プレーヤーは受信者でもありチェリーの操縦者でもある。プレーヤーは第三者なのか、それともゲーム内のキャラクタなのか、この境界の曖昧さは開発者の意図するところでもあるのだろうが、プレーヤーとしてはわかりづらく首をかしげるところではある。

 チェリーの移動はタッチペン、または十字ボタンで操作可能。筆者としては十字ボタンで操作するほうが楽に感じた。フィールドサイズがほどよい大きさにまとまっていてキャラの移動速度も早いため、快適に画面内を動き回ることができる。

 バトルはフリーエンカウント制。Bボタンを押すことでチェリーが身構えバトルモード(移動速度は減少)となり、敵を倒すかチェリーが倒れるまでオートで攻撃していく。敵が複数いる場合、Lボタンを押すことでターゲット変更ができる。バトルモードをとらなければ移動速度が通常と変わらないため、敵を振り切ってバトルを回避することが可能だ。

装備武器によって、リーチと攻撃力が異なる 人も倒すことができる。画面を切り替えると復活するが……


 Yボタンを押すと画面が一時停止し、「テク」アイコンを呼び出すことができる。テクは敵を倒すことでたまるテクメーターを消費して発動する必殺技。遠距離から敵を攻撃する魔法のようなテクから、近接攻撃用のテクまで種類は多彩。ちなみに、テクは戦闘をしているとチェリーが自動的に習得していく。

炎属性のテク「ファイアー」。発動時はハカセが技名を叫ぶ


 そして、タッチスクリーンを使った独特のシステム「トリックシール」も戦闘に活用できる。Rボタンを押すか、下画面右上の緑アイコンをタッチすると「トリックシール」画面を呼び出せる。使いたいトリックシールの端をタッチし、本物のシールをはがす要領でペンをスライドさせていけばシールがはがれる。一時停止画面の任意の場所にシールを貼り付けることで効果が発動する。

 画面内の敵や人を別の物に変えるものや、エレメントを回収するものなど効果は様々なトリックシール。だが、戦闘に使えるトリックシールは全8種類と意外と少ない。体力回復や一瞬でセーブポイントに戻るシールなどは便利ではあるのだが、使い切りということもあり頻繁に使う場面がない。バトルでの存在意義が今一つ薄いため、アイディアの消化不良という感は否めない。また、装備のトリックシールも存在する。「MENU」画面で最大4枚まで貼り付けることが可能で、守備力や攻撃力にプラス補正が付く。

シールにタッチし、左下にペンをスライドしてはがす 任意の場所をタッチして、スライドしてシールを貼る 画面の敵キャラが無害な動物へと変化した 装備シールのデメリットはないので、見つけたら貼り付けよう


 バトルはオートで進行するため、バトル開始後のプレーヤーの主な役目は定期的に回復を図ることとピンチになったらシールを使うことのふたつ。一応、ボス戦などではバトルモードのオン/オフで敵の攻撃を回避するというやり方もあるが、基本的には殴り合いで終わってしまうため、ことバトルに関しては戦略性は薄いといえるだろう。


■ コスチュームで新能力を発揮

コスチュームは自室でしか着替えることができない
  チェリーは道中で入手した「コスチューム」を自室で着替えることで、外見、ステータス、属性、特殊能力が変化する。また、コスチュームは着替えることでコックや盗賊といったキャラに変身できるため、いわばジョブチェンジ的な役割も果たしている。エリアの敵弱点を突くような「コスチューム」で挑むことで、バトルを有利に展開することが可能だ。

 釣りや料理など一般スキルが使えるようになるのもコスチュームの特性のひとつ。例えば、コック服の「キュイジーヌ」は火のある場所で料理を、釣り師のコスチューム「フィッシャー」は海岸や川岸で釣りが楽しめるようになる。これらの一般スキルにもスキルレベルがあり、やり込み要素のひとつとしても楽しめるだろう。

 コスチューム「キュイジーヌ」での料理。調理ができる条件は「キュイジーヌ」に着替えていることと食材があること、そして調理場や焚き火など火の気があることだ。例えば、肉とスパイスをフライパンに入れると「シシカバブ」ができる。レベルが低いと失敗することも。調理した食料は主人公チェリーの回復アイテムとして食べさせることができる。

食材は店や敵からのドロップアイテムで調達する 調理したアイテムを食べることで体力回復やステータスアップが可能


 コスチューム「フィッシャー」に着替えている時のみ釣りが可能。湖や海など水に接している面でAボタンを押すと、チェリーが水面に釣り竿を投げ入れる。浮きが表示されるので、浮きが沈んだ瞬間にAボタンでヒットさせよう。後は魚との力比べに勝つことで(おそらく十字ボタンを左に入れ続ける)魚を釣り上げることが可能だ。チュートリアルも無くマニュアルに釣り方法が記載されていないのは辛い。

魚との静かな闘い 釣った魚は食材として料理に使う


 通常の冒険では回復のテクが使用可能となる「アクアレイン」、攻撃力が大幅に増大する「バックファイア」などのコスチュームを着用していると楽になるだろう。コスチュームはゲーム内で入手へのヒントが少なく、筆者もついにゲームクリアしても「盗賊」のコスチュームを発見できなかった。


■ ファミリーコンピュータへの熱いオマージュ

とあるマップはこんな感じ。若い人は気づくだろうか
 荒いドット絵でデザインされたゲームのタイトル画面や、FM音源ライクで迎えられるオープニングサウンドを聴いてもらえればわかると思うが、「コンタクト」はファミコンへの強烈な思い入れが込められているゲームともいえる。その最たる場面がハバラ島エリアだ。

 入り口の「おでん缶」自動販売機、電気店を模した作り、店内のオタク風NPCなど有名電気街をイメージしたハバラ島。ここでは、アップライト筐体ゲームの中のゲームに入ることができる。どちらも'70年代アーケードゲーム、ファミコン黎明期の作品という感じで独特な景色で強烈だ。これらを遊ばされる意味は全くもって不明なのだが、ゲームをやっている世代には共鳴するものがあるのではないだろうか。

【BTM2005】
2006年なのに2005という斬新なタイトル。疑似レースゲームで、真上から見下ろしたレーシング場を主人公が闊歩していく。後続から追い上げてくるレースカー(通常攻撃で倒すことが可能)のスピードの遅さに、子供の頃に駄菓子屋で遊んだレースゲームを思い出してしまう
【DRAGON and DRAGON@】
中世ファンタジーアクションを思わせる疑似横スクロールゲーム。右から左へ進んでいくだけという王道アクション。だがジャンプはできない。後半は真上見下ろし画面のダンジョンへと変化する。ちなみにボス敵やドラゴンは登場しない


 この他にもファミコンROMカセット風のアイテムが入手できるなど(ゲームはプレイできない)、ファミコンへのリスペクトが込められたネタの応酬はDSタイトルの中では群を抜く。ゲームをやってきた世代にしては、過去の思い出とコンタクトするキーとなるタイトルになるだろう。


■ Wi-Fiコネクションモードはフレンド登録がやや面倒

 「コンタクト」ではWi-Fiコネクション通信、またはDSワイヤレス通信機能を介して他の人と遊ぶことができる。リアルタイムチャットや操作するキャラを相手の画面に登場させることはできないが(他人のキャラがNPC扱いで登場)、新規イベントの発生やアイテムボーナスなど通信ならではの楽しみが増える。フレンド登録は最大8人まで可能。

 まず、自分のフレンドキーを通信相手に登録してもらい(フレンドキーはフレンド登録画面で確認できる)、なおかつ相手のフレンドキーを登録することで下準備は完了。Wi-Fiコネクション通信に接続するとフレンドリストに相手の名前が表示されるので、双方がコンタクト要求をすれば成功する。ここで一度切断とセーブが実行されるので、あとはタイトルに戻りコンティニューデータからシーナビを使えば、ワイワイ島が表示される。フレンドを自動検出してくれる機能がないために使い勝手は悪いが、信頼できる相手と繋げることができるという点は優れている。

 ゲームのクリアタイムは19時間弱。隠し部屋の多さにとにかく閉口したが(おそらく全ての壁を調査した)、それもまたファミコン黎明期のRPGをプレイしているようで楽しい作業ではあった。

 よく「人を選ぶゲーム」という言葉を耳にするが、「コンタクト」は「人が合わせやすいゲーム」だと個人的に思う。難易度、グラフィック、サウンド、どれを取っても特定の層に向けてチューニングされたものではなく、触れた人のフィルターによって自動的に都合よく解釈されて調節される気がするのだ。ゲーム世代なら過去を懐かしみ、若年齢層なら新鮮に受け取れる。「コンタクト」は極端なゲーム性の嗜好の差違が無い限り、万人に一定の満足度を与えてくれる珍しいゲームではないだろうかと私は考える。

 プレーヤーに向けて強いメッセージがある点も看過できないタイトルだ。エンディング付近のプレーヤーの立ち位置、そしてグラスホッパーらしい衝撃的な結末。もし、子供の頃に「コンタクト」をやっていたとしたら、エンディングにはきっと興奮と感動を覚えたことだろう。筆者がスレたゲームファンとなった今では、エンディングへの興奮が半減してしまうのが情けないが。何はともあれ、「コンタクト」は安全でそして奇妙なアンバランスさを持つゲームだ。これから「コンタクト」で不思議体験をしてはいかがだろうか?

 最後に気になったのが、このゲームの説明書。これは一風変わっていて、「ハカセの大航海日誌」という絵日記帳の装丁になっている。デザイン的には面白いのだが、ハカセの口語体によるゲームの説明がわかりづらい上(左開きなのに右から文字を流している点も混乱する)、釣りと料理の方法が掲載されていない。ゲーム内には釣りと料理に関してのチュートリアルモードがないため、その分説明書でフォローすべきではないだろうか。ゲームの雰囲気を大事にしたいのは理解できるが、説明書として読みやすさとわかりやすさも重視してほしかった。

(C) Marvelous Interactive Inc. / grasshopper manufacture inc.

□マーベラスインタラクティブのホームページ
http://www.mmv-i.net/
□「コンタクト」のページ
http://www.mmv-i.net/game/ds/contact/
□グラスホッパー・マニファクチュアのページ
http://www.grasshopper.co.jp/
□有限会社アウディオのページ
http://www.audiogames.jp/
□関連情報
【3月16日】友だちを増やすほど楽しさが広がるRPG
マーベラスインタラクティブ、DS「コンタクト」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060316/ct.htm
【2月22日】マーベラスインタラクティブ、DS「コンタクト」
予約特典はニンテンドーDS用ケース
http://watch.impress.co.jp/docs/20060220/contact.htm

(2006年5月3日)

[Reported by 福田柵太郎]



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