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価格:7,140円
「NINETY-NINE NIGHTS (N3)」は、水口哲也氏の在籍する“キューエンタテインメント”が韓国の“Phantagram”と手を組み作り上げた。Xbox 360用として製作され、派手なアクションで大軍勢を引き連れ、自軍を操りながらも自ら敵を一掃していく爽快感溢れるアクションシーンが特徴的。 作品のテーマとして掲げられているのは“それぞれの正義”による価値観の逆転である。企画書から抜粋すれば、「人はなぜ戦争をやめられないのか? 戦争にはそれぞれ正義が存在する。戦う理由、敵への憎しみは、ささいな誤解から芽生えることが多く、時として陰謀・謀略により意図的に作られる場合もある。戦場に出た者達は、それぞれの愛するもの、守るべきもののために戦う。そして自分たちの"正義"を信じ、戦士達は敵を殺めていく。 敵、味方関係なく、すべての者に家族があり、仲間があり、戦う理由が存在する。戦いの果て、戦士達の心には何が残るのだろう。命を奪う大義名分として持っている"正義"とは、いったい何を意味するのだろう。戦場で剣を手に、命を張る戦士達の目から見た、戦いの真の姿。そこには敵と味方、善と悪を越えた、戦う事を余儀なくされた宿命がある」と書かれている。 様々なキャラクタでプレイすることで、ひとつの物語を一方的な側面からだけではなく、多方面から見ることができ、“正しいこと”と“進むべきもの”を考えさせてくれる奥深い内容となっている。
今回は、韓国PhantagramのCEOであり、「NINETY-NINE NIGHTS (N3)」ではディレクターを務めたSangyoun Lee (サンユン・リー) 氏のインタビューをお届けする。 ■ Phantagramとは -- まずは、Phantagramの設立経緯やこれまでに作り上げてきた作品、そして韓国においての御社のポジションをお伺いしたいのですが? Sangyoun Lee氏 (以下、Lee氏): Phantagramは'94年に設立されました。その前までは会社ではなく、チームを組んでゲームを制作していました。MSX用のソフトやゲームの移植、アーケードゲームの開発にも関わっていました。 -- どういった作品を作っていたのでしょうか? Lee氏: MSXでは「Legendly Knight」と言うソフトを作り、アーケードゲームでは「FireBall」がありました。 -- 会社設立のずっと前からゲームを作っているということですね。 Lee氏: '87年くらいから作っていました。そのときは高校生だった頃ですね。そして会社を作ることになったのですが、会社の創設当初から韓国のゲームを世界に知ってもらおうという、グローバルな視点から仕事をしてきました。その理由のひとつに、韓国にゲーム市場がなかったということがありますね。 会社設立当初に作ったのはPCゲームの「Zyclunt(Blade Warrior)」というものです。このゲームが米国のデモ版ダウンロードのランキングで6位を記録し、韓国で初めて、欧州や日本に輸出したゲームになったわけです。そのお陰で「少しはやるね」という話を聞くようになりました(笑)。 その次に作ったものはPC用の「Forgotten Saga」で、かわいいキャラクタが出てくるRPGです。こちらは韓国のみの発売でしたが、(韓国国内で)10万本ほど売れまして、当時の韓国で一番売れたゲームになりました。それまでは売れていたゲームが3万本でしたね。この「Forgotten Saga」は、韓国のPCゲーム市場を拡大させた要因になりました。 そこから、もっと米国市場を視野に入れて展開していこうと言うことでPC用「Kingdom Under Fire」を作りました。これは全世界で発売され、もちろん日本でも販売いたしました。これは全世界で40万本ほど売れています。この頃からPhantagramの名前が知られるようになってきましたね。 それからいろいろなゲームを作り始めたのですが……PCオンラインゲームの「シャイニングロア」もありましたね。また「Kingdom Under Fire:The Crusaders (以降、The Crusaders)」も制作しました。それとパブリッシャーとしてゲームを作ったものもいくつかありまして、スペインの開発会社と作った「Dualty」というのがあります。元気で開発したXbox用「Phantom Clash」も同様の作品です。 「シャイニングロア」が発売される前に、NC Softの子会社としてゲームを作ろうと思い、PhantagramはNCソフトの傘下に入ることにしたのですが、NC Soft側はPhantagramのブランドを無くして完全に会社を吸収しようと考えていたようで、我々の考え方とは相違点がありました。この時に「シャイニングロア」の開発を中断させる事がありました。当時「The Crusaders」の開発に力を入れていたのですが、NC Soft側はオンラインゲームのみで1人用のコンソールゲームは作らないということを言ってきたのです。私はこれ以上は無理だと思い、独立する機会があったので「Phantagram」を独立させて「The Crusaders」を完成させました。それから「Kingdom Under Fire:Heroes」を作りまして、「The Crusaders」と合わせて全世界で80万本ほど売れましたね。 -- 現在の開発ラインというのはいくつあるのでしょうか? Lee氏: 今はPhantagramで直接開発はしていません。新しい「Kingdom Under Fire」シリーズをBLUESIDEと協力して開発しています。BLUESIDEは、NC Softとの合併時に、Phantagramから抜けた人たちが作った会社なんです。Phantagramの副社長だったSe Jung Kim社長がBLUESIDEを率いています。このBLUESIDEが、その後Phantagramが独立する時に助けてくれた会社なんですけど、今もいいコンビで仕事をさせてもらっています。Phantagramはプロデュースのみを担当しています。 -- 「NINETY-NINE NIGHTS (N3)」の開発も同様なのでしょうか? Lee氏: そうです。BLUESIDEにより制作されています。BLUESIDEのロゴはエンディングのスタッフロールにも入っています。 -- 個人的に、今までに影響を受けたゲームを教えていただけませんか? Lee氏: 影響も受けて、好きなゲームはコナミの「メタルギアソリッド」シリーズですね。「メタルギアソリッド」はMSX版の頃からのファンです。それからBlizzard Entertainmentの「Diablo」、「War Craft II」……などなど、いっぱいありますね。その中でもこれらのソフトは名作だと思います。 そして、ゲームを作る思想とかに影響を受けているのが、8ビットPC版のボーステックが制作した「RELICS(レリクス)」ですね。 -- 渋いですね!
Lee氏: ご存じですか? 私個人ですが、あのゲームから大きな影響を受けています。偶然なんですが、マイクロソフトで「NINETY-NINE NIGHTS (N3)」のエグゼクティブプロデューサーを担当した中里さんという方が、「レリクス」を作ったんですよ。よかったですね。今、「レリクス」をプレイしても名作だと思います。 ■ 「NINETY-NINE NIGHTS (N3)」について
Lee氏: 水口さんはプロデューサーですね。私はディレクター。シナリオやムービー、台詞などの作業はキューの方で行ないました。キャラクターデザインや背景などは、キューさんとPhantagramと分けてましたね。ゲームデザイン全般やアクション周り、そしてゲームプレイのデザイナなどの仕様書的なものはPhantagramです。 そしてレベルデザインはキューさんと分担でした。ゲームプレイ開発は私と韓国の企画者、モーションディレクタと一緒に作業しました。Microsoftさんは技術的な面のフォローをしてくれて大変助かりました。また、企画の方向性などに関してもMicrosoftさんに助けていただきました。基本的には、ゲームシステム企画とプログラムとグラフィックはすべてPhantagramで行ないました。 -- ちなみに制作期間はどのくらいなのですか? Lee氏: 実際に製作した期間は14ヶ月くらいですね。 -- 早いですね。ゲームを作るにしては短いと思うのですが。
Lee氏: ものすごく短いです。14~15カ月の期間でゲームを作るのはほとんど不可能に近いですね。間に合って本当によかったと思っています。 -- ゲームの世界観についてなのですが、はじめからファンタジー世界を舞台にすることを決めていたのでしょうか? 欧米だと歴史を舞台にしてみたり、リアルな戦場にする傾向にありますが。なぜファンタジー世界を題材として選んだのでしょうか Lee氏: ファンタジー世界は全世界に通じるものだとも思っていますから、はじめからファンタジー世界を舞台にしました。また、ファンタジー世界だと、戦闘の醍醐味を増してくれるのでそうしました。 -- 本作は戦争をテーマにするので舞台が戦場になるわけですが、戦場を表現する上で苦労した点などはありますか? Lee氏: 戦場にいる大軍勢を表現することに苦労しました。大軍勢をいかに表現するかがこのゲームの大きなポイントになると思いましたから。 -- 技術的に難しかった部分とかはどのようなところでしょうか? Lee氏: はじめはXbox 360の開発機材がなかったため、仕方なく代わりにかなりハイスペックなPCを使って開発を行なっていました。PC上では500人くらいの軍勢を動かすことができました。その状態で20フレームから30フレームくらいの速度をマークしていましたね。Xbox 360は開発を行なっていたPCのスペックの3倍くらいの性能があったので、単純に3倍の人数を動かせると思っていたのです。 ところが、開発機材が届いていざ試してみると、データやプログラムの効率化が不十分だったことや、CPUの違いもあって、開発機材で実際にプレイしたら結果が1フレームでした (笑)。それが東京ゲームショウ2005の6週間前だったんですね。「これは大変だ」と。 それからMicrosoftの技術者さんと一緒になって必死になって作業をし、東京ゲームショウ2005になんとか間に合わせることができました(笑)。CPUが全く違っていたというのが一番の大きかったですね。最初のものとは全く違う方式でプログラミングをしなければならなかったので。しかし、CPUは非常にパワフルでした。 その他では、水口さんが「ドラマ性を表現できるアクションゲーム」を心がけていたので、その部分に気を遣って作っています。重点を置いた部分には、大軍勢を相手にした時のアクションがあります。何千人と出てくる本当の意味での大軍勢が出てくるゲームは今までになかったので、その中でできるアクションも今までのものと違ってくると考えていました。 1対1で相手を何度も攻撃して倒すのではなく、武器の一振りで何人もの敵をなぎ倒す爽快感を表現したいと思いました。そして、1対1の戦闘からコンボで何十人もの敵を倒し、オーブアタックで何百人もの敵を倒す。さらにオーブスパークで何千人もの敵を片付ける。そういった戦いに重点を置いて作り、うまく表現できたと思っています。また、キャラクタごとにアクションが全く違うので、たとえば魔法を使う“テュルル”であれば、シューティングゲームのような感じでプレイすることになります。他にもアイテムを活用して戦わなければならないなど、キャラクタの個性を生かすように作りました。 -- たとえば日本には「真・三國無双 (コーエー)」といったガンガン敵を倒していくタイトルがあるかと思いますが、これらのタイトルと「N3」との差別化についてですが、その答えのひとつがキャラクタの個性を生かすこと点にあるのでしょうか? Lee氏: 思想が「真・三國無双」とは違うので、プレーヤーの皆さんには実際にプレイをしていただければ、全く違うタイプのゲームであると理解してもらえると思います。 -- 「思想」とは、どういったものなのですか? Lee氏: 「真・三國無双」はミッションをクリアして快感を得るゲームですが、「N3」はものすごい数の敵を一蹴して快感を得るゲームなのです。 -- 「N3」ではプレーヤーの味方として戦ってくれる仲間が登場します。戦略性なども重要になってきますか? Lee氏: 戦略性はあります。アクションゲームが得意な人なら1人でガンガンと進めていけばクリアできる人もいるかもしれませんが、ミッションによっては戦略を立てないとクリアが難しいところもありますね。部隊をどのように活用するかによって、ミッションの進行も変わってきます。 -- ゲームの進行が変わると言うことは、ミッションのアクション内容如何でストーリーが分岐すると? Lee氏: そういうところもあります。 -- アクションシーンの最中でもストーリーは進行している訳ですね。
Lee氏: そういうところもありますが、そうでない部分もあります。本来はそういったものを目標としていたのですが、部分的にしかできていなくて、完全にできているわけではありません。 ■ 「NINETY-NINE NIGHTS (N3)」の製作で得たものとは?
Lee氏: 「The Crusaders」の開発を終えて、私たちはXbox 360でゲームを開発したいと考えてMicrosoftさんと話をしていました。ちょうどその頃に水口さんもMicrosoftさんと同じような話をしていまして、Microsoftさんの方から何かゲームを作ってみませんかと話が来たのです。そこから水口さんと話をしてみようということになりました。そこで、水口さんと話してみたら共通する点が多かったので、一緒に作ってみようということになったんです。 -- Phantagramだけで新作を作るということも可能だったわけですが、なぜ水口さんと組んで仕事をしたのですか? Lee氏: Microsoftさんから積極的なアプローチがあったのが理由のひとつです。私たちが作ろうとしていたゲームですが、開発に時間のかかるタイプのゲームだったので、ここではMicrosoftさんのお誘いに乗ることにしました。それと「N3」はローンチタイトルというはなしでで持ちかけられていたので、そういったものに挑戦してみるのに意味があると思ったので受けしました。また、私たちだけのゲームを作り続けるだけではなく、日本の有名なクリエイターと組んで仕事をすることで、学ぶべきことや得られるものもあると考えたのです。 -- Xbox 360というプラットフォームに参入しようと思ったのは、単純にマシンのもつ高スペックが魅力だったからでしょうか? Lee氏: 次世代機のXbox 360が発売されたのに、Xboxのソフトを作っても売れないじゃないですか。だったらXbox 360で作らないと。MicrosoftさんとはXboxの頃から一緒に仕事をする機会が多く、仕事をするパートナーとしてもよかったのでXbox 360に決めました。PS3の場合は、まだ (スペックなど) 決まっていることが少なかったので。 -- 日本のクリエイターと組むことによって得られるものがあるとおっしゃいましたが、「N3」の開発を終えて何を得ましたか? Lee氏: 短い時間であってもいいゲームを作ることができるという自信。それが得られたことが一番の収穫ですね。それにグローバルな感覚がどういったものなのかを理解できるようになりました。 -- “グローバルな感覚”と言うことですが、世界的に通用するというのは抽象的で理解するのが難しいと思うんですが、それがある程度つかめたという感じですか? Lee氏: 明確になってきたと思います。色々と文化や嗜好が違っても、人が好きなものは誰にとっても似たようなものだと思うのです。プレイするときの感覚やゲームの目的、そしてゲームをするときに得られる楽しさなどに対して考えるようになりましたね。 グラフィック的なクオリティはもちろん高くないといけないのですが、そこにも誰もが好きな部分があるんです。世界的に有名な映画などを観ますと、世界的なスターが出てきたり、かっこいいシーンがあったりなどがありますよね。ゲームもある意味、そういった部分は同じなのではないでしょうか? ゲームに出てくるキャラクタも映画に出てくるスターのように (ヒーロー、ヒロインキャラクタを) 作っていかなければならないと思っています。それをどうやって作り上げていけばいいかがわかってきた感じです。 -- Xbox 360では、Xbox Liveを使用したネットワークを使ったコミュニケーションが魅力だと思いますが、「N3」ではネットワークを利用したサービスは提供されるのでしょうか? Lee氏: 当初はXbox Liveの機能を生かすことを考えていたんですが、開発期間が短いこともあり、Xbox Liveを利用したサービスは現状では入れることができませんでした。今後、入れることができればいいなとは思っています。 -- 追加のマップなどはないのですか? Lee氏: 現状は予定されていませんね。それは私たちPhantagramとMicrosoftさんとで話し合いをしななければなりません。それでGOサインが出ればやりたいです。プログラム的にはXbox Live機能は用意されているので、あとから追加することは可能なんです。 -- もし、Xbox Live機能が追加されるとしたら、どんなことをやりたいですか? Lee氏: 新しいプレイアブルキャラクタを追加して、戦うことができるようにしたいですね。開発は難しいですが、プレーヤー同士が共同でミッションをクリアするようなプレイとかもおもしろそうですね。 -- 共同のミッションプレイとかはやりたい人もいるでしょうね。 Lee氏: 共同のミッションプレイは少し難しいですね。ネットワーク上で、アクションをとぎれずに行なうことはすごく難しいのです。今、Phantagramで作っている作品ではネットワーク機能が最初から用意されています。「N3」の場合はネットワーク機能を利用するには、少し時間がかかるのです。 -- 最後にファンに向けて一言を。ここを楽しんで欲しいなどのアピールポイントをお願いします。 Lee氏: プレイして本当に楽しいゲームに仕上がりました。これこそ真の大軍勢ゲームだと思います。敵を一蹴する快感を得られるいいゲームです。これからもたくさんプレイしてくださることを祈ってます。
-- ありがとうございました。
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□Xboxのホームページ (2006年4月26日) [Reported by 船津稔]
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