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【Electronic Entertainment Expo 2005 現地レポート】

Xboxキーマンインタビュー:「NINETY-NINE NIGHTS」
水口哲也氏、Sangyoun Lee氏

会期:5月18日~20日(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 キューエンタテインメント株式会社CCOの水口哲也氏と「Kingdom Under Fire:The Crusaders」などで高い実績を持つゲームディベロッパー「Phantagram」のコラボレートが話題を呼んでいるXbox 360用タイトル「NINETY-NINE NIGHTS」。マイクロソフトのMTVプロモーションで初公開されて以来、注目度は右肩上がり。セガ退社以降、ここ最近はシンプルかつキャッチーなパズルゲームでファンのハートを刺激してきた水口氏だが、ここにきて突然の大作発表ということもあり、ファンの衝撃度も相当高かったように推測される。

 今回、E3会場でマイクロソフトではXbox 360に関するクリエイターの合同インタビューを設定してくれた。第1弾は、水口氏と「Phantagram」プレジデント兼CEOのSangyoun Lee氏が登場する。


水口哲也氏:「スペースチャンネル5」シリーズ、「Rez」などをプロデュース。現在はキューエンタテインメントCCOとして活躍中
――まずは、このプロジェクトが開始された経緯からおうかがいしたいのですが?

水口哲也氏(以下、水口) じゃぁ、ボクのほうから……。最初、マイクロソフトの方から「プロジェクトをやりませんか?」という話がありまして。それでXbox 360用にいくつか企画を暖めていたとき、キューエンタテインメントとしては、一緒にパートナーシップを組める会社を世界的に探していたんですね。結構、世界中の色々なスタジオを回ったんですけども、そのなかでちょうど「Kingdom Under Fire:The Crusaders」という素晴らしいゲームを作られたばかりの「Phantagram」のLee社長に会いまして。色々話しているうちにドンドン盛り上がっていって「これはもう一緒にコラボレーションを実現しませんか?」という。で、色々なタイミングが非常にいい形で重なって。ボクらのタイミングと、Lee社長のタイミングと。おそらく、色々な……ね。普通だったらトラブルなどで進まないとかあるんですけど、意外とスムーズに進んじゃって。これは縁があるんだなぁと。そういうところからスタートしました。

Sangyoun Lee氏(以下、Lee) 私たちの立場からすると、ちょうど「Kingdom Under Fire:The Crusaders」が終わる頃のタイミングだったんですね。そのときも、アメリカのマイクロソフトとパートナーについて話が出ていたところだったんです。そして、そのとき(水口氏が)突然現れて(笑) やりましょうという感じになった。水口さんにお会いしたら、普通に「やりたい」という気持ちが生じたんです。そのときはマイクロソフトの他作品を手がけていたんですけど、まぁそれは後においといて(笑) これをやりましょうということになりました。仕事としては、とても学ぶことが多いです。短期間に、今までいなかった人たちが急に現れて一緒に仕事をするという新しい体験をしています。それは、とても良い経験になっているというふうに考えています。

水口 本当に、今までにない体験ですね(笑)

――タイトルを開発しているあいだに、Xbox 360のハードウェアがどんどん向上して、タイトルがハードウェアのパフォーマンスに負けてしまうとか、そういう不安はなかったのですか? ハードウェアの機能を最大限に生かすためのタイトル開発では、どのような点に注意されたのでしょうか?

水口 それについては、どちらかというとLeeさんのほうが答えを正確に言えるかもしれませんね。

Sangyoun Lee氏:「Phantagram」プレジデント兼CEO。「Kingdom Under Fire」シリーズなどのヒットで躍進する韓国のディベロッパー
Lee 私個人としては、Xbox 360の機能をすべて使いこなすためには、あと2年の時間が必要だと考えています。今も開発中ですけど、まだ隠れているパワーがたくさんあると思います。プログラム自体の開発に対しても、違った形のアプローチをしていかなければならないという感じです。GPUもCPUもマルチプロの形で行なわれていくので、それを完全に使いこなせれば凄いことができるのではないでしょうか。今現在の構成としては、とにかくオブジェクトがたくさん画面に表現することを考えています。多数のオブジェクトがそれぞれ独自の動きをしてもお互いに支障がなく、それも1,000~2,000人のあいだくらのキャラクタを動かしてもです。可能性としては、それ以上のものも可能だと考えています。

――これまで水口さんが手がけてきたアクションゲームとは、またタイプが異なるものだと思うのですが、どういった形に仕上げていきたいですか?

水口 そうですね……今Leeさんが言われたように、大軍勢をXbox 360のパフォーマンスにあわせて出していくことになると思うんですけど。それだけ大軍勢のなかで“気持ちのいいアクション”っていうのを実現させたいな、と。当然、凄い敵を大技で一気に吹き飛ばすというのもあるでしょうし。アクションゲームとしての単体の出来とか、そこは非常に期待していただいてもよろしいのではないかと思います。

――そういった方向性を作っていく意味でも、現地スタッフとのやりとりはどのような形で?

水口 そうですね。「Phantagram」にうちのスタッフ10名弱が常駐してまして。むこうで生活しています。ボクも、だいたい月の半分くらいはLeeさんと一緒にお仕事してるんですけど、現場は韓国語、日本語、英語が飛び交って……ある意味“戦場”状態ですね(笑)。でも、感覚的に凄くわかりやすいというか。やはり同じ文化の上にいたりするので、非常に理解度が早いし。目指しているものが同じでハッキリしてるから、やってて本当にストレスがないですね。凄くいい化学反応を起こしていると思います。だから、やってて楽しいです。

――今回、両社とも初の海外メーカーとのコラボレーションということになるんでしょうか?

水口 キューエンタテインメントでは、そうですね。

Lee 昔「Commandos」を作った会社と一緒に仕事をしたことがありまして、あとは元気と……3回目ということになりますね。

――言いにくいかもしれませんが、3社でそれぞれ違いはありましたか? また、水口さんに対してはどのような印象を受けられたのでしょう?

Lee 今までは、日本の人たちと一緒にやると“焦燥感”を感じるときがありました。元気の人たちが特にそうだったので、そう思うのかもしれないですけど……水口さんと一緒に仕事をしているときは“つっかかったような”そういう気分はないんですね。なんだか韓国人のようで(笑) とてもいい方ですね。こういう仕事を、これからもずっと……こういうふうな形で、将来的にもずっと仕事をしたいという気持ちです。

水口 ボクもそう思ってます。

――今回仕事をご一緒して、一番印象に残っていることはなんですか? 技術的なことでも、人間的なことでも構いません。

水口 “判断が非常に早い”ことですね。で、判断が早いってことは、それだけの色々なケースを想定済みということで、それはもう尊敬に値します。一緒にやってて物凄く気持ちがいいですね。あと、行動力がある。なんていうんだろう……日本で仕事をしていると「これはできるかな?」っていったときに「できるかもしれないし、できないかもしれません」っていう答えを結構良くきくんだけど、Leeさんの場合は「それはできます、やりましょう」か、「これは今回はやれないので、次にもっていきましょう」という判断が早いですね。やってて、凄く安心感がある。そういうストレスがないというか。あと、人間的にも素晴らしいですよ。非常にコミュニケーション能力が高い方です。

Lee 私は、水口さん個人に対して感じていることです。元々、感覚的なものが優れていらっしゃるんですけど、それだけじゃなくて、そういうものに対して色々と接近しながら順序を経て向かっていく知識とか。今まで優れた作品を作られたのは、こういうことなんだなぁって。どんなものを作られても、水口さんであれば素晴らしいものが出来上がると思います。今まで会ったデベロッパーのなかで、一番いい方です。

水口 まだ終わってない(からわからない)ですけどね(笑)

Lee 上手くいくと思います(笑)

水口 そうですね。色々やってると「このプロジェクトは上手くいくな」とか「これはちょっと苦しいな」とか直感的にわかるんだけど、今回のプロジェクトは、かなり色々なものが助けてくれるというか“風が吹いている”感じがして。あと……ボクもご存知のとおり「セガ」という大きな会社にいて“ゲーム産業”という古いものと新しいものが少しずつ動いている感じがしますよね。で、それで次世代機っていう新しいものが出てきて。まず、同じやり方と考え方で新しいものは出てこないと思うんですよ。ある意味、構造的な改革が、これから起こってくると思うんですけど、それをやり方から変えて、こういう風にやってみると……今までのゲーム作りとは違うものが見えてきますね。未来がそこから見えてくるという感じがして。非常に刺激的です。

――大軍勢、大勢の人数を出して動かすというコンセプトがありますが、それをゲームとして楽しめるようにまとめるアイデアというのは?

水口 まず、今回「Phantagram」と一緒に仕事をするうえで一番大きいポイントというのは「Phantagram」という会社が、すでに「Kingdom Under Fire:The Crusaders」という素晴らしいゲームを作ってたというのが前提としてあります。「Kingdom Under Fire:The Crusaders」っていうゲームは、ストラテジーとアクションの両要素が入っていて、ストラテジーの要素が色濃く占めるゲームなんですよね。今回は、その比率をアクションに大きく寄せてみようという発想でもあるんです、ゲーム的にいうと。

Lee 今までのゲームとは違ったものになります。残りの部分というのは、見ていただかないとわからないと思うんです。今はないんですけど……無いんじゃなくて、公開できないんですが(笑)。今までとは違ったやりかたで、もちろんアクションを打ち出すんだけど、映画的な要素、戦略的な要素も全部含まれています。フィーリングとしては“痛快”なもの。最終的には、ひとりで10,000人とか20,000人に対応する、そういう印象を与えるものになるかもしれません。刀の一振りで数十人がパーッといなくなったり。

――長年ゲーム製作に携わってきて、PS世代からPS2世代、XboxからXbox 360など、次世代になったときにゲームはどのように変わると思われますか?

水口 E3で色々な発表があって……恐らくみなさんもHD高解像度(の画面)を見たと思うんですけど。あの……果たしてユーザーにとって“スーパーリアルなものが体験できればそれでいいか”っていうと、甚だ疑問なんですよ。それだけではない、っていうことです。リアルなものって(見慣れれば)人間にとって普通になっていくので。もしそれだけを追い求めたら、ゲームはそれだけのものにしかならない。だから、ゲームの面白さ、新しいチャレンジ……総合的に増したテクノロジーの能力を、何に使っていくかというと、ボクらが考えているのは、さっきLeeさんから映画的という話がありましたけど、非常にドラマチックな演出をゲームにどう絡めていくかっていう。ゲームを作る人間って奴の、一番興奮する化学反応の仕方。ここは、去年の夏くらいからずーっと話をしてきて、ボクらのなかでも「マルチアングルシナリオ」を採用して。これは色々なキャラクタを、同じ出来事でも属性とか立場によって違ってみえたりとか。人間のもってる能力というか、習性というか。それをいかにエンターテインメントに変えていくかっていう。そういう議論を重ねていて。これは新しい提案になるだろうな、と思ってます。次世代機の能力は、そういうところに使っていきたいと思いますよね。


 合同インタビュー後、水口氏に「次の情報は、いつぐらいに出していただけそうですか?」と質問してみた。現時点ではトレーラームービーが公開されただけで、肝心のゲーム部分が見えてこない。ファンにとっては生殺しもいいところで、Lee氏も「無いんじゃなくて、公開できないだけ」と明言しているし、形になっているなら、せめて時期とか断片的な情報だけでも得られないかと思ったからだ。

 これに関しては水口氏も気にしていたようだが「早いうちに出したいんだけど」と前置きしつつも「やはり中途半端な時期に、中途半端なものは出せない」とコメントしてくれた。作品に対する愛情やこだわりが人一倍強い水口氏らしい姿勢は(Lee氏の言葉を借りるなら)「これならいい作品が生まれるはず」といったある種の安心感を抱かせてくれるのだが……それでもやはり「早くゲーム画面が見たいなぁ」と思わずにはいられない。


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/games/
□Xboxのホームページ
http://www.xbox.com/ja-jp/
□関連情報
【5月17日】Microsoft E3 2005 Briefing~ソフト編~
スクウェア・エニックス、EA、テクモなどの大作が揃い踏み
http://watch.impress.co.jp/docs/20050517/xboxs.htm
【5月17日】マイクロソフト、Xbox 360のゲームタイトルを発表。
「ファイナルファンタジー XI」も発売決定
http://watch.impress.co.jp/docs/20050517/ffxi.htm
【5月17日】カプコン、Xbox 360参入決定。
カメラマンの主人公がゾンビを撃退して謎を解明していく「DEAD RISING (仮称)」
http://watch.impress.co.jp/docs/20050517/capxbox.htm

(2005年5月19日)

[Reported by 豊臣和孝]


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