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「ファイナルファンタジー XI」開発者インタビュー
「アトルガンの秘宝」の魅力と、発売以降のアップデートの方向性を聞く

4月13日収録

会場:スクウェア・エニックス本社

 スクウェア・エニックスのオンラインゲームコンテンツの柱である「ファイナルファンタジー XI」の約1年半ぶり、3本目となる拡張ディスク「アトルガンの秘宝」がいよいよ4月20日に発売される。

 「アトルガンの秘宝」は、青魔道士、コルセア、からくり士という3種類の新ジョブを筆頭に、アサルト、ビシージといった新規バトルコンテンツ、既存世界から外れた“近東”エリアでの冒険など、明快なアピールポイントを数多く備えた拡張ディスクになっている。

 MMORPG市場において無料ダウンロードによる大規模アップデートが常識化することで拡張ディスクビジネスそのものが下火となり、ともすれば拡張ディスクパッケージは名を変えたスターターキットになりつつある中、これほどワクワクさせてくれる名実ともに揃った拡張ディスクがリリースされるのは久しぶりである。

 今回は「ファイナルファンタジー XI」プロデューサーの田中弘道氏と、「アトルガンの秘宝」ディレクターの小川公一氏に、「アトルガンの秘宝」の基本コンセプトを中心としたコンテンツの魅力と、2006年度以降の「ファイナルファンタジー XI」の未来戦略について話を伺った。


■ 対象はコアユーザー、対象レベルは50以上。「アトルガンの秘宝」の基本コンセプト

ご存じ「ファイナルファンタジーXI」プロデューサーの田中弘道氏。現在、ニンテンドーDS版「ファイナルファンタジーIII」のディレクターも兼任。多忙を極めるなかインタビューに応じていただいた
「ファイナルファンタジーXI アトルガンの秘宝」のディレクターを務める小川公一氏。インタビュー慣れしていない感じで、とてもフレッシュな印象を受けた
編: まず「アトルガンの秘宝」の話に入る前に、今年5月で「ファイナルファンタジーXI」は4周年、5年目に入りますけど、これまでを振り返ってみてどのような感想をお持ちでしょうか。

田中氏: あれよあれよという間に公開からもう4年ですものね。僕らは'99年の末から開発をはじめていますから6年半か。ずいぶん長いですね。

編: いまだに日本のMMORPG市場のメインストリームの一角を占めていることについてどのような感想をお持ちですか?

田中氏: MMORPGはビジネス的に長期運営が前提となりますから、作り始めた所から起算して5年後に通用するスペックでやろうというコンセプトで始めました。4年前、「ファイナルファンタジーXI」を発売した当初は、「ハイスペック過ぎる」とか言われてましたけれど、元々はそういうコンセプトだったんです。

 やっぱり一番“賭け”に近かったのは、インフラ周りですよね。まだISDNでテレホーダイが主流だった時代ですから、定額制にならないとMMORPGはツラいだろうなと。ただ、その後ADSLなどが急速に普及したので、それは大きな追い風になりましたね。

 もう1つ、バージョンアップしていくためにはどうしても大容量の追記型メディアとしてHDDが必要不可欠でしたが、当時のPS2にはHDDが影も形もなかった時から開発を始めていたので、それがどういう形になるか僕らもわからなかった。でも「やるんだ」と決めていたので、最悪PS2でハードディスクが出なくてもPCでやっていこうというのを決めていました。

 当時の日本のPC市場はコンシューマに比べて無いに等しい状況でしたが、反面海外では「MMORPG=PC」、「オンライン=PC」みたいなところがあり、我々は最初からグローバルをターゲットにしていたので、PCだけでもやっていけるのかなという見込みはありましたね。

編: 4月20日、いよいよ「アトルガンの秘宝」が発売されますけれども、基本コンセプトを教えていただけますか。

小川氏: 4年続けてきて、レベルキャップに到達している人がかなり増えてきたので、そうした人達が遊べる場所を増やしていこうというのが基本コンセプトです。単純にエリアを広げるだけだと遊びとして面白くないので、そこに新たな要素として「アサルト」や「ビシージ」といった広がりのあるコンテンツも併せて導入するという感じです。

編: そうしますと対象ユーザーとしては既存ユーザーであり、かつレベル75のキャラクタを持っているどちらかというとコアユーザーが対象ということでしょうか。

小川氏: メインの対象としてはそういうことになります。

田中氏: 一応、レベル50以上のプレーヤーを対象にしていますね。

編: 特にXbox 360版のユーザーはそうだと思うのですが、「アトルガンの秘宝」を発売をきっかけにゲームを始めるような新規ユーザーに対するアプローチはあるのでしょうか?

小川氏: そういったユーザーに向けては、やはり“新ジョブ”になると思うんです。それだけではないですが、やはり新ジョブが一番訴求力が高いのかなと。

編: オールインワンパックを購入した新規ユーザーは、3国から始めて、レベルを上げてサポートジョブを取得、ジュノへといった手順を踏むことになりますが、その延長上に今回の新ジョブが取得できるような難易度になっているわけでしょうか。

小川氏: 一応取れるようにはなっています。「アトルガンの秘宝」で追加される大陸というのは相対的にレベルが高いのですが、新ジョブ取得に関しては従来のエキストラジョブ同様、レベル30で取れるようにしようという方向で設計しています。

田中氏: ただ、新しい人がレベル1からスタートする場合に、既存のユーザーさん達も新しく取った青魔道士などでレベル1から行動するわけですよね。そこが結構狙いだったりするんです。

編: なるほど。新規ユーザーは無理に新ジョブを狙わずとも、戦士やナイトでも良いわけですね。

田中氏: そうですね。そうした新規ユーザーがパーティーを組む相手がレベル1に戻ってきたベテランプレーヤーのコルセアだったり、からくり士だったりするのは面白いかな、と思うんですよね。

編: ちなみにその新ジョブ取得クエストはどういったものになるのでしょうか?

小川氏: これまでのエキストラジョブ同様に、クエストを与える起点となるNPCがいて、そのジョブの設定にあったお話が展開していく形です。

編: 今回新ジョブを3つとも体験させていただきましたが、とにかく奥深くテクニカルで、そしてなんといっても各ジョブともカスタマイズが楽しそうだなと思いました。この辺は狙っているわけですか?

小川氏: そうですね、新しく追加すると言うことでバトルの方もこれまでの15のジョブで割とネタとしてはやり尽くしてるとまでは言いませんが、ほぼ出尽くしている感じですので、新ジョブでは新たな方向性としてカスタマイズ性を重視してみました。ユーザーさんからの要望としても「個性を出したい」という声も多く上がっていたので、ニーズに応えるべく、青魔道士やからくり士はカスタマイズ性の高いジョブとして設計しました。

編: 特にからくり士は発表された時は、あまりに予想した範疇を越えていたので、びっくりしました。からくり士はどのような発想から生まれたジョブなのでしょうか?

小川氏: 元ネタというか、ペットジョブとしてまず最初に決めたジョブは「ネクロマンサー」が出発点だったんです。アンデッドを操れるジョブとして考えていたのですが、昼日中にアンデッドを連れ歩くというおかしな光景が繰り広げられたりするので、ちょっとどうかなという話になって、ペットを考え直そうかという感じになりました。それでロボットというか、人形という方向にシフトしていって、どうせならカスタマイズができる方が面白いんじゃないかなということで「からくり士」という形になりました。

編: 各新規ジョブとも、上級者が上手にプレイすると相当強いジョブになるのではないかと思いました。やはり久々の新ジョブだけに、ちょっとプレミアがついている感じなのでしょうか?

小川氏: 弱いとどうしても遊んでくれませんからね(笑)。ある程度強い感じに調整されているのではないかなと思います。もちろん、一概には言えませんが。

田中氏: 一足飛びに強くすると既存のジョブの人達から絶対クレームが出てきますからね。「俺の○○をどうしてくれるんだ」とか、「俺のペットもカスタマイズさせろ」みたいな。なので、新ジョブはどれも、既存のジョブを引き立たせるような能力が多いですね。

編: 「アトルガンの秘宝」の発売に併せて導入されるという既存のジョブのバランス調整は、やはりそのあたりも踏まえてという部分もあるのでしょうか?

小川氏: 一応踏まえているとはいえ、その新しい3ジョブをユーザーの皆さんがプレイした訳ではないので、ジョブバランスについては発売後も調整されていくと思います。

田中氏: どちらかというと今まで貯まっていたユーザーさんからの要望や、今まで考えてきた部分を改めて言い直したというだけです。また、今回3ジョブが追加されることで、今までのジョブのバランスは絶対変わってくると思うので、それについては継続的にずっと手を入れ続けていきます。

編: 今回3つの新規ジョブが追加され、全18ジョブになるわけですが、その中での新ジョブの位置づけを教えてください。

小川氏: 青魔道士に関しては修得できる青魔法というのが種類が多いので、それのチョイスの仕方によって前に出て戦う事もできれば後ろで支援する事もできるのではないかなと。

 コルセアは基本的に“第2の吟遊詩人”をコンセプトに作っていますので、割とメンバーの補助なり、モンスターを弱体するなりがメインの仕事になるのではないでしょうか。

 からくり士に関しては、オートマトンのカスタマイズや普段の戦い方次第でオートマトンの行動も変わっていくようになっていますから、青魔道士と同じようにで幅のある動きができるのかなと思いますね。

左が青魔道士の青魔法をセットしている画面。右はからくり士のオートマトンのアタッチメント選択画面。これまでの「FF XI」にはなかったカスタマイズ画面で、一目見て「変わったな」と思わせてくれる。残るコルセアも、どのファントムロールを使うか、ダブルアップをどこまで狙うかなど、個性を出しやすくなっている


■ 「アトルガンミッション」はレベル制限無しの「ジラートの幻影」寄りの設計に

実に楽しそうに「アトルガンの秘宝」について語る小川氏。「プロマシアの呪縛」に比べ「アトルガンの秘宝」はかなり直球の拡張ディスクといえる
編: 今回アサルトとビシージというものが大きな要素として導入されますが、こちらはどういったコンセプトなのでしょうか?

小川氏: 「ファイナルファンタジーXI」も成熟してきましたし、ちょっとした時間にプレイしようとしても、本格的に狩りに行こうとすれば人集めから始まって何だかんだと時間がかかってしまうという声も大きい。平日の夜にログインしてちょっと遊んで寝る、みたいなことができれば楽しいなと考えて、ちょっとした時間にログインして短時間に遊べる要素としてアサルトを設計しました。

 ただ、短時間で遊ぶという流れにするためには、最初にちょっとした壁を越えなくてはいけないというか、条件を満たさなくてはいけないのですが、そこに達してしまえば短時間で遊べます。

 ビシージの方は、今回大陸がガラッと移ってしまうので、今までの「コンクェスト」の要素をそのまま持ち込むわけにもいきませんでした。何か新しい要素が必要だなということで、新しい街を作った際に「獣人達が攻めてくる」という遊びを入れたいと開発内部からの声もあり、それと組み合わせて常時コンクエストのように裏で回っているというか、ユーザーの行動の影響も受けつつ、永遠に回り続けるシステムとして入れていった感じです。

編: そうなるとビシージはワールドによってまったく展開が異なってくるのでしょうか?

小川氏: はい、そうですね。ビシージはワールドによって街に“魔笛”があったり、ラミアに取られていたり、マムージャに取られていたりといったように状況が変わってくると思います。

編: アサルト、ビシージと、「アトルガンミッション」との兼ね合いはどのようになりますか?

小川氏: 今回「アトルガンの秘宝」にもミッションが導入されます。序盤で傭兵になるという流れになるんですけれども、傭兵になることでアサルトも受けられるようになる。そこだけがリンクしていてそれ以外は、ミッションとアサルトで完全に枝分かれしています。傭兵になる所だけがミッション必須という形です。

編: なるほど、極端な話をすれば、アトルガンには行くけれども傭兵にはならないというプレイスタイルもあり得るのでしょうか?

小川氏: ただ傭兵にならないと、アサルトは遊べませんし、アトルガン地方でかけられるシグネットに変わるサンクションというものも得られません。遊びとしては苦しくなりますから、それはないと思います。

編: ミッションの基本的なデザインについてですが、「プロマシアの呪縛」のミッションは、レベル30から75まで1つ1つ階段を踏んでいくという形でしたが、「アトルガンの秘宝」ではどうなるでしょうか?

小川氏: 今回は「プロマシアの呪縛」の時の形式とは違って、どちらかと言えば「ジラートの幻影」寄りと言いますか、丸ごとエリアにレベル制限を課してそこに突入してクリアしていくという形ではありません。

編: ミッションの対象レベル、特に導入部分はどのくらいを想定しているのでしょうか?

小川氏: 特に制限や対象レベルはないのですが、配置されているモンスターのレベルは高いですから、そういったフィールドなりを通過して行くことを考えると、それなりに高いと言えば高いですね。ただレベルが低いからと言ってミッション序盤ができないという事はありません。

編: ミッションを進めていくためのプレーヤーの単位は何人ぐらいを想定していますか。

小川氏: 序盤に関しては特に人数は必要としません。1人でもできなくはないです。もちろん、簡単すぎてもつまらないですから、だんだん難易度は上げていく形になりますけどね。

編: 1人で可能なところもあるし、フルアライアンス推奨といったシチュエーションもあり得ると?

小川氏: 将来的にはフルアライアンス推奨もあり得ますね。

編: そういったミッションの中で、今回追加される新規ジョブはどのような関わりを持っていくのでしょうか?

小川氏: ミッションに直接新規ジョブが絡むことは今のところありませんけど、ミッションの裏にあるストーリーというか設定的な部分で、間接的に表現されるといった形では絡んできます。

田中氏: 今回は3つの新ジョブともに世界観に密接に絡んでくるジョブなので、バックグラウンド的な情報をオフィシャルサイトにも出していきます。1発目が青魔道士で、3日間連続で出していきます。

編: ミッションを進める上で新規ジョブの参加は必須ではないのですか?

小川氏: それはないですね。

編: いた方が有利、というシチュエーションはありますか?

小川氏: それはバトル次第なので何とも言えませんね(笑)。状況によってはあり得るかもしれません。


■ Xbox 360への展開に対する抱負、欧米展開の次の取り組みについて

Xbox 360版について語る田中氏。実は見えない部分でかなり力を注いでおり、特に欧州市場に熱い期待を寄せているようだ
編: 今回Xbox 360版が発売されますが、こちらの抱負についてお聞かせください。

田中氏: 元々は欧州の市場でPS2版のハードディスクが出なかったものですから、そこでの新たなコンシューマ市場でのユーザーの獲得というのが、Xbox 360版の一番の目標です。元々はXboxの頃からマイクロソフトさんとはお話させていただいて、途中まで開発は続けていたんですが、最終的にハードディスクの容量や使い方の問題やオンラインに対するポリシーの違いで平行線に終わってしまいました。

 今回Xbox 360でのオンラインゲームの扱いというものをお互い話し合って妥協点が見出せたので、だったら断る意味はないかなと。できれば多くのプラットフォームで、ユーザーさんが色々な環境から入ってこれるような入口をいっぱい作りたいというのが僕らのスタンスですね。そういう意味では新たな窓口が広がったかなと。

編: Xbox 360版と関連して今回サプライズだったのはドイツ語、フランス語への対応でした。

田中氏: ドイツ語、フランス語対応は、本当は欧州で開始する時から必要だろうとは思っていたんですけれどもね。欧州は、英語のみのPC版だけだとどうしてもユーザー数的に商業ベースでペイできる所まで行かない部分があります。

 GDCでSage Sundiが発表しましたけど、僕らのスタンスとして国別にサーバーを分けて時間差で配信しているわけではなくて、常に全世界同時でアップデートしていく。同じコンテンツを世界中で共有していきたいというのがあります。それを維持するためにはリアルタイムで英語とドイツ語とフランス語と日本語の4バージョンを常に作り続けていく体制を作らなくちゃいけないところがあって、結構ハードルが高い。

 今回、Xbox 360版を出す以上は本腰を入れてちゃんとやっていこうということで、ドイツ語、フランス語の翻訳者とコーディネーターを開発チーム内に各言語数名ずつ入れる体制を作って、それ以外に必要に応じて外部にもトランスレーターを置くような形で本当にリアルタイムでやっていこうと思っています。

編: Xbox360版、そしてフランス語、ドイツ語に対応していくというのはそれなりにヨーロッパでのユーザーの獲得というのに手応えを感じていると言うことでしょうか。

田中氏: 目指している、ということですね。日本と北米に関しては課金システムはクレジットカードとウェブマネーで良かったんですが、欧州って国ごとに全然違うんですよ。デビットカードや銀行決済とか、非常に複雑なのでそこに関しても課金システム全部作り直したのでそれなりに力入っています。

編: アジア圏やブリックスエリアへの展開など、欧米以外のエリアの展開についてはいかがですか?

田中氏: ご存じのように弊社の中国支社に本多(副社長)が行っていますけど、現地からは矢のような催促で「ファイナルファンタジーXI」の中国語版を出してくれというのが来ているんです。しかし、中国でサービスを行なうオンラインゲームは、国外のゲームサーバーへアクセスを国によって禁止されているんですよ。

 現在は、プレイオンラインを含む、「ファイナルファンタジーXI」関連のサーバー設備は、すべて日本に置いていますから、中国で展開するとなるとまったく違うものを別途一式用意しなくてはいけなくなる。そうなると運営も二重化しなくてはいけなくなって結構リスクが高いかなと。

 その一方で、日本や欧米では今年の年末からPS3などの新たな次世代機の波がやってくると思うんです。そのどちらを優先して僕たち開発は作業していくべきかと、悩ましいところですよね。中国以外でも韓国でもオンラインゲームって盛んだと思うんですけど、この間も「Ever Quest II」が撤退しましたよね。地域性を考えると、海外のその手のソフトに関してはまだハードルが高いのかなというところもあります。

 まあ、オールマイティなゲームができれば一番言うことはないんでしょうけれども、例えば「Guild Wars」や「World of Warcraft」とか世界中でヒットしているコンテンツを考えるとやれない事はないのかなとも思うんです。

編: では指向している次のターゲットはアジアかな、という感じでしょうか。

田中氏: うーん、どうですかね。どちらかというと僕らは次世代機や次世代OSの方に目が行っちゃってますね(笑)。「ファイナルファンタジーXI」をやりながら今やっているのは、次のWindows Vista、PS3に向けた新たなMMORPGです。その枠組みの中で、アジアも含めたワールドワイドへの対応ができればいいかなと。

 「ファイナルファンタジーXI」に関しては、中国のPC房などを見て回ったんですけど、皆さんたばこを吸いながら片手でマウスを握ってプレイしているというのが多くて、「ファイナルファンタジーXI」みたいにチャットがメインとなるコミュニケーション型MMORPGはあまり向かないのかなと。

 それとやっぱり中国ではソロを中心としたゲームデザインが多くなっているように見えるので、現地でアンケートを取ると「ファイナルファンタジーXI」に要求することがちょっとベクトルが違うというのがあってそのニーズに答えていこうとするとそれなりに開発期間がかかるということもあり、難しい状況です。

田中氏のいうWindows Vistaベースで開発されている次世代MMORPG。これは昨年5月にE3で発表されたもので、現在はもっともっと開発が進んでいるだろう


■ 次世代機時代の「FF XI」の姿、次世代MMORPGの取り組みについて

次世代への対応は、今まさに無数の可能性からどれを選択するのか検討中といった様子。隠しネタの「タルタルの森」は意外にも大ウケだった(笑)
編: 田中さんの仰る次世代機への対応というのは「ファイナルファンタジーXI」の“次世代化”という意味も含んでいるのでしょうか。

田中氏: そういうわけではないですね。去年のE3のMicrosoftのカンファレンスで、次世代MMOの研究開発作品の映像を上映しましたけど、あの延長線上にあるもの、それは今ある「ファイナルファンタジーXI」とは違う別のMMORPGということになりますが、それが位置づけとして「ファイナルファンタジーXI」の延長線にあるのか、併存するのか、対立するのか。今はまだハッキリとしたことは言いにくいところではあります(笑)。

編: 特にコンシューマユーザーが気になるのはXbox 360、PS3、レボリューションといった次世代機が出そろった時の「ファイナルファンタジーXI」の姿だと思いますが、これからどうなるでしょうか?

田中氏: 今回のXbox 360版への移植というのもその1つだと思うんです。ユーザーさんがPS2から次のPS3なりXbox 360なりにハードを買い換えた時にやっぱり過去のマシンってしまっちゃうと思うんですよね。そうすると「ファイナルファンタジーXI」を遊ぶ環境がなくなってしまう。我々としてもどこかでプラットフォームを“乗り換えて”いかなくてはいけないのかなと。

 Windowsの場合はそれがシームレスに徐々にバージョンアップしていったり、あるいはマシンの性能が上がっていったり、それに対応していけばいいと思うんですが、コンシューマ機の場合、5年に1回ぐらいの頻度でドカっとアーキテクチャが変わるじゃないですか。そこをどうするかが1つのターニングポイントだと思うんですね。

 僕らはPS2で「ファイナルファンタジーXI」を始めた時に、多分PS3が出てくるまでは続けるだろうけど、その先どうするかは考え所だね、という話はしていたんですよ。そこでガッと打ち切って次に行くのか、そこを乗り換えて次のプラットフォームで動くようにしていくのか、今まさに検討中な訳です。

編: たとえば「Ever Quest」では数年ごとにグラフィックスエンジンをそっくり入れ替えて寿命を伸ばしてきました。そういった選択肢もあり得るんでしょうか?

田中氏: 物理的には可能でしょう。ただ、「Ever Quest」みたいに全部0から次のエンジンに向けてすべてを作り直すというようなものは、「ファイナルファンタジーXI」位のスペックのものになってきちゃうと大変は大変なんですよね。今回のXbox 360版もいわゆるWindows版からの移植レベルで、Xbox 360専用にすべてを作り直したわけではないですから。

 1から全部やろうとすれば多分2〜3年はかかってしまうので、その労力があったらもっと最初から次世代機をターゲットにした新しいものを作っていった方が得策なのかなと。ユーザーにもそっちの方がメリットは大きいのかなと思ったりするわけです。

編: それではPS3が発売される予定の11月にあわせて、次世代の「ファイナルファンタジーXI」が登場するというようなことは難しいかなという感じですか。

田中氏: それは無理ですね(笑)

編: スクウェア・エニックス全体の動きから見ますと、3月に「ファイナルファンタジーXII」が発売されて、「ファイナルファンタジーXI」が最新ナンバーではなくなった訳ですが、「XI」と「XII」が平行する中で、今後どのようにアピールを続けていくのでしょうか?

田中氏: かつて、「X」、「XI」、「XII」と2000年にミレニアムイベントとして3本同時開発として発表しました。僕らの中では全部兄弟ソフトというか、すぐ横で開発していたり、お互いが良い影響を与えながら作ってきたとは思うんですね。

 それはもちろん「ドラゴンクエスト」シリーズも含めてのことだと思うんですけれども、オンラインゲームとしては「ファイナルファンタジーXI」をホームグラウンドとして、色んなゲームをプレイしてくださいということで(笑)。特に意識はしていません。

 実際「XII」が発売された直後は、「ドラゴンクエスト8」の時もそうでしたけど、アクセスが結構減るんですね。「XI」のゲームの中に入ってみると、「みんな『ドラクエ』やってる?」とチャットしながら横でプレイしたりしてるんですよね。

編: スクウェア・エニックスさんの戦略としてコンピレーションがありますけれども、「ファイナルファンタジーXI」の別バージョンといいますか、別のアプローチでのインタラクティブエンターテイメントの提供というのはあり得るんでしょうか?

田中氏: バリスタみたいなものとはちょっと違うんですけど、アクション格闘ゲームのようなものを別コンテンツでやろうかという話は一番最初にあったんですけれども、最終的にはどうせやるなら「ファイナルファンタジーXI」でやろうよって、みんな思っちゃうんですね。せっかく「XI」という土壌があるので、できることは「XI」でやってしまえばユーザーさんにも新たな出費を要求しなくても「XI」の中で楽しんでもらえるかなと。

編: GDCで時田(「半熟英雄」シリーズのプロデューサー)さんと雑談した時に、「『タルタルの森』みたいな展開があってもいいよねえ(笑)」という話題で盛り上がったのですが(笑)

田中氏: たしかに面白いかもしれない。長年慣れ親しんだ自分のキャラクタで何か他のこともしてみたいというのは確かにありますよね。

編: 田中さんとしてはそういう展開はありですか?

田中氏: 正直、あまり考えたことはなかったですね。みんないっぱいいっぱいなので(笑)。開発にそれなりに余裕があればいいんですけど、ちょっとでも余力があると、「XI」をどう面白くするかにばかり頭が行ってしまうので。商売としては下手なのかもしれません(笑)、そこまでなかなか色気が出ないですね。


■ 遊びの幅を広げるチョコボレース、闘獣場

言葉をじっくり選びつつ今後の展開について語る小川氏。まだまだ未公開ネタが山ほどあるような、そんな印象を持った
編: 田中さんの中で現在の「ファイナルファンタジーXI」に関して、どのような現状認識をお持ちですか?

田中氏: 今回Xbox 360版の発売で新しい窓口が開きますけれども、この1〜2年というのはユーザーさんの数が増えも減りもしないんです。毎日数字を取っているんですが、月末はウェブマネーでドッと減るんですけれども、また戻ってくる。だから前月の13日と今月の13日を比べるとまったく同じ数なんです。差が1%以内なので、ちょっと安定しすぎかなと。

 4年もたったRPGとしては喜ばしいことではありますが、新しいユーザーさんを獲得できていないとも思います。実際わからないですけどね。やめていく人もいれば新しく始める人もいてバランス取れているのか、ずっと同じ人達がやり続けているのか詳しくはわからないですが。バランスが取れすぎているのも変なので、もうちょっと仕掛けが必要なのかなと思うんです。

編: 認識としては新規ユーザーがなかなか取れないなと?

田中氏: そうですね。拡張ディスクというのは1つのタイミングだと思うんです。ただ、過去「ジラートの幻影」、「プロマシアの呪縛」の時にあまり急激なユーザー増には結びついていない。今まで会員数がどっかり増えたのは、新しいプラットフォームへ展開したときです。たとえばPS2からWindows版、それから新しい地域でのサービス、北米での展開といった時にドカンドカンと増えるんですね。今回、欧州でのコンシューマ市場に対してXbox 360で展開していく、ということで僕らなりには少し期待している部分はあります。

 ただ、欧州の場合は言語の問題、課金システムの問題があるので一筋縄では行かないとは思っています。4月のタイミングではドイツ語、フランス語というのは間に合わなかったんですけど、なるべく早くそこも対応してユーザー数の獲得に向けて頑張っていきたいですね。

編: 特に今回新規ジョブ以外に、現状わかっている限りでもチョコボレースとか、闘獣場とか、ワクワクさせる新要素が発表されています。こういったものも新規ユーザーを取り入れるための戦略の1つでしょうか。それとも既存ユーザーのニーズに応えたものなのでしょうか。

田中氏: それらに関しては、後者だと思うんですよね。やはり長い間遊んでいればどうしてもマンネリ化してきたり、新しい遊びを求めていくと思うんですよ。新規の人には、これまで作ってきた膨大な量の遊びがすでにそこにあるので、まずはそれを遊んでいただきたいです。「ファイナルファンタジーXI」の世界のミッションなりクエストなりを知った上で新しいコンテンツを是非遊んでいただきたいかなと。

 僕らも新しいコンテンツを追加した時に、それを前提にしている部分も結構ありますから、右も左もわからない時にビシージとか言われても「何でそこで俺たちは戦わなきゃいけないんだ」ということになってしまいますよね。

編: チョコボレースや闘獣場の開発コンセプトはどのようなものでしょうか?

小川氏: チョコボレースは、前段階としてチョコボ育成というのがあります。それで育てて結局何をするのかという時に活躍の場が必要だろうという発想ですね。「レース」というものの要望や、ギャンブル要素を望む声も高かったので、それらを実現させるためにレースという要素を入れることになりました。

 闘獣場は開発側で作りたいというのがバトルチームからあったので、それならば入れようかと。そちらも割と今まである資産を活かした上で作っていけるものになりそうで、こちらもレベルを問わず楽しめるものを作ろうという事の一環です。

編: 特にチョコボ育成はレベル1から楽しめると言うことで、ひょっとすると冒険に行かずチョコボ育成だけを楽しむようなプレーヤーもあり得るのでしょうか?

小川氏: そういうところも視野に入れています。

編: 闘獣場に関しては、どういったものを想定しているのでしょうか。

小川氏: まだあまり詳しくは語れませんが、ヴァナ・ディールに棲息しているモンスターの何かを採集して闘獣場というところで召還して戦わせるという感じですね。

編: どちらもメインストリームとはちょっとはずれたところにありますが、こういった非バトル型のコンテンツは今後も増えていくのでしょうか。

小川氏: とりあえず、まずこれらのコンテンツを経てからまたどうやっていくかですね。

田中氏: これまでも生産系では指定生産クエストですとか、いわゆるバトルとは無縁の物も結構あったとは思うんです。ユーザーさんによっては「俺はバトルなんかしたくない」という人もいるので、そういった人もゲームで遊んでいける要素というのは必要なのかなと思いますね。

編: 個人的には「フェローシップクエスト」がどうなったのかな、終わったのかな、というのが気になってます。

小川氏: 一応開発側としては一区切りつけたのですが(笑)、また今の「アトルガンの秘宝」の見通しがつき始めたら、あるいはという感じですかね。

編: ひととおりクエストをクリアした感想としては、むしろ「アトルガンの秘宝」の布石なのかなと、「アトルガンの秘宝」で本格的に始まるのかなと思ったのですが。

小川氏: 導く役割はあったんですが、その役割自体は終えたという感じですね。

田中氏: 全然違う意図で作っていたんですけど、時期的なタイミングもあって、ネタふりを被せてしまったところもありますね。

編: 「プロマシアの呪縛」後半くらいから経験値UPのリングとかフェローもそうですが、戦略的な部分でソロプレイにも目を向けるようになってきたのかなと感じました。「アトルガンの秘宝」以降はどうなるのでしょうか?

小川氏: パーティーでも遊べるしソロで楽しめるのにもこしたことはないので、どちらもバランスよく考えていかないとなと思っています。ソロ成分が足りなければそちらも作っていかないとなと。ただソロをメインにするということはないですね。

編: 現在上級者向けの要素としては「アル・タユ」や「トゥー・リア」での冒険がありますが、「アトルガンの秘宝」ではそれに準ずる、あるいは上回るようなコンテンツが実装されるのでしょうか?

小川氏: 今後そういったエリアも出てきますね。ただ、遊びの方向性としては今までとはまた違ったものになりますけど。

田中氏: さっき言ったチョコボの育成とか、闘獣場のように低レベル向けユーザーへの要素も増えていきます。遊びの幅は広がっていくんじゃないかなと思いますね。

編: 今後のアップデート計画を教えてください。

小川氏: アサルトは順次選択できる作戦が増えていきます。ミッションは「プロマシアの呪縛」同様、少しずつ拡充しつつずっと続いていくような感じです。ビシージは我々としてもまだ最終形が見えていない部分があります。まずは公開の状況を見て新要素を出せれば出していくという感じです。後はチョコボレースや闘獣場の開発をやっていく感じですね。


■ ダウンロード販売など、インフラ環境の変化に対応した新たなチャレンジ

PSPから競売やチャットが見れる日が来るのだろうか? 「ない」とは言い切れないところが「FF XI」のポテンシャルの高さだろう
編: これまで「ファイナルファンタジーXI」は欧米のMMORPGと同じように拡張ディスク戦略をとってきた訳ですが、「アトルガンの秘宝」以降の戦略はどうなるのでしょう。

田中氏: 特に戦略を変える予定は今のところないですね。拡張ディスクの内容の多くはマップと音楽のデータなんですけれども、配信していく上ではディスクメディアの選択がベストでしたが、今はだいぶインフラの整備が整ってきてオンラインでの配信もなしではないかなと。

 実際、「Ever Quest II」でもシナリオアップデートなどでオンライン配信をやりましたし、ようやくできる環境にはなってきましたね。ただ、それを「ファイナルファンタジーXI」でやるかどうかはまた別な問題ですが。

編: 現時点でもプレイオンライン上で、ダウンロード決済する機能はあるのではないですか?

田中氏: いえ、実はまだそこまで具体性を持ったものはないんです。欧州向けの課金システムを作り直す課程でその機能も追加する予定です。それこそいわゆる「アイテム課金」も可能なようにはなりますが、それを「ファイナルファンタジーXI」で使うというのは、まあ、ないかなと。ダウンロードでコンテンツを拡充していくというのはようやくできる環境ができつつあります。検討する価値はありますね。

編: Xbox 360ではマーケットプレースというダウンロード販売コンテンツがありますが、ここで「アトルガンの秘宝」のゲーマーアイコンが発売されていましたね。

田中氏: あれは自社だけではできなかったことですね。そういった方向性も今後検討していこうと思っています。

編: 「ファイナルファンタジーXI」ではクロスプラットフォーム戦略というのが1つの大きな柱になっています。現在は据え置き型のハードのみになっていますが、PSPを含む次期モバイルプラットフォームへの展開はあり得るのでしょうか?

田中氏: Xbox 360版でのPC版の平行スライド移植のように、下方向へのダウンコンバート、データを全部作り直す方向でない範囲内で移植できれば、そういった展開も可能だと思うのですが、大事なのは果たしてそれをユーザーさんが望んでいるのかどうかという部分ですね。

 実は以前発表した携帯電話からのチャットやオークションができたりというシステムはほとんど完成に近付いていたのですが、モバイル専用のサーバーを立てて「ファイナルファンタジーXI」のデータにアクセスするために「ファイナルファンタジーXI」のユーザー自体にかなりの負荷がかかってしまう可能性があって、それを感じさせないためには相当コストがかかってしまう。それで途中で無期延期という形になってしまいました。

編: 現状ではモバイルデバイスへの展開は難しいかなという感じですか。

田中氏: 可能性はあると思うんですけどね。PSPはインターネットに簡単につながる仕組みを持っていますのでゲーム内にログインして様子を見るとか、レイドレベルのコンテンツをプレイするのは無理でしょうけど、チャットやオークションをのぞいてみるとかはできると良いなとも思いますね。ただ、残念ながらそこまで手が回っていません。

編: 最後にユーザーに対してメッセージを。

小川氏: 「アトルガンの秘宝」からヴァナ・ディールに入る方も、これまでプレイしてきたベテランの方も、これからも楽しく遊べるコンテンツを頑張って作っていきたいと思いますので、末永くヴァナディールをよろしくお願いします。

田中氏: 改めて4年という月日を考えてみると、あっという間だった気がします。そんなに長期間やったという実感がわかないんですが、きっとこれからの4年間もずっとそんな感じかなと思います(笑)。どこまで続けられるかわからないですが、末永く「ファイナルファンタジーXI」をよろしくお願いします。

編: ありがとうございました。

(C)2002-2006 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.

※画面はすべて開発中のものです

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□「ファイナルファンタジー XI」のホームページ
http://www.playonline.com/ff11/
□関連情報
【4月14日】スクウェア・エニックス、「FF XI アトルガンの秘宝」の最新情報を公開
ヤグードの獣人傭兵ゲッショー、近東の武器、装束等の新装備など
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060414/ff11toa.htm
【3月24日】スクウェア・エニックス、「FF XI アトルガンの秘宝」の最新情報を公開
3つ目の新ジョブ「からくり士」、「チョコボレース」など新要素続々
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060324/ff11toa.htm

(2006年4月19日)

[Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]



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