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会場:San Jose McEnery Convention Center
■ 北米市場はカジュアルゲームに注力、日本タイトルの移植には消極的
岡田大士郎氏のセッションでは、日本のモバイルゲーム市場での自社の成功事例を引き合いに出しながら、アジアモバイルゲーム市場の動向と日本でのトレンドの紹介、そして今後の北米市場での取り組みについて語った。 2005年までの日本の取り組みについては、当然のことながら既知の情報が多いのだが、初出と思われるオフィシャル情報も含まれているので、簡単に紹介しておく。まず日本のモバイルゲームの市場規模は約2,200億円程度で、うちスクウェア・エニックスとタイトーを合算すると、ドワンゴ(7.0%)に次ぐ国内第2位(4.9%)のモバイルゲームパブリッシャーに位置づけている。 日本での利用形態は、家庭での利用が多いのを特徴としており、中でもコアゲーマーの利用率が高い。有料コンテンツの利用率は約58%(2004年)に達し、1月あたりの平均利用料金は200円から500円に大きな山がある。有料のダウンロードゲームは、コアゲーマーの利用が多く、一方で、カジュアルゲーマーもプリインストールベースのゲームをプレイしており、同社がダウンロードゲーム、プリインストールゲーム両方の牽引役を担ってきたことから、同社の事業が携帯電話のゲームプラットフォーム化に大きく寄与し、すでにゲームプラットフォームとして成立しているという観測を示した。 日本の未来予測としては、業界の大きな動きとして今年11月から施行されるナンバーポータビリティ、ソフトバンク、イーアクセス等の新規事業者の参入、コネクションスピードの向上の3点を上げ、キャリア競争の激化、クリティカルコンテンツの争奪戦、ユーザーサイドの選択肢の増大といった予測を示し、ゲームパブリッシャーにとっては、M&Aの激化やゲームの大作指向に一定の懸念を示しつつも、基本的に歓迎できる環境であること報告。 転じて北米市場での今後のチャレンジについては、ビジネスモデルや開発環境の整備を含む日本のようなゲームプラットフォーム環境の“創出”、まだまだ旧世代機の利用が多い北米でのマス層へのアピールの積極化、ゲームコミュニティに対するマネジメントなどをあげた。また、将来的にはカメラ機能やネットワーク機能の活用についても意欲を示した。 コア層とカジュアル層の両方のターゲットをカバーするともコメントしたが、日本のキャリアで展開している「ドラゴンクエスト」シリーズや「ファイナルファンタジー」シリーズ、「Before Crisis FinalFantasy VII」、「Code Age Brawls」といったいわゆる大作コンテンツの移植についてはあまり積極的ではなく、まずはカジュアルゲームによるカジュアル層へのアピールに注力していくという。 すでに欧米では日本のキャリアのパフォーマンスに追いついており、上記タイトルをそのまま動作可能な端末も多数リリースされている。それでも移植に消極的な理由は、大前提として欧米で普及していういるアプリケーションプラットフォーム「BREW」への対応が必要不可欠になる。つまり、再開発が必要になること、それからこれらのゲームに対応可能な端末がまだまだ限られているためだという。 欧米では、日本のようにキャリア主導で、端末の世代交代を促進させるようなビジネスモデルにはなっておらず、既存端末に新規端末がそのまま上乗せされ、コンテンツパブリッシャーは常に無数の端末の対応に苦慮している背景がある。より多くのユーザーにアピールするためには、より多くの端末に対応する必要があるわけで、Square Enix Incが低スペックマシンでも動作可能なカジュアルゲームを重視するのは当然の帰結といえる。 具体的な動きとしては、北米オリジナルのカジュアルコンテンツの配信、北米では先行しているタイトーのモバイル事業との密接なパートナーシップの構築、そして新規のマーケティング展開をあげた。マーケティングについては、北米ではキャリアの存在が薄く、毎月自宅に最新情報を満載した小冊子が届けられるような仕組みができていないため、たとえばWebサイトなどを使った新たなマーケティングプランを検討していくという。 また、コミュニティマネジメントについては、すでに同社にはPlayOnlineという有力なポータルが存在するが、「ファイナルファンタジー XI」のブランドが強すぎることから、“Play Online Mobile”のようなモバイルデバイス向けのコミュニティポータルの提供を考えているという。
岡田氏に今後の抱負について質問すると、「1,000円を少数ではなく、いかに多くのユーザーに100円を払っていただくか。現在は種まきの段階だと捉えています。モバイル端末をゲームプラットフォームとして成熟させるために、3年、5年、10年の長いプランで考えています」とコメントをいただいた。北米でのビジネスが成功すれば、北米オリジナルコンテンツの逆輸入が行なわれるようなシナリオも考えられる。Square Enix Incの北米独自の展開に注目したいところだ。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ (2006年3月22日) [Reported by 中村聖司]
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