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Game Developers Conference 2006現地レポート

GDC Mobile 2006レポート その1
スクウェア・エニックスが日本モバイル市場の現状と北米展開の今後を紹介

3月20~25日開催

会場:San Jose McEnery Convention Center

 GDC初日と2日目は、モバイルプラットフォームにおけるデジタルエンターテインメントをテーマにしたGDC Mobileが開催された。GDC内のモバイルジャンル部門といった扱いだが、GDC Mobileだけで日本のCEDEC(CESA Developers Conference)並の規模のセッションが開催される。本稿では、スクウェア・エニックスCOO岡田大士郎氏のセッション「WHAT'S NEXT FOR JAPAN」を取り上げる。


■ 北米市場はカジュアルゲームに注力、日本タイトルの移植には消極的

流ちょうな英語で講演を行なうSquare Enix Inc President COO岡田大士郎氏。2005年10月に着任したばかりであり、現在北米市場の勉強中だという
タイトーを子会社化したことで、スクウェア・エニックスグループは、日本で2位の端末占有率を誇るメーカーに
日本の成功事例としては、「ドラクエ」、「FF」シリーズを取り上げた。NTTドコモ、パナソニックを加えた3社によるプリインストールベースのビジネスは、欧米ではまだ未知の領域だけに新鮮に映ったようだ
 岡田大士郎氏は、2005年10月にスクウェア・エニックスの北米子会社Square Enix IncのCOOに就任し、モバイル事業部長を兼務している。Square Enix Incは、北米方面のパブリッシングに加え、将来のメイン事業としてモバイルゲーム事業の拡大を狙っており、自社の開発チームと、昨年買収したミドルウェア会社UIEvolution、その他現地パートナー等を通じて、北米オリジナルタイトルの開発に力を注ぎつつある。

 岡田大士郎氏のセッションでは、日本のモバイルゲーム市場での自社の成功事例を引き合いに出しながら、アジアモバイルゲーム市場の動向と日本でのトレンドの紹介、そして今後の北米市場での取り組みについて語った。

 2005年までの日本の取り組みについては、当然のことながら既知の情報が多いのだが、初出と思われるオフィシャル情報も含まれているので、簡単に紹介しておく。まず日本のモバイルゲームの市場規模は約2,200億円程度で、うちスクウェア・エニックスとタイトーを合算すると、ドワンゴ(7.0%)に次ぐ国内第2位(4.9%)のモバイルゲームパブリッシャーに位置づけている。

 日本での利用形態は、家庭での利用が多いのを特徴としており、中でもコアゲーマーの利用率が高い。有料コンテンツの利用率は約58%(2004年)に達し、1月あたりの平均利用料金は200円から500円に大きな山がある。有料のダウンロードゲームは、コアゲーマーの利用が多く、一方で、カジュアルゲーマーもプリインストールベースのゲームをプレイしており、同社がダウンロードゲーム、プリインストールゲーム両方の牽引役を担ってきたことから、同社の事業が携帯電話のゲームプラットフォーム化に大きく寄与し、すでにゲームプラットフォームとして成立しているという観測を示した。

 日本の未来予測としては、業界の大きな動きとして今年11月から施行されるナンバーポータビリティ、ソフトバンク、イーアクセス等の新規事業者の参入、コネクションスピードの向上の3点を上げ、キャリア競争の激化、クリティカルコンテンツの争奪戦、ユーザーサイドの選択肢の増大といった予測を示し、ゲームパブリッシャーにとっては、M&Aの激化やゲームの大作指向に一定の懸念を示しつつも、基本的に歓迎できる環境であること報告。

 転じて北米市場での今後のチャレンジについては、ビジネスモデルや開発環境の整備を含む日本のようなゲームプラットフォーム環境の“創出”、まだまだ旧世代機の利用が多い北米でのマス層へのアピールの積極化、ゲームコミュニティに対するマネジメントなどをあげた。また、将来的にはカメラ機能やネットワーク機能の活用についても意欲を示した。

 コア層とカジュアル層の両方のターゲットをカバーするともコメントしたが、日本のキャリアで展開している「ドラゴンクエスト」シリーズや「ファイナルファンタジー」シリーズ、「Before Crisis FinalFantasy VII」、「Code Age Brawls」といったいわゆる大作コンテンツの移植についてはあまり積極的ではなく、まずはカジュアルゲームによるカジュアル層へのアピールに注力していくという。

 すでに欧米では日本のキャリアのパフォーマンスに追いついており、上記タイトルをそのまま動作可能な端末も多数リリースされている。それでも移植に消極的な理由は、大前提として欧米で普及していういるアプリケーションプラットフォーム「BREW」への対応が必要不可欠になる。つまり、再開発が必要になること、それからこれらのゲームに対応可能な端末がまだまだ限られているためだという。

 欧米では、日本のようにキャリア主導で、端末の世代交代を促進させるようなビジネスモデルにはなっておらず、既存端末に新規端末がそのまま上乗せされ、コンテンツパブリッシャーは常に無数の端末の対応に苦慮している背景がある。より多くのユーザーにアピールするためには、より多くの端末に対応する必要があるわけで、Square Enix Incが低スペックマシンでも動作可能なカジュアルゲームを重視するのは当然の帰結といえる。

 具体的な動きとしては、北米オリジナルのカジュアルコンテンツの配信、北米では先行しているタイトーのモバイル事業との密接なパートナーシップの構築、そして新規のマーケティング展開をあげた。マーケティングについては、北米ではキャリアの存在が薄く、毎月自宅に最新情報を満載した小冊子が届けられるような仕組みができていないため、たとえばWebサイトなどを使った新たなマーケティングプランを検討していくという。

 また、コミュニティマネジメントについては、すでに同社にはPlayOnlineという有力なポータルが存在するが、「ファイナルファンタジー XI」のブランドが強すぎることから、“Play Online Mobile”のようなモバイルデバイス向けのコミュニティポータルの提供を考えているという。

 岡田氏に今後の抱負について質問すると、「1,000円を少数ではなく、いかに多くのユーザーに100円を払っていただくか。現在は種まきの段階だと捉えています。モバイル端末をゲームプラットフォームとして成熟させるために、3年、5年、10年の長いプランで考えています」とコメントをいただいた。北米でのビジネスが成功すれば、北米オリジナルコンテンツの逆輸入が行なわれるようなシナリオも考えられる。Square Enix Incの北米独自の展開に注目したいところだ。

日本のトレンドとして「Before Crisis FinalFantasy VII」、「Code Age Brawls」の2本を紹介。いずれもクロスプラットフォーム展開しているポリモーフィックコンテンツだ

「Before Crisis FinalFantasy VII」、「Code Age Brawls」では、ネットワークへの対応や端末のGPS機能を使ったゲーム要素、Webを使ったコミュニティ機能などを紹介。こうしても見ると、日本は先端テクノロジーの活用がとてもうまいことに気づかされる

□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□関連情報
【2005年3月】Game Developers Conference 2005 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050315/gdclink.htm
【2005年3月8日】Game Developers Conference 2005がサンフランシスコにて開催
著名クリエイターが一堂に会する世界最大規模のゲームカンファレンス
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050308/gdc_01.htm

(2006年3月22日)

[Reported by 中村聖司]



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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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