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★PS2ゲームレビュー★
■ PS2のグラフィック性能を極限まで引き出したハードSFシューティング 近未来、人類は他の惑星に進出し植民地化に成功していた。舞台となる惑星ベクタも、ISA(インターナショナル・ストラテジック・アライアンス:国際戦略同盟)によって植民地化、統治されていた。しかし別勢力である惑星ヘルガーンの侵略部隊「ヘルガスト」の侵略部隊がこれを強襲。守りの要であるベクタ衛星基地は原因不明の機能マヒに陥り、ヘルガストの侵攻を許してしまう。主人公はISA側の軍人として、停止した衛星基地を再起動させるためのキーを探し出し、同時に重要な情報を握る諜報部員を救出する任務を命じられる。 こんなストーリーで始まるハードSF系FPS、それが「KILLZONE (キルゾーン)」だ。海外では発売前からHALOキラーだとかHALOバスターだとか騒がれ、2004年秋の発売後はトータルで100万本以上のセールスを記録。本作はそれを日本語化したものになるが、ローカライズとしてはメニュー部分、およびゲーム中に出る字幕の日本語表示のみで、キャラの音声セリフは英語版そのままになる。 本作のウリは、なんといってもその重厚なグラフィックと世界観である。特にグラフィック部分に関しては、PS2としては間違いなくトップクラスのレベルにある。今までPS2でさまざまなFPSをプレイしてきたが、その中でも群を抜いて美しかった。 ただそれだけに処理も大変らしく、画面に多数キャラが入り乱れた撃ち合いになったりすると、とたんにフレームレートが下がり、カクカクしてしまうシーンも所々あったりする。これが許せるかどうかでゲームの評価もだいぶ変わってくるが、筆者の場合は遠距離からじっくり敵を排除していくというプレイスタイルもあってか、正直処理落ちに関してはそれほど気にはならなかった。
世界観としてモチーフになっているのは第二次世界大戦であり、ヘルガスト側がドイツ軍、ISA側が連合軍というのはオープニングからすぐわかる。ゲームとしても敵として襲ってくるのは人間系だけで、エイリアンや巨大クリーチャーといったモンスターも出てこない。人間以外の敵はせいぜい装甲車やドロップシップといった乗り物くらいで、そういった点からも「HALO」のようなSF系FPSというよりは、「メダルオブオナー」のような戦争系FPSに近いプレイ感覚になる。 ただ人間系の敵しか出ないかわりに、そのデザインには力が入っている。特に防毒マスクに暗視ゴーグル、ドイツ風ヘルメットで完全装備のヘルガスト側兵士はザコキャラとは思えないほどのかっこさ。押井監督の映画「赤い眼鏡」や「ケルベロス 地獄の番犬」で出てきたプロテクトギアのデザインが大好きだった筆者は、最初の頃は敵を倒さず、わざわざ接近して眺めてウットリしてしまったくらいだ。 ちなみに武器に関しても実弾(火薬)系ばかりで、ビームやレーザーといったSFでよくあるハデなエフェクトの兵器も登場しない。ただ同じ実弾系兵器でもヘルガストとISAでは若干傾向が異なり、連射速度が速いが着弾がブレやすいヘルガスト、逆に精度が高いが連射能力でやや劣るのがISAといった感じで、このあたり第二次世界大戦のドイツ軍と連合軍の兵器差を意識して設定されているらしく、面白かった。
■ シングルプレイは遊び応えはあるが、展開はやや単調? ゲームはシングルプレイ用の「キャンペーン」とマルチプレイ用の「バトルフィールド」の2種類。メインとなるシングルのキャンペーンは全11ステージあり、各ステージは複数のマップ、ミッションで構成されている。 それぞれ、各ステージごとにプレイするキャラも選択できる。ゲームスタート時は主人公であるテンペラーのみだが、ゲームを進めると仲間として部隊に合流するキャラが増えていき、中盤までには合計4人のキャラが選べるようになる。この各キャラの違いは、初期装備武器と一部の特殊能力になる。 マップは基本的に一本道であり、あらかじめ決まった位置に敵が配置されているスクリプトタイプだが、途中で特定のキャラしか進めないルートもあったりする。例えば、テンペラーでは正面から突破していたシーンでは、ダクトを通行可能なルーガーだとショートカットして、敵の背後から強襲。またレーザートラップを回避できるハッカなら、裏道を抜けて側面から奇襲できたりする。 重装備のリコは戦闘で圧倒的に有利だが、ハシゴや障害物が乗り越えられないため、最前線での戦闘が増えたりと、キャラによって進行ルートやプレイスタイルが若干変わってくるわけだ。あるステージで2チームに分かれて行動するシーンもある。例えばスイッチを入れに行くチームと シャトルを守るチームに分かれるシーンでは、ちゃんとそのチーム側のキャラのルートが用意されている。 そういった意味では各ステージリプレイ性もそこそこあり、ボリューム的にも十分で遊び応えのあるゲームといえるだろう。
とはいえ、各マップでキャラの攻略ルートが変わると言っても、基本的なゲーム展開は大きく違わなかったりする。それぞれのキャラが持つ初期武器も弾の補充機会が少ないため、途中で敵の武器に持ち替える(武器は3つまでしか持てない)事も多く、4人分まったく別シナリオが11ステージ用意されているわけではないので、過度な期待をするとちょっと肩透かしを食らうかもしれない。 プレーヤーの体力はXbox/Winで発売されているマイクロソフトの「HALO」と同じく、ダメージを受けても自動で回復するシステム。ある程度のダメージなら、いったん後退して隠れていればすぐに回復するので、序盤はだいぶラクにゲームが進んでいく。 しかし大ダメージを食らうと回復の上限値が減ってしまい、こうなると途中で敵が落とす治療キットを拾って回復するしかなくなる。ゲーム後半になると、敵がグレネードランチャーやロケットランチャーといった強力な武器で遠距離から狙い撃ちしてくるケースも多く、自動回復もおっつかなくなり、難易度的に厳しくなってくる。 ただ敵に倒されても何度でも途中のチェックポイントから再開できるし、敵の配置もそれほどイジワルなパターンはない。グレネードで武装した敵の前には、だいたいスナイパーライフルが落ちていたり、隠れて接近できる地形があったりする。FPSに慣れてない初心者ゲーマーでも戦い方次第ではなんとかクリアできるレベルだろう。 ゲーム中は自分が選択していないチームメイトの3人が随伴し、戦闘をサポートしてくれる。実はこれも難易度を下げている要因で、このチームメイトがかなり心強かったりする。チームメイトは常にプレーヤーのやや後方に位置するように移動し、戦闘でも後方から“適度に”援護射撃するように戦ってくれる。 チームメイトの弾数は無限だが、命令を出したりはできない。それより何より“無敵で死なない”というのが最大の特徴だ。攻撃を食らうと苦しそうに後退したりはするが、絶対に死んだりはしないのだ。いわばプレーヤーのオプションみたいなもので、これがなかなか絶妙な動きでサポートしてくれる。 チームメイトが強すぎるとゲームバランス的に崩れてしまうが、プレーヤーの後方に位置したり、援護射撃を控えめにしたりする事でバランスを取っているわけだ。クリアするには結局自分の腕前による要因が大きくなるが、これはなかなかうまく“チームで戦っている雰囲気”を演出してくれていると感じた。
ストーリー展開は良く言えば骨太で正統的。悪く言えば一本調子で、大きなサプライズもなく着々と進行していく。「HALO」のように途中で第三勢力が出現してホラー展開になったり、敵陣営側を操作したりとか、そういった急展開はない。だからと言って盛り上がらないかと言えばそうでもなく、ゲーム中盤あたりから真の悪が正体を現し地味にジワジワと盛り上がっていく感じ。
ただ、本作で登場する敵はすべて人間系なのもあり、ゲームも後半になるとちょっとパターン化してきたりする。インドアからアウトドアまでステージはわりと多彩でプレーヤーを飽きさせない工夫も随所に見られるのだが、やはり似たような敵と毎度撃ち合っていると、戦い方や対処法もワンパターンになりがちだった。 戦争系FPSもそうなのだが、この手の人間しか登場しないFPSの場合、いかに各キャラのAIが凝っているか、人間くさい動きをするかが重要な要素だと思う。本作のシングルプレイのAIは、その場その場で見ればなかなか臨機応変に動いてはいる。銃撃戦になれば遮蔽物を利用しつつ様子を伺ったり、ダメージを受ければいったん退却して体勢を整えたり、味方と連携して突っ込んだりもしてくる。 ただ、さすがに”自分の担当するエリア”を越えての移動はせず、その範囲もしばらく戦っていると見極めやすい。またこの手のゲームでよくあるボスクラスのキャラが出てこなかったのも、戦闘が単調に感じた要因だろう。もっと特殊な戦車や巨大メカ、強化人間のようなハデなボスクラスと戦闘をさせるとか、こちらも乗り物で対抗できるようにするとか、ゲーム展開にもーちょいメリハリが欲しかった所だ。 たとえばゲームにはレーザーガイドでポイントを指定して、空から爆撃をする特殊兵器なんかも出てくるが、活躍するシーンはほんの一瞬ですぐ使えなくなってしまう。こういった特殊兵器をもっと出すとか、活躍シーンを増やしても(装甲兵団を迎撃するとか)よかったのにな、と思った。
■ マルチプレイは残念。海外版では遊べたネット対戦が削られた マルチプレイの「バトルフィールド」は、画面分割式で1~2人のプレーヤーが遊べるようになっている。倒した数を競うデスマッチや、陣地を占領しあうドミネーション、コンテナを奪い合うサプライドロップ、重要物資を攻撃するアサルトなど遊べるモードは多く、ルールもそれぞれ細かくカスタマイズできる。 面白いのはNPC(コンピューター担当のBOT)を1チーム7体、2チームで合計14体まで設定できる点で、たとえプレーヤーがひとりでも大人数のチーム戦が楽しめる。もちろん友人とふたりで対戦したり、チームを組んでNPCと戦ったりもできる。 マルチプレイでのNPCのAIに関しては難易度設定ができるが、完成度についてはまあそれなりにといった出来で、よく立ち止まって攻撃しているシーンが多いのがちょっと気になったくらいか。遊びこむとアラが目立つが、そこそこの動きはしてくれるので、良い練習相手にはなってくれる、といったレベル。 はっきり言って、この手のゲーム(特にオンライン非対応)のマルチはオマケ的なゲームが大半で、正直期待はしていなかった。が、アサルトルールで友人とチームを組み、連携しながらNPCチームの重要物資を破壊しに行ったりすると、これが案外面白い。ワイワイ騒ぎながら遊べてしまった。さすがにNPCを14体も設定すると処理落ちも目立つが、それさえ目をつぶれば、友人が遊びに来た際の接待ゲームとして、なかなか良い感じではないだろうか。 しかし、やはり残念なのが、インターネットでのマルチプレイに対応していない点だ。先に出ている海外版は12人までのネットワーク対戦に対応しており、またUSB接続のマイクでボイスチャットもできたようたが、この日本語版はそういったネットワーク対戦そのものがカットされてしまっている。 製品寿命を伸ばすという点で、ネット対戦は重要な要因だと思う。NPCとの対戦がそれなりに遊べただけに、全部人間が担当すればもっと面白かったんだろうな、もったいない、なんて思えてしまった。まぁロビーサーバー管理などコスト的な部分で難しかったのかもしれないが、価格が7千円台のゲームとして考えた場合、正直ネットマルチは削って欲しくなかった。 まぁシングルプレイがちょっと単調ぎみだとか、ネット対戦が入ってないとか、わりと辛口な感想ばかり書いたが、なんだかんだ言いいつつも、結局ラストまで熱中してプレイできたゲームだったりする。ここ何作か遊んだゲーム機のFPSとしては、一番熱中して遊べたゲームかもしれない。決してハデなゲームではないが(むしろ地味)、この世界観やリアルなグラフィック、キャラデザインに興味があったり、また実弾系の武器が好きだったりする人なら、ぜひ一度プレイして欲しいゲームと言える。
銃器を撃ちまくるだけでわりと幸せな気分になれる筆者の場合、R1トリガーを引いてパッドの振動がダイレクトに伝わってくる本作は、美しくリアルな画面がさらに雰囲気を盛り上げつつ、かな-りトリガーハッピーになれる作品だった。
Killzone(R)(C) 2004-2005 Sony Computer Entertainment Europe. Published by SEGA. Developed by Guerrilla. Killzone is a registered trademark of Sony Computer Entertainment Europe. All rights reserved.
□セガのホームページ (2005年10月28日) [Reported by 三須隆弘]
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