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今回ご紹介するLU13は、非常に大規模なものだ。中でも今回「戦闘システム」については、戦える敵の強さ、与ダメージと被ダメージの計算式、プレーヤーキャラクタが使用する呪文やアーツの性能など、戦闘に関わるすべてが変化したと言っても過言ではない。 では、これがEQ2にどのような結果を及ぼしたのかと言うと、率直に言って非常に遊びやすくなったと感じている。敵の強さ表示の信頼性向上が代表的だが、以前に感じられた曖昧さが消えて、シンプルかつ明確なプレイができるようなバランスに変貌している。戦闘におけるシステムやバランスが整っただけではなく、これまでグループを組んでいないと使用対象にできなかった蘇生呪文が誰にでも使用可能になったり、ギルドを構成する上でプレーヤー側に多少蛇足とも思える判断を委ねていたパトロンの制度が廃止されるなど、ユーザーの視点に立った多くの改善がなされているからだ。
そこで本稿の前半では、大幅に変化した戦闘バランスの大筋のポイントを紹介した上で、どのような魅力が加わったのか紹介していく。多少専門的な内容ではあるものの、今回の変化がどういう意図のもとに行なわれたものなのかを筆者なりに記しているので、そこからEQ2というタイトルの魅力を感じ取って頂ければ幸いだ。 また後半では、同じくLU13で実装されたグラフィックを様変わりさせてしまう「キュートモード」、プレーヤーVSプレーヤーの戦闘が楽しめる「デュエル」を紹介していく。ちなみに運営元のスクウェア・エニックスからは、「エバークエストII コレクターズエディション」を購入すると、プレイ料金の3カ月無料か、次期拡張パッケージDoFのどちらかをもらえるという「ウェルカムバリューキャンペーン」を2005年11月30日まで実施している。このようなキャンペーンが実施され、さらに根幹に至る部分の調整から、おまけ的ながらも今までになかった楽しさを得られる新機能まで盛りだくさんの変化が起きたLU13が導入された今は、新規にプレイを始めるタイミングとしては悪くない。ぜひ検討してみてほしい。
また、各クラスともに新しい呪文やコンバットアーツがいくつか追加されている。追加された技の多くは、既存の呪文やアーツの変化とも合わさって、よりサブクラスごとの個性を明確化しているものが多い印象だ。特設サイトで事前に公開されている「コンバットアーツとスペルのハイライト」には、大きな変化のあった呪文やアーツ、が公開されているので、そちらで変化を確認するのもよいだろう。 続いては、クラスごとの変化を見ていく。それぞれのクラスが持つ特徴的な変化は、後述のグループプレイ時の変化をお伝えするうえでも重要になるので、自分がプレイしているキャラクタのクラス以外もぜひ注目して頂きたい。ちなみに文中に登場するメインタンクやアタッカー、ヒーラーという役割の記述に関しては、連載の第4回で解説しているので、そちらをご参照頂きたい。 ● ファイター系クラスの変化 タンクの役割を担うファイター系のクラスの最も大きな変化が「スタンス」の導入だ。これは攻撃型のスタンスと防御型のスタンスを「スタンス:○○」という名称のアーツで切り替えることが可能だ。攻撃型のスタンス時には攻撃力が大きく、その代わりに軽減力が低下する。防御型のスタンス時にはその逆で、軽減力が増加する代わりに攻撃力は著しく低下する。そのスタンスによる軽減力の差は大きく、攻撃型と防御型では行なえる役割が大きく異なる。特にグループプレイでメインタンクを勤めるときに、格下の敵であれば攻撃型でも行なえなくはないものの、格上の敵を相手にするときは攻撃型のままではとてもグループの盾にはなれない印象だ。 ● スカウト系クラスの変化 アタッカーとしての役割を務めることが多かったスカウト系のクラスだが、通常の攻撃や呪文・アーツの攻撃力は全体的に大幅に上がっている。メイジ系にも言えることだが、そのダメージ量の増加はすさまじく、種類によってはこれまでの3倍以上になったものもある。グループプレイ時にはこれまで以上にヘイトを意識した攻撃頻度のコントロールが必要だ。また、ファイター系のクラス同様に、スカウト系のサブクラスにも攻撃型と防御型を切り替える「スタンス」が実装されているので、ソロ時にもグループ時でも、状況によって使い分けるのが良さそうだ。特にグループ時はダメージによるヘイトの増減を調節するのにも使えるはずだ。 ● メイジ系クラスの変化 サブクラスの違いによる特性や役割の差別化が最も大きいメイジ系のクラスだが、全般的に呪文の威力がスカウト系のクラス同様に大幅に引き上げられている。その威力たるやグループ時に全力を出せばタンクから敵を簡単にはがせてしまうほどで、そうなった場合グループの全滅、崩壊にも直結する。スカウト系と同様に攻撃頻度のコントロールを今まで以上に繊細に考える必要があるだろう。スカウト系と異なる点としてメイジ系のクラスには攻撃型と防御型を切り替えるような「スタンス」のアーツはない。プレーヤー自身の操作による攻撃頻度の調節がポイントだ。ただし、ペットを召喚して戦わせるサモナー系のクラスにおいては、ペットのスタンスを切り替えることが可能になっている。ソロ時には防御型のスタンスを取らせ盾として使役し、グループ時には攻撃型にする、というような使いわけが可能だ。 ● プリースト系クラスの変化 単体ヒールのリキャスト時間がなくなりパワーの消費も減少した。そのため基本的にはより高回転なヒールワークをこなせるようになったと言える。だが、プレーヤーキャラクタ側の軽減力の調整や、防御系スキルの削除、敵の強さの調整が加わったことで、被ダメージはより大きくなっている。この点を総合すると、ヒールワークの頻度が上昇し、忙しくなったと表現するのが正しいだろう。 他のプレーヤーをヒールするのが主となるグループプレイでは、敵の選別や、グループメンバーの攻撃型・防御型のスタンスによる影響もあるため、相対的に印象が変化してしまうが、仮にメインタンクが攻撃型のスタンスで、格上の敵を相手に盾の役割を勤めていた場合、とてもではないが1人ではヒールが追いつかない。LU13の変更として戦う敵の選別やグループメンバーのパフォーマンスをシビアに捉える必要性が出ているのだが、グループの生命線でもあるヒーラーはその影響が大きく感じ取れるはずだ。 各クラスの変化は筆者の主観的ではあるが上記のような印象だ。グループ戦闘において敵の攻撃を受け止めるタンクの役割を担うファイター系のクラスに加わった「スタンス」は、真っ先に意識してもらいたいほどグループ全体に大きな影響がある。
● 「大きな変更点その1」 特定の種族に大ダメージを与えるマスター系の呪文やアーツ、さらにアタッカーやキャスターの呪文やアーツが大ダメージを与えられるようになったことに加えて、敵からは軽減力の概念が消えている。そのため、LU13以前とは比較にならないほどの大ダメージが発生し、結果としてヘイトの維持にはより繊細なコントロールが必要になった。 実際に私がグループでプレイしたときにも、スカウトが以前の感覚でアーツを放った際に、敵のヘイトはスカウトに固定されてしまい、それ以降、どんなにヘイトを上げるアーツを駆使しても、ターゲットをこちらに向かせることができなかったほどだ。軽減力の高いファイター系のキャラ以外に攻撃が及べば敵からのダメージは当然大きくなり、ヒールも過剰に必要になる。その結果は攻撃をもらっているメンバーの死亡か、ヒールのヘイトによるヒーラーの死亡につながり、グループは崩壊してしまう。ヘイトの安定した維持はかなり重要性を増している。 また、プレイした感触的な部分ではあるが、多くの敵は戦闘の最初に繰り出す一撃に強烈なものを繰り出すように調整されている模様で、これは単純にプレーヤーの焦りを誘う。ヘイトの安定した維持のためにも、焦らず冷静な対処が必要だ。
● 「大きな変更点その2」
● 「大きな変更点その3」 戦う対象となる敵の強さの幅は以前と比べてかなり限定されている。まともに戦える対象の敵は以前と比較して3レベルほど落として考えるのが良い。LU13以前に勝てていた敵とLU13以後に戦ってみても、メインタンクのHPの減少が激しく、ヒーラーががんばっても回復しきれずにグループは崩壊してしまうのだ。上記3点に挙げた変更のうち下の2つはそれを記述しているものだ。 戦う対象となる敵の強さの幅が総じて狭まったことで、狩場の選択と敵の選別はファジーな部分が抜けて、明確になった。ただ、LU13以前のように「勝てるかな? どうだろう? やってみようか!」というようにグループメンバーと相談して決めていくという曖昧さも一緒に消えてしまったようにも思えて、その点は少々残念なところに感じる。今後は明確に戦えると判断できる敵の中で、このような限界に挑む戦闘をすることになっていくのだろう。
● ソロプレイ時の変化
その代わり、ソロプレイ時に経験値を取得できる対象の敵も同様に10レベル下まで増えているので、以前よりソロプレイでのEXP稼ぎなどは容易になった側面もある。ただし、もともとグループ用の敵として定められていたヒロイック表示のある敵や名前に飾りのついた敵は例外。レベル的にかなり格下の敵でもヒロイック表示の敵を倒すのは困難になっている。本来の意味合いであるグループ用の敵である表示が、より確かな重要なものになったという印象だ。 これはグループプレイ時にも言えることだが、こちらの攻撃によるダメージも敵からのダメージも全体的に大きくなったため、戦闘にかかる時間自体は以前よりも短縮されている。格下の敵に対して攻撃力の増加した呪文やアーツを積極的に繰り出すと、戦闘の時間は驚くほど短く、結果として敵からのダメージをあまり喰らわないまま戦闘を終えることができる。格下の敵を相手にする場合が多くなったソロプレイは、よりスピーディーなテンポのよい戦闘ができるようになったと言えるだろう。 ● 変化した戦闘システム全体への印象
戦闘においては以前よりもさらに細かな「ヘイトの意識」が必要になったわけで、これはプレーヤースキルに依存する部分だ。特にアタッカーやキャスター、さらに他のクラスでも種族用のアーツにおいてはダメージ幅の大きい攻撃が繰り出せるようになったことで、「強力な攻撃を繰り出しても安全な状況のヘイトバランスなのか? 」という自問自答が必要になる。安定路線で呪文やアーツを抑えると、その分戦闘時間が長引き、他の要因でヘイトバランスが崩れる可能性も増える。だが、逆にヘイトを崩すような攻撃をバランスを見誤って撃ってしまうと、やはり敗北につながる。 ヘイトのせめぎ合いこそがEQシリーズにおける戦闘の醍醐味だが、その醍醐味をより深いものにするべく導入されたのがLU13はではないだろうかと考える。アタッカーやキャスターが敵に与えられるダメージとそれに伴うヘイトのバランスは、メインタンクが敵に対して稼いでいるヘイトに直結している。そのためアタッカーやキャスターは、メインタンクがヘイトを稼げば稼ぐほどに本領を発揮できる存在と言えるだろう。そして性能をどこまで発揮させるのかという加減は、プレーヤースキルに依存しているのだ。 一見、このヘイトのつなひきの外にいるようなヒーラーだが、アタッカーやキャスターが本領を発揮して大ダメージを与えられるのならば、戦闘時間が短くなるわけで、それは敵からタンクに及ぶダメージ量や攻撃回数が減るということになる。敵の攻撃が少なくすむということはヒールの量や回数も少なくすむわけで、ヒーラーにターゲットが及ぶ危険が少ないということになるのである。 密接に絡み合うヘイトの糸。それをよりプレーヤースキルに依存する形に戦闘バランスを調整したLU13は、そのアップデートの規模もさることながら、お見事と言える。新しいEQ2のバランスは明確化されてシンプルになっている。そしてそのシンプルさの奥には、EQの醍醐味であるヘイトシステムが、よりプレーヤースキルによって変化するバランスになり存在しているのである。 ■ キュートというよりキモカワイイ!? グラフィックを瞬時に変更してしまう「/cutemode」 さて、LU13に追加された新要素は、戦闘に関するもの以外にもまだまだある。その中でも、際立ってユニークなのが「キュートモード」だ。リアルで美しいグラフィックスが魅力のひとつであるEQ2だが、このキュートモードはそのグラフィックの中でもプレーヤーキャラクタや敵の姿を瞬時にキュートなものに変えてしまうのだ。 キュートモードにするには、ゲーム内で「/cutemode」とコマンドを入力するだけ。コマンドを入力すると、プレーヤーキャラクタの頭が通常の何倍にも大きくなり、いずれのキャラクタも四頭身の姿になるのである。また、ノールやスケルトンなどの人型の敵も、プレーヤーキャラクタ同様に四頭身の姿になるので、戦闘風景は一気にコミカルなものになる。変更がされるのはあくまで顔のサイズで、全身がキュートになるわけではない。キャラクタによってはちょっと怖い見た目になることあるようだ。キュートというより、日本的には「キモカワイイ」という表現のほうがしっくり来るようなモードだ。ちなみにモードの変更は瞬時にいつでも行なえる。
■ プレーヤーVSプレーヤーが実現!! 戦法次第で奥深く変化する「デュエル」
現在このデュエルには特に細かいルールは存在しない。あるのは後述するデュエルリングによるバトルフィールドの制限とギブアップのシステムだけだ。誰とでも戦闘が可能だし、呪文やアーツの使用制限なども特に設けられてはいない。「/duelbet」によるアイテムやお金の賭けに関しても、トレードのシステムに近いようでやはり制限と言うものはない。今のところはとりあえずプレーヤーvsプレーヤーが楽しめるようになったという状態だ。 ちなみに、自分が所属しているグループやレイドのメンバーにはデュエルを申し込むことはできない。その場合、一度グループから離脱する必要がある。また、グループに所属している状態で、他のグループに所属しているプレーヤーに申し込むことは可能だが、今のところデュエルは1対1だけなので、グループvsグループの図式にはならない。 デュエルを申し込むと相手の画面には承諾するか否かの選択肢が出る。承諾すると対戦者の周囲にはデュエルの範囲であるデュエルリングが出現。対戦中はこのデュエルリングの中の移動は自由なものの、リングの外に出て5カウントが経過するとギブアップとみなされる。ちなみにこのデュエルリングはデュエルしている2人以外には見えないのだが、対戦者それぞれのグループメンバーからは見ることが可能だ。 デュエル中に使用できる呪文やアーツに特に制限はないようで、実際のモンスター相手と同様の戦闘を展開することが可能だ。私も実際に何度かデュエルをしてみたところ、これがなかなか面白く、奥深さもある。予想通り、クラス同士の相性が結構厳しいのは致し方ないのだが、戦い方によってはそれを補うことも可能になりそうだ。 ウィザードの私ともう1人のウィザード、さらにネクロマンサーの3人というメイジ系クラス三つ巴の状況で交互にデュエルを繰り返してみたところ、当初はネクロマンサーが使役するペットに、ことごとくウィザードの呪文詠唱が中断されてしまい、そのうちにネクロマンサー自身が放つ呪文にHPを削られてしまい敗北するという展開になっていた。だが、色々と試行錯誤するうちに、ペットに囲まれる前に一番威力のある呪文をネクロマンサーにぶつけるというシンプルかつ強力な戦術で次第に勝率がウィザードに傾いてきた。 すると、ネクロマンサーが驚くべき戦法に出たのである。それはなんと「柱の影に隠れる」というもの。盲点だったのだが、呪文やアーツ、さらに通常の攻撃は敵の姿がしっかりと見えていないと発動させることができない。それはデュエルにおいても同様のようで、ウィザードが繰り出していた詠唱時間の長い強力な呪文は視界外に逃げられると、相手にヒットしないのである。その戦法が出されてからはネクロマンサーが視界外に逃げてしまい、呪文が唱えられないうちにネクロマンサーのペットがウィザードを攻撃するという展開になっていった。その後は、視界外に逃げるネクロマンサーの足を止めるべくスタン効果のある呪文をいかに当てるかに戦術がシフトしていき、意外にバランスの取れた熱い戦いが楽しめた。
ちなみにデュエル自体は場所や状況を問わず申し込める。さらにデュエルリング自体は横方向にデュエルのフィールドを制限するものの、高低差はある程度許容されるようなので、建物の中などデュエルをするとまたバランスが変化してくるかもしれない。 残念なのは、現在のところデュエルをするプレーヤー同士のレベル差を埋めるようなシステムがないところ。つまり、レベルが高い方が単純に有利になるし、レベル差の離れた仲間とはまともなデュエルにならないのだ。ここはレベルを自動的に合わせるシステムを盛り込んでもらいたいところだ。また、それに合わせてグループvsグループの図式が可能になると、ますます楽しみ方は広がりそうな予感がする。今後の進化に期待したい。
戦闘システム、バランスについてはあまりにも大規模で大胆な変更が多いため、LU13以降の仕様に馴染むにはなかなかに苦労するかもしれない。正直その規模は、これまでの固定概念を捨てて、新しい物としてひとつひとつ捉えなおすほうが理解がスムーズに進みそうなほど。だが、理解の先にはより深度の増した戦闘を楽しめるはずだ。また、今回紹介した「キュートモード」や「デュエル」といったおまけ的な楽しみ方が入ってきたのも嬉しいところ。このような肩の力を抜いて楽しめるコンテンツの充実にも今後期待したいところだ。それでは、また次回お会いしましょう。
□スクウェア・エニックスのホームページ (2005年10月12日) [Reported by 山村智美/Pomm]
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